金子功のスコットランド紀行

頑固(がんこ)な男の国だった。

昔から憧れていたタータンの国、スコットランド。
もっと女性的なイメージが強かったという金子功さん。
それが見事にくつがえされてしまった。

想像と見るのとでは大違い、まるでシェイクスピアのようだった。

私の仕事柄、スコットランドという国とは密接な関係で、ツイードだとか、タータン、ラムやカシミアなどの生地、ニットに関してはずいぶんとこの国に貢献しています。しかし、実際に手には触れても見た事は一度もなかった。イングランド(ロンドン)へはパリからの日帰りなども含めると過去10数回は行っているのだがスコットランドへは機会がなくて、今回やっと会えたわけです。
私の想っていたスコットランドは四季がなく、過ごしやすくて、グリーンがいっぱいあって、街全体が素朴、というイメージがあったんですけど、大きな間違いで、歴史があって、昔すごく立派な国で、建物もドッシリと構えている。まるでシェイクスピアに出てくるような重厚感があった。
それはロンドンから行ったから余計に感じたのかもしれない。ロンドンを中心としたイングランドは茶色のレンガや白っぽい建物もあったのに、エジンバラはグレーというか黒というか、とにかく暗かった。たとえばお城、昔、ドイツのお城を見た時に繊細でかわいいなあという印象があったんだけど、スコットランドのお城(ドイツ同様、いたる所にお城が点在している)は、ひと言で「男らしい」「男っぽい」と思いましたね。
その時にこの国は「男の国」だなと強く感じた。イングランドでもそれは感じたけど、スコッチや葉巻、スポーツなど自慢している物がすべて男っぽくて、またそれがこの街にピッタリくるんですね。

タータン・チェックがあれほど男の物だとは思わなかった。

タータン・チェックは少年や女性の物だとばかり考えていた。(実際、日本では子供や女性物が圧倒的である)しかし、街で見かけたりレストランやホテルのパーティーで見かけても、まるで男の物、男しか身につけていないし、あらためてビックリした。後になって考えてみるとタータンというのはスコットランド人の紋なのだから当然の事かもしれない。(日本人の紋付袴と同じである)
昔からタータンに憧れていて、あれを女の子に着せてスコットランドの草原で写真を撮りたいなと考えていたんだけど、大間違いで男が着てはじめて似合う物だったんだよね。だから私の頭の中ではタータン=女、のイメージだったんだけど、それは違うという事がわかったんです。

パブリック・スクールの制服がすっごくかわいかったね。

エジンバラのパブリック・スクールを2校、ちょっとだけ覗いたんだけど、あまりのキレイさにまたまたビックリした。最初は学校でなく、お城か貴族の館かと思ったぐらい。オックス・フォードやケンブリッジなどの大学とはまた違った意味でのキレイさがあるね。それと制服がイイね、たぶん小学生から高校生までのスクールなんだけど黒に赤のパイピング・ブレザー、胸には学校のエンブレム、小学生は黒の半ズボンに黒のハイソックス、黒のプレーン・トゥのひも靴。もう子供の頃からハイソサエティという、生まれた時から人生がきまっているんだなあという印象でした。

NEW!

男が作りだした伝統、頑固さがやけに目につき歴史を感じた。

レストランやパブに入った時に男同士でいる人がいっぱいだったのはおどろいた。
パリなんかだと必ず女が大きな態度で横にいるんだけど、ここでは女を寄せつけない何かがあるね。会員制のクラブ、パーティー、スポーツだってハンティング、乗馬、クリケット、ラグビーなど、すべて男を中心に回っていて、男だけで楽しんでいるものね。だから女の人がカワイソーだなと思う。
パリにはよく行くのだけれど、個人的な買い物をして、買う時には意識しないのだけど、日本に帰ってきて洋服なんかよく見てみると、みんな英国製という事が何度かあった。特に靴が大好き。まるでキレイな馬を見てるような感覚で、私は見てしまう。たぶん靴は世界一じゃないかな。
スコットランドは圧倒的に男の国で、歴史や伝統の国だった。それが素敵なところであり、つまらないところでもあるんじゃないかな。

メンズクラブ1987年10月号より

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