ショー

ピンクハウスが初めて単独でショーを展開して大きな成功をおさめた
伝説の’81春夏コレクションをご紹介します。

ファッションを担当する者にとって、ショーを見ることは重要な仕事です。服を着るのは人間なのですから、人間が着た状態で服を見られる機会は、できるだけ逃したくないと考えています。
次のシーズンの傾向を探り、デザイナーの意図を知るのが主な目的のわけですが、そうした仕事を離れてもさまざまな発見があります。
先シーズンのピンクハウスのショーの時でした。ショーは舞台を作らず、椅子を並べただけのサロンのような雰囲気の会場で行われました。白いブラウスに黒いジレを組合せた一連の服が登場したとき、大変力強い拍手が聞こえてきました。拍手をしていたのは、長沢節さんでした。日本のショーで拍手を聞くのは珍しいことです。もちろん、ショーが終ったときには、全員が拍手をしますが、ショーの途中で拍手を聞くのは、まれです。単にそうした習慣がない、というだけではなく、拍手をするには勇気がいります。ある服を見て、そのデザインなりコーディネーションなりを評価し、デザイナーを励ますために拍手をする。ところが、拍手をする時点では、見ている服に対する評価は定まっていません。まっ先に、それをするのは、勇気のいることです。
数年前、パリのプレタポルテコレクションを見たときに、印象的なことがありました。パリでは、日本と対照的に盛んに拍手が聞かれます。ウンガロのコレクションの時だったと思いますが、一団の女性が派手に拍手をしているのが目につきました。かなり年をめした御婦人がたで、バイヤーというよりはジャーナリストのようでした。ちょっと見当違いの拍手だな、と思っていると、横に坐っていたフランス人のジャーナリストが「アメリカ人趣味ね」といいました。それは軽蔑を含んだ口調で、その女性たちの評価を否定したものでした。
新聞、雑誌に書く文章以上にショーの会場での拍手によってジャーナリストとしての見識をはかられるわけです。個人的な趣味だけで拍手するわけにはいきません。次のシーズンを予見して、それを評価するような拍手でないと、フランス人たちは納得しないようです。ぽっとショーを見に行って、簡単に拍手ができるものでないのが、良くわかります。
長沢さんは、パリのコレクションにも通い、拍手の意味を良く知っていらっしゃるんだと思います。豊富な経験に基つ゛いて、拍手をおくっていられるように見えました。たった一人の拍手でも、それはデザイナーにとって最高のはげましのはずです。

アンアン1981年2月11日号 編集後記「au cafe」(オ・キャフェ)より


NEW!

装苑1981年2月号の読者投稿ページ「おしゃべりの部屋」には、コレクションのチケットプレゼントに当選した読者の感想が掲載された。

「ピンクハウスのショーを見て、熱烈大感激!」
私、装苑編集部の皆々さまに対して感謝の気持ちで一杯であります。まさかと思っていた、ピンクハウスのショーを見られたのですから。ほんとうにありがとうございました。
11月6日、40分前に行ったせいか、前から2番めの席でした。私の前には、あの尊敬すべき小池千枝先生がいらしたのです。同じ装苑の招待で来たという女の子(私より4歳年下)と、ワクワクしながら開演を待っていました。3時10分、いよいよショーの始まりです。オープニングは白の木綿のフリルブラウス+黒のベスト+黒いパンツでした。白と黒のウエスタンブーツがとてもキュート!シルクのピンドットのワンピース、ツーピース、麻のニット、乗馬用風ズボン、黒のキルティングのジャンパー、夢のような白のブラウス。みんなみんなすばらしいの一言。ロングの金髪+カーリーヘアが金子さんのドレスとぴったりマッチして、かわいいのなんのって、大人のかわいらしさなのです。ラストはウェディングドレス、白い小花を抱えてモデルが登場。まるでバレリーナのよう。ピンタック、プリーツ、みんなみんなすばらしいのです。小池先生も、身を乗り出して拍手を送ってました。金子先生が恥ずかしそうに、そしてとってもうれしそうに、ちょこんと顔を出したのです。会場は大きな拍手で盛り上がり、温かい家族的ムードになっていました。隣の女の子は「ワイズとギャルソンを前日見たけど、今日がいちばん感激した」とのこと。拍手するのもピンクハウスが初めてだと言ってました。終わってからも、しばらく夢の世界をさまよってたような気がします。ますますピンクハウスびいきになってしまいました。できれば、一杯のスペースで、ショーの模様を載せてほしいのです。ほんとうに大満足の一日でした。

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