スタジアム・ジャンパー

スポーツ選手が着る防寒用のジャンパー。胸にチーム名の文字などを大きく貼り付けたものが多く見られ、本格的なものは身頃がメルトン、袖がレザーのツートン・カラー使いとなっている。略してスタジャンともいう。野球選手が多く用いることからベースボールジャケットの名でも呼ばれる。

「スタジアムジャンパー」は1960年代に大流行したアイビーファッションの 中から生まれ、VANジャケット社が命名した和製英語である。1980年代にブームを迎えて以来、ストリートやカレッジの定番となっている。
スタジャンは19世紀末頃ベースボールプレイヤーのために作成された といわれている。アメリカでは「アワードジャケット」「レタージャケット」 「パーシティジャケット」等と呼ばれており、学生たちが、クラブのチーム名やお気に 入りのワッペンなどを貼りつけたり、学校から優秀選手の表彰用として贈られ ている由緒正しいジャケットである。
アメリカで最も人気の有るのは、1920年代に生まれたもので、腕や胸などに 「シニール」と呼ばれるエンブレムを付けたスタジャン。そのシニールに刻まれた 名称、年代、デザインをはじめ、形、大きさなどの要素が加わり、その一つ一つが 意味を持っている。例えば所属するスポーツチームが優勝したことを讃えて、 証として、校章やエンブレムなどが貼り付けられ、アメリカの学生は、思いのシニール をいっぱい貼りついた、「自分だけのスタジャン」を持っている。

カールヘルムの初代スタジャン!

カールヘルム1985年秋冬物
カールヘルムのデビューイヤーに作られた最初のスタジャン。ウールメルトンの身頃に、牛革の袖、王冠の付いたKのワッペンという極めてオーソドックスなデザインが素晴らしい。カールヘルムの初広告より。もちろん金子さんのコーディネート。スタジャン¥68,000、Tシャツ¥4,800、パンツ¥14,500、肩のトレーナー¥7,800、腰の帽子¥2,900(カールヘルム1985年秋冬物)…アンアン1985年8月30日号「男の服を作ることが、こんなに面白いとは思わなかった。」より 赤、ピンクといえばピンクハウスのおなじみカラー。カールヘルムにももちろんこの美しい色合いがそろっている。スタジャンやスウェットパーカーなら無理なくこのきれい色をマスターできる。いうまでもなくチノパンツとの相性もピッタリ。スウェットパーカー¥18,500、セーター¥19,500、パンツ¥13,500、帽子、革手袋(カールヘルム1985年秋冬物)…ノンノ特別編集メンズノンノ「女の子ブランドの男ものに今、注目!」より
わんだふるはうす私物
1 KJ−11 ¥68000
これは、右上の写真と同じものです。金子さんが初めてデザインしたメンズのスタジャンということで、歴史的な価値があります。ピンクのキルティングの裏地とボルドーのレザーの袖が気に入っています。

スタジアムジャンパーについては、1979年から1981年までananに連載された「金子功のいいものみつけた」の52回目(アンアン1980年11月11日号)で、金子さんが触れているので、それを紹介しよう。

アメリカン・ファッション・ベスト3のひとつだと思う。大リーガーに熱狂するヤンキー魂がぷんぷん匂って、大統領の選挙応援に大騒ぎするアメリカ気質があふれて――。派手で健康的で、アメリカ万歳!の感じなのである。

ベスト3のあと2つが何か、なんていうことはこの際かまわないのだ。とにかく、”素晴らしきアメリカ”が生んだ善きものの代表である。
もちろん野球を筆頭にさまざまのスポーツで、応援団やインストラクターが着るのだろうし、選手も試合前後や休憩中に着るのかもしれない。
いずれにせよどこのチームの関係者か、ひと目でわかる必要があって、だから色も派手。ビッグ・ゲームがあったりすると記念あるいは目印のワッペンを作る、それをペタペタくっつけてしまうから、ますます華やかに、派手になる。
デザイナーが考えて作ったのではなく、必要に迫られてできた、そのでたらめさが、いい。配色のセンス……などといい始めたら、これほどあっけらかんと明るいデザインにはならないだろう。
フェルトのような生地と革とを組合せるデザインは、一体誰が考えついたのか。まさにアカデミー賞ものである。

いかにもヤンキー気質の、ソバカスなどいっぱいの小僧や、GI刈りの青年、あるいはまたゴマ塩頭で首が太い爺さんでも、とにかくこれはアメリカ男たちにぴったりのジャンパー。
最近は日本の男の子も脚が長くなっている。このジャンパーが似合うと思う。ただし日本人の場合は若くなければダメだ。ガニマタの中年男には着てほしくない。
それなら、女にはどうなのか。ヤンキーガールでも日本の女の子でも……実は、本心を告白すると、女には似合わないような気もするのだ。
が、これを買って持っていてほしいのは女(男ももちろんだが、その場合はどんどん着てほしい)――持っていてもめったに着る機会がなく、着れば着たで男にまちがえられたり。いやそれならばいいのだが、女が着たんじゃサマにならないよ、という見本にもなりかねない。
それでも、この何とも素晴らしい配色のジャンパーをひとつ、持っていることの楽しみ。アンティックのレースのイブニングを大切に持っていることと同じではないだろうか。

誰でも、着るために服を買う。しかし、それだけでは満足できない、着られなくても買ってしまうしゃれ心を、密かに持っている人は少なくないと思う。
女も男も、そういう非実用的、非現実的な、いってみれば精神のおしゃれのようなことを、たまに楽しんでみるのもいい。
写真のジャンパーは古着なので、もちろんワッペンも古く由緒ありげ。飾りのためにわざとくっつけたのではないところが実にいい。といったことをうれしく思う心を大切にしてほしい。
ジャンパー¥19,800、Tシャツ¥1,800(バックドロップで1980年に売られていた物)パンツ¥13,500(ピンクハウス1980年秋冬物)モデルはユリさん。主役であるスタジャンは、金子さんが古着屋で借りてきた物。このように、ピンクハウスの服は、「いいものみつけた」では常に脇役であった。商業主義そっちのけで、金子さんが読者に伝えたいことだけを書き、本物の古着を見せている。それだけに素晴らしい。このスタジャンは、クリーブランド・インディアンズのマーク、「CHAMPS」「1954」などから、大リーグ関係の物だ。インディアンズは1954年にアメリカン・リーグで優勝しているので、それを記念して作られたものであろう。

カールヘルムのスタジャンを女性が着る!

カールヘルム1986年秋冬物
エンブレムとワッペンを縦に配置した、1986年秋冬の傑作スタジャン。上記の「金子功のいいものみつけた」から6年後、金子さんは満を持して、女性モデルにスタジャンを着せた。袖とタートルをオレンジで統一し、身頃とスカートをこげ茶で統一している。バッグと靴の甲の部分には、アザラシの毛皮を使用。今見ると素晴らしいスタジャンであるが、当時は売れ残って、SALEで半額で売られていた。スタジャン¥69,000、タートルセーター¥18,000、ストール¥27,000(カールヘルム1986年秋冬物)プリーツスカート¥32,000、チロリアンシューズ¥54,000、ポシェット¥49,000(ピンクハウス1986年秋冬物)…アンアン1986年9月12日号(No.543)「恋をしにドイツへ。」より こちらも金子さんのコーディネート。やはり身頃の黄色に合せて、インナーには黄色いニットをもってきている。Vゾーンから覗くフリルのブラウスが、スタジャンのハードさを和らげている。完全にメンズで揃えずに、スカートやブラウスなど、1点だけレディスのアイテムを取り入れるのが、女性がスタジャンを着こなす秘訣のようである。肩にかけたセーター¥23,000、パンツ¥13,000帽子¥8,500(カールヘルム1986年秋冬物)…メンズクラブ1986年9月号「僕の服を彼女が着るとき」より
わんだふるはうす私物
5 KF−1 ¥69000
身頃も袖もオレンジ、裏地は赤のプリント。エンブレム以外のワッペンはマジックテープで着脱可能。とにかく強烈なスタジャンです。背中は無地。裏地に散らばっている男達が何とも可愛くて魅力的。これはカールヘルムの歴代のプリントでも最も不思議な柄です。プレジデント・リンカーン、カール・ヘルム、メイト・ハミルトンという名の3人の男の柄ですが、リンカーン大統領(椅子に座っている男)以外は架空の人物のようです。

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