スウェットパーカー

スウェットシャツの原点は、英国でウール製の肌着として作り出されたのが始まりとされています。スポーツ用セーターとしてウール製の肌着は製作され、保温性のためのリブが袖口と裾口につき、生地の伸縮をフォローするために首回りにはウールのガゼットが付けられたものでした。この時点でスウェットシャツのおおまかな形がほぼ完成されていたようです。当時ウール素材は高価であった為、量産向きではないということからもウール製のスウェットシャツは1940年代あたりで姿を消していき、その代わりとしてコットン製のスウェットシャツが普及したようです。1924年のパリオリンピックではアメリカ政府が選手団にコットン100%のスウェット・シャツを支給したことでも知られ、この世界初のスウェット・シャツは、映画「炎のランナー」で見ることができます。本格的にコットン製スウェットシャツが普及したのは第二次世界大戦中であると思われます。1950年代に入ると、第二次世界大戦でその保温性と吸汗性を十分に発揮したコットン製のスウェットは再びスポーツ用として活躍し、さらにキャンパスの学生にも受け入れられました。学生達は母校のシンボルキャラクターやエンブレムロゴをいれたカレッジスウェットを好み、ファッションアイテムとしても広く普及しました。

ワンダフルハウス私物
P0382UAL05 価格不明
(カールヘルム1988年夏物)
ボーリングワッペンと当時の刺繍ワッペンが全種類付いている傑作。パープルのスウェットというのも大変珍しい。

スウェットパーカーについては、1979年から1981年までananに連載された「金子功のいいものみつけた」の62回目(アンアン1981年3月1日号)「ヨットパーカのフード」で、金子さんが触れているので、それを紹介いたします。

ランニングが流行したおかげだと思う。トレーナーがやたらに目につくようになった。売っている種類も豊富で、着方にもさまざまなバリエーションが発明された。ヨットパーカをヨットで着る、トレーナーをジムで着る人のほうが少数派だ。

トレーナーやパーカの類は、かなり早い時期から出回っていた。アメ横や、横浜のフクゾーあたりで霜降りグレーのトレーナーを見つけたのは、Tシャツが出回るずっと以前である。
J・ディーンの白いTシャツや(理由なき反抗1955年)、ジーン・セバーグの縞のTシャツ(悲しみよこんにちは1957年)(「勝手にしやがれ」1959年)に憧れても、おいそれとは手に入らなかった時代。なぜかトレーナーは売っていたのだ。
しかし――
わざわざ遠出して買込んできたそれを、実際に着る機会は少なかった。スポーツマンでもない身としては、真夏の海岸で着るくらいがせいぜいで、街を歩くなどということはあり得なかった。新聞配達でさえ、あの頃はトレーナーを着ていなかったのだ。
もちろん、秋や冬に着るものではなかった。が、ほんとうのところ夏着としては暑すぎる。汗だらけになって、すると今度は洗濯が厄介だ。あまり実用的ではないなぁ、と思いつつ、アメリカ映画のハイスクールなどで、やたらかっこよく氾濫しているトレーナー姿を羨ましく眺めたものだった。

時移り、いま。街には一年中トレーナーやパーカがあふれている。真夏にも冷房過剰の建物などでは実用的価値も高く、冬は冬で暖かい、スポーツに関係あろうとなかろうと、男女を問わず……トレーナー類は愛用されている。
この上にジャケットやジャンパーをはおる着方も大流行だ。ブレザーを着るのもいい。またもや、男のスポーツ着のよさを再認識させられるのだ。
フードがついたトレーナー(パーカ)の魅力は、もうかなりの年配なのに少年ぽさを残して、ふと甘えるような笑顔を見せることのある……そんな男の魅力を連想させる。若々しいスポーツマンにも、渋っぽい白髪男にも似合う、もっさりとした野暮ったさがいい。
ちょっと甘えた感じはフードからの連想だろう。意味もなくぺらんと後ろにたらしている、その背中に暖かい雰囲気が漂う。

NEW!

パーカにかぎらず、ダッフルコートも天鵞絨(びろうど)のケープも、すべてフードはかぶらないでいるほうがかっこいい――と思い込んでいた。事実そうだ。
が、ある日ふと、そのパーカのフードをすっぽりと頭にかぶってみた。フードをかぶるとプロレスラーか中世の城塞の番兵みたいになる――という先入観念の誤りを知った。理由はないが、可愛く魅力的に見えた。
ブリティッシュ・グリーンのパーカに紺のスポーツ・カーディガン。男のスポーティーものを組合せたよさと、深い海の色のような配色のせいだけではない。フードをかぶるという”本来の着方”が新鮮なのだ。

パーカ¥6500、カーディガン¥28800(プレッピー)パンツ¥12000、カバン¥4500(ピンクハウス)商品・価格は全て1981年当時のものです。

ワンダフルハウス私物
P0394UAL06 価格不明
(カールヘルム1989年冬物)
重量感のあるヘビーな生地を使用。前立てがフルジップ+フルスナップの2重構造になっているので、スウェット特有の安っぽさがありません。ワッペンを片側に縦に並べただけのシンプルなデザインにも好感が持てます。

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