着物の着こなし方に想を得た、金子さん独特の+αのおしゃれ学。シンプルでプレーンなもの同士を重ね合わせていくことで、どんどん新しいイメージに仕上がっていくと、12ページにわたって語っている。最初の3ページは金子さん自身の手によるコーディネート(インゲボルグとカールヘルム)。後の9ページはスタイリストによるコーディネート(インゲボルグと他のブランド)だが、金子さんは全ページに登場している。
金子功の「さりげない服+α」のおしゃれ学 |
撮影・今村史佳 スタイリスト・金子功、斉藤伸子 ヘア&メイク・金子義幸(GORO) |
僕の考える+αの おしゃれ学 |
イメージの違う服同士を自由に組み合わせて冒険する |
今、ニュートラ風の着こなしをしている人が多いですよね。ボディコンシャスなワンピースにヒールの高いパンプスという……。とてもオーソドックスで品のよいスタイルだけれど、僕が考える+αのおしゃれとは少し違う。ひとつひとつ選ぶ洋服はさりげないものでも、あたりまえの組み合わせをしないのが僕の思うおしゃれ。乱暴かなと思うくらいでいいと思っています。+αをひと言でいえば冒険する心かな。 たとえばポリエステル素材のプレーンなワンピースにジャンパーを合わせる。ワンピースのもつフェミニンな印象とジャンパーというアイテムから受けるスポーティーな印象は相反するもの。お互いのイメージをこわしてしまう作用があるわけです。でも、イメージをこわすことのおもしろさと、相反するものを合わせたおかげで、元のイメージが強くなるという効果も生まれます。この遊び心をもっとおしゃれにとりいれてほしいですね。 もうひとつ、”動き”をもたせるというのも重要なポイント。洋服はハンガーにつるしておくのではなく、人間が着て動いて初めておしゃれとして完成します。ゆれるスカートのすそ、自然に動く胸元のチェーンなどはとても魅力的。コーディネートするときには、どこかに動きのあるものをプラスしてみるとよいでしょう。僕がずっと作り続けているストールもそのためのアイテム。腰のまわりやえり元にさりげなく巻いて、動くたびに変わる表情が楽しめます。ストールは冬のものとこだわらず、木綿や絹、麻、レースなどの素材から選んで、真夏にも大いに利用してください。 |
おしゃれのヒントは日本の着物にある |
僕のおしゃれに対する考え方のヒントは、日本古来の着物の着こなし方に想を得ています。大胆な柄の着物に、同じように大胆な織り柄の帯を合わせる。お互いに強い個性を持ち、それらがぶつかり合い、融合しながら独特のムードを醸(かも)し出す。ステキですね。そして動くたびにすそがゆれて、裏地がチラリとみえたり、そでから長襦袢の柄がのぞいたり。このテクニックを洋服にも応用したいですね。特に大正時代の着物は、衣紋(えもん)を大きくぬいて、半えりにししゅうをあしらったり、はっきりいって、かなり派手。でもそこに+アクセサリーのヒントがあります。リボンのついた洋服に、コサージュやネックレスをあしらって、しつこいくらいに重ねていくことが、逆にとてもチャーミングと気つ゛かせてくれるのです。 比翼仕立ての重ねえり、帯あげ、帯締めなど、次々に+αしていく着物。これを洋服の着こなしにとり入れるには、アイテム選びが大切です。着物も帯も、元の形はとてもシンプル。だから洋服もできるだけプレーンなものを選びます。プリントや色、柄を選ぶときも、斬新なものではなく、どこかでみたことのある、親しみのあるものを選んでください。タイプの異なる洋服でも、自分が好き、という基準で選ぶもの同士は不思議に合います。 |
・ドレッシーな印象のワンピースとスポーティーなジャンパーとの組み合わせ |
・ボリュームのあるボトムとシンプルなトップで |
・男仕立てのジャケットにフェミニンなワンピースを |
ベーシックなスーツに+α プレーンでシンプルなデザインのものを選ぶと、様々なイメージに変化させて着こなせます。 |
カチッと男っぽい印象をもつスーツは、何か柔らかいものをプラスすることにより、全体にやさしい感覚で着こなすことができます。ジャケットだけを生かして、スカートとシャツの代わりにソフトな素材のワンピースを合わせる。通勤着だったスーツが、全く違うフェミニンなムードにも変身します。 柔らかいものを合わせると、カチッとしたスーツの印象を際立たせ、ひとつひとつの個性が強く主張される上、全体的なイメージも女らしく仕上がります。アクセサリーや小物で動きをもたせ、軽やかな演出を。 |
・スカーフとネックレスで女らしさをプラス |
・チーフやボウタイで動きをプラス |
・カジュアルな帽子とスカーフでラフなイメージをプラス |
・コサージュとストールでフェミニン感覚をプラス |
ベーシックなジャケットに+α ベーシックなアイテムだからこそ、ちょっとした遊び心で、いくらでも楽しい着こなしが。 |
メンズライクなブレザー、スポーティーなジャンパー、カジュアルなブルゾン。ジャケットそのものから、いろいろなイメージが表現されます。+αの着こなしは、このイメージと相反するものを選ぶことから始めます。たとえば、身体にフィットしたジャケットなら、シャツカラーのブラウスにセミタイトのスカートがオーソドックスな着こなしです。これを、スカートだけ、ちょっと凝ったデザインのビッグなスタイルのものを合わせる、そんな遊び心をふんだんにとり入れると楽しい。レースなどドレッシーなストールを合わせてもステキ。 |
・重ね合わせの妙を楽しむためにプリントのスカーフをプラス |
・コサージュで女らしいイメージをプラス |
・+スカーフ&コサージュ ・+スカーフ&ブーツ ・+パール&ゴールド ・+プリントワンピース |
ベーシックなニットに+α プレーンなデザインであればあるほど、ポイントの小物が効果を表してくれます。 |
ニットはいつも着こなしの味つけ役です。+αするものというより、+αそのものともいえるでしょう。スカートとシャツの上に着て+αしたり……。だからとても便利で人気があるアイテムですが、もっと主役として活躍させてほしい気がします。たとえば、ニットのワンピースやニットのスーツとかにも注目してほしいし。+αはアクセサリーや、スカーフ、ストールなどの小物だけで抑えることが大切ですね。ニット自体を引き立たせるには、小物をワンポイントに合わせるなどするとよいと思います。 |
・クルーネックセーターにプリントのスカーフをプラス |
・ポロセーターにエスニック調のスカーフをプラス |
・Vネックセーターにスカーフとコサージュをプラス |
・Vネックカーディガンに水玉のスカーフをプラス |
・ラウンドネックカーディガンにプリントスカーフをプラス |
ベーシックなボトムに+α ボトムをひきたてるのは、くつとトップの合わせ方次第です。ミスマッチのくつを合わせるなどしてみましょう。 |
ボトムに+αを考える場合、主役があくまでもボトムであることを忘れないように。+αは印象を強めていくための役割を果たす小物やトップを選びます。たとえばヒールをはくのがあたりまえのスカートにブーツやスニーカーを合わせるなどして、強いインパクトを与えるのも手です。 また逆に、トップの印象を弱めていくという方法も考えられます。ジャケット、ブラウス、小物などの色を統一して、トップを一色でまとめてしまうのです。ボトムだけ違う色にして目立たせるのです。 |
・カーディガンとセーターの色を統一して、ボトムを目立たせる |
・スニーカーを合わせてミスマッチに |
・トップとくつを同色にしてドットの印象を強める |
・赤い小物でスカートにアクセントを |
・ストライプと水玉でパンツをシックに |
ベーシックな色・素材に+α 異素材同士の組み合わせはそれだけで着こなしにニュアンスが。ポイントカラーの量はひかえめにして |
ポリエステルに麻、木綿にシルク、異素材をプラスしてそれぞれの素材のもつ個性をより印象つ゛けてください。タイプの違うものを組み合わせる場合、色でトーンを統一するのが決め手。異なるイメージ同士の組み合わせのおもしろさは色についても同じことがいえます。基本をモノトーンやベージュにして+カラーの量は少なく。 |
・ダークグリーンに白をさし色にして |
・麻+絹の洗練された着こなし |
・全体をベージュでまとめ、スカーフをポイントカラーに |