「雪化粧」
 下北半島東通村の海岸地帯には、南部藩領時代(500年以上前)蒙古馬などのかけ合わせにより寒さと粗食に耐え、持久力に富んだ馬を「四季置付」と称し周年放牧されていました。そして幾多の変換を経て野放馬から「寒立馬」と愛称され今日に至りました。


「戯れ」
 厳寒の冬、寒立馬は尻屋崎の中でも降雪の少ない大平洋側のアカタと呼ばれる地区に集められます。雪原では子馬が母親に甘えていました。厳しい冬を楽しげに謳歌するかのようでした。
 冬が終わると子馬は一人立ち、母馬は出産の季節を迎えます。


「誕生」
 4月下旬新月の夜、3頭の母馬が次々と出産しました。しかしこの写真の馬は子馬が大きくひどい難産で馬主たちは子馬にロープをかけ出産させました。
 後日下北を訪れた時、あの時の母馬は死んだと聞かされました。


「夕暮れ」
 童謡に「お馬の親子は仲良し・・・」とありますが、いつでもいっしょです。
好奇心旺盛な子馬は他の馬や人間に近づいたりしますが、出産したばかりの母馬は気が立って神経質なこともあります。


「初夏」
 この尻屋崎灯台の近くは湿地帯になっていて春から夏にかけていろいろな花が咲きみだれます。
緯度の高いこの下北は平地にいながら高山植物が楽しめるところです。


「嘶く」
 晩秋の朝、1頭の白馬が水辺に来て寂しげに嘶(いなな)きました。
来週は写友たちと下北の撮影を予定していたのですが、昨晩突然思い立って下北に来た時のことでした。
この日、この馬たちは馬喰へと売られていきました。


「'95年11月」
 村の衆に尋ねました。「この馬たちをどこに連れていくのですか?」
すると男は「わからない」と一言。
私は、まさかと思い馬にカメラを向けました。
『シャッターがおりない・・・人指し指が動かない・・・こんな寒立馬の写真は撮りたくない!』すると急にファインダーが見えなくなりました。涙で・・・
その翌年、私は初めての個展を東京銀座コダックフォトサロンにて開きました。

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