卒業旅行記


・第1弾 宝泉寺禅センター(2/14〜2/17)

いよいよ待ちに待った(?)卒業旅行。と言うよりも、実は行き先は数ヶ月前から
決めておりました。その行き先とは・・・「禅寺」!!社会人になる前に、
一度精神的に自分自身を追い詰めて、自己を見つめなおしたいと前々から
考えていたところ、一般の人でも受け入れてくれる禅寺があるという情報を
テレビで見て、早速インターネットで調べてみることに。
いろいろ候補はあったのですが、日程の都合などで受け入れてもらえない所が多く、
困っていたところ、たまたま見つけたのが京都の亀岡にある「宝泉寺」。
早速メールを送ってみたところ、受け入れ可能との返事を頂いたので、
未知の世界の飛び込む期待と不安が半々のまま出かけていった、というわけで
ございます。
画像その1

3泊4日の禅修業体験だったのですが、基本的に生活スタイル(日課)はきっちりと
決められております。私が行ったときは下のような感じでした。
(この日課は季節によって若干の変更があります。)
6:00        振鈴・起床
6:20        禅堂集合、八段錦
6:30〜7:30   坐禅
7:30〜8:25   朝課・日天掃除
8:25        朝食(粥座)
9:00〜12:00  作務
12:00       昼食(斉座)
13:00〜17:00 自由時間
17:25       夕食(薬石)
18:50〜20:30 禅堂集合、坐禅
20:30       読経
22:00       消灯・就寝、沈黙

画像その2
・振鈴・起床
スタッフの方が鈴を鳴らして起こしてくれます。目覚めたらすぐに自分が
使用していた布団をしまい、顔を洗って禅堂ヘ向かいます。

・禅堂集合、八段錦
禅堂に集合すると八段錦を行います。八段錦とはいわゆる「太極拳」のことです。
太極拳特有の呼吸法で、スタッフの方の仕草に合わせます。

・坐禅(朝)
約1時間の坐禅を行います。25分間の坐禅を2回、間に「二便往来」という
休憩が約5分間あります。二便往来とは一言で言うと「トイレに行っても良い」
という意味です。坐禅については、完全に足を組む必要はありません。片足だけでも
OKですし、それも無理なら正座でも良いですし、足が不自由な方は椅子に
座ったままでもOKです。精神を統一させ、呼吸を整えます。呼吸は出来れば
15秒〜30秒くらいかけて息を吐き、毎分数回の呼吸まで回数を落とし、脳内を
一種の酸素不足の状態にします。こうすることで昏睡状態に近くなり、「瞑想」
しやすいそうです。なお、目は開けたままにするのが基本だそうです。
(目を閉じると悲観的になり、気持ちが暗くなってしまうため。)

・朝課・日天掃除
禅堂から本堂に戻ってお経をあげます。その後、日天掃除といって、各自が
寺のいろいろな場所の掃除を分担して行います。この掃除の間に、一人の
スタッフの方が朝食を作るのですが、その朝食が出来あがると鐘が鳴ります。
この鐘が鳴るまで掃除を続けます。

画像その3
・朝食(粥座)
朝食は必ずお粥が出ます。私が行ったときは餅入りのお粥でした。禅寺の作法に
従って朝食を頂きます。だいたい次のような感じの作法です。
1.大・中・小のお椀をそれぞれ左から順に並べる(左利きの人は右から)
2.大のお椀にお粥を入れる
3.中のお椀におかず(漬物、ひじきの煮物等)を入れる
4.小のお椀は使用しない
5.おかわりは1回のみ
6.梅干しが出たときは必ず最後まで種をしゃぶる(食事の途中でお椀に種を出さない)
7.食後は必ず大根の漬物(たくあん)を一枚残し、大のお椀にお湯を注いで
  漬物でお椀を洗う。洗い終わったお湯は最後に飲む。
8.食事の際に使用したお椀は手拭いで拭く(水で洗わない)

・作務
「さむ」と読みます。日によって違うのですが、掃除、畑仕事、托鉢、法話などを
行います。私が行ったときは禅堂・台所の掃除などを行いました。料理が得意な人は
この時間に昼食の準備を任されることもあります。

・昼食(斉座)
昼食は基本的に自由です。私が行ったときはスタッフの方の作ったオムライス、
ピザ、お好み焼きなどをいただきました。昼食は特に作法は無く、どのように
食べてもOKです。

・自由時間
この時間は全くの自由です。本棚にある禅に関する本を読んでもよし、シャワーを
浴びてもよし、外出してもよし、です。私は寺の裏山(馬堀と上桂を結ぶ山)を
散策して、頂上の「からと峠」まで行ったり、京都市内へ出かけたりしました。
あと、この時間に一人で禅堂に行き坐禅もしました。季節によってはこの時間に
近くの保津川下りやトロッコ(亀岡〜嵐山)が楽しめます。

・夕食(薬石)
夕食はスタッフの方が準備してくださいます。薬石というのは禅寺での夕食の
呼び名のことです。昔は寺の人間は夕食を食べてはいけない、という厳しいルールが
あったのですが、それではお腹が減るので、「薬」と称して食事をしていたことから
この名前が残っているそうです。
夕食は禅寺の作法に従っていただきます。朝食とだいたいいっしょなのですが
次の4点が異なります。
1.大のお椀にはご飯を入れる
2.中のお椀には汁物(味噌汁、吸い物)を入れる
3.小のお椀にはおかず(漬物、煮物類)を入れる
4.食べ始めは必ずご飯、汁物の順で、以降はどのような順で食べても良い

画像その4
・坐禅(夜)
約1時間半の坐禅を行います。25分間の坐禅を3回、休憩がその間に約5分間ずつ
あります。

・読経
坐禅の後、「韋駄天」と言って禅堂から本堂へ急いで戻るこになり、直ちに
お経をあげます。

・消灯・就寝、沈黙
一般の修行者は禅堂の隣の部屋で寝ることになります。消灯後もトイレに行ったり
シャワーを浴びたり、禅堂で坐禅をしたりすることはOKです。


画像その5
と、まあこんな感じで1日が過ぎていきます。基本的にはこの日課の繰り返しです。
では、私がこの修行を通じて感じたことや、感想その他を箇条書きでまとめてみようと
思います。

・寺の住職曰く、「禅とは真心、求道心」だそうです。日常生活の中で忘れてしまった
真の心を思い返すのが禅であり、禅では心が重要だそうです。決して形だけのもの、
形式的なものではないということはかなり印象的でした。実際、私がお経を読む時も、
間違えても良いから大きな声を出しなさい、と言われました。

・禅とは決して神秘的なものではありません。仏になるのではなく、自分自身が
仏であることに気づくのが禅です。つまり、全ての人間は生まれながらにして
仏であり、日常生活を送る中でそれを忘れてしまった人に対してそのことを気づかせる
のが禅の目的だそうです。

・仏とは本来形の無い、「無」なものです。無になるための修行が坐禅なのです。
坐禅中は風の音、木々の音、列車の音などいろいろな音が聞こえてきますが、
そういった普段忘れがちな物事を五感で吸収できるのが「無」の状態です。

画像その6
・宝泉寺には年間350人程度の方が修業体験に訪れるそうです。夏場は会社や
大学の研究室単位といった集団で訪れる方々も多いみたいです。
冬場は訪れる人数が激減します。というのも、暖房施設の全く無い部屋で寝泊りする
ためです。これにはさすがに私も参りました。山間にある寺なので明け方は気温が
氷点下にまで下がり、私も危うく風邪をひくところでした。一応、湯たんぽは
貸してもらえますが、冬に行く場合は相当の防寒具が必要になります。

・寺にはシャワーはありますが、お風呂はありません。女性の方は臭いが気になるかも
しれません。お寺の方々は毎週1回程度、街の銭湯に出かけるそうです。

・食事のスピードはかなり速いです。普通に食べていたら周囲のスピードには
ついていけないでしょう。確かに、感謝してよく味わってゆっくりいただくべきじゃ
ないの?、という意見もあると思いますが、これは寺での生活スタイル(時間厳守)を
崩さないために、個々の都合(食べるスピード)に合わせているわけにはいかない、
という理由からです。

画像その7
・お寺の和尚さんはかなり忙しい方で、大阪の本寺に出かけていることも多く、
必ず逢えるとは限りません、もちろんその場合はスタッフの方がきちんと修行の
指導をして下さいます。

・料理は肉、魚、アルコール類はまず出ないと考えておいた方がいいでしょう。
(もちろん理由はお分かりかと思います。)卵、乳製品が限度です。ただし、昼食は
申し出れば外食も可能なので、その場合は自分で好きな物を食べることが出来ます。
(当然、実費で。)

・修行は一泊三食付きで3000円也(安い!)。カプセルホテル並の安さで
楽しめました。1日目の夜、禅堂で寝ていると和尚さんらしき方が夢に現れ、
「もう一度暇を見つけて来て下さい。」と言われ、何故か自分は夢の中で「はい!」
と返事していました(笑)。また機会があれば訪れることになるかもしれません。

画像その8
・修行そのものはそんなにきついものではありませんでした。多分、中学生以上なら
難なくこなせると思います。自由時間がけっこう長いのですが、この時間を
どう過ごすかは結構キーになると思います。私もいざ「自由」と言われて何をしようか
とまどってしまうと同時に、下界(俗世間)での日常生活でいかに時間に追われ、
いろいろな物事に忙殺されているかに改めて気づかされました。1日24時間は
全ての人間に平等に与えられるものであり、それをいかに効率良く過ごすかは
各自次第なんだということを感じました。

最後に、禅について何も知らなかった素人の私を一から指導してくださった
スタッフの伊東さん、準スタッフのイアンさん、井上さんには本当にお世話になりました。
本当にありがとうございました。良い意味でのこのカルチャーショックを忘れず、
禅の気持ちをこれからの生活に活かしていきたいと思います。
画像その9


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