おもさん終了・FM三重について

・FM三重について
2005年4月をもってわが地元のFM局「FM三重」が「radio CUBE FM三重」に変わった。
もちろん、それだけでは何のこともない、ただの名称変更である。
ただ、これを機にFM三重では番組の大改編を行った。
開局20周年という節目を迎えたというのが一応の理由だそうだが、
本当の理由はこれだけではないだろう。

FM三重発のワイド番組はほぼすべて終了することとなった。
「おもいっ気りサンデー」、「Coozying my way」、「Goody Good Day」
「Fri.High」、「MORNING BREEZE」、「Iseshimaリゾートパラダイス」、「アルバムカウントダウン」etc.
きっと地元のリスナーの方にしか分からない番組がほとんどでしょうが、
一気に地元発の情報番組をこれだけ終了(改編)させる事例は全国的にも稀であろう。

また、パーソナリティの方々も変わることとなった。
大抵の番組は、地元出身の方もしくは自局のアナウンサーをDJとしていたが、
関西出身のDJが増える結果となった。

「実は単体のラジオ局として生き残ることが難しくなっているんじゃないか?」
そんな意見も耳にしたが、私自身はそうは思わない。
もう一度、新たに何かを創り出そうとするには、今あるものを一度すべて壊すのは当然のことである。
積み木だってそうだ。崩さなければ新たには造れない。
一度ここで大幅にメスを入れる機会が「開局20周年」というタイミングだった、ということであろう。

・おもさん終了から理由を考える
ただし、この改編には納得のいっていないリスナーもいるであろう。
「大幅にメスを入れた理由とは何か」、という部分が多分にあるのではないか。
その理由を探る一つの鍵が「おもいっ気りサンデー」(以下「おもさん」とします)の終了である。

おもさんは、地元でヒットしている楽曲をチャート形式で放送する番組で、
10年以上も続いた長寿番組である。
番組の改編期であっても、この番組だけは間違いなく残る、
ある意味、定番の看板番組であった。

その番組のチャートに、3年ほど前、ある特徴的な現象があった。
年間チャートで野口五郎氏の曲がトップ3にランクインしたのである。
確かに、リクエストと地元でのCDの売り上げを基にチャートを作成しているため、
リクエスト(組織票)のみでランクインする例は決して珍しいことではない。
過去にも、おもさんならではのチャートが多々あった。(infixなど。)
だが、野口五郎氏の例は、ある現象を浮き彫りにしていたのではないか、と私は思う。

実際、リクエストをしていた方たちすべてを知っているわけではないし、
統計調査をしたわけでもないので、あくまで私見ではあるが、
「聴取層の高年齢化と減少」がここにはあるのではないか。

私も学生時代、おもさんを聞いていたが、単純に番組を楽しむのとともに
好きな楽曲を録音して個人的に楽しむ、ということをよく行っていた。
おもさんはトップ10入りした楽曲は1曲最初から最後まで流し、
またFMということで音源も良いことから、お小遣いの限られている学生時代は
番組から流れる楽曲から自分の好きな曲だけ録音して楽しんだものだった。

だが、現在はインターネットなどを活用して好きな楽曲を1曲単位で購入したりできる。
また、ネットラジオなどで、本当に好きな番組だけを選んで聞くこともできる。
今までは、ラジオの放送は聞く側からしてみればある意味「与えられた」ものであったが、
聞く側に選択権が与えられてきたのである。

主に若年層が「ラジオ離れ」を起こした事の象徴が野口五郎氏の例ではないか。
もし、それを番組編成担当者が感じていたのであるとすれば、
今回の大幅改編は再び若年層を取り込む、もしくは高年齢層向けにシフトする、
といった意図があるのではないかと私は思う。

・本当の改革を求める
ここで、あるラジオ界での一大改革を紹介したい。
1999年、ニッポン放送が長寿番組「オールナイトニッポン」を終了させることを発表した。
ただし、形式的な終了であり、既存の「オールナイトニッポン」は夜10時台に移行、
深夜の時間帯はインターネット・メディア通信をフルに活用した番組作りに転換した。
その際、メールを活用した投票をその場で瞬時に集計したり、
ラジオで屋外生中継ロケを敢行するなど、画期的な番組が次々に生まれたが、
結局のところ、定着することはなかった。
そして、現在は元の深夜帯に「オールナイトニッポン」が復活しているのである。

ニッポン放送の改革が失敗に終わった原因はいろいろ考えられるだろう。
個人的には、一番の理由はラジオに「大いなるマンネリ」を聞き手は求めている、
ということではないかと思う。
ニッポン放送の事例で言えば、深夜1時にチャンネルを合わせれば
「ビター・スイート・サンバ」が流れてくる、といったことである。
もちろん、番組をやる側としても、自由度の高いラジオは「大いなる遊び場」であろう。

ニッポン放送の場合は、改革が上手くいかないと分かったときに
元の状態に再びシフトした。
FM三重の場合は、正直言って今のところ今後どうなるかは分からない。
それは製作者サイドもそうであろう。
問題は、上手くいかないと分かったときにニッポン放送と同じ対応ができるか、である。
結局、元の状態が一番と認識できれば、それはそれで改革成功とも言えるだろう。
当面は、より良い形のラジオを求めるFM三重を応援したい。



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