教育実習事前指導(ABSTRACT)

・第1部:教育実習一般
1.教育実習の位置付けについて
教育実習は必修・・・主として出身校に依頼
出身校の指導方針に従い、教育実習を行う
最終的な評価は大学が行う→評価の基となるデータは実習ノートを参考にする
※教職に就く意思を持っているか?
→教育実習はサービスであって義務ではない

2.教育実習の目的・意義
現場に行くことで得られるもの・・・経験、失敗など
(@)教育・学校の認識→教育、子供とのコミュニケーションの難しさ
(A)自己発見→自分のボキャブラリー、性格
知っているから教えられるとは限らない
※自己の成長のための貴重な体験

3.教育実習で求められること
(@)生徒を理解しようとする態度
限られた役割・責任→自分一人で判断しない
(A)教師を目指すものとして、自分に何が欠けているか
子供たちに理解してもらうには何が必要なのか
(B)社会的常識・・・服装、髪型、言葉遣いなど
→教師の世界の常識の範囲で行動する


・第2部:民族教育
1.日本の国際化
(@)モノ・カネの国際化・・・インターネット、eメールの普及など
(A)人の国際化・・・国外へ出る場合、(外国人が)国内に出る場合
(B)人と人との接触・・・異文化接触

2.民族について (@)人種・・・どこにアイデンティティを持つかによって変わってくる
(A)民族・・・文化を持っている、民族の中には複数の人種が含まれる
(B)民族国家の限界

3.マイノリティ(少数派、少数民族)と教育

4.多文化教育の出現
(@)公民権運動・・・アメリカのキング牧師を中心とした運動
後にイギリス、ドイツなどの国に波及
(A)バンクス・・・アメリカで多文化教育を行う
@単一民族コース(ある一つの民族文化を学ぶ)
A多民族学習コース(他の民族文化を学ぶ)
B多民族教育(カリキュラムの変更→多民族者も含めた教育)
C多文化教育(マイノリティに女性、障害者を含める)
D多文化教育の制度化(法制化)

5.日本における文化的多元主義
(@)身のまわりからの国際化→在日韓国・朝鮮人に本名を名乗らせないプレッシャー
(A)在日韓国・朝鮮人の教育
(B)中国からの帰国児童・生徒・・・中国文化を持っている
(C)在日外国人の教育・・・中南米諸国、イスラムの国など


・第3部:同和・人権問題
1.政府の部落問題に対する取り組み
(@)日本国憲法 第11条:国民の基本的人権の享有、基本的人権の永久不可侵権
         第14条第1項:法の下の平等
(A)同和対策審議会:同和問題は日本民族・日本国民のなかの身分的差別を受ける
少数集団の問題である。同和問題もまたすべての社会事象がそうであるように
人間社会の歴史的発展の一定の段階において発生し、成長し、消滅する
歴史的現象にほかならない(抜粋)
(B)教育問題に関する対策:同和問題の解決は教育から
→教育の民主化がなされたにも関わらず、同和地区の子供は教育における差別を受けていた。

2.同和教育の取り組み
「寝た子を起こすな」の論理→下手に教えない方が良いという考えが強かった
※部落問題というのは放置しておいて無くなる問題ではなく、また、部落の人にとっての
問題ではなくて、部落以外の人が取り組まなくてはいけない問題である。

3.部落民の定義
部落民と差別されている人が部落民である
→部落の定義ははっきりとしていない
「えた・非人」の子孫という定義に必ずしもあてはまらない
部落地区に住んでる人たちが全て部落民とは限らない

4.部落民に対する差別
(@)インターネットでの「えた・部落リスト」(部落の所在地を書き込む掲示板)
(A)部落出身者の住所リストを企業へ売却
(B)部落民は低学力者が多い→小さい頃から正当な教育を受けることが出来なかった
※差別に対する認識は広まっているが、差別が無くなったわけではない

5.今後の部落問題・同和問題・人権問題に対して
(@)日本における人権の意識は人権問題に取り組むことで向上した
→就職の際に戸籍抄本を出さない、親の職業を聞かない等
(A)誰かの人権が侵害されているということは、自分の人権も侵害されている
可能性がある、という認識を持つ→差別があるという現実を直視する


・第4部:障害者問題について
1.障害者の定義
障害者とは知的障害者、肢体不自由者、身体虚弱者、弱視者、難聴者など、広い範囲の人を指す
※身障者(身体障害者)は肢体不自由者のこと

2.障害者と差別
表現の自由が大前提(権利保証)
→必要以上に障害者に対する発言に気を使わなくてよい

3.障害者と権利
(@)精神薄弱者の権利宣言(1971年12月20日)
精神薄弱者は実際上可能な限りにおいて、他の人間と同等の権利を有する
(A)障害者の権利宣言(1975年12月9日)
障害者は、その障害の原因、特質、及び程度にかかわらず、同年齢の市民と
同等の基本的権利を有する

4.障害(disability)の細分化
(@)impairment・・・主に先天的欠陥(生まれつき持っている障害)
(A)disability・・・障害(目が見えない、歩くことが出来ないなど)
(B)handicap・・・社会参加における不利益(足が不自由で映画館に入れないなど)

5.障害児学校
障害児学校は盲学校、聾学校、養護学校のこと
※現在では不登校の子供たちを集めた養護学校などが存在しており
広い意味で定義されるようになってきている
→障害者を一般の普通学校へ入学させること(dumping)は十分な配慮と働きかけが必要

6.障害児教育
障害を有する児童は特別な必要(special need)を要する
→障害児教育の形態は多様
※我々自身も障害を持つ可能性から逃れることはできない


事前指導感想
身体に不自由無く、いわゆる普通の環境の中で育ってきた私にとって、民族教育、
同和・人権問題、障害者問題などに関する知識はほとんど無いに等しく、また、
知らなくても何とかなるだろうと思っていた
しかし、教職を志す者として、学校でどのような問題と向かい合わなければなら
ないか、また、そういった必要が生じるかといったことを認識することが出来た
という点において、この事前指導は私自身にとって非常に有用であった
教育の現場では数多くの生徒と接さねばならず、しかも全員それぞれ異なった性
格、考え方を持っている。また、特別な学校でなくても障害を持った児童・生徒
がいることもある。教育には完璧なマニュアルというものが存在しないと私は考
えているが、それぞれの児童・生徒に対して同様な接し方では決して成功しない
というのは事実であろう。実際に部落の人たちや障害者の人たちの教育に携わっ
た経験が無いのであまり明確な答えを出すことが出来ないが、いろいろと臨機応
変に教育のスタイルを変えていくことが教師には求められるのではないか、とい
う気がする。
また、教育実習一般においては、教育実習の目的・意義を改めて認識させられた。
母校実習を経験する者としては、知っている先生方も多く、友人も教育実習に参
加するということで、知らないうちに楽しい思い出作りになってしまう可能性も
ある。ただ、生徒からは実習期間中は先生として見られるので、決して気を抜く
ことのないように、実習生としての立場で接していきたいと思う。



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