名古屋大学多元数理科学研究科受験記
〜精神的リラックスと自己の甘さ〜



8月2日
試験開始時刻の3時間前に起床。今までの受験でも使用してきたはちまき(
中学・高校の体育祭で使用したもの)を腕の所に巻き、その上からそれを隠
すようにシャツを着る。さらにお守り代わりにTHE ALFEEののトレー
ディングカード(「Justice For True Love」、「orb」に入っていたもの)
をポケットに入れて家を出る。普段なら絶対しないことだが、この時ばかり
は何かにすがりたい気持ちでいっぱいだった。
そして、試験開始30分前に到着。が、ここで教室の入り口のところに貼り
出されている掲示を見て少し驚きがあった。定員51名に対し受験者が50
人しかいないのである。大学受験の際には地方の公立大学では志願者が定員
を下回ることもあるらしいが、大学院受験でこんな状況に遭遇するとは思っ
てみなかった。驚きのまま席に着くことになる。
まずは基礎科目の試験開始。やはり昨年度からどこの大学でも専門の講義の
負担を軽くするため、講義数を減らしていたことも影響してか問題は易化。
が、やはり定員を下回っている試験ということもあってイマイチ気が乗らな
い。よほど悪い成績でない限り落とされないだろうという気持ちから、逃げ
の答案に入ってしまう。C、A、B、@の順で解いたのだが、Aではもっと
楽に解答が出せたのにも関わらずわざわざ難しく計算して解き、@では基礎
的な基底の取り替えによる線形変換の行列表示の変化が分からず時間切れ。
いくら初めての大学院入試ということで多少の緊張はあったにしても、やは
り定員割れというリラックスが油断に変わっていた部分は否めない。
続いて専門科目。C、D、G、Iを選択したのだが、やはりここでも油断が
大きな落とし穴を生んでしまう。専門の試験で完解できたのはIのみ。しか
もGでは球面とトーラス(ドーナツ型)を同じと見なすとんでもない間違い
をしてしまう。幾何学を専攻していながらこんな初歩でつまづいてしまうと
は情けない限りである。他にも、選択であるにもかかわらず難しい問題を選
択したりするなど、問題を解く以前のミスすら目立った内容であった。確か
に問題の易化により、合格ラインをキープすることはそれほど難しいことで
はなかったが、出来自体は全く満足いくものではなかった。
そして、一次試験(筆記試験)の合格が即日発表ということなので控え室で
待つ。当初は午後6時頃ということだったのだが、延々と待たされて結局発
表になったのは午後8時過ぎ。合格していたから良かったものの、長い間緊
張しながら待たされたため、帰宅する頃には完全に精根尽き果てている状態
であった。

8月3日
この日は面接のみ。しかも一人あたり10分ということがあらかじめ伝えら
れていたうえ、学外からの受験ということで負担を軽くするために早めに順
番を設定してくれるなど、正直自分にとっては好都合だった。
しかし、面接は初体験ということもあり、しかもどんなことを聞かれるのか
分からないという状態であったため、自分の順番が近づくにつれどんどん緊
張が増してくる。そして、自分の順番が回ってきて、面接教室の入り口のド
アを開けた途端に緊張はピークに達した。学部内の教官ほぼ全員(40名程
度)が座っているのである。とりあえず指定された席に座り、40名ほどの
教官(面接官)と向かい合う。そして質問が始まるのだが、正直極度の緊張
で、どのようなことを聞かれたのか、どのような答えを返したのかはあまり
覚えてはいない。ただ、ゼミの指導教官の名前を聞かれたときに、下の名前
を間違えるというとんでもないミスを犯したことだけははっきりと覚えてい
る。が、すでに定員を下回っているということもあり、特に落とそうとする
ような面接ではなく、将来はどのような勉強をしていきたいのかということ
を全般的に聞かれていたように思う。

結果
定員:51人
志願者数:50人
一次試験合格者:43人
二次試験合格者:不明
判定:一次合格、二次合格


問題講評
基礎
@:易問。(2)の基底の取り替えと線形変換の行列表示については、線形代数
の教科書ならたいていの本には載っているはず。
A:ベクトル空間とその部分空間に関する問題。部分空間の交わりは図を書
いて考えると楽。
B:数列の極限値を求める問題。有界単調列は収束するという定理を用いれ
ば簡単である。
C:留数計算による定積分の問題。これも基本的な問題である。
専門
C:ガロア理論の問題。これが円分体であることに気づけば(1)、(2)は定理
(公式)に当てはめるだけである。(3)は少し複雑な計算が必要。
D:リー群SO(3)に関する問題。(1)はリー環を考えれば分かる。(2)はリー
環の基底をうまく取って根性計算するより他に方法はない。
G:閉曲面の分類定理に関する問題。問題内に出てくる空間Xは少し抽象的
で分かりにくいが、いわゆるねじれトーラスの境界を一点に押しつぶした空
間である。(記号で書くとS1×R/(z,r)〜(-z,-r)、(z,+∞)〜(z,-∞)が
ねじれトーラスである。これをさらに(z,+∞)をzの値に関わらず一点とみな
せばよい。)これ以外の閉曲面は難しくない。
I:線形連立常微分方程式の問題。これも常微分方程式の参考書には類題が
幾つか出ているはず。片方の変数を消去しても、行列のexpを求めてもどちら
でも結論にたどり着く。
面接
試験の出来が良ければ特に深く突っ込まれることはなく、将来の方向性など
について10分程度聞かれるくらいである。しかし、試験の出来があまり良
くないと、筆記試験で解けなかった問題について聞かれることになる。この
ときは一人あたり30分程度の面接となる。


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