羅臼岳・斜里岳・雄阿寒岳・雌阿寒岳
ぶらりと道東の山旅
2000年 6月13日〜16日
30年勤続の慰労休暇を使って道東の山旅に出掛けました。初めての道東の山ですが、今はガイドブックが何冊も出回り、懇切丁寧な解説が写真入りで載っています。それらをかき集めて何回も読めば気分は半分登ったようなもの。後はガイドブックが正しい事を書いているか確認するだけ。下山後は美味いものでも食べて冷えたビールをグビッとやる。笑いが止まりませんなー。 別に山を甘く見ている訳ではないのですが、根が楽天家なものですから。しかし羅臼岳、斜里岳にそんな甘い気持ちを吹き飛ばされてしまいました。夏山ガイドブックは夏道が出ているから夏山ガイドブックなんですね。6月の道東の山に夏山ガイドブックを持って行ったのが苦難の始まりでした。ではその顛末記を!
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「しれとこ自然村」は最高!! 羅臼岳に登るため「木下小屋」に宿泊申し込み、ところが営業は6月20日から。仕方なく一番近いキャンプ場「しれとこ自然村」に泊まる。これが意外と大正解! ロケーションは抜群、トイレは水洗、炊事場もきれい、特筆物はオホーツク海に沈む夕日を眺めながら入る露天風呂。使用量500円、風呂代500円とリーズナブルで言うこと無しでした。
左の写真はキャンプ場から見た夕日。まさに「オホーツク・サンセット」。
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ヒグマと鉢合わせ!! 羅臼岳登山口のある岩尾別温泉に行く前に、知床峠からの羅臼岳を撮ろうと峠へ向かった。その帰り、カーブを出た途端に路上を歩いているヒグマと鉢合わせ。こっちも驚いたが向こうの方が驚いたみたいで、慌ててガードレールを跳び越えて林の中に消えて行った。車との距離は20〜30m位、時間は朝の5時を過ぎた頃でした。
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携帯電話は便利です。 今回登った羅臼岳、斜里岳、雄阿寒岳、雌阿寒岳の各山頂から、札幌の家に携帯電話で連絡が取れた。山頂からの風景をリアルタイムで妻に報告し、雰囲気を感じてもらうとともに自分自身の安全も知らせることができた。便利な時代になったものだと実感しました。
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羅臼岳登山・ああ雪渓で登山道が無い! 2000年6月13日 快晴
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登り(5時間55分)・木下小屋(AM 5:45)〜銀冷水(AM 8:50) 〜羅臼平(AM 10:20)〜羅臼岳頂上(AM 11:40)
下り(3時間) ・羅臼岳頂上(PM 12:15)〜羅臼平(PM 12:50) 〜銀冷水(PM 1:30)〜 木下小屋(PM 3:15)
左は岩尾別温泉に行く途中から見た羅臼岳。
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弥三吉水から上の登山道は大部分が残雪の中。極楽平からの急登は沢すじに残る雪渓を何度もトラバース。雪もまだ硬くキック・ステップがあまり効かないため、上部では結構なスリルを味わった。しかしこれはまだ序の口だったのです。
左は沢すじに残る雪渓。
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銀冷水は雪の中。ここから小沢が何本もあり登山道がどこに抜けているのかまったく分からない。赤テープなどの目印が無いため自分で探すことにする。はっきりした沢すじに足跡が残っていたのでこれを登ったが、しばらく行くとブッシュにいく手を阻まれた。結局左上に登山道を見つけたのだが大分時間と労力を使ってしまった。
左は銀冷水。すべて雪渓の中に消えている。
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銀冷水を過ぎて羅臼平に至る道はすべて大雪渓の中。最後の急斜面は転倒したら滑落で大怪我間違いなし。用心深く左側のダケカンバやハイマツにつかまりながら登る。ダケカンバの根元にはアイヌネギの大群落があり、これが山菜採りだったら言うこと無しなのにと余計なことを考えながら登った。
左の大雪渓の中に登山道があると思わず、右、左と登山道を探しながら登った。右奥は羅臼岳山頂。
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やっと着いた羅臼平ではいポーズ。やっと雪の苦しみから開放されました。ここまで4時間35分もかかる悪戦苦闘の山登り。反省点としては夏山ガイドブックではなく、2万5000分の1の地図を持ってくるべきだったと思いました。何しろ初めて登る山ですから。
後ろの羅臼岳山頂へはぐいぐいと登った。と言いたいところですが疲れて休み休み登りました。途中にある水場は疲れを癒してくれました。北方領土の国後島にある爺爺岳もはっきり見えました。
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山頂から硫黄山方面を見る 山頂から斜里岳方面を遠望する
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山頂は風が強く、岩陰に隠れていなければならない程でしたが、その分空気が澄んでいて展望は最高でした。羅臼側から登ってきた青年はアイゼンをつけて雪渓を直登してきたとのことでした。また下山時に羅臼平で会った青年2人組は、私と同様に岩尾別温泉から登ってきたのですが、疲労困ぱいで山頂まで行くかどうか迷っていました。 下山後、ホテル「地の涯」の無料露天風呂には入り疲れた身体を癒し、ウトロの食堂で「ウニ丼」を頬張りました。頑張った自分へのご褒美といったところでしょうか。
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斜里岳登山・スノーブリッジの連続で恐怖感満点! 2000年6月14日 曇りのち晴
前日、ウトロから清里の清岳荘へ向かう途中、斜里岳登山口の標識を見つけ案内通りに林道を走る。行き着いた先は何と「玉石ノ沢コース」登山口。間違いに気付き、もう一度清里の街まで戻ってから清岳荘へ行く。清岳荘へ着いたのは予定を大きく過ぎた7時10分。管理人さんの話では年に何人かは間違う人が居るという。町に標識を外してほしいと言っているというが、私としてはせめて斜里岳登山口「玉石ノ沢コース」と書いてほしいと思います。 清岳荘では宿泊者は自分だけ、翌日の斜里岳登山も自分だけ、もう丸々貸し切り状態の斜里岳でした。
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登り・旧道(3時間 32分)・清岳荘(AM 5:30)〜下二股(AM 6:15) 〜上二股(AM 7:55)〜斜里岳頂上(AM 9:02)
下り・新道(2時間 55分)・斜里岳頂上(AM 10:00)〜上二股(AM 10:35) 〜熊見峠(AM 11:25)〜下二股(PM 12:20)〜清岳荘(PM 12:55)
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清岳荘前の注意書きに旧道コースのスノーブリッジの「踏み抜き」「落ち込み」に注意するように書いてあった。ま、行って見てからの判断でコースを決めようと出発する。清岳荘を出てすぐ沢に降り、沢沿いのペンキ跡を見ながら渡渉を繰り返す。川は雪解け水のせいか水量が多い。ここの水は鉄分が多いのか川底や岩が錆色になってにぶく光っている。10数回の渡渉を繰り返した頃、新道と旧道を分ける「下二股」に着く。行く手にはまだ気になるようなスノーブリッジが見えないことから、旧道コースを選択する。
左の写真は清岳荘を出てすぐの沢。水量は多いがスノーブリッジも無く快適だったのだが。
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旧道コースに入って間もなく大きなスノーブリッジが沢全体を覆っている場所に出る。勿論、ペンキ跡など見えないのでスノーブリッジの上を歩くことにする。足の下からはゴーゴーと水の流れる音が聞こえてくる。何とも不気味な雰囲気を感じる。所々に穴が開いて激しく流れる沢水の姿が見える。こんな所に「踏み抜き」や「落ち込み」で流れ込んでしまったらほとんど絶望なんだろうと気を引き締める。
左の写真は「下二股」を過ぎて少し歩いた辺り。山頂部は雲に霞んでいる。
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斜里岳登山の核心部となった沢登りは、まさに緊張と冷や汗の連続。ガイドブックでは名のある滝が連続しているというが、分かったのは標識のあった「七重の滝」だけ。場所によってはスノーブリッジからの飛び降りや這い登りも余儀なくされ、所々に見えるペンキマーカーの通りにはとても歩けない状態が続いた。一人ぼっちでこんな沢を登っていると水音だけが耳に響き、段々と不安感が強くなってくる。この沢を楽しむなら真夏の暑い時期に限るようだ。水飛沫を浴びてルンルン気分で登れるのだろう。
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管理人さんから前夜、「上二股」から上の雪渓を登り過ぎないようにと言われていた。何でも登り過ぎて「馬の背」に出れない人がいたらしい。この情報を得ていたことは実際現場に行って見て大いに役に立った。大きな沢が3本に分かれ、すべて雪渓に覆われていることから「馬の背」を目標にして登るしかないのだが、上部は雲に隠れてその見当がつかない。管理人さんの「登り過ぎないように」という言葉をヒントに、左の沢に当たりをつけて雪渓を登るとハイマツの中に登山道があった。
左の写真は「上二股」から上部を見たもの。「馬の背」へは左の雪渓を登る。
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「上二股」から「馬の背」まではほとんどが雪渓歩き。「胸突き八丁」と言われる急斜面は息も絶え絶えにして登った。昨日の羅臼岳に続いて今日も雪渓の急斜面を登るとは思っていなかった。
左の写真は「馬の背」で。反対側は鋭い角度で谷に落ちている。 右の写真は斜里岳山頂。山名標識も無い奥ゆかしさ。そのシンプルさに好感を覚える。
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下山時に新道コースの1250m峰から斜里岳山頂部を見る。右のコルが「馬の背」、その左に「祠ピーク」、その左奥が斜里岳山頂。登りに使った旧道コースの「一の沢」が俯瞰できる。斜里岳はいくつものピークと幾本もの谷で構成されていることが分かる。清里町側から見た沢筋の美しさ、斜里町側から見た山頂部の凛々しさ、そしてたおやかに広がる広大な裾野。標高こそ1600mにも満たないが立派な名山である。この山を「日本百名山」に選んだ深田久弥の眼力に脱帽する。
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雄阿寒岳/雌阿寒岳登山・ここは夏山ガイドで十分でした! 2000年6月15・16日 晴
雄阿寒岳 登り(4時間) ・滝口(AM 6:45)〜5合目(AM 9:30)〜頂上(AM 10:45) 下り(2時間25分) ・頂上(AM 11:15)〜5合目(PM 12:00)〜滝口(PM 1:40)
太郎湖、次郎湖を見ながら針葉樹林帯を抜ける。5合目までがこの山の一番苦しいところ。7合目からは頂上台地で小さなアップダウンを繰り返して頂上に至る。8合目にある気象観測所跡は昭和19年から21年まで観測員が常駐したという。ヘリコプターも無い時代にどうやって資材を上げたのか、厳しい冬はどう乗り切ったのか興味は尽きない。頂上から見えるパンケトーが群青の輝きを見せて綺麗だった。
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8合目から阿寒湖を見る。 雄阿寒岳山頂 群青に輝くパンケトー。
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雌阿寒岳 登り(1時間55分) ・雌阿寒温泉登山口(AM 5:55)〜5合目(AM 6:55)〜頂上(AM 7:50) 下り(1時間20分) ・頂上(AM 8:15)〜雌阿寒温泉登山口(AM 9:35)
平成10年に出された登山禁止令が6月20日に解除されるという(下山時に会った男性の話)。3合目辺りからの登山道はハイマツがきれいに枝打ちされて歩き易くなっている。中腹辺りからはコバルト色のオンネトーが見え、周りの新緑の中で宝石のような輝きを見せていた。山頂にある噴火口は深くて大きく、所々から噴煙が音を立てて上がっていて、覗くと恐怖を感じる程だった。山頂では硫黄の臭いが強く、火山の活発な活動が体現できた。ぐるっと見渡した感じは、荒涼たる風景の中に自然の力強さと美しさが感じられた。
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コバルト色に輝くオンネトー。 山頂から阿寒富士を見る。 山頂で阿寒湖、雄阿寒岳をバックに。
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