やはり手強い恵庭岳 (1319.7m)
小雪まじりの寒風をついて岩塔を攀じ登る
2000年 10月12日
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登り【2時間50分】 登山口 AM 10:30 → 見晴台 PM 12:30 → 山頂 PM 1:20 下り【2時間15分】 山頂 PM1:45 → 見晴台PM 2:30 → 登山口 PM 4:00
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あれっ!結構道が変わってる
秋になると空気が澄んで近郊の山々が近くに見えるが、今回は悪天の後だけに特に空気が澄んでいつもの半分の距離に感じるほどだ。「道道・札幌支笏湖線」からは色付き始めた木立の合間から「空沼岳」が横に長い山頂を広げているのが手に取るように見える。南区・常磐を過ぎて30分も走れば車のフロントガラスの前方に特徴のある岩塔を山頂に持つ「恵庭岳」が飛び込んでくる。オコタンペ湖への道と別れて支笏湖方向に下って行けば右手に恵庭岳登山口、以前よりかなり駐車スペースが広くなった気がする。 先ずは登山届けを記入するために届出小屋に向かう。年代物の小屋ゆえに風格があるとでも言うんでしょう。でも国立公園内にある人気の山「恵庭岳」の届出小屋にしてはチョット寂しい気がするのは私だけだろうか。中にある届出ノートは記入欄がかなり前から満杯で余白部分にかなりの名前が乱雑に書かれている。こういった届出ノートの管理は何処が責任を持っているのだろう。予算の関係でしっかりした管理ができないのだろうか。安全登山を警鐘する割には管理が今ひとつだと思った。
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道しるべがあれば何ぼかいいのに
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恐怖のトラバースにオバサンびびる
見晴台から見える山頂部の岩塔にはいつ見ても圧倒されるが、初めて見たオバサンは「どーやってあんな所に登れるの?」と聞く。まあ初めての人には当然の疑問でしょう。「ところが登れるんだなーこれが。行ってからのお楽しみだよ」と曖昧に答えておいた。この頃からちらちらと小雪が舞い始め、休憩していても落ち着かないので早々に腰を上げ山頂を目指す。爆裂火口を回り込むように尾根道をたどるが、オコタンペ湖側から吹き上げる風が意外と厳しく小雪も混じっていることから体温がどんどん奪われていくのが分かる。右手下に見えるはずのオコタンペ湖も小雪に霞んで今は見えない。ロープの張られたトラバース地点まで来るとオバサンの顔が緊張で引きつっているのが分かる。左には覆い被さるような岩塔の岩壁、右手は落ちたら一巻の終わりと言うぐらいの崖がある。寒風で身体も冷え切っている状態では緊張するなと言う方が無理だろう。ここは安心させながら渡らせるしかない。「ロープをしっかり握り、あまり山側に身体を寄せないで」と先に渡って待ち受ける。ああ何という夫婦愛なんだ。
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小雪混じりの寒風の中、岩塔をよじ登る
岩塔の基部から始まる岩登りはまともに寒風を受ける羽目になり、身体を自力で持ち上げられないオバサンはついに「わたし、ここで待ってる」と言い出した。ここまで来てそれは無いだろうとオバサンを励まし、尻を押し上げることにしたのだが、「ここで落ちたら二人とも怪我をする」というのでおじさんが先に登って引き上げることにした。ガイドブックの写真は簡単そうな感じだったのにとオバサンは泣き言を言ったが、高度感のある写真などそう簡単に撮れるものじゃないんですよ。岩塔を巻くようにして爆裂火口側から山頂に上がるが、ここも所々崩壊個所があって結構な緊張を強いられた。
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ついに山頂、思わぬ展望に感激!
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寒さに震えノンストップで下山
食事の間に身体もすっかり冷え込んでしまい手は完全にかじかんでしまった。とても名残惜しいなどとは言っていられない状態なので下山することにした。まだ弁当が胃に中で落ち着いていないせいかザックを背負っても身体がしゃきっとしない。今度は私が先に下りてオバサンの足元を誘導しながら岩塔を下る。トラバース地点を過ぎてやっとオバサンの顔にも笑みが見え出した。見晴台から爆裂火口側に見える紅葉は、小雪でしっとり濡れたせいか登る時より色鮮やかになっていた。とくにナナカマドの実が真っ赤に映えて綺麗だった。急斜面を慎重に下りノンストップで針葉樹林帯まで来る頃には日も翳り、林の中は薄暗くなっていた。オバサンに「また来年にでも暖かい時期に来るかい」と聞くと、「この山はもう結構です」と断られてしまった。よほど岩塔登りが堪えたようだ。確かに小雪混じりの寒風の中、冷え切った身体であの岩塔を登らせたのは酷だったかもしれないが、「これもまた山登りの勉強になるんですよ」と励ましておいた。 帰りの車で聞いた交通情報では、中山峠付近では路面凍結個所があるのでドライバーは注意して下さいと呼びかけていた。なるほど今日はそんな一日だったんだと二人で納得しながら帰路についた。
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