武尊山(ほたかやま)

群馬県最高峰・日本百名山 2158

1997824日 快晴

 

群馬県・沼田市の北部に屏風のようにそびえる独立峰「武尊山」。「ほたかやま」と読める人はかなりの山好きだろう。私は当然のごとく「ぶそんさん」と読んでいた。山名は「日本武尊命」(やまとたけるのみこと)からきているらしい。そのことだけでも歴史を感じさせる山だ。夏の暑い盛りに「上の原・山の家」コースから登った。

 

いつものようにバイクに乗って藤岡ICから関越自動車道に入り、水上ICで下りる。水上温泉を過ぎて湯檜曽温泉から右手に入り藤原湖方向へ向かう。今日は藤原湖一周マラソンがあるようで、朝早くから湖畔は参加者で賑わっていた。藤原湖の左手を周って宝川温泉入口まで行き、橋を渡って右に少し下ると「上の原」入口に着く。ここまで来る途中にコンビニが無かったため、自動販売機から缶ジュース3本を買い、登山口へ向かう道路脇にある小さな店でパン2個を買う。これで今日の食料調達は終了する。宝樹台スキー場を過ぎると上の原山の家があり、アスファルト道路をほどなく走ると「武尊山・登山口」の道標に行き当たる。登山口から後ろを振り返ると谷川岳の双耳峰が目に入る。

 

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午前7時40分に登山届けをポストに投函し、朝露に濡れた林道を歩き始める。車の通ることが出来る道幅の林道には登山靴が隠れるくらいまで雑草が伸び、ズボンの裾をびっしょりと濡らす。30分以上林道を歩きながら、無理をしてもバイクで登ってくれば良かったと後悔する。やがて林道も狭まり、細い沢と交差するような登山道に変わる。湿気の多いひんやりとした登山道は段々と傾斜がきつくなってくる。樹林の中は静かで、時おり梢の合間から陽が射して来る。振り返ると林間から谷川岳・一の倉沢が朝日を浴びて輝いているのが見える。途中、昨夜「武尊山」山頂でテント泊したという2人の青年が下りてきた

 

 

午前9時20分「須原尾根」に出る。地図上では「名倉ノオキ」と記されている。涼風の流れる気持ち良い尾根を歩くと急に目の前に武尊山(沖武尊)が姿を現した。岩塔の奥にその山頂が見える。まだまだ距離はありそうだ。尾瀬方面に目を向けると笠が岳の後ろに至仏山、その右奥に燧ケ岳が特徴のある山頂を見せている。尾根を少し下ると武尊神社からの登山道と合流する分岐点に出る。

 

午前9時50分、少し休んでから左手の沢に下りると「手小屋沢避難小屋」がある。かまぼこ型の金属シェルターで窓が無い。ドアを開けると板が敷いてあるだけで、3人も横になれば一杯の狭さだ。予定の段階ではここに一泊することも考えていただけに、変更して日帰り行程にしたのは正解だったようだ。

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小屋を過ぎてからは岩と木の根が張り出した登山道に変わり、最後は急登になる。ロープと鎖が設置された岩場2ヶ所を攀じ登ると一気に展望が開け、山頂はすぐ手の届くところにあるのが分かる。ハイマツと花の落ちたシャクナゲの生い茂る登山道を、小屋から前後して登ってきた小父さんと一緒に歩く。快晴の空は澄み切っていて、360度の展望が期待できる。何だか急いで登るのが勿体無いくらいだ。

午前1130分山頂に着く。山頂は小さな平地になっていて、中央に一等三角点、その横に「御岳山大神」の石碑と周囲の山々の俯瞰図が置かれている。さすがに群馬一の展望が期待できる山と言われるだけあって、ここからの眺望は期待以上のものだった。日光方面には日光白根山や皇海山、尾瀬方面には至仏山や燧ケ岳、また上越国境方面には谷川岳や朝日岳、巻機山や越後駒ケ岳、近くには赤城山や子持山、その奥に榛名山と名だたる山々がその個性を競い合って並んでいる。日曜日だけあって、山頂には30人以上の登山者がお昼を広げてくつろいでいる。その中で無線交信を楽しむ男性が沼田方面に向かって折り畳み椅子に腰を下ろし、大きな声で延々と話し続けているのには閉口してしまった。ちょっと場所を考えてくれたらみんなが楽しいのに。

 

 

頂上からは川場方面に向かって「中の岳」「家の串山」「前武尊」と小ピークが続いている。沼田の町から見える屏風のような山容はこの小ピークが作っているのだと納得できる。眺望を楽しんだ後、玉原湖方向に向かって腰を下ろし、缶ジュースを飲みながらパンを頬張る。やっぱり山では握り飯でなくては美味しくない。一緒に登ってきた小父さんからブドウを頂き、並んで食べながら山座指定を楽しむ。時間も過ぎて段々と人の数が少なくなってきたので登頂写真を撮る。下山していく多くの人は武尊牧場から登ってきたのか、中の岳方向に下りて行く。日光白根山を眺めながら、次はこの山と心に決める。

遠景・左に日光白根山、右に皇海山が見える。

 

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眺望をもう一度ゆっくり楽しんでから、午後1時、一緒に登ってきた小父さんと下山する。小柄な叔父さんは渋川から車で来たと言うが、高齢な割りにはすこぶる健脚で、下りでは置いて行かれる程の早さだった。午後2時に分岐点を過ぎ、世間ばなしをしながら林道を歩いて午後3時35分登山口に着く。小父さんにお礼を言ってから別れ、来た時と反対に藤原湖を周って帰路につく。宝川温泉で日本一の露天風呂に入ろうと思っていたが、入浴料金が1800円とべらぼうに高いので、谷川岳登山の際、帰りに寄った谷川温泉の「湯テルメ」で汗を流す。最高の展望に恵まれ、群馬来県以来最高の山行になった。

 

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