カニカン岳(981m

 

2014625日 晴れ

 

登り・2時間40分(休憩時間含む)  下り・2時間(休憩時間含む)

 

 

 4年前の春、長万部岳の山頂から眺めた残雪のカニカン岳。特徴のある山名が気になり、いつかは登りたいと考えていた。

 最初に登ろうと考えた2年前、交通状況を知りたいと今金町の役場に電話を掛けたところ、登山口へ通じる林道が土砂崩れで通行止めになっていることを知らされた。

 それ以後、道路の回復状況を知りたくて調べていたら、今年の春から通行が可能という情報を得た。さっそく役場に電話して状況を聞いたところ、通行は可能だが、道路脇のイタドリなどが伸び放題になっているし、今年5月の末に笹刈りをした登山道も、山頂直下は残雪のため笹刈りが出来ず、かなり笹が密生していると思うと教えてくれた。

 

 気になる「カニカン」とは、ガイドブックによるとアイヌ語で金を意味する「カンカン」という言葉が転化したらしい。勝手に想像していた美味そうなタラバの「カニ缶」とは何の関係もないようだ。

 

 前日に写万部山に登り、夜はネットで調べたドライブイン(利用者の好感度が高かった!)で車中泊の予定だったのだが、行って見るとドライブインは閉鎖され、駐車場もトイレも使えない状態になっていた。

 困った挙句思いついたのが、今金町の美利河地区。温泉やレジャー施設も多いことから、トイレのある駐車場ぐらいあるだろうと車を走らせた。

 美利河ダムに隣接する公園にトイレ設備のある駐車場があったので、ここで車中泊することに決めた。寝るまでの時間、持って来たキャンプ用折りたたみ椅子に座ってビールを飲み、新聞を読んで時間をつぶした。

 

 誰も来ないダム下の駐車場、暗くなったらちょっと怖いなと思っていたが、要所にある照明灯が点灯してくれたので安心して眠りにつくことが出来た。

 

 

 

カニカン岳gps

 

GPSトラックログ

 

 

 

 

 

001

 

 朝の美利河ダム。この人造湖にはピリカ湖という美しい名前が付いている。このピリカ湖に水を流し込む後志利別川に沿って登山口までの林道が延びている。距離は約10キロ程度らしい。

 このダム湖の右周り、左周り、どちらからでも行くことが出来る。

 

 

 

 

 

002

 

 林道の中ほどにある崩壊箇所はきれいに修復されていた。ここから登山口まで歩くと約1時間、4キロほどの行程になる。やはり修復されるのを待ってて良かった。

 

 

 

 

 

003

 

 修復箇所から先の林道は、脇のイタドリや笹が覆い被さるように成長して、車の脇腹を撫でる。新車で車にキズを付けたくない人は進入を止めた方が良いだろう。

 

 

 

 

 

004

 

 ダム湖から約10キロでカニカン岳の登山口へ着く。道は1本道だから迷うことはない。この先も林道が延びているが、ゲートがあって施錠されている。

 

 登山口の入り口の案内板には「その昔、ゴールド・ラッシュにわいた黄金の山。ブナの美林と金鉱遺跡を巡るワンディ・ハイク。」と書かれている。意外と歴史のある山なんだと感心する。

 

 すぐにも出発したいところだが、前の尾根の日陰になって登山道に朝陽が射さない。日陰の登山道は朝露に濡れて少し寂しい。なんだか笹やぶから突然クマが出そうで恐ろしい。

 朝陽が射すまでの時間、カーラジオでワールドカップの予選リーグ最終戦、日本対コロンビア戦を聞いて時間をつぶす。ちょうど敗戦が濃厚になった頃、陽が射し出したので出発することにする。

 ザックにはクマ除けの鈴を2個ぶら下げ、おまじないに爆竹を鳴らしてから出発した。

 

 

 

 

 

005

 

 登山口から車の轍(わだち)が残った細い林道が続いているが、Uターンする場所もないので乗り入れない方が良いだろう。

 林道が切れたところに朽ち果てて倒れていた標識を木に立てかけて写真を撮る。ここから先が本当の登山道。山頂まで1合目毎に新しい標識が付けられている。

 

 

 

 

006

 

 1合目からすぐに急登が始まる。周囲のブナ林の新緑は鮮やかながらも目に優しい。木々から伝わる精気が疲れを忘れさせてくれる。

 急登が終わるとしばらくは小さなアップダウンを繰り返しながら進むことになる。この山の登山道は登るというよりも歩く!という感じが強い。

 

 

 

 

007

 

 ガイドブックには2合目辺りからカニカン岳の山頂が見えるとあったが、生い茂った新緑のせいか、その一部すら確認することが出来ない。

 3合目では木に咥えられてしまった古い標識を見ることが出来る。自然が人造物を飲み込んでしまう年月の凄まじさを少しは感じることだろう。

 

 

 

 

008

 

 カニカン岳の全貌を見ることが出来たのは5合目辺りから。手前の山頂に見えるのは山頂台地の東端で、左奥に見えるのが本当の山頂。

 

 

 

 

 

009

 

 6合目を過ぎて先を見上げると、山頂台地の東端が山頂のようにそびえている。この山で登りらしい登りと言えばこの辺りだろうか。

 笹が刈り取られて明るい登山道になっているので、クマの恐怖は多少和らぐ。これで笹が頭を隠すような登山道なら、怖くて逃げ帰っていたかも知れない。

 

 

 

 

021

 

 7合目の標識横にある「金鉱坑道遺跡」。直径50センチほどの横穴であるが、本当に人間か出入りしていたのか疑問に思えるほどの小さな穴である。長い年月で坑道が押し潰されたのだろうか。

 奥行きがどのくらいあるのか、中はどうなっているのかと興味は尽きない。それにしても昔の人はこんな山奥にまで金を探しに来たものだと感心する。

 

 

 

 

010

 

 8合目を過ぎてエゾカンゾウの咲く東端を回り込んで登ると山頂台地。行く手に山頂が見え、目を凝らすと山頂標識も確認出来る。

 

 

 

 

 

011

 

 山頂台地途中にある9合目標識。新旧3つの標識が風雪に耐え抜いたダケカンバに付けられている。

 

 

 

 

 

012

 

 山頂が近くなると笹刈りされた登山道は終わり、どこを歩いて良いのか分からないくらい笹が密生した登山道に変わる。それでも注意深く下を見ると人の歩いた形跡が確認出来る。

 

 

 

 

 

013

 

 手で笹を掻き分けながら進むと、ハイマツを頭に頂いた露岩に行き当たる。この上がカニカン岳の頂上、右手から巻くように登り、頂上に立つ。

 

 

 

 

 

014

 

 カニカン岳の山頂標識と三角点。思いを抱いてから4年目にしての初登頂。誰もいない登山道、少し怖い思いをしながらの登りだっただけに感激もひとしおだった。

 

 

 

 

 

015

 

 三角点からもう少し進んだ地点にも山頂標識がある。こちらの方が古いし、眺めも良い。背後にはカニカン岳から南に派生する尾根が延びている。

 その先には美利河ダムの真向かいにあったスキー場が見える。ダムのあるピリカ湖は尾根に隠れて見えない。

 

 

 

 

 

017

 

 山頂から長万部岳(中奥左)とニセコの山々、羊蹄山(右最奥)を見る。長万部岳はピリカ湖からも確認出来るが、カニカン岳は確認出来ない。山容を確認したければ、長万部岳に登るか、それとも今金町まで行かなければならないのだろうか。

 

 

 

 

 

016

 

 山頂からウスユキソウで有名な大平山(おおびらさん・左奥)を見る。手前の1021m峰は無名だが、関係者の間では通称・利別岳と呼ばれているようだ。

 

 

 

 

 

018

 

 北西に目を向けて、狩場山をズームアップ。降雪量の多い山塊だけに、まだ沢筋に雪が残っている。

 

 

 

 

 

019

 

 南に目を向けて遊楽部岳をズームアップ。連なる山並みは狩場山に負けないスケールの山塊だ。いつかは登りたいと考えている遊楽部岳、長時間の歩きとクマの恐怖があって、なかなか足を踏み出せないでいる。

 

 

 

 

 

020

 

 しばらく休んでいると、笹刈り機を持った男性が登って来た。この男性は今金森林管理組合の職員さん。近々山開きがあるので、山頂付近の笹の密生した登山道を手入れするのだという。笹刈り機を手に取って見ると結構な重さ。その上、腰には混合ガソリンのタンクを下げている。こういった人たちの苦労のお蔭で快適な山歩きを楽しむことが出来る。

 どこの山でもそうだが、登山道を整備・管理する人たちに感謝・感謝の気持ちである。だから間違っても登山道にゴミなどを残してはならない。

 

 男性はしばらくの間、笹刈り機の刃の目立てをし、管理人が山を下りる頃、作業を開始した。山頂台地から山頂を振り返ると、作業をする男性の姿とともに、小気味良いエンジンの音が鳴り響いて来た。

 

 

 

 

 

022

 

 下山後、山頂から見えたスキー場まで車で行って見た。すると、美利河ダムからは見えなかったカニカン岳の山頂が尾根越しに確認することが出来た。

 幸いなことに、スキー場下に「クワプラザピリカ」という保養施設があり、日帰り入浴(500円)が出来るというので、さっそく入らせてもらった。なかなか清潔な風呂で、気分もさっぱりとしてカニカン岳を後にすることが出来たのだった。

 

 

 

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