武華岳 1758.5m

 

2006年7月26日 晴れ

 

 大雪山・黒岳の山頂から石北峠のある東方向に目を向けると、三つの顕著な頂が目に入る。手前に「屏風岳」、その奥に並んでいるのが「武華岳」と「武利岳」である。この「武華岳」と「武利岳」に登るべく札幌から車を走らせた。

 朝4時に家を出発。一人旅なので高速道路は使用せず裏街道を走る。走り慣れた道とはいえ、石北峠を越える道程は長い。苦手な長距離運転も、これから登る初めての山を思うと苦痛が和らぐ。

 224キロの距離をほぼ4時間かけて走り、イトムカ川の清流が流れる「武華岳」の登山口に着く。忘れ物をしないように入念に持ち物をチェックし、はやる心を落ち着かせる。だが結論を言えば着替えとタオルを忘れていた。

 登山口の標高が高いため意外と短時間で登れる山だが、山頂からの展望はまったく見事だった。表大雪や「トムラウシ」は勿論のこと、「石狩岳」や「二ペソツ」の東大雪、「ニセカウ」や「平山」の北大雪、そして背後には翌日登る予定の「武利岳」が険峻な頂を見せていた。遠くには「阿寒」や「斜里」の山々、その向こうには「羅臼岳」が霞んで見えていた。

 登山後は翌日の「武華岳」登山のために車中泊を目論んでいたが、道内は今年一番の暑さとやらで夕方になってもその暑さは収まらず、一晩中車のエンジンをかけてエアコンを効かせて寝る訳にもいかない。思案のあげく林道入り口にあった看板を思い出し、「塩別つるつる温泉」に宿をとった。

 思った以上に低料金の温泉旅館で、夕食はけっして豪華とは言えないが、普通の食材を使いながらセンスの良い料理が並んだ。大きな露天風呂で汗を流し、くつろいだ雰囲気の中で心ゆくまでビールを楽しんだ。

 

登り「東尾根コース」・2時間15分(休憩時間含む)          下り「ライオン岩コース」・1時間35分(休憩時間含む)

 

 

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国道39号線の石北峠を過ぎて左にカーブすると「武華岳」の全景が見えてくる。左に「ライオン岩」、中央に山頂が小さなピークとなって見える。ここから少し下ると左手に「つるつる温泉」の大きな看板が見えてくる。そこが「武華岳 登山道」の林道入り口である。

 

 

林道の終点には駐車スペースがあり、その先の登山口には武華岳登山道の看板と登山届ポストがあった。看板では登りには東尾根を、下りにはライオン岩コースを推奨しているようだ。ライオン岩コースを登る予定でいたが、看板の指示に従って東尾根コースを登る。

 

イトムカ川に沿って明るい登山道を15分くらい歩くと左手に滑滝が現れる。この上が二つのコースの分岐点になっている。虫にまとわり付かれながら汗を拭こうとしてタオルを探すがザックに入っていない。どうやら着替えとタオルを忘れてしまったようだ。

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樹林の合間から左手を見上げると「ライオン岩」が衝立のように聳えている。どう見てもライオンには見えず、どうしてこの名称が付いたのか不思議でならない。山頂に突き上げる沢には倒木が多く、痛々しい姿を晒している。

 

 

樹林帯を抜けて頭上が明るくなり始めるとハイマツ帯の広い稜線である。後ろを振り返ると「石狩岳」や「二ペソツ」「ウペペサンケ」といった東大雪の山々がくっきりと見える。

 

広いハイマツ帯に続く登山道はガスに包まれると道を失いそうだが、今日はそんな心配も皆無な抜けるような青空だ。ライオン岩の向こうには雪を残した表大雪の山々が広がっている。

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1574mの広いハイマツ尾根から「武華岳」山頂部を見る。真ん中の丸みを帯びたピークが山頂。右奥には屏風岳やニセイカウシュッペの山々が並ぶ。

手前の1747mから山頂まで続く登山道の脇には「チングルマ」や「ツガザクラ」が小さなお花畑を作っている。

 

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山頂から「武利岳」をバックにして記念撮影。尾根上に見える縦走路は明瞭で、歩いてみたいという欲望が掻き立てられる。

 

 

山頂の岩間に咲いたエゾツツジ。美しいショッキングピンクの花びらが風に揺れていた。

 

山頂から見た表大雪の山々。北鎮岳の千鳥の雪渓もきれいに見える。贅沢な風景を楽しみながらの昼食は最高のご馳走だ。

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帰路も看板の指示に従って「ライオン岩」コースを下る。尾根から飛び出たコブのような岩峰はどうしてもライオンには見えない。

 

 

「ライオン岩」の基部から「武華岳」山頂を振り返る。なだらかなピークに見えた山頂が、やっと山頂らしく見えるようになった。

 

「ライオン岩」の基部を巻いてから大きく下る。振り返るとそこには“獲物を求めて草原を歩く一頭のライオン”がいた。なるほど立派な「ライオン岩」だ!

 

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