武利岳  (むりいだけ) 1876.2m

 

 

 前日登った「武華岳」の翌日は「武利岳」と決めていた。温根湯の「道の駅」で車中泊する予定が、今年一番という暑さのため「塩別つるつる温泉」に宿を取ったのが予定外だった。おかげでゆったりと温泉に入り、しこたまビールを飲むことができた。

 翌日は早立ちのため旅館の朝食をとらず、コンビニで買った弁当をお茶漬けにして腹を満たした。「武利岳」へのアプローチは易しくないようだが、国道39号線の「厚和」から「滝雄・厚和大規模林道」に入る場所は前日に確認しておいた。林道と言ってもアスファルト舗装の立派な2車線道路だから、初めての人は面食らうに違いない。アスファルト舗装の林道を15kmほど走り、そこから砂利敷きの林道に入ると途中分岐点があり、そこに入林(登山)届けが設置されてある。そこから右折して登山口までの林道がチョッとハードで細心な運転が要求される。小さな祠がある登山口には広い駐車スペースがある。その奥にも車が入れる林道が続いているが、一般車は入らない方が無難だろう。

 「武利岳」は前日「武華岳」から見た通りの険しい山頂を持つ山だった。とくに8合目から9合目にかけての岩場がこの山の核心部となっていて、スリリングな登りを楽しむことが出来た。9合目から山頂へと続く細い山頂稜線もこの山の魅力で、ぜい肉をそぎ落としたすっきりした山容を形作っていた。

 山頂からの展望も素晴らしく、表大雪、東大雪、北大雪を一望する位置にあって、圧倒的な景観を見せてくれた

 

登り・3時間25分(休憩時間含む)   下り・2時間25分(休憩時間含む)

 

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「滝雄・厚和大規模林道」の途中から見た「武利岳」。これから登る稜線が背骨のように浮き出ている。手ごわい感じが山容から伝わってくる。

 

砂利道の林道に入って最初の分岐。真ん中の標識下に入林届けポストがある。ここから登山口まで2.6キロ。細くて荒れた林道なので注意して走りたい。

 いきなり3合目にワープしたが、ここまでは林道歩きと樹林帯の歩きで特筆するべき個所がない。丸瀬布方向に大きく開けた3合目からは顕著な山は見えない。

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 4合目に来ると「おおっ、山頂か」と思う頂が見える。しかしここは1,539mのピークで、山頂はまだまだ先。こんな所でがっかりしてはいられない。

 

稜線の右方向には「ニセイチャロマップ岳」から続く「無類岩山」がすっきりした山頂を見せている。やがてこの山が登るにつれて遥か眼下になってしまう。

 左方向を見ると前日登った「武華岳」が、大きな断崖を持った横っ腹を見せている。石北峠側から見た穏やかな山容とは趣が違う。

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背の高いハイマツを抜けると7合目の標識があらわれる。やっと視界が大きく開け、恐竜の背中のような山頂稜線が望まれる。まだまだ山頂は遠いが、やっとここまで来たという気分が気力を沸き立たせてくれる。

 

 登山道脇に咲く「ミヤマキンバイ」。あまり花の多い山ではないが、所どころに咲く花が疲れた気持ちを癒してくれる。しかし、キンバイ系の花は見分けが難しい。

 8合目から9合目までがこの山の核心部。岩場の急な稜線には鎖場もあり、ハイマツの根をつかんで攀じ登る。左の斜面には「ミヤマキンバイ」が群落を作って咲いている。

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 やっと辿り着いた9合目。あとは痩せこけた山頂稜線を歩いて山頂に向かうだけ。右側が大きく切れ落ちる登山道は結構スリリング。風の強い日は要注意だろう。

 

 ついに「武利岳」山頂に着く。奥に見えるピークが9合目。正直、思った以上に登り応えのある山だった。誰もいない山頂で充実した達成感に浸れるのは、それだけ苦労したからこそ。これが山の醍醐味である。

 

 表大雪やトムラウシをバックにして記念撮影。少しは腹が凹んだと思ったが、写真を見る限りではまだまだ汗のかき方が足りないようだ。それにしてもいい天気だ。

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山頂からの大展望。正面は「武利岳」西隣ピーク。左は「武華岳」、右が「屏風岳」。奥には左から「ウペペサンケ」「二ペソツ」「石狩岳」の東大雪、中央に「トムラウシ山」、右に「白雲岳」「北鎮岳」「黒岳」などの表大雪が並ぶ。この左方向にはクマネシリの山々、阿寒の山々、斜里、羅臼の山々が遠望される。そしてオホーツクの海が見えることに驚く。

右方向に目を移すと「屏風岳」の右奥に「ニセイカウシュッペ山」が見える。右手前には「平山」「丸山」から連なる稜線に「ニセイチャロマップ岳」と「支湧別岳」が聳えている。

360度、見飽きることがない展望に時間を忘れてただ呆然としている。なんとも至福の時が静かに流れる、たった一人の山頂であった。

 

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