愛山渓温泉から沼の平
2010年9月22日 曇り時々晴れ
日本で一番早い紅葉と言われる大雪山の紅葉が始まった。今年は9月上旬まで異常な猛暑が続き、紅葉にもその影響が見られ、ウラジロナナカマドなどの葉の色の付き具合が今ひとつだと言われている。しかし、それでも自分の目で見て確かめたいのが大雪山の紅葉の魅力だ。
さて今年はどこの紅葉を見物しようかと探した結果、隠れた紅葉の名所と言われている「沼の平」に行くことにした。少しは静かな紅葉見物が出来るとの期待もあるからだ。
登山口のある愛山渓温泉へは国道39号線沿いにある「ドライブイン・愛山渓」を右折して19キロの道のりである。以前は砂利道も残っていたが、今はすべてがアスファルト舗装に変わっている。奥まっていくと道は細くなって対向車とのすれ違いに難儀しそうだが、いたる所に待機所が設けられているから安心である。
沼の平の紅葉見物だけでは勿体ないので、先ず永山岳に登り、安足間岳、当麻岳を経て当麻乗越(とうまのっこし)に下りてから、沼の平を巡って戻る計画を立てた。天候は曇り、早朝ともあって肌寒い出発になった。
歩行時間(休憩・食事時間含む)
往路(永山岳途中から引き返し、当麻乗越手前まで)4時間10分。
帰路(当麻乗越手前から三十三曲経由で登山口まで)2時間45分。
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沼の平へは二つの登山道がある。1本は三十三曲分岐から直接沼の平へ向う道。もう1本は沢沿いに進んで、村雨の滝の上の永山岳と沼の平を分ける分岐から向う道。永山岳に登る予定だから、沢沿いに歩みを進める。行く手に「昇天の滝」が見え出し、その上には紅葉が始まった山肌が望まれる。
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沢沿いの道が奥まってくると左手に「村雨の滝」が現れる。道はこの滝の左岸を巻くように付けられていて、少し緊張感のある登りを強いられる。滝を登り切ると流れは穏やかで、滝の上分岐まではゆったりとした歩きが楽しめる。
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滝の上分岐から永山岳に向って登り始める。振り向くと紅葉に染まった沼の平が望まれるようになる。分岐から30分ほど登った辺りで雪が混じった小雨がぱらつき出した。上を見るとねっとりとした濃いガスが山肌から離れず、また低い雲が西の方から連続して流れてくる。このまま登っても視界のない中で荒涼とした稜線を歩くことになると判断して引き返すことにした。
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永山岳の登りから引き返し、滝の上分岐からいったん沢に下りてから沼の平へ登る。笹の刈り分けが不十分で、濡れた笹の葉から落ちる雫が手に冷たい。振り返ると引き返した永山岳への登山道が色付いた山肌にクッキリと延びているのが見える。その上部は相変わらずのガスで、引き返した判断は正しかったと思った。ぱらついていた小雨も収まり、上々の気分で沼の平へ向う。
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沼の平は広大な湿地帯に大小さまざまな池塘が点在する高層湿原。隠れた紅葉の名所としても知られ、訪れる人も少なくない。ナナカマドが美しいと言われる「松仙園」方面は登山道が不明瞭で、現在は利用不能となっているため八島分岐を五ツ沼方向へ直進する。写真は五ツ沼にある半月湖を振り返って見たところ。湿原には立派な木道が敷かれ、快適に歩くことが出来る。
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六ノ沼から当麻岳方向を見る。山肌の色付きは今ひとつだが、十分に秋の香りが漂ってくる。当麻岳から永山岳にかけては雲がすっぽりと山頂部を覆い隠し、所々に白いものが見えることから降雪したことが予測できた。この辺りから上空を数機のヘリコプターが飛び交い、静かな湿原は物々しい雰囲気に包まれ出した。この後で旭岳の初冠雪を知り、取材のための飛行だったのかと納得する。
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六ノ沼から当麻乗越方面に進み、振り返るとちょうど雲間の切れ目から太陽の陽射しが六ノ沼に降り注いでいるところだった。これまでの寒々とした光景が、柔らかな暖か味を帯びた瞬間だった。右奥には天塩岳が遠望できる。
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これ以上進んでも展望は変わらないと判断し、当麻乗越手前の岩場で行程を止める。風が強いので恰好の風よけになる場所で大休止をとる。当麻岳を見上げるとガスが一瞬のあいだ切れ、その稜線の向こうに冠雪で白くなった永山岳が見えた。
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岩場から当麻岳から六ノ沼への山肌を見る。色付いたナナカマドがハイマツの緑と美しいコントラストを見せている。残念ながらナナカマドは目の覚めるような朱色ではなく、ちょっと寂しいミカン色だった。それでも十分な美しさで、絶妙に配置された奇岩と日本庭園のような景観を作り出していた。
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岩場からピウケナイ沢越に初冠雪の旭岳を見る。山頂にまとわり付く雲が切れないかと30分ほど寒さに耐えながらシャッターチャンスをうかがったが、ついに山頂を見ることは叶わなかった。報道各社のヘリコプターも良い映像が撮れないらしく、しつこく山肌近くを旋回していた。夜のニュースを見ると、やはり白くなった中腹の映像だけで、初冠雪の山頂を撮ることは難しかったようだ。
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沼の平から戻る途中で、やはり愛山渓から永山岳を登り、当麻岳、当麻乗越を回って下りて来た若者2人と出会った。「永山岳の稜線は雪で白くなっていた。ガスで足元しか見えず、周りは何も見えなかった。風が強く、寒くて!寒くて!」と、まだ寒さが抜けないような面持ちで話してくれた。やはり、あの荒涼とした稜線を歩かなくて良かったと思いながら、安全第一の管理人はちょっぴり若者たちの蛮勇をうらやましく思ったのだった。
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