長万部岳 972.4

 

2010530日 晴れ 単独

 

函館方面に車を走らせるたびに目に飛び込んでくる気になる山、それが長万部町の最高峰・長万部岳だと知ったのはつい最近のことである。地肌の露出したハッキリした沢筋、三角形がすっくと立ち上がったような山容はまことに美しい。特に雪が残る今の時期は1年の中でも一番美しい姿を見せる。そんな長万部岳に登ってみた。もちろん帰りの楽しみは秘湯「二股ラジウム温泉」である。

 

登り・2時間50分(ゲートから。5合目過ぎで時間をロスする。休憩時間含む)

下り・1時間40分(ゲートまで。休憩時間含む)

GPSトラックログ

 

 

 

国道5号線をニセコ方面から長万部町へ向って走ると、右手に「二股ラジウム温泉」の看板が現れる。右手に折れて温泉へ向う舗装道路を走ると、温泉と登山口へとの分岐に行き当たる。分岐を右へと進むと道は途中から未舗装道路に変わり、程なくして車止めゲートにぶつかる。登山届出ボックスも設置されているから、ここが登山口になっているようだ。

 

 

 

 

朝陽を背に浴びながら林道をテクテクと歩く。車のすれ違いが容易なほど幅広い林道なので、車の乗り入れを許可して欲しいものだ。針葉樹林からブナやシラカバの広葉樹林に変わって、林道が明るく開け出した辺りからは残雪を頂く長万部岳が見えてくる。

 

 

 

 

林道を30分ほど歩いたころ、廃材が積まれた広場に着く。どうやら目印にしていた「うすゆき荘」は取り壊されたようだ。その広場の右手には「長万部岳 山開き」と書かれた大きな横断幕が張られていた。後で知ることだが、まさに今日がその山開きの日だった。まさか山頂で50人もの団体さんと鉢合わせするとは、この時は知る由もなかった。

 

 

 

 

うすゆき荘跡からは荒廃した車道跡の林道を歩く。「七曲り」と呼ばれる大きく振られた林道は無駄が多く、登山道には向いていない。広場となってベンチもある5合目の旧鉱山跡からは、三角形の真ん中に沢地形が走る長万部岳が見える。山頂への登山道は右側の尾根に付いているようだ。ベンチ横の標識には鐘がぶら下がっていたが、紐の位置が高くて鳴らすことは出来なかった。どうやら冬山用の鐘らしい。

 

 

 

 

5合目からは残雪が登山道を覆い隠し、初めて訪れた登山者にとってはどちらに進んで良いのか分からず、ずいぶんルート判断に惑わされた。先行者の足跡も右往左往しているようで、トレースはあちらこちらに揺れていた。頼りになるのは所々に設置されている「冬山コース」の案内板。それを頼りに樹林帯を進むと、途中から左手に長万部岳が見え出し、前方に山頂への登り口となるコルが見えてきた。晴れていたから歩けたようなもので、ガスでもかかっていたらお手上げ状態になっていただろう。帰りは「山開き」の団体さんが歩いたトレースを頂いたので、簡単に短時間で戻って来ることが出来た。

 

 

 

 

何とか苦労してコルの尾根に上がった。行く先には長万部岳の斜面が待ち構えている。登山道らしき形跡もうかがえるが、ほとんどは雪に隠れているようだ。急な斜面にはステップが刻まれていて、登り易く手が入れられていた。山開きを控え、長万部山岳会の人たちが刻んだのだろう。アイゼンやピッケルを用意していない我が身には安心させてくれるステップだった。

 

 

 

 

残雪の急斜面を登りながら左側の沢筋を覗くと、雪崩れ跡のハッキリした地肌の露出した山肌が見えた。滑り落ちるとどこまでも落ちて行きそうで、ゾクッとする怖い斜面だった。

 

 

 

 

急斜面を登りながら後ろを振り返ると、北側に前日登った黒松内岳が長い尾根のような山頂を持って聳えていた。その背後にはニセコ連峰や羊蹄山が残雪模様の頂を見せている。手前の樹林帯はルート探しに苦労した所。平坦のように見えても、実際中に入り込むと先が見えないものだ。

 

 

 

 

双耳峰のような山頂は奥の方に三角点と頂上標識がある。たった一人で360度の眺望を貪っていると、何やら大勢の人声が聞こえ出した。総勢50人にも及ぶ「山開き」参加者が続々と到着したのだ。あっと言う間に山頂が満杯となってしまった。

 

 

 

 

山頂から見える大平山。前日、黒松内岳から見た時も大きな山容に感嘆したが、ここから見てもやはり大きい。オオヒラウスユキソウを始めとして、多くの高山植物が咲き誇る山だそうだから、一度は訪れて見たい山だ。

 

 

 

 

山頂の西側には残雪模様の美しい1,022峰(地図上では無名だが、関係者の間では通称・利別岳と呼ばれているらしい)の右奥に狩場山山塊、その左奥にメップ岳やカスベ岳が見える。

 

 

 

 

大きな頂上標識の南側にはカニカン岳、その遥か遠くに遊楽部岳を見ることが出来た。日本海から噴火湾、渡島半島につながるくびれを一望できる素晴らしい展望であった。

 

 

 

 

頂上標識前で写真を撮っても、標識が大き過ぎて背景が入らないため、北側の残雪の上で記念撮影をする。左奥に寿都の海岸が見え、右奥には積丹半島の山々が見える。「山開き」参加者で満員になった山頂を早めに下りたのだが、うすゆき荘跡には多くの車が入り込んでいた。「山開き」参加者はここまで入れてもらうことが出来たのだ。

帰りに秘湯中の秘湯と言われる「二股ラジウム温泉」で汗を流した。入浴料金1,000円は少し高めだが、泉質を考えれば文句は言えない。何しろ医者の治療より効果があるというのだから。しかしロッカーの鍵が壊れ、貴重品を預ける所もないので、ゆっくりと湯に浸かっていれないのが残念だった。