ピンネシリから 隈根尻山へ
1100.3m 971.4m
待根山(マチネシリ)1002m 経由で縦走
2015年5月30日 曇り 一番川コース
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GPSトラックログ 赤線=登り 緑線=縦走路 青線=下り
総所要時間 10時間10分 総歩行距離 23.6km(林道8 km含む)
キャンプ場駐車場→登山口ゲート 1時間
登山口ゲート→ピンネシリ山頂 2時間40分
ピンネシリ山頂で20分間休憩
ピンネシリ山頂→隈根尻山山頂 3時間10分
隈根尻山山頂で10分間休憩
隈根尻山山頂→登山口ゲート 1時間50分
登山口ゲート→キャンプ場駐車場 1時間
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札幌から樺戸方面を眺めると、連なる山々の中に大小のお椀を伏せた「ひょっこりひょうたん島」のような山が確認出来る。その大きなお椀の山が「ピンネシリ」という名前だ。
自分の記録をひも解いて見ると27年前の平成元年に登っている。記憶ではバイクを利用した新十津川方面からの登りだった。今は「道民の森・一番川地区」からも登れるようになっているということが分かったので、隈根尻山と併せて登ろうと出掛けて見た。
青山ダムを過ぎても雲は低く立ち込めたまま晴れる気配も見せない。駄目なら出直そう、今日は偵察だけでもと考えて、スタート地点のオートキャンプ場まで行くことにした。
「道民の森・一番川地区」にあるオートキャンプ場最奥の駐車場に着くと、若い男性が「ピンネシリまで行きます」と言って先立って行った。この天候なら晴れることもないだろう。残念だが今日はピンネシリだけにしようと決め、車を停めて出発の準備をすることにした。
地図を見るとここから登山口までは約4キロ、1時間の林道歩きが必要になる。
駐車場を振り返って見た写真だが、帰りに確認したら、入り口に張られているピンクテープのぶら下がったトラロープは誰でも外すことが出来るのだった。先行者が車を停めて先立って行ったので、ここに車を停めるものだと思い込んでしまった。結果論だが、このことで往復約8キロ、2時間の林道歩きがプラスされた。
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雨で崩壊した林道も修復が進んで、今では乗用車タイプでも楽に走ることが出来る。しばらく歩いていると川べりから子供たちの遊ぶ声が聞こえて来た。そばには大きなワンボックスカーが停まっていた。ゲートのロープを外して入って来たのだろう。外したままにしてくれていたら林道歩きをしなくて済んだのにと、つい愚痴が出てしまった。
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結局、1時間歩いて登山口ゲートに着く。手前には大きな駐車場があり、壊れかけた簡易トイレがある。届出小屋は使われてないから、入山届はキャンプ場の管理棟に出すしかないのだろう。
このゲートを過ぎてすぐに小さな小川を渡るが、飛び石伝いに渡れるので濡れることもない。
まだ上空は厚い雲に覆われているようで、この分では眺望も期待出来ないだろうと暗たんたる気分で歩みを進める。
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渡渉を過ぎてすぐにピンネシリと隈根尻山との登山道を分ける「一番川登山口」のケルンに着く。外れた道標を無造作に置いてあるだけで、いたずらされたらと心配になってしまった。
このコース、要所に立てられていた道標のほとんどが倒れたままに放置されている。雪の重さで壊れたベンチにしてもそうだが、もう少し整備の手が入らないものかと気になった。これでは「道民の森」の名が泣くではないか。
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ピンネシリへの登山道は概ね広く明るい。途中までは車が入れる林道だったようで、轍の跡が残っていた。途中、小さな崩壊場所や渡渉もあるが、問題なく通過出来る。
広い登山道はニリンソウやタチツボスミレが満開で、文字通り足の踏み場もないほどだった。
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壊れたベンチと倒れた道標。「道民の森」からの登山コースとしては少し淋しい。こういった所に手が回らないのが北海道の今の現実なのだろうか。
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空が明るくなって来ると気温も上昇し始めたようで、急に暑さを感じ始めた。木立の向こうに先ほどまで雲の中だったピンネシリの緩やかな山容が見え始めた。この分ならある程度の眺望も期待出来ると、少し気持ちが明るくなった。
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暑い暑いと思って歩いていたら急激に風が強まり出した。寒さを感じるほどではないが、汗ばんでいた身体が一気に引き締められる思いがした。
前方の鞍部に見える小ポコに登山道は続いている。途中から登山道は小幅の丸木階段に変わっているので、思いのほか自分のペースがつかめない。神居尻山もそうだが、どうも「道民の森」を起点とする登山道は丸木階段が多い。当初は子供やお年寄りでも登れるようにとの配慮だったのだろうか。
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ピンネシリと待根山(マチネシリ)の鞍部にある分岐からピンネシリを見る。強い風によって雲が飛ばされたようで、山頂へと続く登山道がはっきりと確認出来る。
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意外や意外、ピンネシリは高山植物の種類が多く、登山道脇に咲く花々を楽しみながら登ることが出来る。ヨツバシオガマやトカチフウロ、ハクサンチドリやミヤマキンポウゲなどを楽しむことが出来る。
写真はシラネアオイの群落。登山道の途中からシラネアオイを目にすることは出来たが、山頂に近付くにつれてその数が多くなった。
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思い掛けなくエゾノハクサンイチゲの群落を目にすることが出来た。丁度今が満開時期なのだろう。これを目にするだけで今日登って来た甲斐があったというものだ。
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耐風姿勢を取りたい位の強風の中で登頂記念撮影。もちろん三脚は立たないので、大きな山座同定盤の上にカメラを置いて撮った。それにしても風は写らない(当たり前か)。
かなりの強風なのに、上空にはセスナに曳航されるグライダーが見えた。滝川の滑走路を飛び立ったのだろう。
家に帰ってから見たテレビのニュースで滝川でのグライダー死亡事故が報じられていた。事故に遭ったのは自走出来るモーターグライダーなので機種は違うのだろうが、もしやと驚いた瞬間だった。
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20分の休憩の内に隈根尻山へ縦走することを決断して出発する。時間的な余裕があること、天候が良くなって来たことが決断の理由だ。この時はあまり体力的なことは考えなかった。なぜならピンネシリから見る限りではあまりきつそうな縦走路だとは思えなかったからだ。
目前に見える待根山(マチネシリ)の北斜面の残雪模様が美しい。
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ピンネシリからは強風にあおられ、登山道から転げ落ちないよう注意して下った。鞍部の分岐から待根山(マチネシリ)までは低い笹の中の登山道を進む。途中、立派なアイヌネギを見つけたが、今日は山菜採りではないので我慢する。
待根山(マチネシリ)から見るピンネシリは左右対称に裾を広げている。山頂ドームは空の色と同化して確認が出来ない。
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待根山(マチネシリ)の山頂には山頂標識がない。ただピンネシリと隈根尻山の方向を示す道標が立っているだけ。右奥に見える隈根尻山は遠いのか近いのか、どうも距離感がつかめない。
ここでも風は強烈で、身体がよろける程だった。
ここから見下ろす縦走路はピンネシリから見た穏やかな縦走路とイメージが異なる。一気に高度を下げ、小さなアップダウンをしてから隈根尻山への稜線に上がるのだ。しかし実際は見た目以上に複雑だった。
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先ずは待根山(マチネシリ)から一気に降下した。急斜面に設えられた丸木階段は崩壊して「吊り梯子」状態になっている所もある。足を滑らせると数メートルは滑落しそうな急斜面だ。とても雪の残っている時はアイゼンやピッケルなしには通過出来ないだろう。
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大きな下りは1か所かと思っていたが、もう一段大きく下らないと最低コルには行き着かない。この時初めて「エライ所に来てしまった」との後悔の念が頭をよぎる。しかし、もう後戻りは出来ない。エスケープルートがある訳でもないので、とにかく進むしか登山口に戻る方法がない。
隈根尻山へと続く稜線へと上がる登山道がはっきり確認出来ない。途中に残雪もあるから慎重に進まなければと気を入れ直す。
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気を入れ直して背丈を超える笹のトンネルの登山道を進んでいると、突然目の前に黒くて大きな塊が現れた。お〜、これはクマさんの○○チではありませんか。まだ湿り気も残っているようだから、そんなに日も経っていないに違いない。なるほど、この辺りはクマさんのテリトリーなんだと思ったら、急に周りの見えない笹のトンネルが怖くなり始めたのだった。
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最低鞍部からの登りは残雪の中の登山道を進む。丸木階段が見えている内は良いが、それが残雪の中に消えると、次に進む方向を探さなければならない。直線的に進む道があれば見つけるのも楽だが、思わぬ方向に進む道があった場合は探すのも大変。やっと見つけて迷わなくて良かったとホッとするのだった。
振り返ると待根山(マチネシリ)から二度にわたって急降下した斜面が見える。中央はピンネシリ、左奥は神居尻山である。
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やっとのことで隈根尻山へと続く緩い稜線に上がる。稜線の左前方に隈根尻山の山頂部が確認出来る。ここにはベンチが設えられていて格好の休憩場所になっているが、思いの外縦走路で時間を費やしたため、休まずに歩くことにした。
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緩い稜線歩きなのに意外とピッチが上がらない。どうやら縦走路の登りで体力を使い果たしてしまったようだ。一番側登山口からの登りと合流する分岐にもベンチが設えられていたが、あと600mで山頂なので、そのまま休まずに進むことにした。
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山頂部までの登山道は途中から残雪の中に消えてしまっていた。それでも山頂部の方向は分かるから迷うことはない。大体の目星を付けて進むと、また丸木階段で作られた登山道が現れた。
残雪の向こうに見えるのは待根山(マチネシリ)とピンネシリ。そう、あの「ひょっこりひょうたん島」なのだ。
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もう少しで山頂というところから樺戸連山を見下ろす。昨年は浦臼山から樺戸山を目指したが、背丈を超えるブッシュに行く手を阻まれた。樺戸山から隈根尻山まではルートはあるものの、もの凄い根曲がり竹が覆っているという。このルートはもう残雪期しか歩けないようだ。
樺戸連山の向こうには空知平野の穀倉地帯が広がっている。
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狭い山頂にやっと到着。山頂の真ん中には立派な山座同定盤がある。どうやらピンネシリや神居尻山の山頂と同じ「道民の森仕様」の盤らしい。周りに椅子を配すれば立派な中華テーブルになりそうだ。
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山頂から見る待根山(マチネシリ・右手前)、ピンネシリ(中央)、神居尻山(左奥)。ピンネシリと神居尻山の間から、まだ雪の残る増毛の山々が見える(少し霞んでいるので写真では不明瞭)。
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増毛の山々をズームアップしたが、それでも不明瞭だったのでパソコンで明るさとコントラストを変えた。左から群別岳や奥徳富岳、暑寒別岳などが確認出来る。
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少し疲れ気味の顔になっているが、初登頂の隈根尻山なので記念撮影。三角点は右手前の笹の中に少しだけ見える。
ゆっくり休みたい気分だが、あまり遅くなると暗い中での林道歩きとなるので、10分だけの休憩で山頂を後にした。
眺望が素晴らしい山だけに、キャンプ場からの登山道を整備して多くの人に登ってもらいたいものだ。
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急な下山路も丸木階段が続く。トントンと駆け下りたい気持ちになるが、膝や太ももを痛めないように慎重に下る。
下山路の脇にはこれまで見られなかったザゼンソウがいくつか咲いていた。疲れた膝を折ってカメラを向ける。どうやら上手くピントが合ったようだ。
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急な丸木階段を下るので足元から目を離すことは出来ないが、小休止で立ち止まって顔を上げると、待根山(マチネシリ)から下る縦走路がはっきり確認出来た。ああ、あそこを下ってクマの糞を見たんだ。と納得する。
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急な丸木階段が終わると登山道は広く緩くなる。途中にある休憩所は雪に押し潰されて倒壊したままになっている。
この辺りから雪虫のような小さな虫が身体にまとわり付き出す。植生の関係なのだろうか、他の登山道では見られなかった虫の舞い方だった。
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一番川に出合ってから5回の渡渉を余儀なくされる。これまであったすべての橋は流されたらしい。丸木橋でも渡さない限り、隈根尻山の登山ルートは復活しないだろう。
結構な川幅と水量があるので、登山靴を濡らさずに渡るのは至難の技だ。素足で渡るか、それとも長靴を持って来るかだろう。それでも雨の後などは水量が増えているだろうから、渡渉自体が危険かも知れない。
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自分は帰るだけなので濡れても良いと川の中をジャブジャブ歩いた。ゴアテックスのインナーと、ロングスパッツが水圧で靴に貼り付いたせいか、靴の中まで水が入って来なかった。それでも水の中で躊躇したら間違いなく浸水して来るだろう。川底の石は滑るので飛び石伝いのように渡るのは転倒の危険がある。
周りに倒木もあるので、丸木橋を渡すだけでも助かるのにと思うのだが、お役所(道)が本腰を入れて登山道の整備に着手しない限りは無理な相談なのだろう。
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何とか無事に登山ゲートまで戻ることが出来たのだが、もう足は棒のようになり、体力も残すところわずか。それでもキャンプ場の駐車場までは4キロの林道を歩かなければならない。
車が入れると分かった林道を歩くのは精神的にキツイものがある。往きと違って疲れた足には固い林道の路面が辛かった。
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それでも何とか歩き通して駐車場に戻った。入り口のトラロープは外されたままで開放状態になっていた。悔やんでも仕方なことだが、やはり事前のリサーチが足りなかったと反省するしかない。
ちょうど夕食時を迎えたオートキャンプ場からはバーベキューの良い匂いが漂って来た。今時のオートキャンプ場、持ち込んで来る機材が凄い。もしかすると家庭でのキッチン機材より高価な物ではと感心する。
疲れた身体は楽しみにしていた月形温泉での「登山後入浴」も拒否。帰りは居眠りしないように冷たい炭酸飲料を飲みながら車を走らせた。
帰宅してシャワーを浴び、さっぱりしてから飲んだビールがことのほか美味かった!
久し振りの充実した山歩き、歩いている時は大変でも、身体の疲れが抜けた時には良い思い出だけが残るものだ。
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