狭薄山(さうすやま)1,296m

 

2013422日 晴れ

 

空沼岳万計山荘〜マミス沼経由往復  同行者2

 

 

登り(万計山荘から狭薄山まで・休憩時間含む)・3時間

下り(狭薄山から万計山荘まで・休憩時間含む)・2時間30

 

 

 

sapporodake 083

 

札幌岳山頂から見た残雪の狭薄山。中央奥は漁岳。左奥は恵庭岳。20125月撮影。

 

 

 

sausuyama gps 01

 

GPSトラックログ 万計山荘から狭薄山まで。

 

 

 

sausuyama 000

 

 採石場奥にある橋から先は雪がまだ30センチほどあって車を乗り入れることが出来ない。ここから登山口までの1キロメートルは林道歩きとなる。

 今日の行程は万計山荘まで2時間足らずの足慣らし(の筈だった)。一泊するための装備を詰め込んだ重いザックを背負って出発する。

 

 

 

sausuyama 001

 

 登山口にある渡渉地点を渡るS氏。川には新しい丸木橋が渡されていた。前方には渡り終えたS氏の知人I氏が待っている。

 

 

 

sausuyama 002

 

 万計沼から流れ出る沢のスノーブリッジを渡る。大きな倒木の上に出来たスノーブリッジだから踏み抜く心配はない。

 この辺りからI氏の足取りが重くなり、立ち止まる時間の方が多くなってきた。やはり普段通っている藻岩山とは勝手が違うようだ。

 

 

 

sausuyama 003

 

 2時間で到着予定だった万計山荘が見えたのは、なんと出発してから3時間半も経ってから。I氏を待っている時間が長く、すっかり身体が冷え切ってしまった。

 山荘の正面入り口が閉鎖されているため、トイレ横にある勝手口から入る。誰もいなく、冷え切った部屋の中央には大きな薪ストーブが置かれている。隅に積まれている薪を使わせてもらい、苦労して火を点した。やはり柔らかい暖気が伝わってくる薪ストーブには心が癒される。

(帰りに薪代、宿泊代として些少の募金をさせて頂きました)

 

 

 

sausuyama 004

 

 早速、夕食を兼ねた酒盛りを開始。自分の好きな酒を好きな量だけ担ぎ上げ、それぞれが独酌で飲む。これはS氏との暗黙のルール。S氏はワイン、ビール、ウィスキー。管理人はビールと芋焼酎のワンカップ。S氏が早くも酔眼となっているのでモザイク処理で顔を隠した。

 酒を飲まないI氏は、今日の行動の反省点を食事をとりながら黙って聞く。3人で話し合った結果、I氏の足取りがこれだけ遅いと、長丁場となる明日の狭薄山は無理だろうとの結論になった。

残念だが、I氏には二人が戻って来るまで山荘で待機してもらうことにした。

 

 酒も回ってきた夜の8時ごろ、コンコンと勝手口を叩く音。こんな時間に誰だろうと戸を開けると、なんと単独の女性登山者がヘッドランプを点けて立っていた。話しを聞くと、バスで来て、民家最終地点辺りから歩いて来たと言う。トレースが残っているとはいえ、暗い山中、よく怖くないものだと驚いてしまった。

 明日の行く先は同じ狭薄山だというので、同行することが決まった。

 

 

 

sausuyama 005

 

凍てつく朝の万計沼。吹き抜ける風の音だけが聞こえるモノトーンの世界だ。

沼はまだ全面氷結しているが、沢へ流れ出る水を、わずかに口を開けた氷の間からヤカンで汲んで山荘で使用した。

 

 

 

sausuyama 006

 

 朝5時出発の予定だったが、全員朝寝坊して30分遅れの出発となった。S氏は時間の遅れも気にせず、しっかりと朝食をとったが、管理人はたいした食欲もないことからエネルギー補助飲料のみの朝食となった。どうやらこの食欲の差が、後々歩きの差につながってしまったようだ。

 

 

 

sausuyama 007

 

 山荘からマミス沼までは空沼岳に向かうトレースも残っていることから、GPSのウェイポイントを確認しながら歩いた。マミス沼からは1本のトレースのみで、無駄のないルート取りだと分かったので、そのトレースに従って歩く。

 大きな雪原となったマミス沼の前方には縦走路の通る尾根が雪庇を張り出して横たわっている。同行する女性は以前、奥に見える1197m峰を狭薄山と勘違いして登ったそうだ。

 

S氏は長靴に軽アイゼン、管理人は長靴にワカン、女性は登山靴にスノーシューと、三者三様のスタイルで歩く。

 

 

 

sausuyama 019

 

 マミス沼から札幌岳〜空沼岳をつなぐ縦走路の尾根までは平坦地を歩く。やや右寄りにトレースが残っているが、風が流れて新雪の積もりが少ない肩斜面を歩いたのだろう。

 尾根には長い雪庇がまるで防波堤のように残っている。一年中、強い風が吹き抜けるのだろう。実際、雪庇の上に立つと西からの冷たい風が吹き付けて来た。

 

 

 

sausuyama 008

 

 雪庇の上からは目指す狭薄山が初めて顔を見せた。山頂まではまだまだ距離がある。当初の予定では、ここから札幌岳側に尾根を登り、ヒョウタン沼手前から直角に下降する予定だったが、トレースは沢筋に向かって尾根をトラバース気味に下降している。どうもこちらの方が距離が短くて楽そうだという結論になってトレースを辿る。

 

 

 

sausuyama 009

 

 縦走路の尾根から下降し、今度は1184m峰から派生する尾根を登る。右手には朝日を浴びて白く輝く札幌岳が見える。

 1184m峰は最高点まで登らず、右手をトラバースして1158m峰を目指す。

 

 

 

sausuyama 010

 

 1158m峰も最高点まで登らずに左手を迂回して狭薄山の前ピークを目指す。左手には前ピークと狭薄山が迫って来る。いよいよ狭薄山初登頂が現実味を帯びてくる。なんとも嬉しい時間帯だ。

 

 

 

sausuyama 011

 

 前ピーク手前の平坦地から前ピークと狭薄山を見る。前ピークは1210mの高度があるのに地図には標高が表示されていない。あくまでも狭薄山から派生する尾根のコブ扱いなのだろうか。

 この辺りからS氏はエンジン全開でスパートを掛け、女性も負けじと後に続く。のんびり写真を撮っている管理人は見る見るうちに離されてしまった。

 

 

 

sausuyama 012

 

S氏と女性は前ピークの最上部を通過して狭薄山に向かったが、管理人は少しでも楽なルートをと考えて、アップダウンの少ない右下を通過する。女性はここからスノーシューをアイゼンに履き替え狭薄山へ向かう。

絶好調のS氏はもう急斜面の中間まで登っている。

 

 

 

sausuyama 013

 

 狭薄山への急な登りは滑落が許されない。一度転倒すると、どこまでも滑り落ちそうな急斜面だ。それでも気温がそんなに下がっていないせいで、まだキックステップが利いて、ワカンを履いたままでも雪面に食い付くことが出来た。

 念のために持って来たピッケルを使用することもなく、両手のポールだけで登り続けた。

 

斜面の途中から前ピークを振り返ると、前ピークの右側に通過してきた1158m峰と1184m峰の鞍部が見えた。

 

 

 

sausuyama 014

 

 狭薄山の山頂部には大きな雪庇が張り出していて、その一部が落ちて雪崩跡を作っていた。

 山頂が目の前だというのに、この辺りから太ももが悲鳴を上げ始め、痙攣寸前となった管理人はゆっくりゆっくりと時間を掛けて登った。

 

 

 

sausuyama 016

 

 やっと管理人が山頂にたどり着くと、S氏と女性は周囲を見渡しながら歓談中だった。視線の先には真っ白な漁岳、その左に岩塔を頂く恵庭岳が見える。

 意外と山頂は広いが、雪庇が張り出しているので油断はならない。右の潅木に山頂標識があった。

 

 

 

sausuyama 015

 

歩いて来た方向を見ると、右手に空沼岳、中央の小ピーク左下にマミス沼が見える。左手奥には札幌市街見えるが、少しもやっているのが残念だ。

狭薄山は札幌市街から見ても、なかなか気が付きにくい山だ。札幌岳や空沼岳はすぐ分かるが、札幌岳の左奥に見える山が狭薄山だと分かる人は、かなりの山好きだろう。

 

 

 

sausuyama 017

 

 北方向を見ると正面に札幌岳、その右手奥には百松沢山や烏帽子岳、手稲山などが見える。左手奥には定山渓天狗岳や白井岳。そして朝里岳や余市岳と山並みが続く。

 

 

 

sausuyama 018

 

 残念ながら無意根山やニセコの山々、そして羊蹄山は雲の中。それでもやっと狭薄山に登ることが出来たS氏と管理人はご機嫌な気分で記念写真に納まる。

 

長かったね〜。 距離? 時間? 登るまで? そう、長かったね〜・・・。

 

 

 

sausuyama 020

 

 帰りは登って来たトレースを忠実に辿った。山荘に戻ってから部屋の内部を掃除し、デポしておいた宿泊装備をザックに詰めた。そして一人淋しく留守番をしていたiwa氏と共に4人で登山口へ下りた。

 昼から気温が上がったせいで、登山口から車までの1キロメートルはズボズボで、いたる所で踏み抜いて転んでしまった。今回いちばんの悪路で、股関節がおかしくなってしまった。

 

 

 これでもう札幌岳に登っても、恨めし気に狭薄山を眺めることはないだろう。長年の胸のつかえが下りた爽快な山歩きだった。

 

 

home