足尾山塊の盟主・皇海山(すかいさん・2143m) 1997年 8月2日 群馬・藤岡のアパートから見える赤城山、その右奥に独特の山容でそびえる皇海山(すかいさん)。その圧倒的ボリュームはさすがに足尾山塊の盟主としての風格を漂わせている。近年までは足尾から入山し、庚申山、鋸山を経由しなければ山頂に立てなかった。一泊二日の健脚者コースが日帰りできる身近な山に変わったのは、利根村の栗原川林道の通行が許可されたからである。楽をして登るのは本意ではないが利根村のご好意を無駄にする訳にもいかない。そんなことでバイクで登山口までお邪魔した。 沼田のコンビニで朝食をとり、昼食のおにぎりと飲み物を買う。尾瀬や日光に行くのだろうか観光客とおぼしき人が多い。まずは国道120号線を北上し、東洋のナイヤガラといわれる「吹割の滝」( NHKドラマ・『葵・徳川三代』のタイトル画で有名)のある追貝(おっかい)を目指す。追貝から右手に入ると皇海山への案内標識があり迷うことはない。 町を抜けて畑の中を走ると右手に「NHK通信局」の看板が見える。これをやり過ごしてしばらく走ると道は下りになってついには隣町に出てしまった。どうも道を間違えたようだ。きた道を戻り、途中のゲートから林道に入るが道は尾根伝いにどんどん高度を上げる。栗原川林道は栗原川に沿ってついている筈、ここも違うと引き返そうとした時思いっきり立ちごけをして右ひざを擦りむいてしまった。意外と路面の傾斜がきつかったようだ。 結局は「NHK通信局」の看板のある林道入り口まで戻ることになった。よく確認すると皇海山の標識がある。町にあった案内標識の大きさを想像していたおかげで見逃したようだ。その奥には錆びて朽ち果てる寸前の栗原川林道標識があった。予定の時間を大きくロスする痛恨のミスだった。 |
ここから見上げる山頂部には厚い雲がかかっていて、山頂からの眺望は期待できないようだ。10時10分に出発。ここから「不動沢のコル」まで「不動沢」を上り詰める。 先ずは林道支線を少し歩き標識に従って堰堤横から河原に下りる。「二股」までは沢沿いの笹原についている道を歩く。よく踏みつけられた歩き易い道だ。この辺りには古代の薫りがする立派な苔に覆われた大岩がゴロゴロしている。 「二股」からは沢に下りて徒渉を繰り返す沢登りとなる。清流の流れる沢は空気が湿っていてひんやりと涼しい。 不動沢下部の清流 |
今回は奥深い山というので携帯蚊取り線香を持ってきたせいかまだ虫には刺されていない。 次の二股でも右の沢に入る。水量の多い本流をたどって登ると沢は細くなり、傾斜も段々ときつくなる。小滝を過ぎると源流の最後の詰めとなり足元も滑り易い。 不動沢上部にて |
11時40分、ここまで6人の下山者と会い、出発時間の遅れを実感する。 不動沢のコルから見る鋸山 |
少し行くと笹原の中に立ち枯れ状態になった大樹が林立する明るい場所に出る。ここからは針葉樹のシラビソ、オオシラビソ、コメツガなどが密生する自然林の中を急登する。 やがて大きな青銅の剣に行き当たる。山頂はもう目と鼻の先の距離にある。 青銅の大剣 |
山頂の空にはトンボが群れをなして飛んでいて、その下で一組の夫婦がお昼を広げているところだった。その横には立派な山名標識の他に「渡良瀬川源流碑」も建てられていた。 晴れてはいるが眺望はあまり良くなく、期待していた日光方面の山々を見ることはできない。買ってきたおにぎりとお茶で昼食を取りながらしばらくくつろぐ。 立ち枯れの樹林と皇海山 |
山頂にて |
栗原川林道を戻り、追貝で「吹割の滝」を見物してから「老神温泉・華亭」の露天風呂に入る。湯船は小さいながらも湯面に花弁を浮かべた風情のある風呂だった。帰りは老神温泉から赤城山方向に折れて静かな山間部を走る。地図には「沼田・大間々線」と記されている。根利という村を過ぎてから雲行きが怪しくなり、ポツリポツリと雨が降り出してきた。雨具をつけて走り出すと待っていたように激しい雨になり、雷鳴が近くで轟く恐ろしい雷雨となった。山間を抜ける道路の路面には赤土まじりの雨水が流れ出し、崖からはいつ落石があってもおかしくない状況の中、ほうほうの体で国道122号線に出た。バイクを運転していてこんなに恐怖を感じたのは初めてだった。 翌日の新聞には昨日の大雨で栗原川林道の一部で土砂崩れがあり、林道が不通となったと報じていた。 |