大雪山5日間ひとりぼっち

 

 

 

旭岳〜北海岳〜忠別岳〜五色岳〜トムラウシ山〜化雲岳〜天人峡

1990614日〜18

 

 

安いシュラフは背中が寒い!

 

 

 

image0011日目 

初めての大雪山縦走に胸を躍らせながら、札幌から愛車XL250を走らせた。しかし旭岳温泉ではどんよりとした空が暗い表情で待ち構えていて、ちょっと弱気になりかけている単独行者の胸中を脅かした。先ずは登山届けを出してからロープウェイで姿見駅まで上がった。

 

雲は低く重くたれこめて、旭岳のすそ野まで覆い隠していた。石室横のベンチで監視員のおじさんと会話。今年は雪解けが2週間早く、花の咲くのが20日早いとのこと。不安げな6月の登山者には誠に嬉しい話しだった。

 

時々小雨がぱらつくが、流れる雲間から忠別岳、化雲岳が見えた。ロープウェイの最終便も下って一人取り残された。石室の中は暗く汚れている。2階に上がってシュラフを出した。すきま風の入る石室は寒く、夜中、3、4回と目を覚した。どうも安物のシュラフは背中から寒さが忍び込んでくるようだ。

 

 

 

雨と霧のなかでシリセード!

 

2日目 

朝5時に出発。空から今にも雨が落ちてきそうな天候。目覚めていない身体にザックが重い。ザレた登山道の脇にキバナシャクナゲが顔を見せていた。7合目辺りでガスが発生、ねっとりと絡みつくようで身体を濡らす。金庫岩から頂上にかけてはまったく視界がきかない。晴れ間を待つがまったくの無駄のようで、登頂写真を撮ってから北海岳へ向かった。

 

下山方向が分からず、地図とコンパスで方角を定めた。途中から大雪渓になり、シリセードを楽しむ。ガスの切れ間から見えるはるか下方に、黒い点が見えた。岩だろうか、熊だろうかと考えているうちに、またガスの中に消えてしまった。結構びびった瞬間だった。コンパスで確認しながら下りたつもりだったが、裏旭キャンプ地よりもずっと左に下りてしまった。このため熊ヶ岳のすそを巻くように登り返した。

 

噴火口跡を過ぎてお鉢平に出た。この大噴火口跡にはまだ雪が残っていて、奇妙な紋様を作り出していた。この辺りからガスも切れて黒岳まで見通すことが出来た。しかし白雲岳は忠別沢方面から吹き上げるガスによってその姿を見ることは出来なかった。北海岳で小休止しているとまた小雨がぱらつき出し、ガスが流れ始めた。小休止もほどほどにして白雲岳に向かった。

 

 

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お鉢平

 

 

霧のなかでヒグマの恐怖!

 

  しっとりと濡れたイワウメの大群落を横切るようにしてガスの中を進んだ。赤岳沢源頭の雪渓を歩いていると、突然足元が大きく切れ落ちていて肝を冷やした。右に大きく迂回して白雲岳の裾のまで来ると雪渓の切れ間に夏道があった。白雲岳分岐まで来て、白雲岳頂上を目指すかどうかと思い悩んだ。しかし視界が悪いのと、身体も大分冷えているので中止を決断した。

 

雨に深く削られた登山道を下って白雲避難小屋を目指すが、先が見えないこともあってじんわりと熊の恐怖が襲って来た。なにせここは熊の生息で有名な「高原沼」から続くヤンベタップ沢の源頭なのだ。

 

 

 

image005冬期出入り口から

 

モレーンの上に建つ小屋に着いて入り口へ回ると、何とまだ冬囲いのままの状態。仕方なくはしごをよじ登って冬期出入り口から2階へ侵入した。

 

北海岳から一度も休憩を取らなかったおかげで、身体は汗びっしょり。バイク用の雨具は汗を逃がさないから内側から濡れる。やはり多少高くてもゴアテックスの雨具が必要なようだ。

登山靴の皮も完全にクニョクニョ状態で、靴下を絞ると大量の水が出た。乾いた下着に取り替えてから身体を温めるために食事をとった。

 

 

 

image007晴れ間をぬってパチリ

 

しばらくシュラフの中で休んでいると、雨も止んでガスも切れ、外が段々と明るくなり始めた。外に出ると高根ヶ原の遥か向こうに重量感のあるトムラウシ山が鎮座していた。時間もあったので白雲岳を登ってこようかと考えたが、熊の恐怖もあって取り止めた。

 

夕食は野菜の入ったラーメン。身体が芯から暖まった。今日もひとりで貸切り状態の小屋泊まり。夜中に風の音で何度か目がさめたが、小屋にあったマットレスのおかげで熟睡することが出来た。朝になると、濡れていたシュラフはすっかり乾いていた。

 

 

 

 

ビバークも覚悟の小屋探し!

 

3日目 

朝からガスと雨。なかなか出発の決断がつかない。ゆっくりとコーヒーを飲んでからおもむろに腰を上げた。はしごを下りてから装備を点検し、意を決して第一歩を踏み出した。小屋前のハイ松帯を下るとすぐに雪渓に出た。ガスで視界はかなり悪い。高根ヶ原は雲の通り道だと言う人もいる。雪渓で途切れ途切れになった道を探しながら慎重に進んだ。

 

 

 

image009高根ヶ原・高原温泉への分岐

 

スレート平にはケルンが数箇所あって道案内をしてくれた。ホソバウルップ草やキバナシャクナゲがガスの中から現れて、幻想的な世界を創り上げていた。一瞬、極楽浄土という言葉が脳裏をよぎった。高原温泉への道標には「熊に注意」と書かれていて、恐怖心を増幅させた。

 

道はほとんど川のようになっていて登山靴の中は水浸し。しばらく歩くと忠別沼が現れた。くるぶしまで埋まる道を外れ、小さな岩の上で休憩を取った。魔法瓶の熱いお茶が冷えた身体を温めた。ここから忠別岳まではゆるい登りが続くのだが、もう頂上と思うこと3、4回、だまされ続けてやっと山頂に着いた。

 

 

image011当然ながら展望はまったくない。もう身体の中は雨と汗でびしょびしょの状態、足の皮膚はもう白くうるけていた。

忠別沢に切れ落ちている断崖をのぞくと、吸い込まれるような落差の下方から、唸りを伴ってガスが吹き上げて来た。

 

 

何も見えない忠別岳山頂

 

 

 

身体もかなり冷えてきたので、忠別岳避難小屋へと腰を上げた。忠別岳からの下りは背丈をこえるハイ松の中を歩いた。おかげで身体の中は水浸し、小屋への分岐を左に折れて少し下ると雪渓に出た。ガスで視界も無く、踏み跡も無いので慎重に進んだ。雪渓は段々と斜度を増して沢筋に落ち込んでいて、これ以上進むのは危険と思われた。もう一度雪渓の始点に戻り、今度は右下方に歩いて見た。雪渓を下りきった辺りに細い道らしきものがあったので、それを辿って見た。すると突然、目の前に赤い三角屋根の避難小屋が現れた。ハイ松の中でのビバークも一瞬とはいえ考えただけに、安堵と同時に張りつめていた緊張感がほどけてしまった。

 

 

 

image013 やっと見つけた忠別避難小屋

 

小屋にはもちろん誰もいなかった。すぐに下着を乾いたものに取り替えた。安心したせいか空腹感が湧いて来た。昼食兼夕食を作るためにコンロに燃料を補給して火を点けた。どうも具合が悪く、ノズル周りに火が回った。分解掃除をしてもう一度火を点けて見るがまったく同じ状態。もう一度燃料缶を見てみると、なんとアルコールと書いてあった。似たような缶だったので、ホワイトガソリンと間違えて買ってしまった。この大失敗にショックを受け、頭は呆然となった。しかしなんとかメタ燃料だけで食事を終えた。その後、2階にあった毛布を持ってきてその中にシュラフを入れ、身体を滑り込ませた。暗い気持ちで巨人・阪神戦を聞きながら明日は晴れてくれと願った。だが外の風音は段々と強くなっているようだった。

 

 

 

 

雪渓のうえでオリエンティーリング

 

4日目 

昨日、早く寝たせいか、それとも風の音が大きいせいか3時過ぎに目が覚めた。外をのぞくと雨まじりの強い風が吹いていた。メタ燃料でカレーを作り、コーヒーで胃に流し込んだ。少し刺激的な朝食だった。お茶を沸かし、魔法瓶に詰めた。昨日、一昨日と暖かいお茶の有り難さは身にしみていた。出発にはまだ早いので、しばらくシュラフの中で横になった。どうせ今日もずぶ濡れになると思い、濡れた下着を身に着けた。肌に冷たく気持ちが悪い。くじける気持ちを励ましながら意を決して出発した。

 

分岐から五色岳までの尾根道は、忠別沢からの強い吹き上げで身体がよろけそうになった。それでも頂上近くのハイ松道に入ると、風がさえぎられてホッと一息つけた。五色岳から化雲岳に向かう途中、道が大雪渓の中に消えていた。ガスと雨のため出口がまったく分からない。右方向から順にハイ松帯をなぞって進んだ。やっとハイ松帯の中に切れ間を見つけた。雨でぬかった道をしばらく歩くと化雲平に出た。

 

しっとり濡れたお花畑が綺麗で、ホソバウルップ草が多かった。化雲岳は帰りに寄ることとして、ひさご沼避難小屋を目指した。化雲岳とトムラウシとの分岐にも雪渓が残っていて夏道を隠していた。地図とコンパスを出して方向を確認しながら進んだ。神経が疲れると同時に身体の方も疲れて来た。それでも少しずつ歩くと避難小屋への分岐に出た。熊の巣とも言われている「神遊びの庭」を恐る恐る通って行くとまた大雪渓に行き当たった。それもかなりの急斜面になっていた。もうそろそろひさご沼が見えてきてもいい筈だが、いっこうに現れて来なかった。どうやら少し左に進み過ぎたようだった。

 

 

image015雨に煙るひさご沼

 

もう一度登り返してから右方向へと下った。すると突然ガスの中に水面が現れた。雪渓はそのまま水面に落ち込んでいて、足を滑らせようものならそのまま水の中となりそうだった。山に来て溺死だけはしたくない。ここから避難小屋が右にあるのか左にあるのか分からないため、まず右に進んで見た。ほどなく右手奥に雪渓の急斜面が現れたので、ここがひさご沼の一番奥だと判断して今来た方向に逆戻りした。下りてきた場所から少し行ったところに避難小屋への道標があった。

 

 

 

 

 

image017ホッと一息コーヒータイム

 

小屋の中には誰もいなかった。山中で誰にも会わないのだから当然と言えば当然のこと。こんな天候で山に入るほうが無茶というものだろう。大いに反省をした。小屋の棚に「使用して下さい」と書かれたガソリンを見つけ、嬉し涙がこぼれるほど有難かった。ずぶ濡れの下着を乾いたものに取り替えてから食事を作った。やっぱりガソリンの火力は強力だ。十分身体が暖まってから、濡れた衣類を強く絞って細紐に掛けた。それでも時間がたつと雫が落ち始めた。小屋はしっかり造られているのですきま風は入ってこない。

 

窓から外をのぞくとガスが切れて沼全体が見渡せたが、相変わらず風は強かった。小屋に置いてあったシュラフを借りて、2枚重ねの寝床を作った。明日もこの調子ならトムラウシへ山の登頂は諦めるしかないかなどと、悲観的なことを考えながらいつの間にか眠ってしまった。

 

 

天はまだ我を見捨ててはいなかった。絶景の連続に満足、満足!

 

5日目 

目が覚めて外に出てみると、東の空に陽が射し始めていた。ニペソツ山や石狩岳がはっきりと見えた。しかし北の空からは黒い雲が飛ぶように流れて来る。ラジオの天気予報では天候の回復を報じているが、風が強く一抹の不安は隠せなかった。しかし雨もガスもないことから、今日の予定をトムラウシ山のピストン、そして天人峡までの下りと決めた。結構な長丁場である。

 

朝食をとってからいざ出発。沼を西側まで進み雪渓の急斜面を登った。途中で転ぶと沼まで滑り落ちそうだった。風は相変わらず強いが、天候は次第に良くなっているようだった。雪渓の上部まで上り、後ろを振り返るとひさご沼の全景が目に入った。昨日ガスの中で右往左往した大雪渓もはっきりと見えた。鞍部の分岐にコンロやシュラフをデポし、水筒、雨具、カメラ、軽食などの軽装で先ずは天沼を目指した。

 

image019    image021

 

ひさご沼避難小屋前にて             ひさご沼全景・後方は石狩連峰

 

 

 

歩き始めてから10分ほどの登りで目の前にトムラウシ山がズデンと現れた。大きい! 白雲岳避難小屋でガスの切れ間から見たトムラウシ山がいま目の前にある。感激で身体中に力が湧いて来た。

 

道は数回雪渓の中に消えるが、天候が良いのですぐに出口を発見出来た。それにしても岩、岩、岩で岩だらけ。天沼はほとんど雪に埋まっていて、初夏に見られるという絶景の庭園を見ることは出来なかった。この頃から雲ひとつ無いピーカン状態になり、化雲岳越しに旭岳が見えた。あそこから歩いてきたのだと思うと感無量の気持ちだった。風は相変わらず強く冷たい。帽子が飛ばされそうになるので、ゴアパーカーのフードを被った。

 

 

 

image023トムラウシ山と北沼

 

岩に付けられたペイントはなだらかな起伏を伴って山頂へと続いていた。途中、日本庭園、ロックガーデンと地図に記入されている場所を通過するが、特定することは出来なかった。ただただ素晴らしい自然の造形の妙に感服した。ナキウサギが生息するというが、風の音でその声すら聞くことは出来なかった。広いガレ場を登りきると頂上直下にある北沼に出た。まわりに残雪があり意外と大きい。平坦地にあるため穏やかな風景が広がっていた。沼を右に見て進むとオプタテシケ山との分岐点、ここから頂上に向かって岩の上を登った。

 

 

 

 

image024トムラウシ山頂から十勝連峰を展望する

 

まるで岩を積み重ねてできた山のようである。途中、チッチッと鳴き声が聞こえたような気がしたが、ナキウサギの姿はなにも見えなかった。やっと頂上と思ったら火口跡の北側で、頂上は南西側にあり、標柱が見えた。

火口跡内側の残雪を慎重に横切るが、下部には雪解け水が池を作っていて青く光っていた。ここで滑り落ちたら今までの苦労が水の泡になる。足がすくむが一歩一歩キックステップで進み、岩場の道に出た。もう山頂は目の前にある。雲ひとつ無い空の向こうに十勝連峰が見えた。まるで見下ろしているような光景だった。

 

 

 

image026トムラウシ山頂・寒い!

 

ついに頂上!思わず両手を高く挙げた。嬉しくてトムラウシ山と書かれたプレートを何度も手で撫でた。さっそく記念写真を撮ろうとするが、強い風のために三脚が安定しない。足元から手ごろな石を探して三脚にぶら下げ、なんとか記念写真を撮り終えた。あまりの寒さで身体が震えるが、岩陰に入り雨具を着ると少し落ち着いた。岩から落ちる水滴は寒さのために小さな氷柱になっていた。

 

360度の大パノラマは遮る山さえも無かった。十勝、大雪の峰々はもちろんのこと、芦別、日高、阿寒の峰々まで見えた。雨上がり特有の空気が澄む現象のお陰だ。雨とガスにたたられた3日間の苦労がこれで全部消し飛んだ。岩に腰掛け、熱いお茶で軽食をとった。一息ついてからまた展望を楽しんだ。いつまでも居たい気持ちで名残惜しいが下山を開始した。

 

 

 

 

また残雪を慎重に横切り、こんどは旭岳を遠くに見ながら下った。途中、セスナが飛来してきて上空を旋回するので手を振ると、何回かバンクを繰り返してくれた。写真撮影だろうか、それとも遭難者でも出たのだろうかといろいろ考えながら歩いた。

デポした分岐まで戻って休憩を取った。ザックの荷物を整理してから腰を上げると急にザックが重く感じられた。見通しの良い斜面を上り詰めると、へそのような化雲岳の岩塔が見えた。途中に昨日通ったひさご沼への分岐があった。ガスのためルート探しに苦労したことなど、まったく信じられないほど今は道がはっきり分かった。

 

化雲岳からは真向かいに旭岳、右に忠別岳、白雲岳が残雪紋様を見せていた。ガスと雨の中をただただ歩いた高根ヶ原はなだらかな坂のようだった。へそのような岩塔に取り付いてみるが、意外と手強かった。ここまできて怪我などしたら元も子もないと思い、へその登頂は諦めた。

 

 

 

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化雲岳から表大雪の大パノラマ。左奥から旭岳、熊が岳、北海岳、白雲岳、緑岳。中間右に

断崖を見せる忠別岳。目の覚めるような光景にしばし呆然となる。

 

 

ここから天人峡までは14キロ、長い長い下りが続いた。小化雲岳まではトムラウシ山を振り返ることが出来たが、それを過ぎると尾根に隠れて見えなくなった。さようならトムラウシ山、また来るからなと思わず感傷的になってしまった。

第2花園、第1花園を過ぎる頃から潅木が現れた。この頃から蚊が身体にまとわり付き出した。汗をかいているのでまわりの蚊が寄って来るようだった。顔や頭を数箇所刺され、ついに我慢できず防虫スプレーを取り出すために立ち止まった。するとこの時とばかりに蚊の集中攻撃が始まった。こんな時に限って防虫スプレーはザックの一番下に入っている。中身を掻き出すように防虫スプレーを取り出し、顔、頭といわず全身に噴きかけた。飛び交う蚊にも「この野郎!」とばかりに噴きかけた。大分刺されたようで顔が痛かった。

 

滝見台からは羽衣の滝が良く見えた。カメラフィルムは化雲岳で切れたので、この絶景を脳裏にしっかりと焼き付けた。疲れてきたので休憩を取りたいが、止まると蚊が寄ってくるのでそのまま歩き続けた。最後の下りは31回のつづら折り、さすがに膝が笑い痛みも出て来た。しばらく苦しんで歩いていると木々の間から車の音が聞こえて来た。

 

やっと天人峡にたどり着いた。5日目にして初めて人を見た。予約してある「天人閣ホテル」に向かい、ホテル前で泥だらけになった登山靴を洗った。ついでに足も洗おうとして靴下を脱ぐと、白くふやけていた。フロントで宿泊の手続きを済ませ、荷物を部屋に置いてから風呂へ行った。露天風呂でゆっくり汗を流すと、気持ちの良い疲れがじわりと出て来た。

この後部屋で冷たいビールを飲みながら山菜づくしの夕食をとった。もし今日も雨でトムラウシ山登頂を諦めていたら、これほど美味いビールは飲めなかっただろう。初めての大雪山縦走が無事に終わり、もう一度ビールをグビ、グビ、グビっと飲んだ。

 

 翌朝、散歩がてらに羽衣の滝と敷島の滝を見に行った。羽衣の滝は滝見台から見たよりもはるかにスケールが大きい。敷島の滝は忠別川の水量を一気に吐き出したようで、落差の割に迫力があった。帰り道でまた蚊に刺されてしまった。ここの蚊は大きいのか、見る見るうちに顔が腫れてしまった。このあと旭岳温泉までバスで戻り、愛車XL250で一気に山を駆け下りた。

 

 

後記・何年かしてコンロはガスカートリッジ方式に、雨具はゴア・テックスのものにしたが、シュラフは相変わらず安物を使って寒い思いをしている。登山用品店ではいつも羽毛のシュラフを手に取って、溜め息ばかりついているが、まだ購入する決心がつかない。たぶん貧乏性なのだろうと思う今日この頃である。

 

 

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