遠藤淑子


『狼には気をつけて1』
第1話
あらすじ

「荒くれ者大募集!」の求人広告に吊られてアービィング社の面接会場へやってきた貧乏探偵フォレスト・キース。                 
が、会場へ着いた途端天井から大量の金だらいが降ってきて、他の「荒くれ者」はみんな倒れてしまいます。
実はこれは運の良さを試すオーディション。
唯一無事だったフォレストは、アービィング社の社長の一人娘、アレクサンドラのボディガードとして雇われます。
実は大資産家のアービィング家では、強いものだけがトップに立てるという風習なのです。
で、現在の総裁アリス・アーヴィングは、4人の孫に手紙を出し、一番早く見舞いに来た者に財産を相続させる、と伝えたのでした。
アリスは4人の子供にそれぞれ会社を継がせていましたが、その内、通信事業で目覚しい発展を見せている末の息子アーサーの娘がアレクサンドラなのでした。
当然アレクサンドラも一番早く祖母のもとへ行かなければなりません。まだ10歳の彼女には同行者をつけても良い、との許可が出ていたので、選ばれたのがフォレストでした。
かくして二人は祖母に会うため出発します。
が、これはただのお見舞いではありません。一番最初に祖母の元へ辿りつけば次の総裁です。だからいとこ同士で相手を行かせまい、と激しい戦いが繰り広げられるのです。
ちなみにアレクサンドラは、一人のいとこにはひさかに下剤をし込み、一人の従兄弟の家の前では工事で通行止めにさせ、もう一人は脱税容疑で踏み込まれるようタレコミ電話をしておきました。
が、こんなことでアレクサンドラを腹黒いなんて言ったらバチが当たります。
だって、祖母の元へ向かうアレクサンドラとフォレストの乗った車は爆破されるのですから。
さらにはどこかのいとこが雇った殺し屋に捕らえられたりします。さらには車に轢かれそうになり、行く先々で追っ手がやってくるのを妙だと思ったフォレストが気づいた時にはすでに遅かったのです。
実は弁護士が裏切ってアレクサンドラの移動ルートを漏らしていたのでした。
従姉と裏切り者の弁護士に湖の近くまで追い詰められたフォレストは、アレクサンドラみたいな子供相手に殺そうとすることないだろう!と怒ります。
が、従姉は意外なアレクサンドラの正体を話し始めました。
アレクサンドラは、6才でMITに入学し、3年で卒業した天才少女だというのです。
しかも、今は父の会社の実質上の経営者であり、父は娘の優秀さと自分への不甲斐なさから麻薬中毒に陥って入院中だというのです。
それまで生意気だったアレクサンドラは、父親のことを言われた途端うろたえ、泣き出します。
が、これで勝ったと思った従姉が油断した隙に、フォレストは従姉と弁護士を湖へ落とし、無事にアレクサンドラを祖母の元へ送り届けました。
孫4人の中で一番最初にやってきたアレクサンドラに、祖母は約束通り財産をすべてゆずると書いた書面を渡します。
が、アレクサンドラはその紙を破り捨て、こんな家風にしばられて競争させるより、父の見舞いに来て欲しい、と訴えたのでした。
が、実はアレクサンドラは書面を破り捨てたフリをしただけ。父親の治療費変わりに遺産をもらうのです。
恐ろしいガキ・・・と思いつつ、フォレストはアレクサンドラに、父親が麻薬に走ったのはお前のせいじゃない、と言います。
無事に仕事をこなした二人。が、腐れ縁はまだまだ続く予定です。


ま、シリーズ1話目ってことで、軽くジャブってとこでしょうか。
でも、天才少女で小生意気なアレクサンドラの、実は父親思いの子供らしいところや、アレクサンドラに振りまわされているように見えて、実は仕事前にアービィング家について調べていたり、一人だけ金ダライに当たらなかった理由?が運の良さではなく優秀さからだったりして、なかなか性格設定や、それを説明するいきさつがうまく描かれていると思います。
これからが楽しみなシリーズです。

お気に入りphrases

「二度裏切るとどちらにも信用されないので裏切りは一度までとしてるんです。」

ちょっと意外な線から引用してみました。
アレクサンドラを裏切った弁護士に、もう1度買収されてみない?とアレクサンドラが持ちかけたところ、弁護士が笑いながら答えた言葉です。
これを聞いたアレクサンドラ、
「抜け目ないわ。ね、いい弁護士でしょ?」
と言ってます。
確かに・・・すぐに湖に突き落とされる脇役にしては含蓄のある言葉です。
人間は嘘をついたり裏切ったりしますが、その結果が自分の思い通りにならないと、嘘をついたり裏切った相手を逆恨みしがちです。
でも、裏切るのは1度・・・それは、「裏切り」が何かをよく分かっていて(少なくとも人の信用を落とす行為)それは裏切った相手に信用されなくなるだけでなく、寝返った相手に対しても、100%の信頼は得ていないという覚悟のもとに裏切っているということです。
だからこそ、裏切った相手が良い条件でもう1度戻って来いといったところで、本気で信用されないことが分かっているので迷うことなくきっぱり断っています。
どちらか力が上の方にタイミング良くついて、おいしい汁を吸いたい、というのが人情ですが、人生そううまくいきません。
弁護士にはそれが分かっているから、裏切りは1回なのでしょう。
これを見て想像したのはねずみ講や、それに準じた、「もうかる」なんていって人を引き込む商法です。
人生そんなに甘くない。
「らくらく高収入」なんて言われてもそんなのありえないし、「これを使えば1ヶ月でお肌がきれいに!」って言われても、そんな魔法のような薬はありえない。
私は、いいことばかり言う人はあまり信用しない性格で、友達についても、人をほめてばかりの人より、悪い時には悪い!と言ってくれる人の方を信用します。
この弁護士を通じて思うのは、
「どんなに言い条件をしめされても、それにのってほいほいついていったらろくなことない。己の分をわきまえて、あっち行ったりこっち行ったりしないでおこう。」
って言いたいんだろうな〜ってことです。
たまにネットでももうけ話をみかけますが、あり得ないからね・・・。
あと、新聞広告なんかでよくある資格講座。
楽に資格が取れて高収入なんてありません。あったらみんなやっています。
「自分にだけは特別にもうけ話がきた。」
なんて思う人が信じられません。己の分をわきまえてたら、自分にだけもうけ話がくるかどうか分かると思うのですけど。
ま、かけをするなら1回で充分ってことですね。







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