今回より、おもしろい?「樹木の話」を連載してみようと思います。
ちょうど適当な本がありましたのでそれを引用してみます。
今回は初めに「いちい」について                  渡辺善幸

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「いちい」
 
★いちい(一位、水松)・イチイ科
イチイは一位の木
正一位の貴人が持つ笏(しゃく)を作った木

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イチイの名前は一位に由来
 一位とは聖徳太子が推古天皇時代に定めた、朝廷官人の序列を示す位階のうち最高位、
つまり正一位のことである。
 仁徳天皇時代に正一位の貴人が持つ笏(しゃく)を一位で作らせたので、それからこの木を
イチイと呼ぶようになったと言われている。
 岐阜県中北郡の飛騨山地に日本海と太平洋の分水嶺をなしている山に位山があり、昔こ
の山に産するイチイの木から笏(しゃく)を作ったので、この山が位山の名を賜ったという言い
伝えがある。
 笏(しゃく)を作った木のためシャクノキという異名もある。他にオンコ、アララギ、アカギ、スオウ、
ミネズオウ、アブラギ、などの異名の多い樹種で、岩手ではオンコ、オッコの名で親しまれている。
 オンコの語源ははっきりしないが、一説によると東北地方の方言で、イチイの材は朱色を帯びて
いるので、アカギ(赤木)の方言があり、これに東北地方独特の愛称「コ」をつけて「アカギッコ」と
呼ばれ、アカギッコからアッコの名が生まれ、さらに転じてオッコ、オンコとなったと言われる。
 
  寿命の長い常緑樹
 イチイは雌雄異株の常緑針葉高木で、北海道から九州およびアジア東北部に分布しており、
やや暗い林の中に多くみられ、純林を作る。
 秋には赤い果実をつけるが、黄色う果実がつくキミノオンコ、高さが1〜2bで横に広がり横枝の
葉が螺旋状につくキャラボク、金色がかったオウゴンキャラと呼ばれる変種がある。
 雌株の趣旨は秋になると種子の周りを包んだゼリー状の仮種皮が赤く熟して美しい。この仮種皮は
甘くて食べられる。果実酒も作るが、中の種子は葉とともに有毒である。
 
 庭木、床柱としても一流の木
 イチイの材は紅褐色、緻密で光沢があり、弾性が強く芳香がある。このため用途も広く彫刻、器具、
仏像、鉛筆材などに用いるが、碁盤としても優れている。また、木理の美しさから床柱、笏(しゃく)、
茶筒、菓子器などの材料に用いられている。
 昔、アイヌの人たちはイチイで仕掛けの太い弓をつくったが、この弓はいくら雨や雪にさらしても狂
わなかったといわれる。岐阜県飛騨高山の里では、匠の手による一刀彫やイチイ細工の妙技がみ
られ、北海道では庭木として多く用いられ、刈り込みづくり、生け垣用などに人気の高い樹種である。
 
 寒天に 吹きさらさるる いちいの木 いちいひびけり ふかき夜空に
                             北原 白秋
                    引用  「おもしろい木の話」北海道林業改良普及協会編  承認済み