いちょう(銀杏・公孫樹・鴨脚)
◎イチョウ:いちょう科
東アジアにただ一属一種を残す
生きている化石と言われる古世代生まれの木
イチョウは中国名ヤーチャオの転化
元禄時代、日本からヨーロッパに始めて紹介された木であるが、元々は中国に野生してい
たのものが栽培され、我が国へは観音像の渡来と共に僧侶によって運ばれてきたと言われ
る。
 イチョウの名の由来は中国名「鴨脚」の近世中国音である「ヤーチャオ」から「イーチ
ャオ」になまり、「イチョウ」と転訛して和名になったと言われる。
 鴨脚は葉の形が水鳥の足形に似ていることから名付けられたものであろう。
 一説に「銀杏」の唐音なまりというものもあるが、銀杏はYIN XING(エン シン)で
少々無理があるようで鴨脚説が有力である。
 また、イテフの仮名を慣用してきたのは「一葉」に当てたからであり、語源とは関係な
い。
 古くから神社仏閣などに植えられ、大木になるのみでなく、樹齢も長く保つため天然記
念物として保護されているものが多い。またイチョウは代表的な防火樹としてもしてられ
ており、神社仏閣を火災の延焼から守るため植えられたとも言われる。
 なお、公孫樹の字を当てるのは、祖父の代に植えても実が生るのは孫の代になってから
稔るからだといわれる。

良く分枝する落葉高木
 中国が原産とされ、中国及び日本で植栽されているが自生地は知られていない。雌雄異
株で早春に短枝に花を付ける。雄花は穂状で下垂し、多数の雄しべからなる。雌花は長い
柄の頂端に二個の裸の胚種をつけ、うち一個が種子となる。春に花粉が付くが秋に精虫を
出して受精する。
 種子は球状で、外皮は橙黄色肉質で臭気が強く、これに触れるとかぶれることがある。
我々が食する銀杏は内種の中の胚乳である。
 この木は古世代に出現し、中世期から新生代第三紀までは地球上各地で繁茂していた。
高さ30メートルくらいになり、樹幹は真っ直ぐに立ち、多くの太い枝を箒状に出す。長
命で伝説のある銘木も多く、大きい樹では幹の不定芽のところが異常に発達して乳のよう
に垂れ下がる気根様のものをぶら下げた奇樹も多い。この「乳」の内容は柔らかい細胞か
らなり、過分のデンプンを貯蔵しており、主として雄木に多く発生するようである。
 また葉に種子が付く奇形のものはオハツキイチョウと呼ばれる。
 
中華料理はこのマナイタで!
 材は柔らかいが質が緻密で細工しやすく、将棋の駒、将棋盤、彫刻材として利用される。
また中華料理では欠かせぬ木でマナ板はすべてイチョウを丸太切りにした木口を使うもの
が多い。果実内の種子(ギンナン)は食用で、茶碗蒸しや中国料理に用いられる。
 最近、イチョウの葉から高血圧症治療薬が生産されることが分かり、ドイツの製薬会社
が葉を原料にフラボノイドを抽出し、血管調整剤を製品に出しているという。
 
       金色の小さき鳥のかたちして
            銀杏散るなり夕日の岡に      
                           与謝野晶子