<樹木の話>  日本人は一年間で1人平均約一本の木(直径34センチメートル、高さ24メートル)を使っています。 日本国内では、年間1億本以上伐採されています。 ◆予備知識◆  長い目で見れば、樹木は大気中の二酸化炭素(温室効果の主因)を取り除く働きをしてくれます。だから、 木を植えることは温室効果を抑制するいい方法です。木を植えるのは思ったより簡単です。 ◆ご存じでしたか◆ ★一万年前、人類がまだ農業を知らなかった時代には、地球上の約九一億ヘクタール以上の土地が森林で覆 われていました。ところが、今地球上に残っているの森林は、四〇億ヘクタールそこそこです。地球の森林 面積は一九七〇年から一九八五年の一五年間で約一億ヘクタール(日本の国土の約二.六倍)も減少しまし た。 ★地域のよっては、森林の伐採がものすごいスピードで進んでいます。カリフォルニア州の都市部では、補 充可能なペースを四倍も上回る速さで樹木が枯死したり抜かれたりしています。熱帯林は、毎年一一三〇万 ヘクタールの割合で破壊されています。ナイジェリアのように、かつて木材を大量に輸出していた国が、現 在では木材輸入国に転じています。 ★樹木と人間や動物とは、生命の一番基礎のところで相互に依存しあって生きてきました。(エコロジー) 人間は酸素を吸い込んで二酸化炭素を吐き出します。一方、樹木やその他の植物は二酸化炭素を取り込んで 酸素を作ります。森林面積が大きく失われれば、それは地球上の生命体を支える大気の組成に直接影響して きます。 ★樹木は二酸化炭素を吸収して「温室効果」を緩和します。成木一本あたり、平均して年に六キロの二酸化 炭素を吸収すると考えられています。 ★森の木々が自然に枯れていく場合、あるいは伐採が節度をもって行われている場合は、次の木が自然に育 ってくるので、大気中のに酸化炭素が増える心配は有りません。けれども、森林が焼き払われたり皆伐され てしまうと、二酸化炭素のほとんどは大気中に放出されたまま残って仕舞います。地球全体でみると、大気 中に放出された二酸化炭素の二五パーセントは、森林を破壊しなければ増加しなかったはずのものなのです。 ★樹木は木陰を作り、葉から水分を蒸散させて、周囲の気温を下げてくれます。この働きは、田舎よりも都 市部において特に顕著です。町中で木がまとまって植えてあるところでは、周辺の気温が五,六度低くなる ので、冷房用の需要が一〇ないし五〇パーセント少なくなります。その上、エネルギー節約によって木々の 吸収能力の一五倍もの二酸化炭素が放出されずにすむため、そっちのほうからも地球の温暖化を抑制できる のです。 ◆私たちが出来ること◆ ☆木を植えてみたいけれど、どうやったらいいのかわからないという人は、地元の植木屋さんや園芸同好会、 あるいは植物園などに電話するか足を運んでみましょう。木を植えるのは思ったより簡単です。熱心に手伝 ってくれる人もたくさん居るに違い有りません。 ☆地域ぐるみで植樹運動をしませんか。と近所に声をかけてみましょう。すぐ近くに植木に詳しい同志のた くさん住んでいるのを知って、驚くことでしょう。 ☆ただ地面に突き刺して後は放りっぱなし、というのでは木は育ちません。ほかの植物と同じように、樹木 もはじめの二年ぐらいは水をやり、支柱を立て、敷きわらを敷いてやり・・・という程度の簡単な手入れが 必要です。 ◆こんないいことが有ります◆ ▽都市部に一億本の木を植えれば、アメリカ全体で二酸化炭素の放出量を年間一八〇〇万トン減らし、エネ ルギー消費量を年間四〇〇億キロワット時(四〇億ドル相当)減らすことが出来ます。 ▽木を植えると、その効果は次々に積み重なって増えていきます。一本一本の木が何年にもわたって環境を 浄化してくれるからです。たとえば、今年一〇万人が一人一本ずつ木を植えたとすると、その木々は西暦二 〇一〇年になっても年間何十万キロという二酸化炭素を吸収し続けるわけです。もしも、この一〇万の人た ちが、今年から二〇一〇年まで毎年1本ずつ木を植え続けたとしたら、二〇一〇年にはこれらの木々が年間 一万トンの二酸化炭素を吸収してくれることになります。                                     文 渡辺善幸