宮脇俊三


 台湾鉄路千公里

 宮脇さんの海外版第一弾です。
 1980年に1週間かけて台湾の鉄道を乗り潰したときの紀行文で、当時は南部がまだ未開通で一周できませんでした。
 海外でももちろん一人旅で、食べ物の話題も盛りだくさん。

 なお、未開通部分は、その後1992年に開通し、その旅行記は、「豪華列車はケープタウン行き」に収録されています。
 シベリア鉄道9400キロ

 シベリア鉄道を7泊8日乗り通すのも大変そうですが、始発駅ハバロフスクまで行くのもまた大変。著者が乗車した1983年当時は、まだソ連時代。手続きも煩雑だし、横浜からナホトカまでの船も・・・。また、8日間かけて着いたモスクワ駅への感慨がソ連らしくあっけない。そんな様子が、宮脇さん独特の筆致で綴られていきます。でも、一度乗ってみたい列車です。
 汽車旅は地球の果てへ

 「旅」と「週刊文春」に掲載された6編の紀行文集。
 行き先は、アンデス山脈、ジブラルタル海峡両岸、タンザニアのサバンナ、ナイル川、オーストラリア大陸横断、北欧のスウェーデンとノルウェーの各地の鉄道です。各鉄道とも有名といえば有名ですが、ヨーロッパやアメリカと違ってそう簡単には乗れない鉄道ばかりです。
 椰子が笑う 汽車は行く

 今回は、東南アジアの鉄道の紀行文集。
 行き先は、フィリピン、泰緬鉄道とマレー半島、台湾、ジャワ島の各地。このうち、台湾以外は時刻表通りに列車が動かないため、氏もちとご苦労の様子。
 中国火車旅行

 中国の鉄道紀行集。ちなみに中国語で「火車」とは「汽車」のことです。ちなみに「軟座車」は「グリーン車」、「硬座車」は「普通車」、「軟臥車」は「A寝台」、「軟臥車」は「B寝台」、「餐車」は「食堂車」のことです。今回の乗車区間は北京−広州、上海−烏魯木斉(ウルムチ)、大連−哈爾浜(ハルピン)、成都−昆明です。
 中国の鉄道地図を見ていると乗りたくなりますが、実情は一時代前の日本の鉄道といったところでしょうか。
 インド鉄道紀行

 中国と並ぶ鉄道大国インドの鉄道紀行。
 1988年当時営業キロは6万2千キロあまりです。
 氏は、インド旅行中カレーばかり、また下痢はするし、酒は飲めないしと良いことは何もなかったようですが、もう一度インドを訪れています。私の友人もインドに何回か出かけていて、行っている間はもう来まいと思うようですが、また訪れたくなる国のようです。
 そんなインドの魅力(?)満載の鉄道紀行です。
 韓国・サハリン鉄道紀行

 隣国韓国とサハリンの鉄道旅行記。
 ともに、一時日本が鉄道を建設したこともあるため、多少日本の色が残っているようです。特に、サハリンでは戦前の車両が残っていたり、あるいは使われていたりします。
 氏の旅行ですので当然、食の話題も豊富です。
 ヨーロッパ鉄道紀行

 今回は、時刻表通りに走るヨーロッパの鉄道紀行集。東欧から、イタリア、フランス、スペインまで、また、TGVの高速鉄道からシチリアのローカル線まで、ヨーロッパとはいえ、かなりバラエティーに富んでいます。
 この本を読んで氏の紀行文の真骨頂は、ローカル線にあるように思いました。
 豪華列車はケープタウン行き

 今回もまた、台湾、ベトナム、南アフリカ、ブラジル、マレー半島とバラエティに富んでいます。
 このうち台湾は氏の初期の作「台湾鉄路千公里」中では未開通部分だった高雄−台東間も含めて台湾を一周しています。14年前との発展の様子が伺えます。
 なおブラジル編ではほとんど鉄道は出てきません。


エッセイ集

 終着駅は始発駅

 宮脇さん初のエッセイ集。雑誌「旅」「文藝春秋」「家庭画報」などに寄稿した文を集めたものです。
 「通勤電車もまた楽しからずや」「赤字線の乗り心地」「幌内鉄道紀行」「陽気な睡魔」など29編。
 長新太さんの挿絵もまた良し。
 汽車との散歩

 宮脇さん、2冊目のエッセイ集。昭和54年から61年にかけての69の文章を収録。掲載新聞・雑誌も多彩で、「読売新聞」「文藝春秋」「野性時代」「季刊民族学」「図書」・・・・。「時刻表2万キロ」や「最長片道切符」「台湾鉄路千公里」などの裏話も。
 旅は自由席

 宮脇さん、3冊目のエッセイ集。43の文章を掲載。
 今回は、鉄道関係だけでなく、「仕事部屋のうちそと」の章には、「わが家の教育方針」「モーツァルトの活力」なども・・・。
 車窓はテレビより面白い

 23編のうち18編は「問題小説」に掲載されたもので、他の5編は、小学館版「日本鉄道名所」と「旅」に掲載されたものです。このうち「御殿場線を歩く」では、我が地元駅、富士岡駅も出てきます。
他には「湧網線よ、さようなら」「大井川鉄道讃歌」「仙台の地下鉄」など。
 駅は見ている

 21編のうち12編は小学館版「JR・私鉄全線各駅停車」に連載したもの。他の9編は「旅」などに掲載されたものです。
 「夕張駅の移転」「大宮駅の思い出」「「車窓16選」「旅行作家でもボヤくことはあります」他。
 線路の果て旅がある

 18編のうち12編は小学館版「全線全駅 鉄道の旅」に連載されたもので、残りは「旅」などにけいさいされたもの。
 「阪神の私鉄の面白さ」「姥捨・熊ノ平・土合」「終着駅の10の型」他
 乗る旅・読む旅

 「旅」に掲載されたもの5編と「宮脇俊三鉄道紀行全集」の月報に掲載された6編を収録。また、後半は北杜夫や阿川弘之、種村直樹などの諸氏の文庫の解説、その他書評などを収録。ちょっと今までとは多少毛色が変わったエッセイ集です。
 
 鉄道旅行のたのしみ 集英社文庫

 
小学館版「全線全駅鉄道の旅」収録の「鉄道旅行の楽しみ」と同じく小学館版「国鉄全線全駅停車」収録の「駅は見ている」を収録したもの。この本は単行本化せず、いきなり文庫化。
 終着駅

 デビュー作「時刻表2万キロ」と「最長片道切符の旅」の間に、歯科技工士向けの専門誌「クインテッセンス・ジャーナル」に連載されたエッセイを始め、各誌に掲載された小編を集めたものです。
 初期の頃のエッセイがなんとも初々しい。
 宮脇俊三最後のエッセイとのことですが・・。


歴史編

 時刻表昭和史  角川選書

 昭和8年の「山手線」から、昭和20年8月15日の敗戦の日にも時刻表通り動いていた「米坂線」まで、13編の体験的「時間旅行」、時刻表青春の記。
 売れ行きはあまりよくなかったようですが、著者には一番愛着のある著書とのこと。
 徳川家康タイムトラベル 

 昭和56年から刊行された「山岡荘八全集」の第一巻から第十三巻までに挿入されたパンフレットに掲載されたものをまとめたもの。
 このあと刊行された○○史紀行の徳川家康版といったところでしょうか。小田原から出雲まで13編が収められています。
 古代史紀行

 「日本通史の旅」と題して「小説現代」に連載されたもののうち、奈良時代までのものを一冊にまとめたもの。氏の著書にしては厚く、350ページ弱あります。対馬をはじめ、太宰府、京都、奈良、秋田まで旅しています。
 平安鎌倉史紀行

 日本通史の旅の第二弾。
 今回は、京都、奈良は当然のことながら、筑波、平泉、屋島、蒙古襲来の福岡などなど。
 今回はさらに厚く400ページ弱。読み応え十分です。
 昭和8年澁谷駅

 時刻表昭和史やその他の雑誌などに掲載された渋谷駅関係の文章を集めたものに、小学校時代の同級生2人との対談をおさめ、一冊にしたもの。
 増補版時刻表昭和史
 前述の時刻表昭和史に、昭和20年9月から昭和23年4月までの5編を加え、新たに増補版として刊行したもの。
 あとがきに、時刻表昭和史が売れ行き芳しくなく、絶版となったことを残念がっています。
 時刻表でたどる鉄道史 キャンブックス

 明治5年鉄道開業から、平成9年までの鉄道史を豊富な時刻表の資料をもとにたどる。宮脇氏は巻頭に、「時刻表への感謝」というタイトルで、時刻表に関する思い出を語っています。
 室町戦国史紀行

 日本通史の旅の室町時代、戦国時代編。函館、一乗谷、博多など精力的に廻っています。結局、このあと江戸紀行は、氏は体力的なこともあり、執筆を断念しています。
 紀行文としては、これが最後となりました。
 史記のつまみぐい

 著者には珍しく、全く鉄道には関係ない著作です。
 新潮社の広報誌「波」に平成3年11月号から平成4年11月号まで連載されたものです。史記への深い造詣が伺える一冊です。


対談集、ミステリー、他

 時刻表ひとり旅 講談社現代新書

 宮脇氏には珍しい新書本。しかもほとんど書き下ろし。
 「なぜ時刻表がおもしろのか?」という問いに答える形で、時刻表の面白さを存分に語っています。ですが、書かれたのは国鉄時代。
 時刻表→駅→切符

 日本近代史が専門で鉄道史にも造詣の深い原田氏との対談集。「鉄道とのなれそめ」「時刻表」「駅」「切符」「汽車に乗る」と章が進み、二人の鉄道に関する話題はつきません。
 殺意の風景

昭和60年第13回泉鏡花賞受賞作。
新潮社のPR誌「波」に掲載された20編の内、統一性の失われる2編を削除して単行本化した物。
氏、唯一のフィクションにしてミステリー。もちろん、鉄道に関する内容もたっぷりです。

 私の途中下車人生

 質問に答えるという形で氏の生い立ちを綴ったもの。
小さいときの鉄道の思い出から、衆議院議員だった父に連れられての旅行、戦中・戦後の思い出、サラリーマン時代、そして鉄道紀行作家時代などを淡々と語っておられます。
 鉄道に生きる人たち

 国鉄時代の現場の人たちとの対話集。「運輸界」に昭和54年8月号から56年1月号に連載されました。ダイヤ作成、保線、土木、運転、車掌、駅長、公安職員・・・。16現場17人の国鉄マンとの鉄道談義。
 ダイヤ改正の話

 昭和63年3月のダイヤ大改正について、JR7社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、貨物)の「スジ屋」さん(輸送課長)との対話集。ダイヤについての裏話満載。
 宮脇俊三自選紀行集

 「JTB紀行文学大賞」が10年を迎えるにあたり、編集委員五人の自選紀行集を編集、その一冊として刊行されたものです。
「時刻表2万キロ」「最長片道切符の旅」「汽車旅12ヶ月」「増補版時刻表昭和史」「殺意の風景」「ローカルバスの終点へ」「日本探検二泊三日」「古代史紀行」「平安鎌倉史紀行」「夢の山岳鉄道」から、1〜3編を収録。
 史記のつまみぐい

 著者没後一年、遺稿エッセイ。
新潮社のPR雑誌「波」平成三年十一月〜平成四年十一月号に連載されたもの。愛読していた「史記」に著者が自分の思いを託して書きためたものです


「宮脇俊三」をテーマにした 雑誌・書籍

 旅 2000年9月号 884
 特集 宮脇俊三の世界


 宮脇氏自身が心に残る路線として餘部鉄橋、大井川鉄道、米沢駅を再訪するルポルタージュを始め、フォトアルバム、北杜夫と阿川弘之の対談などねファン垂涎の特集です

別冊付録 【復刻】宮脇俊三自選集
宮脇俊三の旅 旅2003年8月号別冊

 上記の「旅」の復刻版。
 元の雑誌の記事に加え、阿川弘之や種村直樹、櫻井寛などの追悼文を加えられています。

ただし、別冊付録はついていません。
 宮脇俊三

 別冊太陽の一冊とて出されたもの。グラビア写真等が多く掲載されています。
 父・宮脇俊三への旅

 宮脇氏の長女 灯子さんが書いた普段着の父の様子を綴った一冊です。

 宮脇俊三 時刻表が生んだ鉄道紀行
 
 KAWADE夢ムックとして発行されました。単行本未収録コレクションとして本書に掲載されているが、このあと発行されました「終着駅」にすべて収録されています。
 そのほか、阿川弘之や種村直樹、西村京太郎諸氏等との対談がなかなかおもしろい。
 父・宮脇俊三が愛したレールの響きを追って
 
 宮脇氏の長女 灯子さんが父が訪れた場所を再訪しする旅。
 宮脇俊三と旅した鉄道風景 
  写真・文 櫻井寛

 長年、宮脇氏の取材に同行し、写真撮影をしてきた著者の写真と宮脇氏の想い出のエッセイ。特に、宮脇氏の楽しそうな旅の写真がよい。
 鉄道紀行宮脇俊三取材ノート
  宮脇俊三取材ノート製作委員会

 名著 「最長片道切符の旅」の取材メモ、自筆原稿や「時刻表昭和史」の自筆原稿を中心に、書斎、書棚の様子、「時刻表2万キロ」の乗りつぶし地図などを紹介。
 没後10年になるが、いまだに関連本が出版されるとは、氏の人気を物語る。

宮脇俊三文学館

ホームページトップ