手元供養

気になるコラム

東洋経済オンライン−2013年10月23日(水)配信
格安ベンチャーも出現!激変する葬儀市場

週刊東洋経済
東洋経済新報社
2013年10月26日号
10月21日発売
定価690円(税込)

 2012年、日本の死亡者数は126万人。一方、出生者数は104万人だった。死亡者数は2040年にピークの167万人を数え、以降、なだらかに減少する。少なくとも向こう30年近く、「死」を意識し、実際に迎える人間が増えていく。

 2012年、日本の死亡者数は126万人。一方、出生者数は104万人だった。死亡者数は2040年にピークの167万人を数え、以降、なだらかに減少する。少なくとも向こう30年近く、「死」を意識し、実際に迎える人間が増えていく。

■昼間のセミナーに殺到するシニアたち

 「終活」なる言葉を始めて用いたのは、09年、週刊朝日が短期連載した『現代終活事情』からとされる。それ以前からも、映画『おくりびと』(08年、松竹)など、死をタブー視せずにむしろ積極的に向き合う作品は、すでに珍しくなくなっていた。流通ジャーナリストの金子哲雄氏が12年10月に41歳で死去した際、生前から葬儀の準備をし、死去後に『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』を刊行したのは、大きな話題を呼んだものである。

 そうしたメディアでの露出とともに、増殖してきたのが、全国各地での終活セミナーだ。民間企業が有料で行う場合もあるが、今や地方自治体が在住の市民向けに無料で開催するセミナーが花盛り。平日の昼間から会場が60〜70代のシニアで満杯になる。

 そこで講演するのは、終活カウンセラーと呼ばれる面々である。葬儀・墓の選び方や進め方について、あるいは遺言、エンディングノートの書き方について、熱心に説く。ある著名な終活カウンセラーが品川区で開催したセミナーには、何と「1000人以上もの聴講者が詰めかけた」(カウンセラー関係者)。会場費用や講演代などは自治体が賄う。

 大手流通グループが定期的に開く終活セミナーでは、棺に入る入棺体験まで行っている。生きているうちに棺桶に入ることで、死を感じ、だからこそ、「そこまでの時間を精一杯生きよう」と思い直すのだという。

■士業や金融機関も感じる、ビジネスのにおい

 一方、特に相続を巡り、つばぜり合いを演じるのが、“士業”と呼ばれる国家資格者たちだ。一般的に相続を一件受注した場合、税理士の報酬は、相続財産の1%前後。相続財産1億円なら、100万円前後と考えられる。

 実は相続税の仕事は幅広く、純粋な税金絡みだけではない。例えば、相続財産の50%超は土地・家屋だが、実際の売買取引が絡むと宅地建物取引主任者の仕事になる。

 また、親族との財産争いで揉め事となると、今度は弁護士の出番。親族同士の遺産分割協議でまとまらなかった場合、通常は家庭裁判所の調停を仰ぐが、その際に「代理人として弁護士がつくと、調停委員からの無理な譲歩の要求にも反論してくれる」(法曹関係者)など、有利に進むケースもある。税理士だけでは解決しない役割も多いのだ。

 一方で、相続税専門の税理士法人は少ない。多くは中小企業の顧問税理士を中心に、法人税や消費税には強いものの、年に何回もない相続税のために、専門の人員を割く税理士法人は少ないのが現状だ。その意味では、需要が増えている割に、まだまだ供給が少ない。

 ほかにも、会計士や中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーなどが、虎視眈々と相続関連業務を狙っている。富裕層に顧客の多い大手信託銀行も、遺言 信託や教育資金贈与信託によって、既存のメガバンクから、今後相続関連で広がるであろう中流層を取り込もうと必死なのだ。

■豊作貧乏?の終活バブルはいつまで

 もっとも「本丸」の葬儀を見ると、必ずしも儲かっているとは言いがたい。

 日本の葬儀市場は年間1.7兆円とされる。しかし、10年版『現代葬儀白書』によると、葬儀費用総額(葬儀業者、寺、会葬者への支払費用。1都3県集計)の平均は、1993年の405万円をピークに、10年には242万円まで激減した。高齢化による会葬者の減少、デフレの進行、新興ベンチャーによる価格破壊などが、その原因だ。件数は増えども、葬式1回にかけるカネは減っているのが、現実である。

 ネットを活用した葬儀ベンチャー、ユニクエスト・オンラインの「小さな火葬式」の場合、通夜・告別式なしの火葬のみで、17万3000円。ごく親しい関係者のみで、祭壇も飾らず、会葬者も呼ばない。通夜ぶるまいなどの料理なし、住職へのお布施もなしの、一律パックメニューだ。

 「ホテルもテレビも驚くほど安いこの日本で、葬式の金額には違和感を感じる。葬式の棺の仕入れ価格は7000円、売価は7万円。インターネットが普及しても、この業界の暗部を照らしてはいない」と、田中智也社長は旧来の業界慣習を批判する。葬祭関連の上場企業は現在5社ほどあるが、営業利益率は10%以上といずれも水準が高い。裏返せば、今までが儲かり過ぎた、とも言える。

 仕事にありつく人あり、儲けを失う人あり。とにかく熱い終活ビジネスだが、情報化でユーザーの視線も厳しくなる中、“お祭り”はいつまで続くのか。膨らむ一方の終活バブルに、一抹の不安を禁じえない。

 詳しくは『週刊東洋経済』2013年10月26日号巻頭特集「いま知りたい 終活」をぜひお読み下さい。