幸せって、なにも特別のことじゃなくって、日常の生活の中にあるほんの些細なことだったんだ・・・・。 周囲の人たちをちょっと幸せにしてあげようとする夢見る乙女の物語・・・。 監督ジャン=ピエール・ジュネ。 2001年度カルロヴィヴァリ国際映画祭グランプリ受賞作品。 フランスでは1週間に120万人の観客を動員し、シラク大統領やジョスパン首相も観に行ったと言う作品。
1975年9月3日、UFDアルバトラス。丘の上のホテルには風がふいていた。その日から 9ヶ月後、アメリ・プーラン(オドレイ・トトゥ)が生まれた。 ブロック倒しに興じて遊んだり、草の葉を笛にして鳴らしたり、コイン飛ばしや、イチゴを全部の指に並べて食べるなど一人遊びをしては、空想の中にいることの多い少女だった。 アメリの父ラファエル・プーラン(リュフュス)は元軍医で、嫌いなことは濡れた水着が身体にへばりつくことであった。 母は他人に嫌われることのないよう、静かに過ごしていた。
アメリは6歳になった。 アメリは父に抱きしめられるのが好きだった。 母から教育を受けた。 修道院に行ったがアメリは空想の世界に逃げた。 アメリは一生眼を覚ましている事だってできると思った。 クジラと名付けた金魚が金魚鉢から飛び出す、自殺未遂だと思ったアメリは近くの川に金魚を逃がしてやる。
鉢も川に捨てた。 父はアメリを慰めようとして中古のカメラを買ってくれる。 アメリが写真を撮ろうとしたとき車の事故を起こした隣のおじさんは「そのカメラが事故を起こした」とアメリに迫った。 アメリは隣人への復讐を誓った、仕返ししてやるから・・・・。 隣人がテレビでスポーツ観戦をしている。 アメリは屋上に居る。 最高潮に達したときアメリはアンテナコードの接続部分を引き抜く。 また戻す。 やっと見れるようになっていいところになると、また画面がちらつく。 こんなことを繰り返した、アメリの"仕返し”だった。
母の死後、アメリは父と二人きりになった。 日が月が年が流れたが何も替わらない毎日だった。
1997年8月。 アメリ22歳。 アメリはジュセフジーナのオンボロアパートに住み、モンマルトルのカフェで働いている。 週末には父のもとへ帰り、金曜の夜は映画を観に行く。 部屋の電気を消して隣の人を望遠鏡で覗くこともよくある。
1997年8月20日、ダイアナ妃の死をテレビが伝えている。 アメリは壁のレンガが、ずれていることに気がつき動かしてみる。 小箱を見つけて取り出す。蓋を開けるとオルゴールの音が響き、古い写真やおもちゃなど子供の道具が詰まっている。 「ツタンカーメン王の墓の発見のよう・・・」とアメリは小躍りする。
8月31日、アメリは小箱の持ち主の少年探しをしようと思い立つ。 1階の管理人のマドレーヌさん(ヨランド・モロー)に訊ねる。 「40年前、私の部屋に住んでいた少年をご存知?。ここにはいくつからお住いで?」。 「64年からョ・・・・」。 と夫人は話始める「夫は保険会社で働いていたが、会社の金を横領し南米に逃げたの・・・。今でもまだ主人を愛しているワ」。と兵役の時の手紙を持ち出し読み始める「マドへ 人生をパリに残した33年を生きて・・・・」。 アメリはおばさんの思い出の涙に満足していた。 ふとマドさんがアメリの用件に気付く。 「お尋ねのこと食料品店のコリニマンが分かるかも?・・・。あの人は母親に会いに行くゾウみたいに記憶がいいから・・・・」。 しかし、怒りんぼうで店員を怒鳴ってばかりいる食料品店のコリニマンには聞けない。
アメリは階下の老人の部屋を訪ねて聞く「わしはもうすっかりモウロクしている・・・・。 たしか、カミューは二階の右・・・・。 ブルドト・・・。 ドミニト・ブルドト・・・・それだ。」
アメリは駅に居る。 ホームのほうから音楽が流れてくる。 ホームに上がると盲人が古いレコードをかけている。 アメリは近付いてコインを器に菜が込む。盲人が静かに頭を下げる。 駅のスピード写真機の下から、棒を使ってお金を拾い出すようにしている青年が居る。 ニノ・カンカンポア(マチュー・カソヴィッツ)で彼はポルノショップで働いている。
アメリは父のいる自宅に帰っている。 「パパ子供の頃の宝物って持ってる?」。 父は「おまえのママが嫌がるのでしまっていた・・・。」といって陶器で作られた「小人の人形」を出してきて庭に置く。
アメリは勤務先のレストラン「ドゥ・ムーラン」にいる。 今日は仕事をしていて、嬉しい、楽しい。 電話室に入り「ブルドト・・・」の名前を探している。 女性の店主に「今日、早退させて・・・・」と言って店を出る。
街頭では「署名活動に協力を・・・」。 ダイアナ妃への募金活動をしている。
「ドミニトさん。国勢調査を・・・・」アメリは調査員のふりをしてドミニトという名の家を訊ねていく。 応対したおばさんは「アールグレィそれともジャスミンをいかが?・・・・」とアメリに勧める。 「いいえ、今は仕事中で・・・・」と逃げ帰る。
別のアパートを訊ねる。 管理人に「ドミニトさんに会いたくて・・・・」と訪問理由を述べると「お気の毒に・・・、今降りてくるから・・・・。5年住んでいるけど初めて・・・・」。と言われる。 すぐ上の階段から棺を担いだ集団が降りてくる。 ブルドト探しは失敗だった。
階下の老人の部屋に行く。 「年に1枚ずつ画いている。20年前から20年画きつづけているがまだ画けない」という絵を見せられる。 老人は画家で"ガラス男”といわれ骨がガラスのようにもろいという一風変わった老人だった。
街に男がいる。 ドミニト・ブルドトである。 近くの公衆電話が鳴る。 しばらく気にしているが、ドミニトは鳴り止まぬ電話にひかれ電話ボックスに入る。 アメリが急いで電話を切る。 ドミニトは切れた電話を見ながら、すぐ眼の前の古い小箱を見つける。 蓋を開けると写真が出てきて一瞬の内に記憶が蘇る。 回りを見るが誰も見ていない。 懐かしいおもちゃがある。 級友からビー玉を勝ち取った日のことを思い出す。 授業の合間にビー玉遊びで一人勝ちとなり、集めているとき次の始業ベルが鳴る。 全部ポケットに入れていると遅刻してしまい先生がくる。 「仕置きをします・・・」と先生に引っ張られて、ポケットは破れるしビー玉は全部こぼれてしまった。
ドミニトが酒場に居てバーテンに話している。 「奇跡が起こった・・・。おれの宝物が戻ってきた。人生って不思議だ」。 カウンターの隣にアメリがいて聞いている。 「昔は時間が永遠にあったのに、気がつけばオレももう50歳。おれを愛してくれている娘がいる。孫が生まれたそうだ。会いに行ってやろう」。と言っている。 アメリは突然世界が開けた。 小さな幸せを与えたことを喜び満足した。
アメリは以前駅のホームにいた盲目の老人が、道路を渡れず困っているところに出くわす。 腕を取り周りにある物を説明しながら駅に行く。 「ここが地下鉄。ここでお別れ・・・」・。
自宅の台所。 アメリは料理をしている。 窓の外にじいさんの部屋が見える。 「他人との関係を結ぶと2〜3歳若さがもらえる」と思うようになった。
アメリは終電車に乗り遅れて駅の構内で朝を迎える。 一番電車で帰ってきて駅前で引ったくりをみる。 犯人が自動車で逃げて若者がバイクに飛び乗り後を追うが、バイクの後部につけていたカバンが逃げる車に接触して落ちた。 アメリは拾って中を見た。 アルバムが出てくるがどの写真も破かれていて、中に数枚丸坊主の同じ男が写っている。
レストラン「ドゥ・ムーラン」に常連の中年男がいる。 アメリの仲間の女店員に話している「女の幸せは男に抱かれて眠ることだ。 恋をしたことはないのか?」。 女店員が答える「相手はブランコ乗りだった。 ブランコは空中で直前に手を離すけど、私も直前に別れ話をされたの・・・・・」。
レストランで終業の掃除をしている。 男が片づけていたイスを降ろし女店員を座らせて口説いている「自分の人生の軌道修正をしろ・・・濡れ馬が先走る」。「愛の無い女は太陽の無い花、すぐに枯れるワ」。 「君がいないと僕の心は抜け殻になる」。
アメリがアパートに帰り階段を上がっていて、老人の部屋のカギがドアについたままになっているのを見つける。 部屋の中に老人はいない。 アメリは合鍵を作りカギを元のドアに戻す。
アメリが合鍵を使って老人の部屋に入る。 子供の時のようにいたずらをする。 靴棚の靴を出して、片方だけ紐を切れる寸前にする。 ドアノブをはずし内側と外側を逆に取り替える。 ウイスキー瓶に砂糖を入れる。 ベットに腰掛けて目覚まし時計を遅らせる。 カギを元どおりかけて部屋を出た。
アメリは父のもとに帰っている。 父ラファエルが聞く「調子はどうだ・・・・?」。アメリが答える「ちょっとした変化が・・・・。心臓発作が2回あって・・、妊娠中絶を2回した・・・・。」。 アメリは帰りに父が大切にしている、「小人の人形」を黙って持ち帰る。
アメリは駅に行く。 掲示板に探し物、落し物など掲示されており「カバン。写真」とある紙をはがして持ち帰る。 ニノ・カンカンポアの名前と連絡先のポルノショップの名が書いてあった。
老人の部屋で夜中に目覚まし時計が鳴る。 部屋に急ぐとドアノブが逆になっている。 歯を磨こうとチュウブをしぼり口に入れると美容クリームが口の中にいっぱい。 外出時に靴の紐は切れて太い紐で間に合わせなければならなかった。
前の部屋の老人がドアの前のカーペットの下に手紙がはさんであるのを見つける。 「八百屋のコリニマンは間抜けだ。コリニマンはトンマ。コリニマンはアホ」。 老人が言う「よく言えた。もう充分だ、このくらいにしよう」。
レストラン「ドゥ・ムーラン」に常連の中年男がいる。 彼はアメリの同僚の女店員に夢中である。 イスに座ってお茶を飲んでいても、何時も眼は彼女を見ている。 男がトイレに行った。 アメリは彼女を彼の座っていた席に連れて行って座らせて「何が見える?・・・」と聞く。 今まで自分のいた場所を見ながら「ぜんぜん何も・・・」と彼女は答える。 アメリは客席にコーヒーを運ぶ時、わざと彼女にぶつかり洋服を汚す。 彼女がトイレに走りこむ。 トイレにいた中年男は一瞬驚くが、呆然とする彼女を抱き寄せキスをする。 二人の抱き合う姿がガラス越しに見える。 やがて室内のコップもボトルもすべての物が小刻みにカタカタ動き出す。
「何か御用で・・・・」アメリはポルノショップに入ってニノのことを訊ねる。 「ニノさんは水曜は公園にいるワ・・・」。 女店員が続ける「彼の恋人は大変よ、彼は女の子はぜんぜんダメなのだから・・・」。
アメリは公園のお化け屋敷に行く。 受付の女性にニノのことを訊ねる「ニノ・・・?。ニノは幽霊屋敷の幽霊をアルバイトにしているの」。と教えてくれる。 20フランを払って幽霊屋敷の探検車に乗る。 アメリは手紙を書いて、ニノに渡してくれるよう女性に頼む。 ニノはその紙をポケットに押し込むが、ガラスの向こうの大音響の中にいる女性に連絡をしようとして、ポケットから出した紙に「交代を頼む」と書いて、ガラスに押し当てたとき裏
に書かれた手紙に気がつく。 「明日5日、モンマルトル公園に来て下さい。5フラン銀貨を 忘れずに・・・・」。 また、アメリのいたずら心がうずく。 「そこの人、電話よ・・・」。 「ぼくに?・・・・」。 電話ボックスに行くと「矢印の方向に進んでください」と書いてあり、道に矢印が点々と続いている。 ハトがいる。 子供が遊んでいる。 矢印は指を指した銅像で止まった。 銅像に見えたが「指でなく先を見なきゃ・・・・」という。 指差す先に双眼鏡が見える。 5フラン銀貨を入れて覗くと自分のバイクのかばんに書類を入れている女性が見える。 ニノが急いで引き返しカバンの中を見ると、なくしたアルバムが戻っていた。 ニノに電話がかかる「写真のなぞの男の正体ね・・・・」。 「君はだれ・・・・?」。 「51ページの女よ。私にあなたは会いたい?・・・・。」。 破かれた写真に続いて、51ページにはおどけたアメリの写真が3枚貼ってあった。 アメリは何時ものように悪戯を仕掛けている自分が、いつもと違う恋する乙女になっていることに気づく・・・・。
アメリの父ラファエルのところに「小人の人形」が写っている写真が届く。 レストラン「ドゥ・ムーラン」の女店員が話している。 「6歳の少年が車を運転して家出をした。その理由は星を見たかっただけ・・・」と。
アメリは合鍵でまた老人の部屋に入る。 老人をちょっと幸せにするためのいたずらをまたやった。 電気スタンドの電球を暗いものに取り替え。 テレビのコンセントを抜いて電気コードに針を突き刺す。 短縮電話のセット先を替えた。
アドリアンから手紙が来る。 「次の金曜日に会いに着てくれ・・・」
アメリは文字を切り抜き継ぎ足してコピーを取って手紙を作る。 望遠鏡で画家の部屋を見る。
階下の老人が部屋で電気のスイッチを入れる。 電気スタンドの明かりが薄暗い。 テレビをつけようとしてコンセントを差し込むとショートして爆発。 電話をかけようとして短縮ボタンを押すと繋がった先からは「はい。こちら精神コンサルタント・・・・。」
ウオラス夫人に手紙が届く。 40年前飛行機事故にあった夫の手紙で夫人に当てたものであった。 アルプスの登山隊がモンブランの山中で偶然発見したもので、届けられた手紙に夫人は涙し、義足の男は「わしは生まれながら不幸をしょって生まれた。 生まれた日は13日の金曜日だった・・・」。と言う。 アメリはそんな隣人の涙をこっそり覗いて満足していた。
父ラファエルに写真が届く。 「小人の人形」が写っているが背景にはカンボジアのお寺が写っている。
ニノは「ドゥ・ムーラン」に4時に来るようにと何者かに呼び出される。 ニノが席につく。 女店員が「注文をどうぞ?・・・。」と聞く。 「コーヒーを・・・・」とニノが答える。 アメリはその様子をじっと見ている。 だれも来ないのでニノがいらいら、キョロキョロしはじめる。 アメリはそっとうしろからニノを見ている。 ニノが振り返る。 あわててアメリは「本日のおすすめ・・・」とガラスに書いている。 アメリはニノに気付いて欲しい。 でも、恥ずかしい乙女心。 ニノが気づいたように言う。 「君・・・。そうだ・・君だ。」 アメりは首を横に振る。 ニノが席を立って帰りかけたとき、アメリは女店員にたのんでニノのポケットに手紙を入れてもらう。
駅のスピード写真機のところ、らくだの服を着た大男が写真を何度も撮っている。 怪しい動きを繰り返す。 出来上がった連続写真を破いて機械の下に放り込んだ。 壊れた機械を修理して自分の顔でテスト撮影をした後、不要となった写真を何時も捨てていた。 ニノはこれらの不要写真を集めて楽しんでいたのだ。
アメリは家の台所にいてニノのことを思い出している。 八百屋で果物を買ってくる。 すだれを揺らすのは何時だろう・・・。 「アメリー。アメリーッ。」ドアの外でニノの声がする。 ニノは、ドアの下から手紙を差し込み「また来ます・・・。」と言って走り去る。 アメリは窓辺に走る下の道でニノが振り返る。
電話が鳴る。 父からで帰ってくるようにといわれる。 アメリは「小人の人形」を布にくるみ持ち出して実家の庭にそっと返す。 父のもとには世界各地で写っている「小人の人形」の写真が届いている。
父は「おまえの心はわかっている。私には何の不自由も無い・・・」と言い、気を使わず、早く結婚をせよと言ってくれる。
ニノが来る。 アメリはドアの外に走り出る。 じっと見詰め合う二人。 アメリがニノの左のホホにそっと口ズケをする。 続いて右のほほに、そしてやさしく右のまぶたに。 じっとなすがままになっていたニノが、アメリのホホに眼にゆっくりとキスをする。 また見詰め合う二人。 アメリが自分の口に指を指す。 二人が抱き合いキスをする。 ネコが見ている。 ベットで抱き合う二人。 向かいの階の老人が望遠鏡で覗いている。
♪♪ 君がいないと・・・・僕の心は・・愛の抜け殻・・・・♪
父ラファエル・プーランが荷物を2ケ持って、タクシーに積み込みをしている。
1999.9.28朝11時ちょうど。 湿度70%、気圧990ヘストパスカル。 二人はバイクに二人乗りをして街を走りぬけて行った。
終わり 2002. 2. 17 シッピング・ニュース にリンク
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