今年の3月アカデミー賞の、作品賞、監督賞など四部門を受賞した作品。1月
に発表された第59回ゴールデングローブ賞でも、作品賞、主演男優賞、助演女 優賞、脚本賞を受賞している。 監督ロン・ハワード。 「ゲーム理論」による経済 学で1994年ノーベル経済学賞を受賞した実在のアメリカ人数学者、ジョン・フ ォーブス・ナッシュ・ジュ二アのノーベル賞を受賞するまで47年間。苦悩する彼 とそれを支えた妻の姿を描いた伝記小説を、映画化したもの。 H14,4,6
1947年、戦時下のアメリカ。第二次世界大戦で数学的分析が暗号解読に役
立っていた。 「ソ連が目指すのは、全世界の征服だ」 「数学者が戦争を勝た せている。」 「勝利するのに必要なのは君たちの頭脳だ」 「アメリカの未来は 君達の手中にある」教授が生徒達に講義している。
1947年9月、ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュ二ア(ラッセル・クロウ)はニュー
ジャージー州にあるプリンストン大学大学院の数学科に入学した。
出身地のウエスト・バージニアで「若き数学の天才」と言われ、カーネギー奨学
生であるナッシュが目指すのは、マサチューセッツ工科大学のウィーラー研究 所。しかし、今年行けるのは一人だけ。
学校の寄宿舎の庭で大学院の歓迎パーテーが開かれている。 「ハンセンが
またナチの暗号を解読した」 「おめでとうハンセン・・・。」 ハンセン(ジョッシュ・ ルーカス)はナッシュの最大のライバルで次々に論文を書いている。ナッシュは まだ、テーマさえ見つからない。 ハンセンが言う「奨学金を貰ったのは、ぼくと あいつだけ・・・。」「あいつかァ・・・。」 仲間の学生に声をかけられるが彼の頭 の中は ”この世におこるすべてを支配する真理、真に独創的な着想を見つけ たい。” との思いだけで廻りの言葉も耳に届かない。
部屋に戻る。早速窓ガラスに方程式を書き始める。「クラスメート到着!。」と
酔っ払った男がへやに入ってくる。 彼はルームメートのチャールズ(ポール・ベ タニー)「二日酔いでごめん!。ジョン・ナッシュか?・・・。」 ナッシュは振り向き もしないで方程式をかいている。 「昨夜は英文学生のパーティーに顔を出した ら、いい女がいた・・・・。」と話し掛けるが無視している。 チャールズが言う「お 互いにかみ合わないみたいだ。 潤滑油がある・・・。」と言ってウイスキーボト ルを出すがナッシュは飲めない。
ナッシュとチャールズは二人で寮の屋上にいる。 ナッシュが言う「ぼくは人と
の付き合い方が苦手でね・・・。」 チャールズが言う「数学では、より高い真理 に到達することは不可能だし・・・。」 ナッシュが答える「すべてを支配する真理 を見出したいんだ」
寮の庭で学生が囲碁をしている。 仲間がナッシュに言う「勝てばソルがおま
えの洗濯をするよ」と冷やかされる。 ハンセンが言う「未来を担う天才だが、ぼく と勝負する勇気が無い」 ソルが言う「ゲーム理論の証明だ」 「ウィーラー研 究所の入学にぼくが選ばれたらどうする・・・」 ナッシュはライバルのハンセンと 囲碁を打つ。 一手ずつ慎重に打つがハンセンに敗れる。 「変だ、勝てるはず の手を打った・・・」と言いながらナッシュは走って逃げる。
寮の部屋。人付き合いがヘタなナッシュは、授業に出る時間も惜しんで、窓ガ
ラス一面に数字や絵の方程式を書いている。 「これはフットボールの動 き。・・・こっちはハトが餌さをひろう動き・・・」 数学の研究に没頭するナッシュ はクラスメートからも、ときに変人扱いされるようになった。
プールバーに仲間と来ている。 女性が数人入ってくる。 ナッシュの頭の中
には方程式しかない。 「心から繰り返すたびに、成功の確率は向上する」 一番綺麗な子がナッシュを見ている。 「行って来い!」仲間にけし掛けられて、 女性の前に行く。 だけど、二人で顔を見合うだけでなにも話せない。 女性が 言う「お酒でもすすめたらどう・・・?。」 ナッシュは女性との交際について聞か れて理論的に解説する。 そして「つまりは、体液の交換だ・・。 セックス抜き の交際はありえない」と言ってしまった。 女性はナッシュの顔をひっぱたいて 出て行ってしまう。
ナッシュはへリンジャー教授に呼ばれる。 「ウィーラー研究所の入学は教授
陣が過去半年間の成績を評価して推薦する。 君の独創的なアイデアはすばら しい。 今年は君を推薦したい。」 「先生!。アインシュタインを紹介してくださ い」
教授会の会場。 「君は輝ける功績を収めた。人々が評価している。でも、残
念だが今の君の成績では推薦できない。」
ナッシュは部屋の窓ガラス一杯に方程式を書いている。 ナッシュが言う「ぼく
には数学しかないのに、・・・。」 焦燥感にさいなまれるナッシュを慰め、チャー ルズが言う「自分の頭をぶち割れ・・・。」 ナッシュは窓ガラスに頭を突っ込み 血を流す。 「よく考えろ。君は悪くない・・。問題はやつらだ・・・。」 「解答を見 つける・・・。」とナッシュは言うが、チャールズが机を押して窓から投げ出す。二 階の窓を突き破って庭に落ち粉々になった机と書類があたり一面に散らばっ た。 笑いこけながら二人は「二ュートン先生の発見は正しかった」と叫ぶ。 ナ ッシュの理解者はチャールズだけになった。
ある日ナッシュはクラスメートと遊びに行った。 いつものように公式を頭に描
いていると。 「ナッシュ。5秒だけ眼を明けろ!。」 三人の女性が前を通る。 仲間が言う「口を拭いて振られて来い・・・。」 一人際立って美しいブロンドの 女性がナッシュを見ている。 周りの誰の眼もそのブロンドに集中している。 ナッシュは考えた ”競合しあうだけでは、誰も彼女をものに出来ない。 しか し、もしみんなが自分のためと仲間のためを同時に考えて、彼女をあきらめて、 他の二人の女の子を口説いたら、それでみんなが女を抱ける。” 「アダムス ミスが150年前に言って、定説とされている、グループ全体で行う協力ゲーム 理論の逆だ・・・・・。すべてを支配する真理さ。」。 ナッシュは彼女に「ありがと う」というと、皆があっけに取られているのをかまわず店を飛び出す。
ナッシュは自分の部屋に帰り図を引き、数字を並べて公式を書きこの ”非協
力ゲーム理論” を定説化した。
へリンジャー教授の部屋。ナッシュが書いた論文をめくりながら教授が言う「1
50年の経済原理を君の研究は覆す。君の理論は飛躍的な理論だ、君を推薦 しよう・・・。」
バーにクラスメートが集まり祝賀会をやっている「やったーッ!・・・。乾
杯!。・・・乾杯!」 「あいつだ。・・まずいぜ」。そこに推薦から外れたハンセン がやってくる。 彼は笑顔でグラスを受け取り「すべておしまい・・・。おめでとう」 と言ってくれる。
ペンタゴン。ウィーラ-研究所1953年、 「将軍、ウィーラ-研究所のアナリスト
です。 モスクワからの無線を傍受しました。 解読システムの案にいくつかの 意見が・・・。」 将軍がナッシュに訊ねる。 ナッシュの頭の中は数字が駆け 巡っている。 地図を広げ、数字を追う。46-13-0-7-9 ナッシュが言う「メイン 州、スターモ−ミネソタのここ。・・・数字は経度と緯度です」。 みんなが笑顔で 喜んでくれる。 将軍が言う「君の貢献に感謝する・・・。」 「では、立ち入り禁止 区域の外にどうぞ。・・・出口はこちらです」
ナッシュはウィーラ-国防研究所に呼び出されて行く。 若い生徒が「ナッシュ
博士だ・・・。」と彼を見つけて喜んで迎えてくれる。 先輩の教官が「今日の天才 が、明日の天才を育てる。・・・あと10分で授業だ・・・。」という。 講義をするこ とを聞いてなかったナッシュは逃げ出そうとして「医者の診断書を貰って来るか ら・・・・」と言うが、先輩の教官に「君自身が博士だろ・・・」と言われる。 仕方な く教室に向かう。 教室はクーラーがなく熱いので窓を開けているが、となりの 工事現場の騒音がひどく講義にならない。 ナッシュは「窓を閉めなさい」と生徒 に命じる。 生徒達は熱いのでいらつきだした。 その時、一人の女性が窓を開 けて、外の工事人に「45分ほど別の場所で仕事してくれる・・・」と声をかける。 「オーケー」と下から工事人の声が返ってきた。
ナッシュは新たな秘密の任務に期待し、もっと心血を注ぎたかったが、講師と
してはつまらない授業をこなさねばならない日々だった。
夜、講義を終えて国防研究所を出ると「ナッシュ博士!・・。」と呼び止められ
る。 黒い服に黒い帽子を冠った男は、国防総省のパーチャ−(エド・ハリス)と 名乗った。 「国防総省から何の用だ・・・・?。」 「簡単に言おう。ぼくは一匹狼 の諜報員だ。この戦いで15万人は死んだ。早く戦争を終わらせたい。」 ソ連 との冷戦下にあるこの時期に自分に出来ることは無いのか?。 新たな焦燥感 が生まれていたナッシュをパーチャ−は ”機密区域” とある警備地域に連れ ていった。 倉庫の改造された建物の中はコンピューターが所狭しと稼動してい る。 戦略分析室に入る。 「ナチは携帯原子爆弾の開発に成功した。 原爆を 米国でも爆発させる計画だ。 すでに各地に諜報員が入っている。」 「ハッキリ 言わせて貰う。暗号解読のために君の力を貸して欲しい。この雑誌の名を覚 え、隠された暗号を解読するんだ」。 承諾したナッシュの左腕にラジウムダイ オードを打つ。 「ちょっと痛いが腕に埋めてアクセスコードにする」。
ナッシュの部屋に女性が案内される「オエライ方だったのね。30分も待ちぼう
けにされた。」 女性は講義中に騒音の工事を止めた聴講生のアリシア(ジェ二 ファー・コネリー)で講義を待っていたが、休講になったので逢いに来たと言う。 「問題解いたよ・・・。」とノートを差し出す。 しばらく読んでいたナッシュが「正 しくない・・・」といってノートを返す。 アリシアが帰らないので「まだ、何 か?・・・。」 「ええ、まだ・・・。ナッシュ先生、良ければお食事をごちそうしてく ださい。どうせ食べるのでしょ」 「住所を教えてくれない。・・・金曜の夜8時迎 えに行くよ。 名前も教えてくれない。・・・君としか呼べないから・・・」
パーテー会場。 二人にとって始めてのデート。 会場の壁に架けられた絵に
ついて、アリシアが批評したが、ナッシュは興味なさそうで横を向いている。 州 知事とナッシュが写真をとろうとしている。「ちょっと待って、・・・」とアリシアがナ ッシュの洋服の乱れを直す。 「今夜のデートの相手よ、当然でしょ」という。 食 事をしていて汚す。 アリシアがハンカチを取り出し渡す。 ナッシュがハンカチを 返そうとした手をアリシアが押し返す。ナッシュはハンカチを自分のポケットにし まう。 二人は庭園に出る。 夜空を見ながらアリシアが「昔、星を数えた わ。・・・」と言う。 「変わり者どうしだな・・・。」 「4348まで数えたの・・・。」 ナッシュが言う「何か形を・・・。」 「形を?・・・。」 「好きなものを・・動物でも 何でもオーケー」 「かさ・・・」 ナッシュはアリシアの後ろに廻り、自分の右手で アリシアの右手首を持ち、夜空の星をたどるように傘を書いた。 「もう一度、今 度はタコがいいわ・・・」 数学だけに明け暮れていたナッシュは、アリシアと過 ごしたひと時に癒しを感じる自分を見ていた。
ナッシュは新聞や雑誌を部屋の中一杯に広げて、隠された暗号を読み取って
いる。解読した内容を封筒に入れ、ロウをたらして封印し"極秘”の印を押す。 夜、それをもってパーチャ-の家に行き、門の前の自動開閉装置の下に左腕を かざすと、腕にアクセスコードが浮かび出て、門が静かに開く。 庭にある郵便 箱に封筒を入れてナッシュは逃げるように帰っていった。
ナッシュとアリシアは郊外の湖のそばにピクニックに来ている。 木陰に二人き
りですわって話す。 「今日は仕事の話は控えたい・・・」ナッシュは言ったもの の、女性を口説けない。 「単刀直入に話す!。・・・君と早くセックスしたい」 ナ ッシュの口下手を知っているアリシアは、自分から顔を近付けてナッシュとキス をする。 「この反応は?。 どう?・・・」 二人は強く抱き合い何時までもキスを している。
「何してるの・・・。ナッシュさん。」いきなり少女に声をかけられ戸惑うナッシ
ュ。 少女はナッシュのことを「礼儀知らずの変なやつだって、伯父さんが言った よ・・・。」と言う。 ルームメートだったチャールズが現れる。 少女の名はマー シー(ビビアン・カードーン)8歳。 「妹が交通事故で死んでしまってね。姪を引き 取った・・・。 自分は今、ハーバードの文訴部だ。君の記事を読んでいる。」 ナッシュは「最初は退屈だったが、今は重要な仕事を貰っている」
夜、レストランに一人アリシアが座っている。 「仕事に夢中になって忘れてい
た・・。」ナッシュが急いでやってくる。 誕生日祝いに指輪を渡す。 初めてのデ ートの時アリシアが言った絵の色のことをナッシュが口にする。 その時は聞い てもいないようにそわそわしていたナッシュに「私の言ったこと聞いてた の?・・・。」と聞く。 「もちろん!。・・・ぼく等の関係は一生続くと思うん だ。・・・」 「待って!。証拠が要るわ・・・」 「それじゃあ・・宇宙の大きさってど れくらいだと思う?・・。」 「無限だと思うわ・・・」 「それじゃ愛も同じだ・・・・」
結婚式、ナッシュとアリシアがライスの雨の中を教会から出てくる。諜報員の
パーチャ-が遠くに止めた車の中からじっと見ている。
1954年10月、道を歩いているナッシュの横に車が止まる。「早く乗れ!。尾
行されている・・。」パーチャ-の声に車に飛び乗ると、車は猛スピードで走り出 す。「誰が尾行を・・・?」 「バレタンだ・・・。」 追ってくる車からピストルで撃た れる。 リアガラスが割れる。 「これを・・・」パーチャ-がピストルを出す。 「イヤ だ・・・」 「早くやれ・・・」 パーチャ-は逃げ回り横に並ばれた時急停車する。相 手の車は空中を飛び海の中へ・・・。
部屋にやっと帰り着くがドアのそばで呆然とたたずむナッシュ。 アリシアが
「ジョン?・・・。 何処へいってたの・・・?。オフイスに電話したらとっくに帰った と・・・。電話くらいしたら・・・。」 「大丈夫だ・・・・」 ナッシュは呆然と歩き、自分 の部屋に入るとカギをかけて座り込む。 「お願い・・。ここを開けて・・。ドアを開 けて・・・」とアリシアがノブをゆするがドアは開かない。 ブラインドをずらし窓の 下を見る。 黒い自動車が2台止まる。 緊張してみていると、車からは家族ず れの一団が騒ぎながら出てくる。
研究所の教室。 聴講生の前でもキョロキョロ、オドオドして授業にならない。
パーチャーが言う「その不安はよく分かる。落ち着くんだ・・。爆弾の所在がわ かれば、それだけでいいんだ」 「妻が妊娠した・・・。」 バーチャーは「結婚し たいと言う君を止められなかった・・・。」と言う。 ナッシュは「ぼくは降りる。」 「それは出来ない・・。」と言ってパーチャ-は出て行った。
結婚後も妻にさえ打ち明けず、秘密の任務が続いていた。 ナッシュはプレッ
シャーに自分を見失っていた。 部屋の中でナッシュの様子がおかしい。 アリ シアが聞く「ジョン!。どうしたの?・・・」 「明かりを消せ・・。君は妹の家に行 け・・。」 「どういうこと・・・?」 「後で電話する・・。いつか説明する」 外で怪し い人影が動く。 ソ連側の暗殺者なのか、国防省の監視なのか?・・・。
ハーバード大学全米数学者会議。 「君がゲストで講演すると聴いて来た」
ルームメイトのチャールズがマーシーをつれて会いに来た。 講義を始めるが、 ナッシュはオドオドして講義にならない。 会場の後ろから数人の男が入り両脇 の通路を固める。 おびえているのが聴講者にも分かり会場がざわめく。 壇上 から降りたナッシュはドアを開けて一目散に逃げ出す。 「待て!・・」と男達が 後を追う。 数人につかまる。 「ナッシュ君。人目を引くことはやめよう・・。精神 科の医師だ。」 「だまされない・・・。誰か俺を助けてくれ・・・。彼らはロシア人 だ。助けてくれ・・・。」 睡眠剤の注射を打たれ静かになる。
「ジョン!。聞こえるか?」チャールズが聞く。 おびえている。 「落ち着け、
まだ睡眠薬が効いている。ここはマッカーサー病院だ。」 起き上がって逃げよ うとするが手錠だけでなく、足も縛られている。 チャールズがそばに立ってい る。 「君にもとばっちりか?・・チャールズ。 それともルームメイトは裏切り者 か!?」
妻のアリシアが来る。 ナッシュが言う「誰もいないか?・・・。ぼくはジョン・ナ
ッシュ。国防総省に連絡を頼む・・。不法に逮捕された」 アリシアが医師に答え る「国防省の仕事を夫がしていることは知っています。」 医師は「幻覚で、ここ にはないものが見えています。 チャールズについて調べてみましたが、寄宿 舎は一人部屋でした。 訓練も受けない数学者がスパイになるということは考え られません。」
ナッシュの仕事のことを調べるためアリシアが部屋に入ると、すべての壁一面
に新聞、雑誌の切抜きと数字を書いた紙が貼ってあった。 医師が言う「暗号 の解読だと言っていたが、彼だけの仕事ですね。」 「最近はいらつきがひどく て・・・」とアリシアが答える。
アリシアは車でパ-チャーの家に行き、門のところにあるレターボックスを調べ
る。 夫が自分をコントロール不可能な極限状態にあり、幻想に悩まされてい ることを知る。 病院を訪ねる。 「心配したわ・・・。」 ナッシュが言う「逢いたか った。・・君に見せたぼくの行動。変に思うのは当然だ・・。 でも、もう心配な い。・・(小声で)隠しマイクがあるかもしれない。」
ウィーラー研究所。 質問を受けている「どんな仕事だった・・・。」 ナッシュが
答える「秘密の郵便で出した。」 アリシアが問う「でも、門の中には入れない わ」 「どうして知っている?・・。」 「ソルが後をつけたの・・。幻覚なのよ。」と言 って、ナッシュが郵便受けに置いてきた、開封していない封筒をテーブルの上に 積み上げる。 「病気なのよ・・・。それを分かって・・・ジョン。」
「ローゼン博士。大至急病室2へ!・・・。」 ローゼン医師(クリストファー・プラ
マー)が来る。 アリシアが来る。「ジョン!・・・。」 「チップが無い・・・」ナッシュ は自分の腕を切り開いて血だらけになってラジウムダイオードを探している。 ローゼン医師が言う「この病気は何が真実かわからない。 幻覚が見えたり、消 えたりする。 当人には地獄だ、何が現実で何が幻覚か分からない。・・・・手術 をする。」 ナッシュの手、足をベットに縛り注射をする。 隣室から見ていたア リシアは見るに耐えられず「あれを何回・・?。」 「週に5回、19週続ける・・。」
プリンストン大学、1年後 チャールズとアリシアが話している。 チャールズが
言う「ジョンは近寄りもしない。アリシア・・・君は大丈夫?・・」 「逃げ出したいと 思う気持ちになったり、眠れないこともある。・・結婚した頃の彼を思い出す ヮ。・・毎日ではないけれども・・・・・。不運な人よ・・。」
アリシアが薬を渡して「今飲むのよ・・」 「今夜、家に戻る。助手のベンダーも
くる。」 「気後れするけど逃げられない」 「これを解けば大学に戻れる。」 「焦 ることは無い。数学以外のことだってある。」 「子供もいるし・・」 アリシアが言 う「人はいろいろとすることがあるわ。外出をしたり、人としゃべったりして、楽し むのよ。ゴミを出すとか、たまにはしたらどう?。」 しばらくして「今、誰と話して たの・・・?。」 「ゴミの収集人・・・。」 「こんな時間に来るわけ無いでしょう。」 よくみると窓の外に清掃車が動いている。これは真実だった。 「あやまる わ・・・。」
ナッシュとアリシアがベットで寝ている。アリシアがナッシュの方を向いて胸に
手をやる。手が徐々にすべるように下に行く。ナッシュが無言で横向きになり背 を向ける。 アリシアが聞く「薬のせい・・・?。」 ナッシュが無言でうなずく。 ア リシアはベットを出て洗面所に行き、コップに水を汲み一口のむ、コップを壁に投 げつけグワーッ。ガアァッ!。と泣き叫ぶ。 翌日ナッシュが黙って割れた鏡を 片つけている。
アリシアは二人が出会った町プリンストンにナッシュを連れて帰る。ナッシュは
このまま朽ち果ててしまうのか、それとも立ち直れるのかアリシアの献身的な 日々が始まった。 ナッシュが病人のようにイスに座っている。 「この子を母に 預けて、3時間残業するヮ。じゃァ行って来る。」アリシアが車で出かける。 ナッ シュは悲しそうに見送る。
夜、アリシアが薬と水をナッシュに渡して、二階の寝室に上がっていく。 ナッ
シュは薬を机の抽出しに入れて水だけ飲む。 抽出しには薬がたまっている。 新聞の記事を見ていて暗号を見つける。 窓ガラスに石が投げられ男が逃げ る。 ナッシュは男の後を追って裏の林の物置小屋に入る。 無線機がたくさん 並び、大勢が仕事をしている。「やあ・・ジョン。久しぶりだね・・。」 「パーチャー か?。」 「そうだ・・。本物だよ・・。」 「爆弾が最終地点に設置された。仕事を してくれ。」 「爆弾は東海岸に設置された。正確な位置を知りたい。」 ナッシュ は「藪医者め。・・分裂症だなんて・・・。」と言い、「俺が幻覚か?」とバーチャー がいう。 ナッシュがバーチャーに訊ねる「君の名前が無い」 バーチャーは「ス パイの名が、名簿に載るわけが無い。 これで職場復帰だ・・。国家のため頼 む・・。」と言う。 ナッシュは「みんな幻覚かと思った」と言う。
1956年4月、 ナッシュが「子供をフロに入れる。大丈夫だ・・・。」と言って風
呂場に連れて行く。 風呂場にはチャールズとマーシーがそばに立っている。 何気なくアリシアが外を見ると、裏の林に続く垣根の戸が開いている。 林に出 て裏の物置小屋まで行きドアを開けると一面の壁に雑誌、新聞の切り抜きが貼 られ、床も書類が散乱していた。また、夫が隠れて暗号解きをしていることを知 った。 アリシアは息子のジョンをあずけていることが気がかりになって、急いで 家に引き返しナッシュに「子供は?・・。」と聞く。 ナッシュは「チャールズが子守 りをしてくれている・・・。」 「誰もいないわ・・・!」。 風呂場に走るとバスの中で 子供は溺れかけて泣き叫び、お湯は出しっぱなしになっていた。 ナッシュが言 ってる「チップが解けてなくなった・・・。」 ナッシュは電話機のところに走り「ロ ーゼン先生に・・・至急。」 ナッシュがやってくる「手を出すな・・」 ナッシュには チャールズがマーシーを連れて来ており、バーチャーもそばに見える。 アリシ アが「誰もいないわ・・・。」といい。 ナッシュだけに見えるパーチャーが言う「大 勢の男が死ぬ、殺せ!。君の責任だ!。 彼女を殺せ・・命令だ!。彼女は知 りすぎている」 「逃げようとするつもりか?。」 ナッシュはアリシアを押し倒す。 少女のマーシーがずっと見ているいる。 ナッシュは気がつく「変だ!。おかし い・・。マーシーがずっと8歳のままだ・・・。」
ローゼン先生がいる「子供も、仲間もいる。・・・なぜ、薬を止めた?・・・。」 ナ
ッシュが言う「妻を拒んだ。・・つらかった。」 「症状が油断しても、数学のように 方程式で解けるものじゃない。・・時間をくれれば解決する」アリシアが黙って聞 いている。 ナッシュが妻に聞く「ベビーは?・・。」 アリシアが答える「今夜はマ マのところよ・・・」 ローゼン先生が言う「治療を続けないと・・・。」 ナッシュが 言う「入院したら二度と戻れない・・・・。」 「強制収容所の書類にサインをする な・・・。時間をくれ。私に危害を与えないでくれ・・・。分からない・・君はお母さん の家に行け」
アリシアが車で出て行く。 と思ったら戻ってくる。「身の危険を感じたら、救援
が必要でしょ。・・何が本当なの?。」 「これ!。」と言いながらナッシュの顔を 両手でなでる。ナッシュもアリシアの顔を触る。 「これは本物・・・。夢と現実を 区別するのは頭ではないわ、愛してること、私は信じたいの、人間の信じあう心 を・・・。」二人は何時までも強く抱き合っている。
プリンストン大学、2ヵ月後。ナッシュが学校の石段を登っている。教授の部屋
を訪ねドアをノックする。「どうぞ・・。」 「マーティン驚いた。」 ハンセンが言う 「いろいろ聞いてる。 手紙を書こうと思ったが・・・」 ナッシュは部屋を見回しな がら「へリンジャー教授の部屋だ・・・」 「ぼくの救世主はキリストじゃないぞ。」 「やはり君が勝った・・」 「勝ち負けの問題じゃない・・・。よく来てくれた、どうし てここに・・・。」 「寮仲間が来た、幻覚じゃない。」 (幻覚でバーチャーがそば に立っているように見える)(追い払うしぐさが一人芝居となる) ナッシュが言う 「本当の友達だろ?・・。 今観たことを黙っててくれるか?・・そのうち僕から幻 覚が去るのでは・・・、ムリは分かっている。 答えはノーだろう?」 「オフイスが 必要か?・・。」 「いいや、図書館で充分だ。 いかれてる男だ、狂人だからと お助けを受けて・・・、みんな幻覚だ」 ハンセンが言う「ナッシュ落ち着け。 充 分だ・・・」 ハンセンは図書室の一部を使わせる約束をする。
ナッシュはアリシアに、図書室を借りることとなったと話す。大学からの帰り道
にはチャールズとマーシーがついて歩いている。(幻覚) アリシアが「明日もま た大学へ行くの?・・」と聞いた。
ナッシュが「世界が灰になる・・」と言っている。幻覚でスパイとまだ重なってい
る。 アリシアが言う「ジョン。ストレスで幻覚が出るのよ。」 ナッシュが言う「帰 り道にチャールズがいたぞ」 「病院に戻るべきよ」とアリシアが言う。
ナッシュは学校に行く。 チャールズとマーシーがいる。 マーシーと握手をす
る。 マーシーに「ずっと僕は君といい友達だった、親友だった。 これきりだ、 お別れだ」 「君も同じだ」とチャールズに言う。 マーシーが泣くが、ナッシュは 「サヨナラ・・」と言って立ち去る。 チャールズは黙って見ている。
ナッシュが学校にいる。 「今も幻覚でスパイが現れる。 聴講していいか
な?・・。受講は初めてだ。」 担当教授は「光栄です。ナッシュ教授」と快く承知 して教室で講義を聞かせてくれる。 「いいかげんにしろジョン」 「なさけない、 恥をさらすだけだ。」と生徒が言う。 校門を出ようとしていると、学生に馬鹿に され、笑いものにされ、歩き方までまねをされる。 チャールズとマーシーが立っ ている。
自室となった図書室の壁や窓には一杯数字を書きつずけている。 カーシー
が通せんぼをする幻覚が見える。 学生には変人扱いされる。 チャールズとマ ーシーがいる(幻覚) 現実と幻想の境を行きつ戻りつするナッシュ。
1978年10月、プリンストン大学。ナッシュの所に青年が訊ねてくる「非可換
応用の法則ですが、解いたのですか?。・・・」 「一歩手前だ」 「あなたはジョ ン・ナッシュですね。・・・ぼくはトビ・ケリーです。ぼくもひとつ考えてるんです。」 と青年がノートを差し出す。 そして自分の理論を述べる。 「僕が思うに、カウ ロ拡大はまず関数を使い二つに分解します。」 「自転車Bの上にハエがいる。 往復するようにした自転車がぺちゃんこになる。彼らのアイデアは悪くない」 「時速10マイルの速度で移動していると仮定しよう」 「全体の使用量を考える ことが必要だ。・・・・。」
ナッシュは、かってのライバル、ハンセンのところに相談に行く「自分を役立て
たい。 教鞭をとろうかと思う・・・。」 「50人の生徒はプレッシャーだぞ・・・。」 すぐそばに幻覚の3人が見えるが、無視し続ける。 「上と相談する」とハンセン が言う。 「ナッシュ。勝負は?・・。怖いか?。」 囲碁の勝負を二人は始める。
1994年3月、プリンストン大学。 ナッシュは学生に講義をしている。 講義を
終えて部屋に戻ると。 「トーマス・キングさまがお見えです・・・」 「私のところ に・・・?」 「失礼・・・私の名はトーマス・キング。 あなたの均衡理論は、トラス ト規制法にも適用され、新しい経済学となった。」
トーマス氏が「お茶でもどうですか・・・」と会議室に案内しょうとする。 ナッシ
ュが言う「そこには入らない。 図書室がいい。 ここは知らないから・・どんなお 茶が出るか?。 ノーベル賞の選考は秘密に行なはれるのでは?・・・・。ノーベ ル賞なんてとんでもない」 「私は精神病だ。薬を飲んでいる。・・・今も無いもの が見える。・・・無視しているが・・・。」 一人の男性が近寄る「一定形式を探す 要求です。良く来てくれた・・・。」といってナッシュの前に万年筆を差し出した。 また一人「ミスターナッシュよく来てくれた」と万年筆をならべておいた。 周り にいた審査員たちも次々に立ち上がり彼の前に万年筆を並べていった。 「あり がとう・・・。いや、驚いた」ナッシュは言葉がない。
1994年12月、ストックホルムのノーベル賞の授与式の後、壇上でナッシュ
がお礼を述べている。「私は数を信じます。今、問うのは理論とは何か?。・・・ 答えは追ってわかるでしょう。」 「幻覚にも迷い苦しみました・・・。」 「人生で 一番重要なものはここに存在します。私が今夜あるのは君のお陰だ・・・。あり がとう」 客席の妻アリシアとお互いに見つめあう。 客席の全員が立ち上がり 拍手をする。 ナッシュが胸のポケットからハンカチを出してキスをし胸にしまう。 初めてのデートの時渡されたあのハンカチを・・・。
「パパ車へ」と息子が言う。 「じゃあそろそろ引き上げよう」 アリシアが言う
「うれしかったわ。・・ありがとう。・・・どうかしたの?。」 「いいんだ・・何でもな い」 ナッシュの頭の中には、パーチャ-とチャールズと姪のマーシーの顔が幻 覚として現れている。 「何でもない!・・・。行こう!」
彼は今もプリンストン大学に勤務している。 彼の理論の応用範囲は通商、経
済、産業その他広範囲に及ぶ。 終わり
H14.04.06
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