ザ・ダイバー  
                
  「ザ・ダイバー」  
 監督、ジョージ・ディルマンJr. 実在のモデルはカール・ブラシア。アメリカ海
軍で黒人では初めて"マスター・ダイバー"になった男、海軍の歴史を変えた名
誉と勇気に満ちた男の、真実の心に響く人間関係の物語。
 彼が試練の末に夢を実現させた人生は、今もアメリカで伝説的に語り継がれ
ているというが実話を超えた興奮と驚きに感動した。

 小作農家に生まれたブラシア(キュウバ・グッデングJr) の家庭は貧しく不遇
だった。
両親の人生のようには生きたくない。両親の人生を克服したい。きっと自分の
力で成功してみせる。と誓った彼はマスター・ダイバーになるため村を出て海軍
に入隊する。

 しかし、1950年〜60年代のアメリカ海軍にはまだ人種差別の厳しい壁があ
った。厳しいテスト後に訓練所に入隊しても宿舎からは臭いと言って同僚がみ
んな逃げ出すし、持ち込んだラジオを壊されるなど、いじめに遭う。

 テストで及第点の取れない彼は図書館の黒人女性職員に近づき、閉館後に
彼女の協力を得て、勉強の結果トップの成績を取る。

 訓練所の教官ビリー・サンデー(ロバート・デ・ニーロ)も所長も人種差別の激し
い人たちで、常に過酷な訓練を押し付けてくる。彼は自分の夢を実現させるた
めに、どんな事態にあってもギブ・アップしないで、いかなる苦しみにも耐えるこ
としかなかった。

 卒業のための水中実技組み立てテストでは、わざと部品をバラバラに散乱し
完成不能としてあきらめさせようとするが、不屈の精神で、最後までギブアップ
することなく、水中組み立てをやり遂げる。(エキサイティングな水中アクション・
シーンが続く)激しく反目しあっていた二人がいつしか深い絆で結ばれ、差別と
因習に固まっていた海軍の硬い壁をつき崩していく。

 卒業は出来たが乗船しても仕事は満足に与えられない。 炊事班として食器
洗いなどが彼の艦内での生活だった。 そんな時、船内で事故が発生する。 
海兵員が落下物に巻き込まれて深い海に沈んでしまう。 誰もが躊躇するなか
で彼は自分から志願して潜水する。

 この事故で同僚を救出はできたものの、自分の足を負傷し車椅子での生活と
なる。 「マスターダイバー」の審査受験資格は80Kgの錘を身体につけて10歩
歩けなくてはならない。 彼は試験挑戦のために足の切断を決意し義足をつけ
ることを申し出る。

 義足をつけてリハビリに励んだ彼は審査会に臨む。 この法廷で彼の身体に
80Kgの錘をつけてやるのも、号令を発し行動指揮をするのもかっての鬼教官
サンデー。 男同士の共感と友情、二人の高揚感みなぎる対決と情感あふれる
このシーンは見ごたえがある。

 生き詰まるような審査会で、大勢の見守る中、彼は全力を振り絞って一歩づつ
10歩を前進し「マスターダイバー」の資格を授与される。 この審査会場には、
彼のリハビリにずっと付き添ってくれた妻、かっての図書館女性職員のたたず
む姿がある。

 この男らしい生き様と二人の勇気は見ている者の心を魅了し、充分に感動さ
せてくれる 。     終わり     H13.02.



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