キャスト・アウェイ

    「キャスト・アウェイ」  監督ロバート・ゼメキス
 この作品で昨年の第73回アカデミー賞、最優秀男優賞に トム・ハンクスはノ
ミネートされた。 「キャスト・アウェイ」とは「漂流」という意味であるが原題は
「捨てられた人(社会から)」という意味だそうな。
 

      【ストーリー】
 全米一の宅配会社メンフィスのシステム・エンジニアとして勤務するチャック(ト
ム・ハンクス)は、多忙な日々を送っている。 荷物をどうすれば短時間で目的地
に運ぶことができるかとか、効率的な運搬を目指し、世界中何処にでも飛んで
行き現地スタッフにはっぱをかけている。

 猛烈社員の彼でも恋人ケリー(ヘレン・ハント)と過ごす時間は、心の安らぐひ
とときだった。 クリスマスを二人で過ごし、彼女の写真入りの懐中時計をプレ
ゼントされた彼は「すぐに戻ってくるよ」と言い残し、あわただしく南米行きの飛
行機に乗り込む。 だが、その飛行機が悪天候のため南太平洋の嵐の海に不
時着してしまう。 運良くチャックだけが小さな無人島に漂着する。
 
 無人島で食べれるものは、魚介類とヤシの実とそのジュ-スくらい。 第一の
課題は生きるための最低条件として、木と小枝を摩擦して火をおこし、雨水をた
めて飲み水を確保しなければならなかった。 物質文明の中にいた彼が石器時
代の生活に逆戻りしてしまったのだ。 しかし肉体的な試練にはまだ耐えること
が出来た。

 第二の課題は、想像を絶する厳しい自然の中でたった一人で生き続けなけれ
ばならないサバイバルに挑む精神の内にある闘いが待っていた。

 コミュニケーション社会の中で生きてきた人間が、何ヶ月、何年と会話を交わ
す相手もいない島で生きる孤独と絶望感は、彼にとって飢えよりも過酷で厳し
いものであった。 あれほど時間に追われていた彼がいまや有り余る時間を持
て余している。 チャックはケリーの写真を心の支えにする。 さらに漂着した宅
配便の荷物の中からバレーボールを見つけ、これに顔を描いて「ウイルソン」と
名づけて話し掛けることで、壊れそうになる自分自身の精神の安定を保とうとす
る。
 
 来る日もくる日も、船は見えず海鳥の鳴き声が聞こえるだけ、懐中時計の中
のケリーの顔写真もすっかり黄ばんでしまった。 生きるがために海に潜って魚
を捕る。 でも人は何のために生きるのか。 今までのあわただしかった日々は
いったい何だったのか。 生きるとはどういうことなのか。 彼は考え悩みこの島
からの脱出を計画する。 一日1個刻んだカレンダー代わりの日にちもすでに4
年が過ぎている。

 チャックは流れ着いたプラスチック製品や、材木を寄せ合って自分でいかだを
作り島を脱出する。 大海原を当ても無く櫂をこぎ疲れ果てて気を失っているとこ
ろをとおりかかった貨物船に救助される。 帰国した彼はすぐにケリーを訪ね
る。 しかしケリーはすでに幸せな家庭をすでに築いている。 彼の唯一の生き
がいだったケリーが・・・・。

 何一つ見えない荒野の十字路にたたずむチャック。 彼の「キャスト・アウェイ
(漂流)」は終わることは無い・・・・。 絶望のふちに立つ自分を支えてくれるの
は、自分にとってかけがえの無いものへの思いだったのだが、それがなくなって
も人生は容赦なく続いて、人は次の人生を歩き出す。
       終わり

 無人島でのシーンがメーンで、せりふのほとんどないトム・ハンクスの独り芝
居。 彼の演技力がすべてなのであるが、4年後という設定のために彼は1年
間撮影を中断させて体重を25Kgも減量させたという。 頬がごっそりとこけてす
ごみを肉体で語ってくれる。 プロに徹した役者魂というものなのか。
    H13.02.25 
                                        


                                                                          
トップへ
トップへ
戻る
戻る