マトリックス レボリューションズ(上)




      
 11月5日世界約50都市で同時公開された「マトリックス」の最終編。 この日公開にあわせて日本に来た主演のキアヌ・リーブスやジャダ・ピンケット・スミス等が午後10時半に新宿ミラノ座でカウントダウンを行い、この模様を国内8劇場にライブ配信した。
 ”始まりがあるものにはすべて終わりがある。” 第1作目が「誕生」。 2作目が「人生」。 3作目は「死」がテーマだといわれた「マトリックス」の最終章。 この「マトリックス」は最先端のSFXを駆使した映像とストーリーの中に、過去に評価されたさまざまなジャンルの作品から、一部をとりいれているところがある。 監督・脚本はアンディ・ウォシャウスキーとラリー・ウォシャウスキーの兄弟。

 
 【予備知識】
 サラリーマンであるトーマス・アンダーソンはもう一つの顔<ネオ>として知られたハッカーだった。 ある日彼に届いたメールが女性ハッカー、トリニティへと導いた。 アンダーソンはエージェント・スミスに捕まり腹の中にバイオメカを入れられるがトリニティが仲間と現れて取り除いてくれる。 彼が連れて行かれた廃墟にはモーフィアスが待っていて「ピル」を選ばせる。 赤いピルは真実、青はそのまま夢を見続けるというカプセルの、「赤いピル」を選んだアンダーソンが目覚めたのはポットの培養液の中で、身体中にチューブがつけられていた。 そこから這い出し現実に戻った彼にモーフィアスが(マトリックス)の秘密を話す。  「現代は2197年。 人間はマシンとの戦いに敗れ、今ではチューブに繋がれて彼らのエネルギー源として使われている。 自分たちが暮らしている1999年はマシンが人間の脳に作った仮想現実の世界で、このマシンが作った世界をマトリックスと呼ぶ。 そしてそんな人間をマシンから解放する伝説の救世主がネオである」と。
 ある時、世界中の人口知能(コンピューター)が結束して反乱をおこし、人類に対して主導権を握ろうとした。 このころのコンピューターは太陽エネルギーで動いていたので、人類は太陽光線を遮って対抗したが、コンピューターは人間の生体電気エネルギーからパワーを得ることに気付いたため人類が戦いに敗れた。 この時から世界は人口知能に支配されている。 ネオたち「サイバー人間」はバイオメカニカル昆虫に産み付けられて繁殖し、繭形のカプセルのなかで液化した死体を食べて一生を過ごしながらコンピューターに電気を供給している。 したがって彼等「サイバー人間」の後頭部にはコード接続用の穴が開いている。 「サイバー人間」は共通の夢の世界で眠りつづけされており、この仮想現実空間「マトリックス」を現実と思っている。 ネオは「赤いピル」を飲んで覚醒し、マトリックスが幻の現実であることを知ったので反乱軍に加わり、人工知能の支配からサイバー人間を解放するためにコンピューターが送り込む敵と戦う。 ネオたち反乱軍の乗っている船がホバークラフトの「ネブカデネザル」である。 マトリックスから逃れ地球上に残った人間(彼等には後頭部の穴がない)の住む唯一の街が「ザイオン」(地底2000キロにあり人口25万人)である。 コンピューターが刺客を次々送り込んでいるのは、人類の反乱を封じるためと、ザイオンにアクセスするパスワードを聞き出して人間を絶滅したいためである。 彼等はこの地「ザイオン」をセンティネルズ(バイオケミカル・マシーン)にも襲わせている。
                                           
             
 【キャスト】
ネオ/トーマス・A=アンダーソン(キアヌ・リーブス) 人工知能の支配から人類を解放するために反乱軍に加わる
            救世主のサイバー人間。

モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)人間の街「ザイオン」のリーダーで「ネブカデネザル」という名のホバークラフトの船長。
トリニティー(キャリー=アン・モス) ネオの愛と信頼を支えにマトリックスに乗り込む女性。
            予言者から「お前が愛する男が救世主になる」といわれた。

ナイオビ(ジャダ・ピンケット・スミス)ホバークラフト「ロゴス号」の船長。ザイオン反乱軍(ネオ側)の黒人の女性戦士。元はモーフィアス             の恋人。今はロック司令官の恋人。
ロック(ハリー・J・レニックス)人間の住む唯一の地「ザイオン」の軍隊を率いる司令官
リンク(ハロルド・ぺリノー)黒人のサイバー人間で人工知能と闘うネオの仲間。ネブカデネザル号のオペレーター。
メロビンジアン(ランバート・ウィルソン)情報の取引をビジネスにしている、マトリックスの実力者。プログラムの一人。
パーセフォニー(モニカ・ベルッチ)マトリックスの実力者メロピンジアンの妻。 ネオのために夫を裏切った。プログラムの一人。 
ザ・ツインズ(ニール&エイドリアン・レイメント)人工知能が送り込む、透明に近いロングコートの刺客二人。
エージェント=人工知能が仮想現実空間(マトリックス)に放った黒スーツ姿の刺客。ソフトからソフトへ渡り歩き反乱を
            おこしそうな人間をチェック。

エージェント・スミス(ヒューゴ・ウィービング)マトリックスを守るボデーガードだったが、システムから削除されネオへの
            復讐を企む刺客。自己増殖する技術をもっ
ている。
            人工知能が人類の所に送り込みマトリックスに紛れ込んでいた男。

オラクル(メアリー・アリス)ネオに平和への道を教える予言者の女性。プログラムの一人。
キッド(クレイトン・ワトソン) 自力で現実世界に覚醒した少年   
セラフ(コリン・チャウ)武道の達者な予言者オラクルのボデーガード。
ジー(ノーナ・ゲイ)リンクを愛する黒人女性。
サティー(タンビーア・アトウォル)父のラマとモービル・トレイン・ステーションでネオに出会う少女。
ベイン(イアン・ブリス)センテイネルズに攻撃されたネブカデネザルのただ一人の帰還兵士。 元ザイオンの戦士
            だったがマトリックスでスミスに身体を乗っ取
られた男。
トレインマン(ブルース・スペイン)メロビンジアンに雇われる悪の仲間で、機械の世界とマトリックスの間を動く列車を
            管理しているプログラムの男。

ミフネ(ナサニエル・リーズ)ザイオン反乱軍のAPU(巨大な戦闘マシン)部隊のリーダーでセンテイネルズと戦い戦死する。
センティネルズ=人工知能が現実世界のゲリラに攻撃を仕掛けるイカ形のロボットで、ネブカデネザルを攻撃する。


 【ストーリー】
  コンピューターの画像がランダムに数字やアルファベットを表示しながら上から下に流れ落ちている。 急に強烈な光が画面いっぱいに広がる。 ハンマー号のコンピューターがたくさん並んだコントロールルーム。 この船の船長ローランドの周りにモーフィアス船長やトリニティー、その他たくさんの部下達が心配そうに集まっている。 無数のセンティネルズに襲撃されて、ネブカデネザル号、ソーレン船長のヒジラント号、ナイオビ船長やゴーストの乗るロゴス号などが帰艦していない。 画像を調べている係官が言う「見えてるものは全部違う、ナイオビもゴーストも発見出来ません・・・マトリックスに入って探せば・」  ローランド船長が言う「たぶん無駄だ、おそらくやられている。」 「ザイオンに戻りますか?」 「いや、船だけでも無事なら回収する」 「トンネルはもちろん可能な限り広い範囲を探すんだ!・・」 「船長!。・・どこも敵がウヨウヨしています」 「じゃあ、さっさとロゴス号を見つけるんだ!」ローランド船長が叫ぶ。

 その部屋のベットには救出されたが昏睡状態のネオと、センティネルズに攻撃されたネブカデネザルのただ一人の帰還兵士べインが、意識を回復しないまま眠りつづけている。 そばに付き添うトリニティーに女医マギーが近づいて聞く 「何か食べたほうがいい」 「ありがとう」 「変化はあった?。・・」心配してネオの顔を覗き込む「彼なら大丈夫よ・・」 「眼が覚めるまではね・・・船長が話を聞くと言ってた」 隣りのベットで昏睡状態のベインの手首を見せて「この傷を見て・・・多分幻覚や妄想で自分で切った。よく判らないけどずっとこれが気になってるの」という。 「なに?・・・」 「ネオの脳波のパターンが普通の昏睡と違うの・・しかも同じパターンの人を良く見る」 「だれ?・・」 「侵入している人よ」女医マギーが言う。

 オペレーターがコンピューターのキーを叩いて検索している。 画面を見ながら言う「何も見えませんよ。・・・ネオは居ません」 そこに別のオペレーターの男が入って来る「計算結果が出ました。・・・これまでの速度から機械たちがザイオンに達するまで20時間を切ったと思われます」 「もうそれだけしかないのか?」 モーフィアス船長が言う「無駄にする時間はないぞ。・・・上に行ってフォラグラムで監視しろ。船首と船尾の銃座にも誰か配置しろ」  黒人オペレーターのリンクがやって来る「船長!連絡があります」 「なんだ!」 画像に予言者のボデーガードの顔がある。 「セラフです。」 セラフが画面の中から言う「予言者が呼んでいる・・今すぐ来てくれ」 

 ネオが地下鉄の駅のホーム(モービル・トレイン・ステーション)に倒れている。 意識が回復して起き上がろうとした時「おはよう」と少女が声をかけてきた。 ネオが聞く「君は誰?・・」 「私はサティーよ・・・あなたはネオね。 パパはあなたがここに居るのは変だから、きっと迷ったんだろうって・・・迷子になったの?」 「ここは何処?」 「ここは駅よ・・電車の・・」 ネオが必死に思い出そうとしながら「ここはマトリックスの中では?」と聞きかけるが、サティーは「それは電車の行き先よ・・これから行く所・・だけどあなたはトレインマンが行かせてくれないの・・私はあの男が好きじゃない。でもパパが言ってた。 あの人に逆らうといつまでもここに置いて行かれる。と・・」と言う。

 モーフィアスとトリニティーが、予言者オラクルのボデーガードのセラフに案内されて、オラクルの所に行く。 横長いソファーに腰掛けタバコを深いながら、彼女が自分から「オラクルよ。 良く来てくれたわ」と自己紹介する。 オラクルが言う「判っては居ることだけど、物事はあなた方の思ったとおりにはならないものね。」 トリニティーが聞く「あなたは誰?」 「私は予言者。 こんなことになって残念。 あなたが覚えてる姿じゃなくてごめんなさいね。ある選択をし、その代償がとても大きかったの・・。」 モーフィアスが聞く「どんな選択だ」 「あなたを助け、ネオを導くことよ。・・・だけど本当に大変なのは、どんな選択にしろ繰り返すことよ。・・その代償が判っていながらね。 でも、その選択をして良かったと思う、今ここに居てまた手伝えるから」  トリニティーが聞く「ネオに何があったか知ってるの?」 「ネオはこのマトリックスと機械の世界の間に迷い込んでるの、そこをコントロールするのはトレインマンと呼ばれるプログラムで、彼はそこからマトリックスにプログラムを不正に出入りさせている。 彼があなた達より先にネオヲ見つけたら、ネオを助け出すのは難しくなるかも知れないわね」 「なぜ」 「彼の雇い主が問題だから・・・」 「メロビンジアンか?」 「あなた達に賞金をかけているわよ。 いつも注意してて。・・・トレインマンの探し方はセラフが知ってるから案内させるわ・・。 セラフはずっと私を守ってきた。・・・あなた達の力にもなれるわ」
 セラフが「行きましょう」と言うが二人は躊躇する。 「判るはモーフィアス・・・あなたは疑いでいっぱい。・・・どうしていいか混乱している。」 「これだけいろいろあった後でまだあなたを信じろというのか?」 「いいえ、私は今以上のことを求めるだけよ。 自分の心は自分で決めるわ。 ただ言えることはあなたの友人が困っている。 助けが必要ということよ」

     
 駅のホームで意識を回復したネオに少女サティーが聞く「あなたはマトリックスの人?。・・」 「そうだ・・・昔はね」 「なぜ出て行ったの?」 「どうしても・・・」 「私もオウチに居られないの」 ホームのはずれのベンチに居た少女の両親が心配して「サティーこっちに来なさい。その人を困らせちゃダメだ」と父親が言う。 「はい。・・・パパ」 父親のラマが言う「すみません。何でも興味深々で・・」 「たしかあなたは・・・」 「ええ、フランス人のレストランに居ました。 私はラマ・カンドラ。・・妻のカコウと娘のサティーです。 あなたに会えて光栄です」 「あなたはプログラムなのか?」 「そうです。私は発電所のリサイクル部門にいます。 妻はインタラティブソフトのプログラマーです」 妻が「ここで何しているの場違いでしょ」と聞く。 ラマは妻をたしなめながら「本当に申し訳ありません」と謝る。 ネオは「別にいいんだ・・・でも、答えようが無い、ここがどこかも判らないんだ。・・」と言う。 「ここはどこでもありません。マトリックスと我々の世界の間です」 「トレインマンって何だい?」 「フランス人に使われています。フランス人は決して忘れません。許すこともありません」 「知り合いか?」 「知り合いではありませんが、我々の世界からマトリックスに入りたければ、あのフランス人の許可がいるということです」 「そのためにここに居るのか?」 妻が口を挟む「あなた辞めて・・・」 「教えてあげないのが可愛そうだろ。・・・彼は二度と人間の世界には戻れないかも知れないんだよ」 「悪かったな・・・今の質問は無しにしよう」 「いいえ、構いません。答えは単純です。 娘をとても愛してるんです。 私にとって一番大切な宝物です。 でも、われわれの世界では関係ない。・・プログラムにはみんな目的が必要です。 もし無ければ削除されます」 「あのレストランに居たのは娘を救うためです」 「今までプログラムの愛など聴いたことが無い。その愛は人間の感情だ」 「いえ、ただの言葉・・大事なのはその言葉の表す関係です。 あなたには愛が見える。 それを守るためにあなたなら何が差し出せますか?」 「何でもだ・・・」 「では、あなたがここに居る理由は、私が居る理由と同じでしょう」

 地下鉄、車輌の中でトレインマンと、予言者のボデーガードのセラフとモーフィアスとトリニティーの三人が出会う。 トレインマンが「こっちに来るんじゃねえ」と立ち上がる。 モーフィアスが「面倒は避けよう」というが、トレインマンは「俺のそばに近づくんじゃねえ」と言ってピストルを突きつける。 「手を貸して欲しい」 「誰がおめえなんかに・・・」 トレインマンは車輌の緊急停車ボタンを押して、電車を急停車させホームへ逃げだす。 改札ゲートを飛び越え、ピストルを乱射しながら駅の構内を逃げ廻る。 左手の腕いっぱいにつけた腕時計を見て、タイミングを計り、通過する電車の前を反対側ホームに飛ぶ。 電車が通過した後にはトレインマンの姿は何処にも見えなくなっている。 

 ネオとサティーの父親ラマが話している。 6時10分時計を見て、「遅れている。列車はいつ来るんだ?」 「少し遅れています。・・・トレインマンにはめずらしことですが・・・」 「俺が居ることと関係が・・・」 「さあ、どうでしょうね。 それが判るのは予言者だけです」 「彼女を知ってるのか?」 「誰だって知っています。 フランス人に会う前に相談に行きました。 一人になるサティーの面倒を見ると約束して呉れたんです」 「一緒に住まないのか?」 「それは出来ません。 フランス人が許可したのは娘一人だけです。妻と私はまたもとの生活に・・」 「なぜ?」 「運命だからです。・・・運命も愛と同じように言葉です。・・・言い換えれば自分がここに居る意味です・・運命を恨んではいません。すばらしい妻と娘を与えてくれたことを感謝しています」 「パパ電車が来た」 「急いで・・カバンを持って・・」 

 電車がホームに止まり、ドアが開く。 トレインマンが降りて来て叫ぶ「遅れている。急げ!・・」 親子の後にネオが続いて入ろうとしたら、「誰だ!・・」と止められる。 父親が「私の友人です」と言うのを、妻が「あなた・・・」と制する。 トレインマンが「お前を知ってる。・・だからやつらが来た訳か?・・」と納得している。 「戻らなければならない。・・報酬は幾らでも出す」 「ダメだ。・・メロビンジアンがいいと言うまで、お前はここにいる。 彼のことだ永い間お前をここに閉じ込めて置くだろうな」 ネオが聞く「腕づくでもか?」 「判ってねえな・・ここは俺の世界だ。ここじゃルールは俺が作る。・・ここで脅すのは俺のほうだ。・・ここじゃ俺が神だ!」 レオを一撃でホームに倒し、親子に向かって「早く乗れ!・・そいつは残るから」と言って、乗り込んだ電車が遠ざかる。

 セラフとモーフィアスとトリニティーが車に乗っている。 「オラクルの所に戻って助言を貰おう」 トリニティーは「いいえ、まだすることがある」と言う。 ホームに取り残されたネオは線路に飛び降りて走り出す。


 モーフィアスたち三人がビルの玄関に乗りつける。 屈強な男達が入り口を警備している。 地下駐車場にセラフが来るとそこもガードマンがいる。 「なるほど・・・死にに来たと言うわけだ・・」などと笑っている。 「彼に話がある・・」 「このドアを通りたけりゃ、おれの死体を乗り越えな・・」 ピストルを取り出す二人を蹴り・突き・打ちのめす。 セラフが言う「クラブに武器は持ち込めない。 エレベーターが下に着くとクロークに女が居る。 運がよければ男は一人しかいない」 トリニティーが聞く「運が悪かったら?・・」 「大勢居るだけだ」 

 エレベーターが止まり扉が開く。 女が「コートをお預かり・・」まで言った時、女の手を取りエレベーターの中に押し込むと、扉が閉まる。 警備の男達が銃を構えるより早く、三人ともが両手に持った銃が一斉に連射されていた。 銃撃戦が始まる。 誰もが空中を飛び、柱にくっ付き、壁を蹴り、天井にへばりついたり、天井を逆吊りのまま歩いて激しく銃を乱射する。 セラフの一蹴りで壁にめり込む男もいる。
     
 強烈な音楽に合わせて、半裸に近い男女が踊り狂うホールに、両手に銃を持った三人が現れて踊りの中に入てくる。 警備の男達が一斉に銃を抜いて踊て居る客を取り囲む。 妻とソファーでくつろぎ踊りを見ていたメロビンジアンが「何だこれは?・・・」と言う。 踊りの音楽を止めさせて「放蕩息子が帰った来たぞ・・・賞金を受け取りに来たのか?。セラフ・・」 笑い転げながら「言ってみろ!・・銃には弾がどれだけ入っている?」  周りの警備員を見回して「何発かは知らんが私を倒すには足りると思えんがな・・」 セラフが言う「話をしに来ただけだ」 「話をするために派手に暴れ回って来た訳か?。・・・武器を渡せば無事に帰すと約束しよう」 「三人ともか?」 「もちろんだ」

 トレインマンが三人の銃を取り上げに来る。 「あれだけ大騒ぎした後でこんなに早く再会できるとは誰が想像できる?。・・運命は気がきいているぞ。 裏切り者のお前がこいつ等を連れてきたということは、あの占い師は新しい身体を手に入れたようだな。残念だ。・・だが想像はついている。 行動には結果が伴うと言う事をあの女が学んだ居るといいが・・そして、私に何か期待するなら代償
が必要だと言うことを・・」 モーフィアスが聞く「なぜ来たか知っているのか?」 「知ってるか?。とは失礼な言い方だな・・知ることが私の仕事だ。・・私がかかわるのが偶然だとは思っていない。 今回どうして、こんなことになったのか興味がある。・・知ってるか?」と隣りに居る妻のパーセフォニーに聞く。 「いいえ」 「いいえ?。・・だが聞くのが一番だろうな」 モーフィアスが言う「取引がしたい」 「モーフィアスいつでも短刀直入だな」 「わかった私はそっちの欲しい物を持っている。取り引きするにはそっちも魅力的なものがなきゃ・・だろ、そして私にはたまたま欲しい物がある。ここにきてからずっと欲しかった物が・・力では決して手に入らないそうだ。・・与えられる物だ」 「何だ・・」 「予言者の眼だ。・・・前に因果応報からは逃れられないと教えたのにお前達は又来た。他の者には偶然でも、私には当然だ。 一見チャンスに見えるものも、考えるべき代償だ。予言者の目を持ってきたら、君達の救世主を帰してやろう。・・・さあどうする」 トリニティーが「こんなのに付き合っててたまるか」と言い、突きつけられていた銃を手で払って全員が乱闘になる。 全員の動きが止まったのは、各々の額に互いに誰かの銃口が押し付けられていたからだった。 トリニティーが言う「取引の条件ならこんなのはどう?。 眼を渡すか私たち全員が死ぬか?」 「面白い取引だ・・。あの男のために本気で死ぬ覚悟なら・・」 妻のパーセフォニーが「彼女はやるわ・・恋をしているもの・・」と言う。 「恋をしている者と、異常をきたしている者は驚くほど数値のパターンが似ているんだ」 トリニティーがまた聞く「時間切れよ・・・どうするメロビンジアン」

               
 地下駅のホームでネオは考える。 「そうだ、自分でここには来たんだ。 自分で出られるはずだ」 そこに電車が滑り込んでくる。ドアが開きトリニティーが降りてくる。 取引が成功しネオを迎えに来たのだ。 二人はホームを駈け寄り抱き合う。 そしていつまでもキスをする。

 船内のモニター画面を見ながらモーフィアス船長が聞く「ここから出られるか?」 「もう少しです・・・タイプが古いもんで苦戦してます。 ネオは居ましたか?」 「見えてないのか?」 「はい、船長・・何かが写ってますが・・」 

 ネオとトリニティーは車で帰途についている。 ネオが言う「俺はまだ帰れない。・・予言者に会う」 「これから・・・」 「最後のチャンスなんだよ」

 ネオは予言者オラクルを訊ねる。 オラクルは台所で少女サティーとクッキーを作っている。 ドアを開けるとサティーが「ネオ・・」と名前を呼ぶ。 オラクルは「あなたが来る前にクッキーが焼けるとよかったのに・・」と言いながら「セラフに味見をしてもらって」とサティーを部屋から出す。 
 オラクルは「さてと・・・私がわかる?」と聞く。 「全部じゃないが」 「無くすデータも、残るデータもある。 鏡で顔を見ても、まだ自分だと思えないけど・・・。あなたが始めて訊ねて来た時のこと覚えてる?。・・・コチコチに緊張してたでしょ。・・いまは堂々としている。 あなたにはびっくりさせられた。」 「俺もあなたには驚かされた。・・・だが知りたいのは、なぜ俺を導いたかだ、この先はどうなる?。・・知らないのか?。言わないだけか?」 「前にも話したでしょ。 理解してない選択を超えて見ることは出来ないのよ。 たとへ私でも・・・。」 「何を話し何を話さないかもその選択か?」 「もちろん違うわ」 「アーキテクト(マトリックスの設計者)のことを言わなかったのは?・・。なぜ過去にもザイオンに救世主が存在したことを話さなかったんだ」 「まだ知るべき時じゃなかったから・・」 「それは誰が決めたことだ」 「判るでしょ。・・」 「今は少しは知ってもいい頃だと思うが?・・・」 「話しましょ」 「接続してないのになぜ、俺の心と身体は分かれたい。 なぜ心で思っただけでセンティネルズを破壊できん。 俺に何が起こったのか教えて欲しい」 「救世主の力はマトリックスを超えて広がる。 そして最後はもと来た場所へと帰っていく」 「何処へ?」 「ソースへよ。・・センティネルズに会った時感じたのはその力、でも準備はまだだった。 信じて欲しいんじゃない。だけど死ぬにも早かったみたいね」 「アーキテクトは俺がソースに戻らなければ、今夜ザイオンは滅びると言っていた」 「選択を超えて見ることは私やあなたにも難しいけど、あの男には全く出来ない。・・彼は理解しないし、出来ないからよ。 一度に一つずつ変数を解いて答えを出していく、彼が目指すのは常にバランスを取ることよ」 「あなたが目指すのは?・・・」 「そのバランスを乱すこと・・」  「なぜだ、・・・何が望みだ」 「私が望むものはあなたと同じ、あなたと同じくらい必死に求めている」 「戦争の終わりか?。戦争は終わるのか?」 「結果は別にして・・・」 「ザイオンは救われるのか?」 「ごめんなさい。私はその答えを知らないけど、答えがあるとしたら、それが見つかる場所は一つしかない。」 「何処だ!・・」 「判ってるはず・・あなたが答えを見つけられなかったら、もう明日は来ないかも判らない。誰にとってもね・・・」 「それはどう言うことだ」 「始まりがあ
るものにはすべて終わりがある。 終わりが見える。 広がる闇が見える。 死が見える。 彼を倒せるのはあなただけです。」 「スミスか?」 「もう間もなくマトリックスを滅ぼす力を得る。 だけど、おそらくそれだけでは停まらないし、停まれない。 全てを破壊し尽くすまでつき進む。」 「なんであいつは?・・・」 「あなたの対極にあるシステムそのものがバランスをを保とうとした結果よ」 「もし俺が失敗したら・・・」 「いずれにせよ決着がつく、この戦争は終わりを迎えるのよ。 今夜、二つの世界の未来はあなたが決めるのよ。 あるいは彼が・・・」  
  

 ハンマー号のコントロールルームのベットの上で、センティネルズに攻撃されたネブカデネザルのただ一人の帰還兵士べインが意識を回復した。 レオも続いてベットで目を覚ます。 そばに付いていたトリニティーが「気分はどう?。・・大丈夫?」と聞く。 ネオは意識を呼び戻しながら「チョット時間が欲しい」と言う。 二人に付き添っていた女医のマギーが「ローランド船長!」と船長を呼ぶ。 「どうしたマギー」 「ベインの意識が戻りました。」 「よし、何か答えが出るだろう」 

 予言者オラクルと少女サティーのいるキッチンルームに、ボデーガードのセラフが迎えに来る。 「時間です」。 「判ってるわ・・サティーいい。 クッキーを持って行きなさい」 「又来てもいい?・・わたしまた、ここに来たい」 「わたしも来て欲しいわ」 「じゃあ、また明日来るね」 「楽しみにしてるわ・・・」  セラフとサティーがエレベーターの前まで来ると、廊下の電気が次々に消えてゆく。 セラフが非常階段を見ると、大勢の男達が上がってくるのが見えた。 「恐いわ・・・」サティーが言う。 セラフはサティーの手を引いて、廊下を走りドアをいくつも開けて部屋から部屋に逃げた。 部屋の中に息を殺して隠れていたが、部屋のドアが開けられる。 突然大勢のスミスが現れて取り囲まれる。 スミスが言う「いやいや、これは久しぶりだな、お前を追うのはまるで幽霊を追うようだった。 セラフが言う「また倒されたいのか?・・」 「確かに前はやられたが、今は事情が違う。そしてお前が最後のエグザイルか?・・・」 サティーが言う「あなた は悪いやつだって言ってたわ」 「私を良く知れば判るが、それほど悪くはないぞ」 
         

 予言者オラクルの部屋にスミスが来る。「偉大で強力な予言者オラクルとついに対面か・・・私が来ると判っていたけど逃げなかったのか?・・・予言者は決して驚かないし、意外なことなどない。 何でも知っている。・・・もし、そうなら私が来ることを知っていて、なんでここに居るのか?。 なぜ逃げなかったのか?。 そこに座っているのもわざとだと言うのか?」 「サティーが何をした・・」 「あなたは最低ね・・」 「そうかな母さん・・・」 「用件を済ませたらどう?・・」 「ハイ母さん・・」 スミスがオラクルの手首を握ると、身体が黒く増殖されていく。 突然オラクルの姿が消えてなくなる。 スミスの高笑いだけがあとに残る。 

 ローランド船長がネブカデネザルからのただ一人の帰還兵士べインを調べている。 ベインが言う「本当に答えられるといいんですが、何一つ覚えてないんです」 「その手の傷は何だ!・・切って何日かたってるな」 「ええ、たしかに船長の言うとおりです。 しかも自分で傷をつけたように見えますよね。」 「何で自分でそんなことをするんです」  「その時の自分が俺じゃなきゃ別ですよ。 ただ、それが俺じゃなかったとすれば・・・だれなんでしょう」 船長が女医マギーに聞く「幻覚や妄想がないか調べたか?」  「ハイ船長。・・検査では正常です。・・けれど脳神経にいろいろ異常が見られました。 神経伝達の障害や新しい外傷の跡です。 皮質全体に亘って傷があります」 「真実を知りたい、どんな手を使ってでも思い出させろ」

 ハンマー号のコントロールルーム。 「船長!やっと見つけました」 「ロゴス号か?・・」 「そうです」 「生命反応は?・・・」 「生存者の反応はありません・・・」 「船はどうなっている?・・」 「コルクロンで見る限り無傷です。」 ローランド船長が言う「よし・・着陸せよ。背後を警戒せよ」 ホバークラフト船ハンマー号が静かに着陸する。 船長が言う「ロゴス号がすぐ使えそうかすぐ調べろ」 ハッチが降ろされ、モーフィアス、トリニティー、リンク隊員がライトをもってロゴス号の船内に入る。 物音がする。 「注意してください。 センティネルズどもが潜んでいるかもしれない」 「ワナかも知れない」

 慎重に艦内を探ると黒人の女船長ナイオビがいる。 ナイオビが言う「武器をどけてバッテリーが上がっただけよ、船は充電すれば使えるわ」 さらにモーフィアスを見つけて「あなた大丈夫」と言う。 「大丈夫だ。・・・あの後どうしようもなかったんだ」 「いいのよ、あなたに会えて嬉しいわ。・・・ネオを救い出したの?」 「ああ、・・なぜそれを知ってる?」 「予言者よ・・」 「会ったのか?」 「会ったわ・・彼女が言うのはいつも同じ・・・私が聞くべきことよ」

                                               平成15年11月8日 観賞
            (下)に続く   


マトリックス レボリューションズ(下)  へリンク

戻る
戻る