ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還(中)

〔 第 3 部 〕



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HERALD 日本ヘラルド映画株式会社

 森の中を馬に乗って20人位が移動している。 エルフ族の娘と結婚し不老不死の運命を選んだエルロンドが娘アルウェンを思って言う「一番安全な道を通っていけ、船は灰色港に錨を下ろし、娘の到着を待っている。 これが最後の旅だ」  (アラゴルンに抱かれた、まだ幼い子をアルウェン姫が微笑みながら観ている姿が見える) アルウェン姫の胸にはアラゴルンのものと同じ戦士の像のネックレスが輝いている。 「アルウェン姫、急がないと船に遅れます」  急にアルウェン姫の様態が悪化する。 駆けつけた父エルロンドにアルウェンが聞く「教えてください。 未来を見通すお父様には何が見えたのですか?・・」 「お前と我が軍の未来には死が見えた。・・」 「私の未来に命が生れます。 子供をご覧になったはずです。 私と息子を・・・」 「その議題は消えかけておる」 「まだ消えてはいません」 「消えたも同じだ」 「一つ確かなことがあります。 今あの方を見捨てたら永遠に悔やみ続けるでしょう。 時は来ました、灰の中から火は甦り、陰から光が差し込むでしょう。 折れた刃は新たに磨がれ、無冠のものがふたたび王となるでしょう」 アルウェン姫が言う「折れた剣を又鍛えなおしてください」  エルロンドが言う「手が冷たい・・・エルダールの命が薄れていく」 「私の選んだ道です。 お父様の望みがどうであれ私の望む道です・・船にはもう乗りません」 槌音を響かせてロスロリアンで、折れた刃が又新たに打ち直された。 

 白馬に乗ったガンダルフとピピン少年がゴンドール国にやって来た。 険しい山に美しい白が作られたいる。 ガンダルフが言う「ミナス・ティリス王の都だ」。 城門をくぐり永い回廊を駆け上り、最上階の広場にやって来る。 枯れた木がある。 ピピンが言う「ガンダルフ・・・この木だ」 「ゴンドールの白い王の木だ。・・・デネソール公は王ではない。・・留守を預かる執政に過ぎん。気をつけるのじゃ。 デネソール公はボロミアのお父上。 愛する息子の死を知らせるのは賢明とは言えぬ、フロドと指輪のことも話すな。 アラゴルンのこともじゃ。・・口を利くなということじゃ。」 二人はデネソール公の前に進み出る。 ガンダルフが挨拶する「偉大なるエクセリゴンのご子息、ゴンドールの執政にして大公デネソール殿。・・・暗黒の時に当たり便りと忠告を携えて参りました。」 デネソール公がうなだれて言う「予の息子がなぜ死んだか、その訳を告げに来たのであろう。」  たまらずピピンが言う「ボロミアは僕と僕のいとこをかばって弓を受け亡くなりました。たくさんの敵から僕等を守って・・・その恩に報いるため身命を捧げて、ご奉公いたします」 ガンダルフが言う「執政殿、ご子息の死を嘆かれるのは今しばらく先に延ばされたい。・・・戦が始まります。・・・敵は直ぐそこに迫っています。・・貴殿にはこの都を守る義務があるが軍の備えは如何に?・・友を頼られよ、この戦は一人では叶わぬ。・・・ローハンのセオデンをお呼びなされ、のろしを上げるのじゃ」 「己を賢いと思っておるであろうな、だがそなたに真のチエなどは無いわ。・・・白い塔の目はそなた以上に多くを見ている。 そなたは予を左手でモルドールへの盾とし、右手で予に替わる者を立てる気であろう。・・・噂は耳に届いておる。アラソルンの息子アラゴルンだと・・・。だが、覚えておくがよい、予はさすらい人などに頭は下げん。 遠の昔に王権を失った家系の末裔などに・・」 「貴殿には王の帰還を拒む権利はありませんぞ執政殿」 「ゴンドールの支配権はわしのものだ・・・誰にも渡さん」  ガンダルフとピピンは王室を後にする。
                      
 「来い!・・」ガンダルフはピピンを城の裏に連れて行って話す。 ピピンが言う「お城の衛兵だなんて、形だけの人間だよね。本当に僕に戦いを期待はしてないもの」 ガンダルフが言う「お前さんは執政に奉公する以上命令には従わねばな」 「すごく静かだ、戦なんてしたくない。 避けられない戦をこうやって待つのはイヤだ。 望みはあるの?・・ガンダルフ・・・フロトとサムたちに」 「はなから望みは薄かった。愚かな望みよ。・・・敵は用意万端じゃ、ありったけの兵が集まった。 オークだけじゃない、人間も居る。 南方のハラドリムの軍隊や沿岸地方の傭兵軍団など皆モルドールの呼びかけに応じる腹じゃ。・・・これまでのゴンドールは費え去る。・・ 何処よりも巨大な鉄槌が振るわれる。 アンドゥイン河を廻られ、オスギリアスの守備隊が敗走すれば都の最後の防衛線が失せるんじゃ」 「でもまだ、白の魔法使いがいますよ。・・これって心強いよね」 「サウロンはまだ最強のしもべを表に出しておらん。・・こやつがモルドールの軍勢を引き放ち、この世に生きる人間の男には殺せんと言われている魔物。・・アングマールの魔王じゃ。・・会ったことがあるじゃろう、マモンスールでフロドを刺した、あやつがナズグルの首領じゃ。・・・9人のうちで最も強いミナス・モルグルは奴の住いじゃ」

 フロド達がエミン・ムイルの山中を苦心して抜け出し、モンドール北方の黒門モランノンの前にたどり着く。 ゴラムが言う「ここがシルビイアコン、とっても厭な所よ。・・敵がいっぱいいる・・・早く・・見つかるよ。隠れるよ・・・こっちだよ。・・これモルドールへ通じる道よ。・・秘密の階段よ。・・登るのよ」 フロドが夢遊病者のように黒門の方に歩いて行く。 サムが気付く「待って・・フロド様!・・戻って」と抱きかかえて連れ戻す。 ゴラムも「道が違うよ・・・」と言っている。 稲妻が走り、大爆発が起こり、フロド達が岩陰に身を隠す。 遠くミナス・ティリスでもガンダルフとピピンが火柱の上がるのを見ていた。 翼を持った空飛ぶ怪獣に乗ってナズグルがその上空を舞う。 フロド達の目の前で黒門が開き、黒い王に率いられたオークの大軍が送り出されたのだ。 ついにサウロンが立ち上がった。

 ゴラムが「今よ、ホビットさんついて来て」と秘密の道に連れて行く。
 ガンダルフがピピンに言う「チェス盤の上を敵の駒が動き出したぞ。 ペレグリン・トゥックお前の果たすべき仕事があった。・・しくじるなよ。本当は役立たずでなかったことを見せてやるんだ」 ピピンがのろしの塔に近づく。
                                               
 ミナス・ティリスの裏側の河を敵兵の一団が船で迫っている。 「急げ!・・静かに・・」櫂を持つ手に力が入る。 船団が城に迫る。 一方城内では守備隊が柱の陰に隠れている。 船団が次々と着いてハッチが降ろされ敵兵の大軍が裏から城内になだれ込む。 守備隊との間で戦闘が始まった。     
 ミナス・ティリス王宮でも一段と高く石積みされた、のろし台の石垣を裏側からピピンが登っている。 番兵が表を警備している。 ピピンが登りきったのろし台には薪がうずたかく積み上げられている。 ピピンは薪の上につるした鍋のロープを切って、中の油を薪に振りかけたのち火を投げ込んで逃げる。 たちまち火が燃え上がる。 「のろしだ!・・・アモンテンにのろしが上がった・・」 救援を求めている合図ののろしを観て、となりの村の監視兵が合図ののろしを上げる。 次々と繰り返される。 雪山を越え、雲を超え、谷を越え瞬く間に合図が伝わる。 ローハンの衛兵がセオデン国王に伝える「ミナス・ティリスでのろしが上がりました。ゴンドールが援軍を求めています」 エオメルが言う「求めに応じようぞ。・・・兵を招集せよ」 妹のエオウィン姫がそばにいる。 「ギャムリング!・・急ぎローハン内の壮健な者全てを集めよ。 三日目にはゴンドールめざして進軍じゃ」  アラゴルンが出撃の準備をしている兵の中でエオウィン姫を見つける。 「あなたも行くのか?」 姫が答える「野営地まで・・・女は兵を見送るのが習わしです」と言う。しかし、アラゴルンが彼女の馬の鞍を見ると、剣が隠してあるのが見えた。 彼女が「兵はあなたに従います。・・あなたは希望です」とアラゴルンに言う。   「決戦の時だ。・・ ローハンの騎士よ誓いを果たせ、王と国のために・・・出撃だ!」 ローハンにいたアラゴルン達もゴンドールに急ぐ。

 オスギリアスでは執政デネソール公の息子ファラミアが、騎兵軍団を率いて出撃し、数十万人のオーク兵と戦う。 オークは切っても倒しても次々増えてくる。 「隊長!・・ここは終わりです」  ファラミアが「退却を命じろ・・・撤退だ!・・引け!」と言う。 ナズグルが怪鳥に乗って飛び兵をなぎ倒す。 ファラミアと兵がミナス・ティリスの城内に逃げ込む。 オークの大将が「人間の時代はこれで終わりだ・・・オークの時代がやってくる」と笑って言う。 

 「防衛線を破られました。・・・敵は橋と西岸を占拠しました」兵が戦況を報告しに来る。 ガンダルフがファラミアに聞く「この国でホビットを見たのは初めてか?」 「いいえ・・」 ピピンが聞く「サムとフロドに会ったの?」 「イシリアンです。・・・2日ほど前に・・彼等はモルグル谷へ向かいました。」 ガンダルフが「ファラミア・・詳しく話せ。・・」と言う。

 フロド達3人がくねくね階段を上っている。 ゴラムが「気をつけてだんなさん・・・この階段危ないよ。落ちたら命ないよ」と声を掛ける。 しかし、岩場でフロドがやっと手を掛けて上に上がろうとした時、先に上がっていたゴラムは、フロドの胸に掛った指輪が目の前に見えたので、心の誘惑に負けて手を伸ばす。 サムが気がついて、「下がれゴラム!。・・触るな!」と叫んだので、その手でフロドの手をつかみ引き上げる。 ゴラムは「なんでそんなにスメアゴルを嫌う のよ。」とサムに言い。  フロドに「デブがいなくても、わしがだんなさんの面倒は見るよ。・・・気をつけて・・デブがあれを狙っている。・・わしには判るのよ。その内あれをよこせと言い出すよ」と忠告する。 フロドはサムを疑いの目で見るようになる。

 オークの指揮官が言う「軍団を残らず前進させる。・・都が陥落するまで手を緩めるな」

 ミナス・ティリスの城内では、息子ファラミアが「ローハンの応援軍は本当に来るのですか?」と心配している。 国王亡き後の国を守っている執政のデネソール公が「今はみなの勇気のみが頼りじゃ」と言う。  ファラミアがデネソール公に「ここに我はゴンドールへの忠誠を誓います。 主君の解き放ちたもうまでお仕えいたします。」と宣誓する。 公は「その言葉を忘れんぞ。不忠には復讐で報いるであろう・・」と答える。 公は「かくも容易にオスギリアスが陥落するとは思いもしなかった。そちの兄が固く守りぬいた要所だ」と言う。 ファラミアは「私にどうしろと・・・」と問う。 「ヘレンノールの大地を敵に蹂躙されるなど、もってのほか、オスギリアスを奪い返せ」と答える。 ファラミアが「オークの大群が入っております」と言うが、公は「戦に困難はつき物だ、予の意思に答える勇気をもったものは居らんのか?」と問う。 ファラミアが「父上は、兄と立場が逆ならばとお思いですか?・・・私が死に兄が生きていたらと・・・」と聞く。 公は「いかにも・・そう思っている」と言う。 「ボロミアが亡き今は、私が兄に替わって力を尽くします。もし生きて戻れればお褒めの言葉を下さい」 「それはそちの戻り方次第だな・・・」

 フロド達が岩場で寝ている。 ゴラムが起き上がってサムの荷物袋の中から、残る少ない食糧のレンバスを取り出し、サムの身体に少量を振りかけて残りを谷底に投げ捨てる。 サムが目を覚まし「何をしてる!。・・こそこそと何を?」 フロドも目を覚ます。 ゴラムは「こそこそだって?。・・スメアゴル、誰も知らない秘密の抜け道教えて案内してるのよ。 よく言えるよ。・・ わしら泣けるよ」 「判った・・すまん。びっくりしただけだ・・・フロドさま起きてください。出発です・・」 サムが荷袋が開いているので不信に思い中を見て「レンバスが無いです」と言う。 「何?・・食糧はあれだけだろ」 「こいつです。・・・・」 「スメアゴル違うよ・・わしら取らない。・・ スメアゴルはパン大嫌いよ」 サムが「ほかに誰がいる」と言うと、フロドが「彼じゃないよ・・・食べられないんだ」と弁護する。 ゴラムがサムを指差して「上着に食べカスついてるよ。・・こいつが取ったのよ。・・だんなさん見てないとき、くすねてるの観たよ」と言う。 サムは「このウソつきメ・・」と言って殴りかかる。 フロドが「サム・・やめろ!」と言う。 サムは「あなたは疲れきっている。・・ゴラムのせいと、首のものの所為です。・・お助けしますしばらく休んでください。・・ 少しの間だけ俺が持ちましょう。・・気持ちの負担を軽くして・・」と言う。 フロドが「寄るな!」と叫び、ゴラムが「ほらね・・自分のものにしたいんだよ」と言う。 フロドは「悪いけどサム・・・お前の助けはもういい・・家に帰れ」と言う。 「だまされないで・・・俺たちの中を裂こうとしているだけ・・」 「もう用はないよ・・」 サムが泣きながら山を降りる。 
                             
 ファラミアの騎馬軍勢が城を出て行く。 村人達が兵に花を投げたり、花束を差し出したりして見送る。 ガンダルフがファラミアの言う「お父上は正気ではない。・・決して死に急いではならんぞ」 「今はただ忠誠を示すだけ・・」 「お父上はそなたを愛して居られる。・・最後には気づかれるはずじゃ」
  門を出た騎馬の軍勢は二列に横長く並び前進する。 前面には冥王サウロンが繰り出した20万ものオークの大群が迫っている。

 デネソール公がピピンに聞く「歌は唄えるか?」 「ええ・・でもこんな状況にふさわしいか、どうか?・・」 「構わぬ・・唄え!」 
♪♪  ふるさと〜遠く離れ あてし〜ない道を〜 一人〜闇を〜くぐり〜。  星明り もーとめ〜 雲と影〜霧と〜影・・・・ 
♪♪  ふるさと〜には 広い〜世界が そして〜たどるべき〜 多くの 道がある〜 影をくぐり〜 行け花の〜輝く〜西に・・・
 
 戦闘が始まった。 オークが太鼓を打ち鳴らし前進する。

 城内でデネソール公が部下に聞く「何名揃った・・」 「西の谷からはおよそ500人です・・陛下」 「雪白川からはまだ一人も・・・」  「総兵の数わずかに6000か・・期待した半分も無い・・」 「長引けばゴンドールは持たないでしょう」

 アラゴルンやギムリ、レゴラスたちが、エオメルの率いるローハン軍団とゴンドールを目指して進軍している。 兵も馬も疲れている。 ギムリが先の見えない渓谷を指差して「あの道を行けばどこに抜けるのだ」と聞く。  アラゴルンが「あれは死者の道だ。・・あの道を行って帰ったものはいない。・・山は呪われている」と答える。  エオウイン姫がメリーに軍服を着せている。 「立派なローハンの騎士だわ」 剣を抜いて戦いの仕草をするが「それじゃオークは切れ
ないわ」と笑われる。 エオメルが「メリーの勇気は買うが、あの身体では連れてはいけない」と言う。 姫は「なぜ、連れていけないの?。誰にだって愛する者のために戦う理由があるわ」と言う。
                      
 アラゴルンが夢を見る。 アルウェン姫が「私は限りある命を選びました。・・最後にあの方に一目お会いしたい・・」と言っている。 目を覚ますと、衛兵が「セオデン王がお待ちです」と言う。  王のところには裂け谷の王エルロンド卿がいた。  エルロンドが言う「アルウェンの死が近い ・・モルドールから広がる闇に命を奪われている。・・サウロンの力が増すほどに娘は弱っていく。・・アルウェンの運命は指輪にかかっている。 今回の戦いに勝ち目は無い。 サ
ウロンの軍勢がミナス・ティリスに迫っている。 だが、別の敵が川からも迫っているのは知るまい。 南から上がってくるウンバールの艦隊だ。 二日後には到着する。 もっと兵が必要だ」 アラゴルンが「精一杯です」と言うと、エルロンドは「山に住まう者たちがいるだろう」と言う。 「人殺しの裏切り者達・・あのような者達を見方にせよと?。・・誰の求めにも応じはしません」 「だが・・ゴンドールの王になら応えるはずだ」
 
 エルロンドが続ける「ナルシュの剣を鍛えなおした。・・名づけてアンドリーの剣。 サウロンには忘れようにも忘れられない剣だ」と言って長い剣を抜いてみせる。 「一度折れた剣がミナス・ティリスに戻るのだ。 この剣を自在に操れる者は、この地で死者の軍勢を集められるはずだ。 仮の姿を捨てて、本来の己に戻るのだ。 死者の道を行け」 

 アルウェン姫がエルロンドに言う「何処にいかれるのです?。・・・明日にも戦いが始まろうと言う時に・・みんな見捨てるんですか?」  「アルウェン・・・なぜここまで・・・」 「お分かりでしょ。・・」 「姫よ・・あなたは幻を愛しておいでだ。 あなたの願いには応えられない。」

 アラゴルンが馬を引き出して、出発の準備をしている。 そこにギムリが来て「一人で何処に行く・・・」と聞く。 「今回はダメだ・・・悪いが残ってくれ」 レゴラスが「ドワーフ族がどんなに頑固者か知らないのかな」と言うと、「エルフに言われたくないな。・・俺たちもついて行くぜ」とギムリが返す。 三人が馬に乗って”死者の道”に入って行く。 エオメルが見つけて「戦いの前にどうして・・・」と言うと、セオデンも「望みがないと知って逃げ出したか?」とつぶやく。 エルロンドが「訳があってのことだ」と言う。 ギャムリングが「これではモルドールに叶いません」と言うが、エオメルは「遅かれ早かれ戦いは避けられぬ」と言う。

 アラゴルン達がおぼろ林を行く。 ギムリが「こんな所に、どんな軍勢がこもってるのかな」と聞く。 アラゴルンが「呪われた連中だ。 遠い昔、ゴンドールの王、イシルドゥアに山の民は忠誠を誓った。 戦いの時は駆けつけてくると。・・・だがその日が来て、王が救命を求めると彼等は逃げ出してこの山の暗闇に消えた。 イシルドゥアは彼等を呪い、誓いを果たすまでは永遠の眠りにつけなくした」と言う。
 ギムリが「俺様の血が凍りつきそうだ」と言う。 洞窟の入り口に来ると馬が恐がって興奮して入らず、逃げ出してしまう。 アラゴルンは「死者など恐れはしない」と言って歩いて入る。 ギムリも「こんなの聞いたことが無いわ。エルフが入っていくのに、ドワーフが怯えてためらったでは、末代までの恥になる」といって駆け出す。
                                          
 ローハン軍団が出発の準備をしている。 エオメルが「永い道のりじゃ、装備は身軽にせよ。 馬も人も力を残さねばならん。」という。 メリーを見つけて「小さいホビットに戦いはムリじゃ」 と言うと、メリーは「友は皆戦いに行きました。 一人残されるのは恥です」と言う。 「ミナス・ティリス迄は早駈けで3日掛かる。 そなたを抱えては行けまい」 「戦いたいんです」 「くどいぞメリー」  騎馬軍団が動き出す。 「私と行きましょう」エオウィン姫がメリーを引き上げて自分の前に乗せる。 「列を乱すな・・・進め!・・目指すはゴンドール」

 洞窟の中に三人は入って行く。 中は広い、寒気を感じる薄暗い靄の中からうっすらと動く者が見える。 「わしの領地に入り込む者は誰だ。」 「汝が忠誠を誓った者」 「生者は死者の地に入ること許されぬ」 「私には許される。」 周りの岩壁を埋め尽くすように死者の霊がうごめいている。 「この道は死者によって作られた道。 道は閉ざされている」 アラゴルンが言う「汝等に命ずる。・・誓いを果たせ!」  レゴラスが弓を射るが手ごたえ無く矢が突き抜けた。 死者の霊がアラゴルンに襲いかかる。 アラゴルンが剣を抜いて斬り付けると薄く血が出る。 「ゴンドールの王だけが持つ剣、その剣は折れたはず・・」 「鍛え直された。・・・友に戦え・・名誉を取り戻すがいい。・・・答えよ。・・私はイシルドゥアの世継ぎ。 従えば王への誓いは果たされたとみなそう」 死者の霊たちがざわめいて動いている。

 「門を開けてくれ!・・急げ!・・」矢が刺さった息子ファラミアが馬に引かれて戻ってくる。 父、デネソール公が「ファラミア・・まさか死んだのでは?・・」 「敵は大群でした。・・お味方は全滅です。」  冥王サウロンが送り出した20万ものオーク軍。 これの大将が言う「やつ等は恐怖で震えている。 ・・捕虜を解放せよ」 「放て!・・」 台車に木を組んで作った”石の発射装置”からゴンドール兵の頭が城内に飛んでくる。 デネソール公が「わが息子達は死んだ。・・執政の家系もこれで最後」と叫ぶ。 ピピンがファラミアを見て叫ぶ「殿・・まだ生きて居られます。」 公が続ける「予の血筋は絶えた。・・・ローハンは我等を見捨てた」  オークが”発射装置”から石を飛ばし始める。 城の建物が破壊されて崩れ落ちる。 デネソール公が「セオデンはわしを裏切った。 皆、逃げて生き延びよ」と言って座り込む。  ガンダルフが逃げ始めた兵を激怒する「戦いに備えよ!・・敵を奈落に討ち落せ。・・・持ち場に戻れ!。」 ナズグルが怪鳥に乗って上空を飛び、兵をその鋭い足の爪で引っ掛ける。 台車に乗ったヤグラが近づく、ヤグラから渡り板が倒されオークがなだれ込む。
 ガンダフルが「戦うのじゃ!・・・持場につけ!・・戦うのじゃ。 トロルをやっつけろ!」と叫んでいる。 ピピンが見える。 ガンダフルが「ホビットは下がっておれ」と言うが、ピピンが「僕も戦いたいのです」という。 ガンダフルの背後からオークが迫り危うい時にピピンがオークに切り付ける。 「立派な衛兵じゃな」

 フロドとゴラムはミナス・モルグルを避けた階段”秘密の道”を通りキリス・ウンゴルの洞窟にくる。 たくさんのトンネルが入り込んだところだ。 ゴラムが「こっちよ・・あそこ入るよ」と言う。  フロドが「ここは何だい?」と聞くが、「だんなさんこのほら穴入るのよ」と言う。 「気味が悪いな・・入りたくない」 「そんなこと言ったってここしかないのよ。・・引き返したい?」 「引き返すことは出来ない。・・何だ、この臭いは?・・」 「オークの臭いよ・・オーク時々ここやって来るよ。・・こっちよ急いで・・・」 ゴラムは隠れて様子を見ている。  「スメアゴル・・」フロドがゴラムの名を呼ぶが出てこない。 「何だ、このネバネバは・・・」 ほら穴の中には蜘蛛の糸が一面に張られて、足元には動物の骨、糸には鳥の死骸が掛かっている。 (直ぐに判るよ・・・)ゴラムがそう思っている。 「スメアゴル・・」ニ度、三度名を呼ぶが返事が無い。 「サム・・」フロドはサムが居ない事を悔やんだ。

 サムが岩場を降りていて、足を滑らせて下に落ちる。 そこにはあのレンバスが包みと一緒に落ちていた。 サムはゴラムの悪事に気がつきフロドのもとに急ぐ。
                     
 フロドの身体には糸が絡まり、もがく、 ”さいなら・・フロド・バキンス・・お別れにエアレンゴルの光を、・・・我等の大切な星、・・・あらゆる光が消えてく。・・エアレンゴルがあなたの行く手を照らすでしょう。・・光よ照らしてくれ”   巨大な蜘蛛の怪物シェロブがやってくるのが見える。 シェロブがフロドを襲う。  フロドが光をかざすと少し逃げるが、また襲いかかる。 フロドは逃げていて、糸にからまり、動けなくなる。 ゴラムが歌う(小っぽけなハエよ、 何で泣きわめく の もうすぐ蜘蛛に食べられる) フロドは糸を剣で切ってやっと逃げ出すが、ゴラムが飛び掛ってくる。 (わしらじゃない・・わしらじゃないよ。・・スメアゴルのだんなさん傷つけない約束したよ。信じておくれよ。・・ 愛しいしと・・愛しいしとがわしらにやらせたんだよ。)
 ゴラムとフロドが取っ組み合いの戦いを始めるが、フロドが転んだ時ゴラムは勢い余って谷底に落ちて行く。 「すまないサム・・・許してくれ」フロドはそのまま気を失ってしまう。 (これはあなたに与えられた使命です。あなたに出来なければ誰にも出来はしない) 「姫!・・」フロドが手を伸ばす。 気がつくと誰もいない。 フロドが立ち上がった。

 ミナス・ティリスの城門にオークが迫る。 台車の上にブランコのような物を組み立て、その振り子で門を破ろうとしている。 「門を守れ!・・門が危ない!」  
 宮廷内に虫の息の息子を運んで、デネソール公が言う「わしとファラミアに墓はいらぬ。・・香油で保存された穏やかな眠りはいらぬ。・・火葬で良い。・・・薪と油を持て・・」
 オークが城門を破って城内に乱入してきた。  ガンダルフが叫ぶ「そなた等はゴンドールの兵士、何があろうと逃げず戦え!・・・撃て!」
 
 フロドが転げながら洞穴内を走る。 直ぐに大蜘蛛(シェロブ)が追っ駈けてくる。 大蜘蛛は背後に廻り、頭上に迫って毒針で一撃し、フロドはその場に倒れる。 シェロブはフロドに糸を吹きかけ、足でまわして繭のように糸で包んでしまう。 そこにサムが駆けつける。 「だんなを放せ!・・二度とだんなには触らせねえ。・・今度は俺が相手だ」と剣を抜く。 蜘蛛の攻撃は強力ですばやい。 サムが振り回していた剣がシェロブの左眼に刺さる。 シェロブが毒針で突く、サムが避ける。 下から突き上げると剣がうまくシェロブの首に刺さる。 たまらず大蜘蛛が逃げて行く。  
 サムがフロドを蜘蛛の巣から下ろし、繭のような糸を切り開いて顔を出すと、フロドはロウのように真っ白な顔で冷たく横たわったまま動かず死んだよう。   「だんなさま・・・目を覚まして下さい。・・俺を一人残して行かないで下さい。 「死んでおられる」サムが泣きながら抱き上げて言う。 サムは近づく人の気配で逃げて隠れる。 そこに数人のオークが来る。 オークが言う「これはこれは、シェロブのババアお楽しみだったようだな」 「死体に用はねえぜ・・」 「いいや、・・こいつは死んじゃいねえ」 「毒針に刺されると骨を抜かれた魚のようにフニャフニャになるのよ。 新鮮な血はうめえ・・」 「塔まで運べ・・」 「2時間もすれば目を覚ますぜ・・」 糸に巻かれたフロドをオークが担いで運ぶ。 サムが後をつける。
  
 ミナス・ティリスの宮廷内。 デネソール公が薪を積み上げた台の上に息子ファラミアを運ぶ。 ピピンが「まだ死んでません。・・生きてます!。・・やめて!。ヤメテッ!」 公は自分も台の上に上がり「そなたの望む死に場所を見つけよう・・・後は好きなように死すがよい。・・薪に油を注げ!」と言う。 ピピンが「ガンダルフ!・・何処!に居るの?」と探しながら、止めに行こうとするが、衛兵に跳ね除けられる。 
 城門が破られ、乱入するオーク。 ガンダルフが「退却!。・・女・子供を逃がせ!・・戦え!・・最後の一人まで戦え!」と叫んでいる。 オークの大将が「都に入れ・・総攻撃だ」と叫ぶ。 激しい戦いが続く。

                                           
        (以下は「下」に続く)
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