映画 「赤壁 LED CLIFF]   (上)

 


     「三国志」の中でも知略の戦いとして、最も盛り上がる「赤壁の戦い」をジョン・ウー監督が、制作費100億円を投じて映画化した
     作品の第1部。CGを駆使した壮大な戦闘場面が最大の見物。



【キャスト】

劉備(りゅうび)/ユウ・ヨン    漢の復興をめざし太平を求める劉備軍の軍主。 民に慕われており、関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)、
                    趙雲(ちょううん)という豪傑を従えている。

孔明(こうめい)/金城 武    劉備(りゅうび)に迎えられた天才軍師。 孫権(そんけん)軍との同盟を成立させ、孫権軍の将軍周瑜と
                    共に、曹操(そうそう)軍と戦う男。

張飛(ちょうひ)/ザン・ジンシェン  関羽と共に劉備と義兄弟の契りを結んだ劉備軍の豪傑。

関羽(かんう)/バ?サンジャプ   張飛と共に劉備と義兄弟の契りを結んだ劉備軍の武将。

趙雲(ちょううん)/フー・ジュン   劉備に使える勇猛な将軍。 長坂(ちょうはん)の戦いで敵地に一人で乗り込み、劉備の子供を救った男。

曹操(そうそう)/チャン・フォンイー  帝国最大の権力者。 若い皇帝を武力で脅し、80万人の大軍を率いて劉備・孫権と戦い天下の統一を企てる男。

孫権(そんけん)/チャン・チェン  父・孫堅(そんけん)、兄・孫策(そんさく)の死後に、孫権軍「呉」の3代目を承継した若い君主。 
                      呉軍を率いて天下統一を狙う男。

周瑜(しゅうゆ)/ トニー・レオン  孫権が義兄と慕う孫権軍の司令官。 孫家(そんけ)に仕えた三代目。配下に絶大な信頼を得、戦術、
                      武勇に優れ、人徳で高い統率力を持っている知将。  妻の小喬(しょうきょう)は絶世の美女。
                     孔明の提案を受け入れ、都督として劉備(りゅうび)軍と同盟した連合軍を指揮する男。

小喬(しょうきょう)/リン・チーリン 周瑜の妻。 姉の大喬(だいきょう)と共に「江東の二喬(にきょう)」と呼ばれ、絶世の美人として知られている女。
                     夫の敵である曹操(そうそう)が、思いを寄せている。

尚香(しょうこう)/ヴィッキー・チャオ 孫権の妹。馬術にすぐれ、男勝りの性格。 ひそかに敵軍に侵入し活躍する女。

甘興(かんこう)/中村獅童  孫権軍の周瑜に仕える。 自分の命を顧みることなく、敵地に攻め込む勇敢な武人。

魯粛(ろしゅく)/ホウ・ヨン  孫権軍の重臣、劉備軍との同盟を孔明と共に画策する男。 

                            
【ストーリー】
 建安13年(西暦208年)夏。 中国漢の時代の許昌。 宮殿の中に沢山の従者を従え、若い皇帝が玉座で居眠りをしている。 宮廷には武装した数万の兵士が整列して控えている。 一羽の小鳥が宮殿の中に迷い込んできた。 皇帝は口笛を吹いて小鳥を呼び手の上に止まらせて遊ぶ。 そこに帝国最大の支配者である曹操がやって来る。 人々は威儀を正して曹操を迎える。 曹操は皇帝の前に進み出て、「皇帝陛下に拝謁します。・・・昨日上奏した劉備と孫権の討伐を承認してください」と進言する。 皇帝は「兵は北方征伐から戻ったばかりだ、兵士と民に休息をあたえよ・・・」と言うが、 曹操は「逆賊の孫権と劉備は統治者を名乗り、朝廷を愚弄しています。・・・彼らを成敗しなければ、漢を我が物にしようと企むのは疑う余地のないところです」と言い放つ。 皇帝が「しばらく考える時間をくれ・・・」と言うが、曹操は「無用なこと。・・・これまで無数の兵が、陛下のために戦場で死んで行きました。 遷都の混乱の中で皇族は陛下を助けましたか?・・私が彼らを成敗しなければ、あの反逆者どもは皇帝を自称したはずです」と迫った。 若き皇帝は曹操の強圧に折れて「よろしい。・・・曹操は皇軍の将として兵を率い、呉越の反乱を平定せよ」と命じた。 
 孔融という男が進み出て、「劉備は皇叔であり、孫権は呉の3代目の後継者です。 彼らを疑いますな。・・・いまや軍権まで掌握せんとする丞相にこそ征伐の名分など有りません」と奏上した。 曹操には「そなたは陛下に忠誠を誓ったはずだ。・・これでは誰も納得しない。・・叛逆を防ぐのは丞相ではない。・・・劉備と孫権だ」と抗議した。 曹操は一言「見せしめにせよ」と言って立ち去った。 孔融は儀式に則り、見せしめとして広場で処刑された。

 漢王朝の末期。 宦官と皇族は権力に溺れ国は乱れていた。 曹操は皇帝を強圧し、建安13年、「天下統一」を掲げて、皇叔の劉備と呉の孫権を討つために、80万の大軍を率いて南下した。 彼らはまず標的とした劉備軍に襲い掛かった。  劉備軍の戦線では兵を率いる張飛の所に、軍師孔明がやって来て、「曹操軍は大群だ、先鋒に追いつかれる。・・・敵は楔方陣をとるはずだから、太陽光を反射させよ。・・・民の避難に1時間はかかる」と告げる。 張飛は孔明に「それなら兵1000は必要だ」と訴える。
 孔明は劉備のところに行く。 劉備は「民の避難が遅れている。・・・彼らを避難させるには4時間は必要だ」と孔明に言う。 孔明が「張将軍に兵1000を与えれば、曹操軍を食い止められます。・・・曹操の目的は我らの降伏です」と進言する。 劉備は「民は弱者だ。・・我らの助けが要る。 彼らは曹操から逃れ我らを頼ってきた漢の民だ。・・・守ってやらなくって、この戦いに何の意味がある」と答える。 劉備軍は最後まで勇敢に闘ったが城は落ち、撤退を余儀なくされた。
 撤退は遅れたが多くの民が避難できた。 劉備のところに兵が駆け寄り「ご夫人と若君がまだです」と告げる。 夫人を乗せた輿の車輪がぬかるみにはまって動けないでいる。
 劉備夫人は輿を捨てて走って逃げていたが、長坂(ちょうはん)まで逃げたところで敵の兵に襲われる。 「劉備の家族だ、子を捕らえよ」 危ういところに白馬に乗った趙雲が現れる。 夫人は「趙将軍、・・・この子は主君の血筋、敵の手に渡してはなりません」と訴える。 「ご安心を、お二人を必ず主君の下へ・・さあ、馬に」と言って自分の乗ってきた馬に乗せようとするが、夫人は自力で馬に登れない。 趙雲は夫人を馬に押し上げようとしているところを、敵兵に背後から槍で突かれる。
 張飛将軍の守る守備隊の前に、曹操軍が大軍で押し寄せてくる。 
 趙雲は子供を抱きかかえて奮戦している。 劉備夫人は逃げ場を失って、近くの井戸に身を投じる。

             
 張飛は曹操軍が目前に迫ったとき「散れ!」と叫び、前衛の兵を下がらせて、二列目の兵の盾を裏返しにさせた。 太陽光がまぶしくて、突撃してきた馬が折り重なって眼前で倒れる。 張飛は「突撃!」を命じ、全員で敵に切り込んだ。 張飛が苦戦をしているとき、関羽の軍が援軍としてやってくる。
 趙雲は子供を布にくるんで、タスキがけで背中に背負い、迫りくる敵兵に槍を振り回して防戦した。 全身を負傷しながら反撃している男を、丘の上で戦況を観察していた曹操が「あの者は?・・」と聞いた。 「常山の趙子龍です」 「あの猛将、実に気に入った」と曹操が言う。

 孔明が張飛に「敵が多すぎる、なんとしても民を守らねば・・」と進言し、兵には「民を守るのに集中しろ、・・命令だ!」と叫ぶ。 
 張飛が関羽に「次兄撤退だ!」と叫ぶ。 関羽は張飛に「・・先に行って民を守れ!・・・」と言い、趙雲に「子龍!・・若を頼んだ!・・撤退だ!」と叫ぶ。 

 趙雲は何度も倒れながら、劉備の元に走り、「主君・・若君をお連れしました」を言って、布に包まれた子供を差し出した。 劉備はさらに「ですが、ご夫人方は・・・」とだけ言って頭をたれた。 張飛も孔明も言葉がなかった。 劉備は趙雲に「子龍・・よく戻った」と声をかけて、立ち上がらせ両手でぐっと趙雲を抱きしめた。 

 曹操のそばに部下が駆け寄って「劉備軍など虫けら同然です。・・あの山を見てください死体の山です。・・・残るのは敗残兵のみです」と報告する。
 関羽がただ一人、敵に囲まれて奮戦していたが、槍に囲まれて動けなくなっている。 曹操が来て、「膝まづけ・・・投降すれば生かしてやる」と告げる。 「関羽よ・・・賢臣は主を選ぶものだ、なぜ愚主に仕えるのか?」と聞き、「・・・早くひざまづけ!」と叫んだ。 関羽は敵の数10本の槍を払いのけ、前の兵を押し倒して、曹操の乗っている馬に体当たりした。 曹操が馬もろとも突き飛ばされて横転した。 関羽は槍を奪い曹操の乗っていた馬に飛び乗った。 曹操は「皆動くな!」と命じて退路を開いた。 部下が「丞相・・何ゆえ逃がします・・」と聞くと、曹操は「わしを殺す気なら、殺せたはず・・・奴は背後からは襲わぬ・・・敗戦の将、劉備に追従する大勢の猛将を、いつかは私の配下にしてくれる」と語る。

 大勢の民が累々と避難して来る。 精強ながら、その軍勢わずか2万となり、窮地に追い込まれた劉備は、砦の一室に集まった武将たちを前に「失敗続きの私にとって、今回は失敗ではない。・・・この命がある限り曹操の野望を砕き、皇室に犯した罪を購わせるために闘う。」と決意を述べる。 孔明は「孫権の協力を得るために私が呉に発ちます」と提案する。 関羽が「曹操の大軍に対抗できるほど呉が強いとは思えんぞ」と言う。 孔明は「呉の孫権は若くとも大きな野望を抱いており、代々南方の覇者だった孫家には富と力があります。 彼らも朋友を必要としているはずです。 同盟が成功すれば曹操を撃退できます。・・・そうすれば、西方に勢力を再建できるでしょう、・・・我らは西、孫権は南、曹操は北、天下三分の計で曹操に挑むのです」と進言した。  劉備は「説得できるか?」と案じた。 孔明が頷くと、劉備は「呉までは遠い、・・力をつけろ」と言って食物を差し出した。

                               
 曹操の下に荊州の蔡瑁と張允が投降してくる。 しかし曹操は「両名は信頼の足る者にあらず。・・・疑わしきは用いず、用いるものは疑わない」と言い、「船と兵はいかほどか?」と聞いた。 二人は「水軍30万と戦艦や各種小船を率いて来ました。」と答える。 曹操は「よし、これで我らは泳げる虎になった」と喜んだ。 部下が「そなたと呉は緊密な関係だと聞いたが?」と蔡瑁に聞いた。 蔡瑁は「宣戦布告のために連絡を取っただけです」と答えた。 蔡瑁は「苦心して描いた地図です」と言って呉の地図を持参した。 「蔡将軍・・・実に立派なものだ」と曹操は満足して言った。 部下が「劉備は東口へ敗走しました。」と地図で示し「呉の孫権軍と合流したら、脅威になるやも・・」と言うと、曹操は「それこそ好都合だ。・・・劉備と同盟を結べば孫権は公然とした朝廷への反旗であり、征伐の名分となる」と答えた。 曹操は「皇叔とは名ばかりで、生涯失敗ばかりで何も出来ない劉備と、嘴の黄色い孫権。そんな敗北者と臆病者が力を合わせたとて何が出来るか?」と笑った。

 呉の3代目の後継者、孫権を訪ねた孔明を、孫権の下に案内した孫権軍の重臣、魯粛は「主君はお若いが賢明だ、心を開いて正直に話せ。・・・問題は老臣たちだ」と教えてくれた。 老臣たちは「この戦いに挑むなど無謀過ぎる」とか、「曹操に対抗できる策を持ってきたのか?」 「数的に不利で、勝てるわけがない」などと話し合っている。 広間で接見した孫権は孔明に「諸葛殿・・・曹操が劉備に新野の泥を塗ったと聞いたが?・・・」と尋ねた。 孔明は「敗北は主君の仁徳によるもの、行軍を遅めた民を捨てなかったためです。」と答えた。 「曹操軍の規模は?」 「80万の軍勢で、水陸両面から進攻中です」 孔明の答えに宮中がざわついた。 孔明が「曹操の目的は主君にあらず。呉の討伐です」と言ったので彼らはさらにざわめいた。 孔明は「呉候の勢力は南方を占め逸材も豊富、曹操に抗うつもりならすぐに準備を・・・」と言った。 老臣が孫権に「戦ってはなりません。・・先代は何時も、民の安穏を何より優先せよとおっしゃっていました」と言う。 みなが立ち上がり、「戦ってはなりません」と口々に言った。 思案する孫権に孔明は「投降するのも悪くない。・・それも早いほどよろしい。・・恐怖におののく時間が短くて済みますから」と言った。 「ならば、なぜ劉備は降伏せぬのか?」と孫権が聞いた。
 孔明は「”孔子曰く仁、孟子曰く正、降伏せぬは損得にあらず徳なり”、・・・曹操は丞相を自認し、皇命を捏造しています。 南方を制すれば権座の簒奪も必定です。・・・降伏すなわち暴政への助力です。・・皇叔の英明さが天下に轟き、民から尊ばれていても、大志をなせねばそれまた天意です。 されど曹操への降伏は耐えがたき恥辱です。 呉候が曹操に降伏するならば、命と財は守れるでしょう。 曹操の慈悲で南方も統治できるやもしれません」と言った。 孫権は「私が劉備に劣ると申すのか?」と尋ねた。 「いいえ・・・呉候は我が主君よりも英明であられます。・・・さらに君主にはない広大な地と民をお持ちです」

 案内してくれた重臣の魯粛が孫権に「主君・・諸葛殿がお持ちの曹操撃退の策を伺ってみてはいかがでしょうか?」と提案した。 孔明は「敗戦にも関わらず、関羽、張飛、趙雲は今だに健在、さらに数万の水軍があります。 我らと呉が同盟を結べば互いに利が多いはず。 曹操軍の半数以上は投降者なので忠誠心に欠けます。 また連日300里の行軍で疲れきっています。 欠けた槍では布さへ突き破れません。 南方に不慣れで水戦の経験も有りません」と答えた。 若き皇帝孫権は孔明の同盟提案に戸惑う。 老臣たちは「主君・・孔明の計略に惑わされますな」 「丞相に反旗を翻してはなりません」 「いや、戦え!・・」 「同盟は曹操に名分を与えるだけです」 「降伏など話にならん」 「劉備を捕まえて曹操に差し出しなされ」 「10万対80万だぞ・・・戦にならん」等と孫権に口々に訴えた。
 孔明は「呉候・・もう隠しますな・・・永らく秘めていた剣を抜くときです」と訴えた。 老臣たちが「この者に惑わされますな」 「なりません」と泣きながら訴えたが、孫権は「黙れ!・・・もう聞き飽きた。!」と叫んだ。 静まりかえった老臣たちを前に孫権は「考えてみる・・・時間をくれ」と言って立ち去った。
 孔明は孫権軍の重臣、魯粛と部屋の外に出た。 外の景色を眺めながら、魯粛に「これこそ地上の楽園だ、しかし、曹操軍がここに来ればここは焦土となる。・・・・あともう一人、説得せねば」とつぶやく。 魯粛が「周瑜殿でしょうか?」と聞き、孔明は頷いた。

                      
 魯粛が孔明に「周瑜殿は呉候には兄のような人だ。 亡くなった先代は呉候に、内事は張昭に外事は周瑜に相談せよとよく言われた。・・・周瑜殿は今、赤壁で野営中だすぐ赤壁に参ろう」と話す。 二人は孫権軍の司令官の周瑜に会うために赤壁に行く。

 赤壁は城門の前が湖で、門前に数千艘の軍船を浮かべ、後方は断崖の山に守られた砦である。 砦の中の広場で兵が戦闘訓練を行っている。 軍師甘興が「やめろ!」と叫び、兵の槍を取り上げて「なっとらん!・・・力を入れろ!」と突いてみせる。 孔明は魯粛に「旧式の訓練ですね」と言う。 魯粛は訓練の様子を視察している周瑜のところに孔明を案内する。
 周瑜のところに農民が来て「都督様、・・うちの水牛が兵営のそばで盗まれました」と訴える。 周瑜は兵を並ばせ「演習は立派だった。・・・だが、あのご老人の牛が盗まれたそうだ、そなたらの仕業か?」と問うた。 士卒たちが「誰だ!」 「名乗れ!」 「調べよう!」と口々に叫ぶ。 周瑜は「魯粛・・・軍法での裁きは?」と聞いた。 魯粛は「軍法によれば死刑です」と答えた。 兵たちが「盗人は前に出ろ!」 「水田で牛が盗まれたのなら、犯人の靴には泥がついているはずだ」と騒ぎだす。 士卒たちが互いに仲間の足元を見て、犯人を探りあっているときに周瑜が「命令だ!・・全員駆け足であの木まで行って来い!・・・急いで行け!」と命令する。 士卒たちが走った道には泥沼の水溜りがある。 周瑜は「犯人は捜さない・・・機会を与えるためだ。・・・我が軍は略奪を許さないが、我が軍に今必要なのは団結だ」と告げる。  孔明は周瑜の部下への配慮に感心する。 軍師甘興が牛を引いてきて、老農民に「私の監督不行き届きです。・・・ご容赦を・・・」と謝り牛を差し出す。

 馬の”落月”の出産が近いが、逆子で有ると周瑜に知らせが来る。 妻の小喬が落月の介抱をしている。 片方の足が引っかかって出てこない。 孔明は「牛の出産に立ち会ったことがあるので、同じ要領かと思う」と言って自ら出産介助をし、無事に子馬が生まれる。 小喬は「大きくなっても、軍馬にしないと約束して・・・」と周瑜に頼む。

 魯粛は周瑜のところに行って、「戦いか降伏かを決めねばならぬ。」と言うが、周瑜は「喜ばしい日だ、戦いの話は遠慮しろ」と話をそらす。 周瑜は孔明に「琴もたしなむようだな。・・・合奏しないか?」と話しかける。 魯粛が「二人の合奏なら息もぴったりだろうな」と言ってくれる。 二人は広間で激しく琴の弦を叩き合い合奏した。 周瑜の妻の小喬が孔明に茶を振舞いながら「夫の演奏は久しぶりに聞きました」と喜び礼を言う。 孔明は「私こそ心が和みました」と返礼する。 
 周瑜の屋敷を辞し、帰り道に魯粛が孔明に「本題も語らずに去るのか?」と聞く。 孔明は「答えは弦にあった。・・・周瑜殿はきっと戦う」と答える。  小喬が周瑜に「あの方とはウマが合うでしょう」と聞くと、周瑜は「彼の弦は朋友を求めていた」と答える。 始めは孔明に対し、疑心暗鬼であった周瑜であったが、その人柄に触れ、次第に信頼を覚えるようになっていった。 孔明もまた、周瑜のカリスマ性に惹かれていった。
 
 80万の大軍を率いて、決戦の地へと向かおうとしている曹操は、部屋で周瑜の妻、小喬の似顔絵を書いて悦に入っている。  側近が「丞相・・・欲望と執着は頭痛を引き起こしますよ」というと、曹操は「欲望と言うものは、人を若返らす。・・・昔、彼女の父に目を掛けてもらった時に一度だけ小喬を観た。・・・呉を討伐すれば、絶世の美女と言われる彼女は私のものになる」と答えた。
 曹操は蔡将軍のところに行って、軍船を誉め協力を頼む。 蔡将軍は「永らく荊州を守ってきた我らの水軍なら、確実に呉を倒せます」と返答する。 曹操は蔡将軍に「南のうまいものは何か?」と聞く。 蔡将軍は「川魚です」と答える。 「ならば、まずいものは?」 「特にこの時期は予測できない風が吹きます」

                                                     
 曹操は部下の武将を集め「我が配下の諸侯と共に、天下を統一するぞ」と宣言し、80万人の軍勢と2000余の軍船を率いて出発した。  

 孫権のところに曹操から”水陸から80万の軍勢で向かう。呉の狩り場で主君を待て”と書かれた竹簡の書状が届く。 孫権の妹の尚香は「曹操め、何をしゃあしゃあと・・・」と激怒する。 孫権は「父上は19歳のとき江東の虎と名を馳せた。 兄上は26歳で江東を征服した。 私は26歳になっても何もしておらぬ。 いくら努力しても父上や兄上を決して越えられぬのだ。・・・老臣たちは決して私を認めてくれないだろう」と妹の尚香に嘆く。

 そこに孫権が義兄と慕う周瑜がやって来る。 尚香は曹操からの降伏勧告文を周瑜に見せる。 周瑜は勧告文を破いて捨て、そばにあった弓を引いて「埃だらけだぞ。・・・一緒に行こう」と言って孫権にその弓を渡し狩りに誘う。

 孫権と周瑜の率いる騎馬軍団が荒野を走り虎狩りをする。 孫権の妹の尚香も軍団の中にいる。 孫権は一人で虎に立ち向かい見事にしとめる。 孫権が言う「私は3年前から曹操との戦いに備えてきた、曹操軍は80万と言うが、殆どが投降兵だ。 実際は10万がいいとこだ。 だが、老臣たちが戦いは許すまい」 周瑜は孫権に「保身に走る者の言葉などに耳を貸すな。・・・曹操は丞相とは仮の名、真の姿は逆徒だ、闇に潜んでいる虎と同じだ。・・・我が軍の士気は高く、水軍の経験が豊富だ。 やつには名分もない。・・長兄が言ってたじゃないか、お前には統治力があると、・・・確かに指揮官としては彼が上だ。・・・お前は自信を失っている。・・・長兄は自身を越えろと言っていたんだ」と話す。

 孫権は曹操との決戦を決意する。 孫権は老臣を前に「曹操と戦う!・・異を唱える者は、誰だろうと許さん。・・・改めて命ずる!、周瑜は左都督に!・・・魯粛は賛軍校尉だ!・・曹操を倒すために劉備と同盟を結ぶこととした。」と発表し周瑜に剣を授けた。

 周瑜に妻の小喬は「戦いは避けられないようね」と聞き、周瑜は「再び侵攻できぬように叩き潰すのだ」と決意を述べる。 妻は「戦いのない世を望むわ」と言い、”平安”と言う文字を紙に何枚も書く。 小喬が「なぜこの字を書くのか分かる?」と聞く。 周瑜は「”平安”は平和の意だろ?・・・どうして書くのだ?」と聞く。 小喬は「平安は名前よ」と言って立ち上がり、着物の帯を解いて肌けたお腹を周瑜の耳に押し当てる。 小喬は「よく聞いて・・」と言って微笑んだ。 二人は抱き合い激しく愛を確かめ合った。 小喬が「民が赤壁から非難しているそうね、・・・私は何時発てばいいの?」と聞く。 「行かせない。・・・そばに居てくれ」と周瑜が言った。

  遂に孫権軍と劉備軍の同盟はなった。 劉備軍のいる砦に周瑜等を従えて孔明が戻ってくる。 趙が「軍師・・待っていたぞ」と再開を喜ぶ。 孔明は「大都督の周瑜殿だ」と趙雲に周瑜を紹介する。 孔明は子供たちを集めて読み書きを教えている関羽や、文字書きに夢中の張飛を紹介し、劉備のところに案内する。 わらじを編んでいた劉備に「主君只今戻りました」と挨拶する。 孔明は劉備に「こちらが周都督殿です。・・あちらは程都督と魯校尉それに黄蓋将軍です。」と紹介した。 劉備は「呉候が諸君を寄こしてくれたか、心から感謝する」と喜ぶ。 魯粛は「朋友関係に儀礼は不要です」と言う。 劉備が「配下の軍勢は?」と聞く。 「3万です」 劉備が「3万では少くな過ぎるな」と言ったので、「負け戦ばかりで何を言う」とか「ならば、そっちは勝ったのか?」「何を!・・敗将の分際で・・」と掴み合いの喧嘩になるが、劉備が止める。
 周瑜は劉備に「戦いを前にわらじを編む」理由を聞く。 劉備が「私はこのわらじを履いて、長い道を歩いてきた。」と言い、張飛は「我々のわらじも長兄が編んでくださるのだ」と答えた。 周瑜はわらじを持って「丈夫そうだ」と答え、そばにあったワラを一本もって両手で引っ張った。 ワラはすぐに切れた。 「劉備殿は徳も猛将もお持ちだ。・・・趙、関、張の3将軍は無敵だ。・・精神力で10倍の敵に勝てる。 我等呉の兵士も国を守るために全力で戦う。 私の夢のため、みなの夢のために心を一つにして、団結すれば、誰にも負けぬ」と言って、束ねたワラを力一杯引っ張って見せた。

              
 出陣の準備をしている周瑜たちのところに、「私も戦いに参加するわ」と言って孫権の妹の尚香が武装してやって来た。 周瑜が「戦いは遊びじゃない」と言うが、「女だって戦えるわ」と答える。 孔明が「戦ったことは有るのか?」と聞くと、 「誰にも始めがある」と答える。 周瑜は「戦い好きでまったく男勝りだ」と苦笑いする。

 進軍する軍船の中で、曹操達は女を躍らせて酒盛りをしている。 新たに小船で女たちが送り込まれる。 曹操がその中の一人の女に目を付けて呼びつけた。 周瑜の妻小喬によく似た女だった。  そこに呉からの使者が来たと知らせが来る。 曹操が「孫権は勧告文を読んだか?・・・返事は?・・」と聞いた。 差し出された手紙は開いてみると白紙だった。  「戦う気だ!・・そ奴の首を切れ!」 「劉備は呉と同盟を結んだに違いありません」 曹操が「統師は誰だと思うか?」と聞く。 「おそらく周瑜でしょう」 「奴は戦いより、音楽の才に長けている男だろ」 蔡瑁が「この数年間、周瑜は最も強敵でした。水軍指揮官としても有能でした」と答える。 「もう一人侮れないものが居ます。それは、諸葛亮です」

 孫権軍と劉備軍の連合軍の出陣式が執り行われた。 周瑜が兵に向かって「呉の英雄のために!」と言って献杯し、幹部一同が酒を足元に遷して器を手すりに伏せた。 周瑜は「曹操は官渡の戦いで、相手の士気を下げるために捕虜千人の鼻を切り送り返した。 今度は使者の首を切った。・・・だが我等は臆病者ではない」

 曹操は、蔡瑁と張允に「明朝、水軍を率いて南下せよ・・・いや、今夜だ」と命令した。
 周瑜は「流れも風の向きも敵に有利だ」と言い、張飛は「奴は今夜、出撃するはずだ。・・・奴の戦術の身上は速さだ。・・・新野の戦いでは騎馬隊が3日3晩走って、500里進軍した」と言った。 孔明は二匹の亀に水をかけて占った。

 曹操は曹洪と張遼に2陣の水軍を指揮させ、騎馬隊には水軍と並走して護衛するようにと命じた。

 周瑜は「敵の攻撃目標はここだ」と言った。 孔明は周瑜に「赤壁で野営してたのは、これを予測してたのですね」と聞いた。 周瑜は「だがあなたは、旧式だと言っでしょ」と答えた。 孔明は「もっと古いものを見せましょう」と言って、地面に書いた地図の上に亀を置いた。 「確かに古いな」と言う周瑜に孔明は「状況によっては効果を発揮するはずです」と答える。 張飛は「水上での八卦陣なんてありえない」と言って怒り、亀を水瓶の中に放り込む。 「水に落としたら沈むんだぞ」と言う。

 曹操は「水軍を動かすと思うなら、周瑜と諸葛亮は大馬鹿者だ、蔡将軍の水軍は囮とする。・・・夏候らは2000の騎兵で、無防備な地点を叩け。」と命ずる。

 周瑜も「曹操の主力部隊は歩兵だ、果たして水軍を動かすだろうか?。・・・奴は配下にも本心を明かさぬ男だ。・・実と虚は背中合わせだ」と孔明に言う。 孫権の妹の尚香が来て、水瓶の亀を見つけ「陸亀を水になぜ入れたの?」と言って取り出す。

                                             
 曹操軍80万の大移動が始まった。 対する連合軍はわずかに5万。 曹操軍の騎馬隊が進む、先行していた斥候兵が駆け戻り、「赤壁から8里以内には軍も民も降りません」と報告する。 足元で歩く亀を見て、「居るのは亀だけか?」と笑う。 油断しているところを尚香が指揮する騎馬の弓隊が襲い、弓矢を放って逃げる。 曹操軍の隊長が「追え!」と命じる。 部下が「ワナかも?」と案ずるが、「たかが女、恐れるな」と叫ぶ。 尚香が指揮する騎馬隊は一目散に逃げる。 丘の上の広場に居た周瑜軍の騎馬兵が、ロープで結んだ枝のある木を引っ張って走り回る。 あたりは一面砂煙が上がって前が見えなくなる。 尚香の騎馬の一群が砂塵の中に突入する。 後を追った曹操軍が駆け抜けた眼前に、周瑜軍の弓隊が待ち構えていた。 曹操軍は後続兵に押されて、盾で囲まれた兵の一団を交わしながら先に進む。 しかし、先は亀甲状の迷路のようになっていて、すべての退路を断たれた。 関羽は「ワナにかかったぞ。・・・八卦陣は古くなど無いな」と喜ぶ。 やぐらを組んだ高台の上で、戦況を見ながら周瑜が「陣を取れ!」と叫ぶ。 劉備や孔明がそばに居て作戦を指導する。 合図の太鼓が打ち鳴らされて、包囲網が変わり、曹操軍は追い詰められた。 盾の陣が狭められ馬上の曹操兵は槍で突き刺された。 それは圧倒的不利な状況を覆すため、孔明が賭けた奇策であった。

 包囲網を破って逃げようとする騎馬の一団を、甘興が馬上で剣を振り回して倒していく。 関羽は槍をさばいて徒歩の兵をなぎ倒す。 趙雲は白馬にまたがって槍を捌く。 張飛が敵の歩兵の中に単身突入して曹操兵を投げ飛ばす。  趙雲が白馬を降りて二本の剣を振り回して奮闘する。 周瑜兵は盾の囲いの内側から縄を投げ、引きずり込んで刺し殺す。 曹操軍の残存兵が盾で輪を作り中から槍で反撃する。 趙雲と張飛は鉄のパイプにロープを通し、両端を各々が持って馬で駆け抜けた。 曹操軍は堪らず混乱する。

 孔明が気がついたときにはやぐらの上の指揮席に周瑜が居ない。 周瑜は馬に乗って戦闘兵の中に突入して行った。 曹操軍の兵が周瑜を見定めて弓矢を放った。 周瑜は肩を射抜かれて馬から転がり落ちる。 周瑜は立ち上がり、矢を引き抜いて、一気に攻めてくる敵の武将に矢を突き立てた。 周瑜は敵の軍旗を奪って奮戦し、他の武将たちも奮闘した。

 やぐらの上の指揮所で劉備が孔明に「やったぞ・・・大勝だ!」と言って喜ぶ。 孔明も尚香も安堵し共に喜ぶ。 残兵を「行け!」と言って釈放する。 彼等は武器を投げ捨てて走り去る。 そこに、「敵の艦隊が赤壁に向かっています」と言う報告が入る。 

 南下する船団の中で曹操は負け戦の報告を受ける。 しかし、曹操は「わが騎兵隊は負けてなどいない。・・この私を相手に策を弄したまでだ。・・我等の行く先に同盟軍など見えない。・・・皆慌てるな」と諭した。 さらに「もうじき我等は川を渡る。そして壁に詩を書くぞ。・・・赤壁の向かい側に陣を張れ」と命じた。

 赤壁の門の上に周瑜を始め、劉備・孔明・張飛・趙雲・甘興・など連合軍の武将が集まり、対岸に集結している曹操軍を見る。 みなが息をのみ「すごい数だ」と誰かが言った。 張飛は「薪にしたら百年は持つぞ」と言っておどけた。 劉備が「80万の大軍はまんざら嘘でもないようだ。・・・どう戦う?」と周瑜に聞いた。 尚香が「80万が何よ。・・亀作戦で陸軍を撃破したじゃない」と言い、 甘興も「奴等は勢いを失った。」と言った。 孔明は「敵は水軍の直接対決を避けて、騎兵隊で奇襲をかけました。・・曹操の失策です。・・・ゆえに今度は戦術を変えて、水軍を動かすはずです」と答えた。 周瑜は「奴は2千の兵で我等を試した。 ・・我々は次の攻撃を待つしか出来ぬ」と語る。 趙雲は周瑜に傷の具合を聞き、「貴公に借りが出来た」と話す。

                           
 周瑜の傷の手当を医師が行い、妻の小喬が包帯を身体に巻く。 前から背中のほうに手を伸ばすと、裸の周瑜を抱きかかえるような姿勢になり、後から胸のほうに手を回すと、周瑜の耳元に小喬の顔が来る。 周瑜が小喬の手に自分の手を重ねる。  小喬が「負傷兵の為に何かをやらせてほしい・・・曹操は悪い人には見えないわ」と言う。 周瑜は「いいや、あくどくて老練な武将だ。・・勝つためには手段を選ばない」と答える。 小喬は「彼は戦は上手でも友達の居ない寂しい人よ。・・・あなたとは違うわ」と言って、周瑜の胸に身体を寄せた。 

 戦勝祈願と周瑜の傷の回復を祝って祝宴が開かれている。 「周大都督に乾杯だ!」 皆が酒を酌み交わす。 劉備は「切羽詰まっての同盟だったが、予想以上の成果だった」と孫権に礼を言う。 さらに劉備は「呉候に折り入って頼みがある。 ・・・新野から10万の民がついてきたが、私には領土が無い。 曹操に勝ったら荊州に彼等を定住させたい」と話す。 孫権の部下が「荊州は長江の中心で、戦略的な重要地点だ」と釘を刺す。 しかし、孫権は部下を制し、「高徳者ここにありだ。」と言った。 劉備は「高徳者はわずかな地を欲するだけだ」と答えた。 孫権が「皆仲間だろ」と言い、趙雲が「人は徳あるものを慕うものだ」と言った。

 劉備が尚香をみて孫権に「姫は真に女傑じゃなあ」と言うと、孫権は「劉備殿、・・妹は英傑に憧れて居るが、みての通りのじゃじゃ馬じゃ、生涯結婚は出来ぬかも知れん?。・・相手探しで頭が痛い。・・・劉家と姻戚になれば領土分配など関係無い」と言って笑う。  劉備は「開戦したばかりだ、それに再婚は考えていない」と答える。 尚香は「私は百人の武装した侍女に部屋を守らせてるわ。」と言って劉備に近づき、当身を一撃して劉備を倒し立ち去った。
 孔明が後を追い、外廊下に居る尚香を見つける。 孔明が「姫は変わった人だ。・・誤解されやすい」と言うと、尚香は「政略結婚なんかしたくない。・・・将棋の駒のように軽んじられるだけよ。・・・ずっと城の中で生きてきたからうんざりしてるの」と言った。 孔明は「隠して居るのだろうけど、姫は才能豊かな人だ」と言い、尚香は「兄と川向こうによく狩に行った。・・・大勢の人が唄ったり踊ったりしていたけど、今は闇が広がるだけね」と言って対岸の曹操軍を見た。 さらに尚香は「曹操軍が来る前に行って、調べてかき回してくるわ」と言った。

 曹操は新たに見つけた女と船上に居る。 「風が冷たいから気をつけろ」と優しく抱きしめる。 部屋には自分が書いた周瑜の妻、小喬の似顔絵が張ってある。  小喬によく似た女は「もう3日もお仕えしているのに、私の名前を聞かないのね」と聞く。 曹操はそれには答えず「茶を入れてくれ」と言う。 曹操は女に茶を入れさせながら、小喬のことを思っていた。 女が茶を差し出すと「違う!・・やり直せ」と命じた。 所作を改め再度差し出すと「それでいい小喬・・お前の茶を出す姿が好きだった」と女に言った。 曹操の奇行を見ていた部下は「この戦いを始めたのは、一人の女のためか」と吐き捨てるように言った。

                 
 孔明のところに周瑜が来る。 「昨夜は楽しんだか?」 孔明は「戦勝宴の席で、明日は敵になるやもと認識させられました」と言った。 周瑜は「その日が着たら、そなたも私も互いの立場を守るだろう」と言う。 孔明は「都督殿との対立は考えられません。その日の来ぬことを・・・」と言ったが、周瑜は「そなたは優れた軍師だ。 曹操軍でなかったのが幸いだ」と言った。 周瑜が「2日間対岸を見ているようだが・・・、」と聞くと、孔明は「冷静であらねば」と答えた。 孔明が「都督殿は?」と聞き返すと、周瑜は「私も同じだ」と答えた。 
 孔明が「曹操の水軍は無経験。・・・川を渡るには蔡瑁と張允に頼らざるを得ない」と言い、周瑜は「二人とも南に居たので、長江の要所を熟知している。・・・彼等を消せれば、曹操の水軍はマヒするだろう」と言った。 「それは、・・・難かしそうです」 「曹操の顔色を伺う配下と同様に、曹操は暗殺の恐怖におびえている。」と周瑜が言った。 

 対岸の水軍が動き出した。 孔明は「艦隊が独特の陣形です」と言うと、周瑜は「弱点の無い陣形は無い。・・我等が探さねば・・」と言った。 孔明は何時も欄干に止まって遊んでいる鳩を捕まえて、何かを授けて解き放った。 鳩は敵陣にまっしぐらに飛んでいった。

 曹操は配下の武将と兵の蹴鞠大会や軍事訓練の様子を見て満足そうであった。 「南征北伐において、我等は無敵だ。 だが、蹴鞠のように一方的では面白くない。・・・これで、赤壁の戦いの準備は万全だ。」と言って高笑いした。 

         第1部  終わり          平成20年11月1日  ロードショウ公開初日に鑑賞。



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