「キリング・ミー・ソフトリー」 

  R−18指定映画  カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を受賞した、中国人の陳凱歌(チエン・カイコー)監督がハリウッドに進出して、清純なルックスのセクシー女優へザー・グラハムと「恋におちたシェイクスピア」の英国俳優ジョセフ・ファインズを競演させたエロチックなラブ・サスペンス。SMにも通じる情熱的で官能的な究極の愛。そんなラブ・ストーリーが話題の英語作品。

 【キャスト】

アリス(へザー・グラハム)ロンドンに住んで1年半。アメリカ生まれの主人公のキャリアウーマン。

アダム (ジョセフ・ファインズ)有名な登山家。恋人フランソワーズをなだれの事故で死なせた。

デボラ (ナターシャ・マケルホーン)アダムの姉。アダムを同居させている。

ダニエル(イアン・ハート) アリスを取り調べる刑事。

ジェイク(ジェイソン・ヒューズ)アリスと同棲している男。IT関連のエンジニア。

ジョアンナ(ヤスミン・パナーマン) ガーデアン紙の女性記者。

シルヴィー(エイミー・ロビンズ)アリスの女友達。アリスと同棲しているジェイクのことをよく知っている。

                                   

【ストーリー】

 雪山が連なる冬のアルプス連山。 冬山登山の重装備に身をくるんだ登山隊員たちが、絶壁の岩場に取り付いて頂上を目指している。 吹雪の中を雲もちぎれ飛び激しく気象が変化している。 「山はとても危険だ。酸素が切れると脳が死ぬわ。・・・身体も動かなくなる・・・考えただけでもゾクッとする」男がつぶやいた。 不意に雪崩が起こり岩場に打ち込まれていたアンカーボルトが抜けて、ピッケルが外れ、ザイルに繋がれた3人が深い谷間に落ちて行った。

 警察署内「最初から話してくれるとありがたいが・・・・」刑事のダニエルが言う。 「いいわ、始めから話すわ・・・。」アリス(へザー・グラハム)が話し始める。 「私はインデアン育ち、家族もいないし、友達もごくわずか。 ロンドンで暮らしていて、ジェイクに会って同棲していたの・・・。 ジェイクとの生活は平凡だったけど順調で安心できたわ。 私はコンピューターのソフト会社に勤めていたの・・・・


 その日、アリスは地下鉄に乗り、冬のロンドンのオフイス街を人ごみを避けながら会社に急いでいた。 歩行者専用の横断歩道で立ち止まり、信号の青ボタンを押そうとしたとき同時に男性の指がボタンを押した。 二人は顔を見合わせた。 歩道を渡り歩きながらアリスは後ろに男の強い視線を感じ、強烈に惹きつけられた。 アリスはオフイスビルの玄関で足を止めて、男の行き先を確かめた。 「アリス入らないの・・・」同僚の女性がビルの玄関で声をかけたがアリスには聞こえていない。 男が「サミット書店」に入るのを見届けて、アリスはビルに入った。 受付で手紙を受け取り部屋に入ったが、向かいのビルの書店が気になり、ブラインドを指でずらして見たが店内は見えない。

 販売促進の会議が始まったが、アリスは仲間の話を何も聞いていない。 アリスは「美容院に行ってくるわ・・・」とウソを言って外に出て「サミット書店」を覗く。 奥に彼がいる、入り口でちょっと躊躇してから、思い切ってドアを押し開けようとしたらドアにぶつかるように彼が出かけるところだった。

 アリスは彼に誘われるままにタクシーに乗った。 座席の二人は互いに意識しあって落ち着かない。 「名前は?・・・」。 「アリス・・・」。 「アリスかァ・・・・」

 二人は彼の家に行く。 部屋に入るとすぐ、言葉も交わさないうちに彼がアリスを後ろから抱きしめる。 キスをしながら彼はアリスのセーターを引き上げ、身体じゅうにキスをし、服を全部脱がす。 二人は生まれたままの姿で向き合う。 「こっちを向いて・・・」彼が言う。 抱き合った二人はリビングルームのジュータンの上で激しく求め合う。 アリスは今まで味わったことのない激しいセックスを体験し、快楽に燃える新たな世界の扉を開いてしまった。 「明日も来てくれる?・・・」「仕事があるわ・・・・」とアリスは答える。 彼が言う「じゃ、今夜来てくれ・・・」。 「ダメよ」 「どうして欲しい・・・君が決めろ」 アリスは(今日限りに・・・)と自分に言い聞かせ(もとの生活に戻らなければ・・・・)と考えていた。

 翌日アリスは出勤前に 「サミット書店」に立ち寄り、ショーウインドウを覗いた。 冬山に立つ男女の大きいパネルがかかっている。 写真の中央にアダムの微笑む顔がある。  隣に美しい女性が寄り添い、山の仲間が彼を囲んでいる。 彼は有名な登山家アダム・クリス(ジョセフ・ファインズ)であり、雪山登山中の事故で6人を救助した英雄として紹介され、彼について書いた本が陳列されていた。

 アリスは思わず再びアダムの家を訪ねていた。 二人は激しい想いと狂おしい欲情をぶつけ合い、燃えるようなセックスに夢中になる。 アダムが「やめてもいいぞ・・・」と言う。 「やめないで・・・・・」アリスが狂おしく言いさらに求める。 アリスが「あなたの本を買ったわ」と言う。 アダムが「本は友人が書いた・・・。何人も死んだんだ・・・。最悪の事故だった。 全員死んだ。 フランソワーズも・・・・。準備は万全だったんだ。・・・俺は彼女を愛していた」滑落事故のことを話す。 金魚を鉢から手ですくい、取り出して「標高6000メートルの体験では酸欠で脳がおしまいだ」と言って弱った金魚をアリスに見せる。 「4年経ってもあの事故は忘れられない」と彼が言う。 アリスが「帰るわ・・・」と言ってパンテーをはこうとすると「ダメだ履くな!・・・」と言ってアダムはアリスをまた抱いた。

 アリスの部屋の中、同棲中の恋人ジェイクがテレビに夢中になっている。 アリスが話しかけても気がつかない。 ジェイクがテレビを見つめたままで「邪魔するな!・・・」と声を荒げる。  アリスが「出て行くわ・・・・・。別れるわ」。と言う。 やっと気がついて「わかれる?・・・アリス僕等はベストカップルだろ!。 結婚しようと話し合ったよネ。・・・相手はどんなやつだ!」と聞く。 アリスが言う「知らないヮ・・・。傷つける気は無かったの・・・」 「何処へ行く・・・」 アリスはそのまま鞄一つを下げて出て行った。

 アリスはアダムの家に行った。 ドアを開けると女性(ナターシャ・マケルホーン)が部屋の中にいて「アダムに用なの?・・・さあ、入って・・ここは私の部屋なの・・・今はアダムはいないわ・・・」と言ってアリスを室内に引き込む。  壁から外された雪山の写真を見ながら、彼女がアリスに話してくれる「私には思い出の写真よ、弟とはよく山に登るの・・・・。この人が弟の恋人だったフランソワーズ、・・・雪山で遭難したの、だから弟はこの写真を外すのよ。 私も一緒にいたの、だから見るとつらくなるわ。・・・事故は弟の責任じゃないわ」。 アダムの姉デボラはアリスに「きれいな人ね、・・・弟が夢中になるはずだわ。 弟は一途な人なの・・・」と言った。 アリスが聞く「彼の住所を教えてくれます?・・・」。 「いいわ・・」と言ってデボラはアダムの住所を紙に書いてくれた。

 雪の降る日、アリスはアダムの家を訪ねる。 留守である。 外のベンチに腰掛けて彼の帰りを待つ。 雪の中で身体の芯まで冷え切った頃にアダムが帰ってくる。 固く抱き合った二人は我慢できず、雪の降る玄関の前で服を脱ぐ。 アリスが言う「彼とは別れたわ・・・胸が痛むの・・・・」。

 朝、ベットの中で眼を覚ますと彼がいない。 探しながら二階から玄関の外を見ると、アダムが女性と一緒に玄関の方に戻ってくるのが見えた。 「おはよう!・・・こちらジョアンナだ。」とアダムが言った。 女性が答える「ガーデイアン紙の記者よ・・・・」。 アリスはジョアンナがアダムの取材に来たのだと知ってほっとする。 アリスは着替えるためにシャツを探して、クローゼットの扉を開けようとするがカギがかかっている。 机の引出しにクローゼットのカギがあるのを見つける。

 キャッスル登山センターという岩登りの訓練所にアリスは行く。 ロッククライミングを大勢が楽しんでいる。 「アリスよく来たわネ・・・」アダムの姉デボラが迎えてくれる。 「ハーネスを付けてあげる」とデボラは言い「ズボンのようにはいて・・・」と装備をアリスにつけようとする。 アダムが岩の上から降りてきて「姉はおせっかいでイライラするよ」と言いながらアリスに装備をつけてくれる。

 アリスはシルヴィーに電話をする。 シルヴィーはアリスと同棲していたジェイクを良く知っている女友達である。 シルヴィーが言う「私はジェイクとは15年来の友達よ。 彼を苦しめて暴走するつもりなの?・・・あんたはセックス惚けしてるのよ」。 アリスが答える「彼と出会ってバラ色なの・・・」。 「言い過ぎたわ。・・・」 「彼と3時に会う約束なの一緒に会ってくれる?」。

 アリスは女友達のシルヴィーと二人で街を歩いている。 急に引ったくりの男が飛び出してきて、新調したばかりの紫のパンティが入ったバッグを奪って逃げる。 アリスとの待ち合わせのため近くに居たアダムが、犯人を追いかけて捕まえる。 男を殴り、投げて、男は電話ボックスのガラスの中に頭から投げ込まれて半殺しの目に遭う。 「アダムもうやめて・・・・」アリスが止める。 「君が傷つけられたと思った。・・・ 二度と離れない君を守る。・・・・ 信じるか?・・・結婚しよう。 結婚してくれすぐに・・・明日だ。」

 アリスのところに手紙が来る。 「アリス・・・。彼がどんな男か知っているの?」。 アリスは手紙をアダムに見せる。「脅迫状だ、むかつくな・・・。だけど心配するな」。

 翌日、二人は車に乗って山間にあるアダムの田舎の教会に行く。 神父の前で共に誓いの言葉を述べて二人は結婚した。 アリスが訊ねる「この教会は・・・?」。  「家族の教会だ」。 「私は家族の顔を知らないわ・・・」。 「見せたいものがある。僕等は運命のカップルだ・・・。」とアダムは言って、アリスの手を引いて裏山に連れて行く。 「ここだ・・・・」。 そこは景色の良い高台で、石膏で出来た白いエンゼルの像がある墓地だった。 残雪のある山の中。 「着替えるの?・・・」アリスが聞く。 そこには登山用の服やリュックサック、靴など登山道具一式の入った袋が2ケ置いてあった。

 アリスが裸になって式服を着替えようとしたとき、アダムがカメラを向けて写真を撮ろうとした。 アリスがあわてて手で前を隠そうとすると「隠すな!・・・・。こうやって・・・」とアダムは指示して、裸のアリスにポーズをとらせる。 エンゼル像の前で何もつけない姿でアリスは写真に収まった。 アダムが急にピストルを取り出して、空に向けて祝砲の引き金を引いた。 アリスに恐怖感が走った。

 二人はかなり離れた山小屋まで山道を歩きはじめる。 結婚直後の儀式めいたハイキングにアリスは付いて行く。 彼は「自分のペースを守って無理するな。・・・強くなる訓練だ」、とか「食料は充分にある・・・・」とか言ってどんどん先に進み、アリスは必死で彼の後を追う。

 警察署内。 アリスが話す「彼の期待にこたえるために何時間も歩いたわ、山の中、川のそば、夜まで歩いて山小屋についたの・・・・」。

 真夜中、渓流の向こうに山小屋が見えた。 「やったね。 アリス・・・!」アダムが言う。 小屋に入るとすぐに二人は抱き合い、服を脱ぐのももどかしく、アダムはキスの雨を身体中にふらせていた。 アダムが立ち上がり氷の岩盤に打ち込むアンカーを壁に2本打ち込む。  「僕を信じるか・・・?」アダムが聞く。 アリスが眼をつむってうなずく。 裸のアリスの背を壁に向けて、部屋の真中に座らせた。 長い布のリボンを彼女の首に巻き、その両端を壁のアンカーに通してもう一度アリスのそばに持ってきた。 アダムは座って壁に向き、アリスを自分の前にまたがせて激しく腰を突き上げ抱きあった。 二人の愛の行為はさらに激しさを増す。 二人が頂点に達するとアダムは、雄叫びを上げて両手でリボンを何度も強く引く、そのたびにアリスの首に巻かれたリボンが首を絞めつける。 彼に生死をゆだねた情交に、アリスは意識を失いかけた。 アリスは新たな官能の世界を知った。 「愛してるわ・・・・・自由を放棄したわ・・・」 新婚初夜にアリスは山小屋で究極の性の世界に誘われた。

 アリスが花束を持って部屋に帰る。 ジェイクに電話をかける。 電話に女が出て「ジェイク?・・・・。いえシルヴィーよ。 彼の家に来ているの・・・。 正直に話すわ、成り行きで彼と同棲してるの・・・。振られた友達を慰めてたら、彼と出来ちゃったの・・・・。」とシルヴィーが答える。

 アダムの作品の出版記念パーテイ。 アダムは来客の応対に忙しく大勢の女性に囲まれているが、アリスは一人取り残されたように会場にいる。 トイレにいるとアダムの姉のデボラがやってくる。 アリスの手を取り、「私の義理の妹ね・・・」と話し掛けてくる。 「眼を閉じて、ゆっくり深呼吸をして・・・。」と言ってアリスの肩をもむ。 「どう・・・楽になったでしょう・・・。眼を閉じて・・・」と言って眼をつぶらせておいて、大きい飾りのペンダントがついたネックレスを首に巻いてくれた。 母の形見のネックレスだと言う。 会場に入るとアダムがアリスを妻であると全員に紹介した。 「青いドレスの美女に乾杯だ・・・・。」招待客は皆で祝ってくれた。

 「一般に女性のユーザーはゲームの物語性にこだわる」。 アリスがゲームソフトの開発会議で発言している。 そこに電話が入る。 ガーデイアン紙の記者ジョアンナからで投書があったのでFAXすると伝えられる。 アリスは皆に見られないように届いたFAXをあわてて取る。 「英雄アダムはレイプ魔だ。 真実を書いたらどうだ」。 続きが届く「真相を知りたければ、・・・・・」。 アリスがジョアンナに聞く「このFAXはレイプの被害者が送ったと思う?・・・」。 ジョアンナはそうだと思うと答える。 

 アリスは「ガーデアン紙の記者ですが・・・・」とレイプされたと言う女性に電話をする。 ジョアンナはアリスに「そんなこと外部に漏らしたとバレたら、私は首よ」と苦笑いする。

 アリスはジョアンナになりすまして、ガーデアン紙への投書者の女性に会いに行った。

 被害者だという女性が話す「彼と踊ったの、私はベロ酔いだったし、一緒に外に出ようと私から誘ったの。」 「彼は私を茂みに連れて行ってジッパーを脱がしたわ。 彼は私の口を抑えキスをしたの。 彼の腕力に抵抗できなかった。 私はもがいたわ、でも、ことが終わったの・・・・このことを記事にしてくれる?・・・。ひともうけできるわ・・・ジョアンナ」。 アリスは「証拠が無いわ」と言って家を出る。

  ヒルトンホテルのレストランでアリスはジョアンナと会っている「私は彼を信じるヮ」。 ジョアンナが言う「私は彼のことを良くは知らない。 知っているのは新聞や本からの知識だけだから・・・」。

 アリスは家に帰り、アダムの机の引出しからカギを出して、クローゼットの扉を開く。 たくさんの書類と封書が崩れ落ちる。 一つを拾い上げて手紙を読む。 女性からの手紙である。 「これは危険な情事・・・。もっと虐待されたい・・・・・・。こんな気持ちでもうついて行けない・・・。愛しているアダム・・」。

 アダムが帰って来た。 急いで扉を閉めようとするが手紙が次々と落ちてくる。 彼が近付く。 やっと扉は閉まったが、下からはみ出している手紙が足で押しても中に入らない。 アダムが部屋に入る「あなたを思っていたの・・・・」とアリスがいう。 「ぼくもだ・・・・」。 アダムはクローゼットを開けられたことに気が付いている。

 二人がベットの中にいる。 お互いに背中を向け合っている。 アダムが言う「今日会社に電話したよ・・・居なかったね?・・」。 「今日は美容院の予約だったけど・・・」。 アダムはアリスとジョアンナがホテルで会ったことを知っているので、「美容院に行くとは言ってなかったじゃ無いか?・・・」としつこく訊ねる。

 アダムがアリスのネックレスを見て「いい趣味だ・・・」と言う。 「デボラがくれたの・・・」。 「彼女はぼくを利用しようとしている・・・」とアダムは言う。 アダムの出かけた後、アリスが机の引出しを探すがカギはなくなっている。 隣の部屋に手紙が落ちている。 「アリスへ・・・アダムを野放しにしておくつもりか?・・・」とある。 アリスは電話の受話器を取って。「アデル・ブランチャールを・・・・」と言い、電話番号を調べる。

 アリスは手紙の主を訪ねる。 「何か?・・・・」 「アデルさんヮ?・・・」 「母親ですが、・・・私のお友達のジョアンナね・・・・」。 「娘は8ヶ月前から行方不明です。 この8ヶ月音信なし、今では夢みたい・・・」と言って、アリスに写真を見せてくれる。 「この人はアダム・クリスよ。 世界中の山へ登っている登山家なの。 娘は彼と付き合ってたの・・・」。 娘のバッグにあったというアデルの裸の写真を母が見せる。 アリスが写されたのと同じエンゼルの前で、同じポーズを裸のアデルがしている。 「捜索に進展はないかと聞いてきたわ・・・」。 急いで帰ることにしたが、帰りの電車では誰かが後をつけていると感じる。

 日が暮れて家に帰り、アダムの名を呼ぶが返事が無い。 電気をつける。 階段を上がる。 1階の薄暗いリビングルームにタバコを吸っている男がいる。 アダムであった。

 アダムがアリスに無言でキスをしようとする。 アリスは避けようとするが、すぐに抱かれて服を脱がされ裸にされる。 アダムはアリスにテーブルの上に上がるように言う。 アリスが裸でテーブルに寝るとアダムはその両手、両足をロープで縛る。 「あなたが分からないわ・・・」 「分かっているはずだ。 目を開けろ!。 男が出来たのか?・・・」。 「違うわ・・・」。 「何を考えている?。 秘密を探すとぞくぞくするのか?」。 「手紙を見つけたわ。」(人妻からの手紙や、失踪した女性の写真があった)。 「たまたまカギと一緒においてあったと言うのか?・・・・。 こいつも見たけりゃいくらでも見せてやる。」といってクローゼットの中の書類を持ち出し、二階から撒く。  「信じてくれ・・・。どうすればよいのだ・・・。」とアダムが言う。  「あなたの過去を知りたくて、そうすればもっとあなたを愛せると思って・・・」とアリスが言う。  「君を失えば地獄だ・・・。君しかいない。・・分かっているだろう。・・・絞め殺したいほど愛している。・・・こうして居たいか?。・・・縛られていたいか?」。 アリスが「トイレに行かせて・・・・。ほどいてくれない?」と言ってトイレに行く。

  アダムがはっと気になる。(まさか・・・アリスが逃げた)。 アリスはトイレの窓から外に逃げている。 「アリス・・・逃げるなァ・・まてー」。 「何処に行く?・・・・なぜ逃げるんだ!・・」。 アリスは裸足で夜の町を走る。 アダムが後を追う。 アリスはビルの階段の下に隠れてやっとアダムから逃れる。

 警察署の取調官の前。 取調官が聞く「それでここへ・・・」。 毛布に包まっただけの裸のアリスがいる。 「家庭内の問題は事件にはならない・・・。アダムからの脅迫状も無い・・・・。この二枚の写真だけでは言っていることの証拠にはならない」。  アリスがいう「フランソワーズさんの捜索を再開してください。」

 取調官が立って行ってブラインドを上げる。 ガラスの向こうの隣の部屋にアダムがいる。 アリスは驚いて逃げようとするが、「大丈夫。向こうからは見えません」。  アダムが答えている「虐待はしていません」。 取調官が言う「裸足を心配して、彼はあなたを探しに来ている。・・・過激なセックスは合意のうえだったのではないのですか?」。 ブラインドを降ろして「彼を拘留はできません。 あなたは証拠も無く悲劇のヒーローを訴えている」。

 アリスはデボラと会っている。「デボラ、私は正気だから信じて・・・。 警察はアダムが狂気だと信じてくれないの・・・・フランソワーズにはほかに恋人がいたの?・・・」。 デボラが答える「いたわ。・・・事故じゃないわ。・・・何時も使うアンカーは900Kgにたえるものなの。・・・ あなたの言うとおり特別に作らせた34Kgのものとすり替えたんだわ・・・。 彼と別れたいと思うようになると危ないわ・・・。アデルも彼と別れようとして殺されたんだわ」。 「アダムと別れるって証拠がないと警察は動かないわ」。 デボラが言う「あの教会に死体をうずめているわよ・・・きっと。」

 デボラが言う「弟の凶暴性を食い止めるためだったのよ。 もう大丈夫、脅迫状も私が送ったの」。

 アリスとデボラが車に乗って田舎の教会に向かった。  「邪心、その色は天使のそばだわ」。

 アダムが部屋にあるアイゼンを持って立ち上がった。 アダムは、アリスとアデルがエンゼルの前で裸で写した二枚の写真が部屋に残っているのを見て、すぐに車で田舎の教会に向かった。

 教会に着いたアリスとデボラは、すぐにスコップを持ってエンゼルの像の前に行った。 少し堀っただけで女性の死体が出てきた。 「あったわ。デボラ・・・」。 死体にはアリスが貰ったのと同じ飾りの、ペンダントが付いたネックレスが胸に懸けられていた。 デボラが言う「無駄死によ・・・・。私があげたの・・・」。 「なぜ?・・・」。 「15歳の弟は私の首を絞めて、暴力で私を犯したの・・・・。 アダムは私の弟よ!・・・おまえの男なんかじゃないよ。」 アリスが問う「それじゃあ、二人とも何だったんだろう?・・・」。 デボラがスコップを振り上げ、背後からアリスに迫る。 振り下ろそうとした時、銃声がしてデボラが倒れる。 アダムが結婚式の時、祝砲に使った銃を持って立っている。

 アダムが言う「姉とぼくはよくここに来た。・・・君はぼくを信じていると思っていたのに・・・・」。

 警察官が来て調査が始まっている。 アダムはデボラの死体を寝袋に入れながら言う「恋は終わった・・・。でも、情熱の日々がよみがえる」。 

 彼はすぎさった過去をふと思う。 もしあの山で、なだれ事故がなければ・・・・。

 それから2年後のある日、空港のエレベーターで下るアリスの目に、隣の上りエレベーターに立つアダムが見えた。 二人は気づかず眼を合わすこともなくすれ違った。 アダムの後ろ姿がだんだん高く、小さくなって天井に吸い込まれるように見えなくなった。

 

     平地の女は 山登りとは暮らせない・・・    終わり    2002.2.24 鑑賞





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