P.S.  アイラヴユー

 
 全世界500万人が読んで涙した、ベストセラー小説の映画化。
最愛の夫の死をまだ受け入れられず、絶望の日々を送る妻の元へ、死んでしまった夫から消印のないラヴレターが届く。・・・それが、すべての始まりだった。 愛する人を失った悲しみを乗り越え、残された者はどう生きるのか。 2度のオスカーに輝くヒラリー・スワンクが主演。 「マディソン郡の橋」の脚本家/監督リチャード・ラグラヴェネーズが見せる感動の作品。 
                    20.10.18全国ロードショー   20.09.22試写会鑑賞

                      


【キャスト】
ホリー・ケネディ  (ヒラリー・スワンク) 夫がガンで死ぬ主人公の女性。
ジェリー・ケネディ (ジェラルド・バトラー)ホリーの夫。脳腫瘍で死ぬ陽気なアイルランド人。
パトリシア・レイリー(キャシー・ベイツ)  ホリーの母親。 夫は自殺している。
ダニエル(ハリー・コニックJr)     パトリシアの経営するバーに勤めている男。   
デニース(ラサ・クドロー)       ホリーの親友。 男探しばかりしているのんきな女。  。
シャロン(ジーナ・ガーション)     ホリーの親友。 夫のジョンはジェリーのビジネスパートナー。 
ウイリアム(ジェフリー・ディーン・モーガン) アイルランドの酒場で歌手をしている男。   
キアラ(ネリー・マッカイ)       ホリーの妹。   
ジョン                   シャロンの夫,ジェリーのビジネスパートナー。

                        
【ストーリー】

 ホリーが後も振り向かず小走りに帰宅する。 声も掛けられず黙って後を追っていた夫のジェリーが、アパートの前でやっと声をかける。 「もしかして怒ってるの?・・・俺の所為なんだろ?・・俺が悪かったんだろ?・・・悪かったよ、 ごめんよ。」 階段を登りながら、さらに「頼むよ、お願いだから言ってくれよ。・・・俺が何を言ったか知らないけれど、・・・」妻のホリーは、ただ怒った顔で口を利かない。 部屋に入ってホリーは「あなたが言ったじゃない。・・男は何か言って誤魔化そうとするけど、そこに何かあるのよ」と言う。 ジェリーが「俺、なんて言った?」と聞き返す。 「ママに言ったでしょ。 子供は欲しいけど、私の準備がまだだって・・私は、レズだって言われた方がまだマシよ・・・あなたはママに、”私が子供を欲しくない”って言ったのよ」 「そんなこと言ってないよ」 「いや、言ったわ・・・本当に言ったのよ」 「そんなこと、言ってないよ・・・”君が待ちたい”って言ってたって」 「それ、”今は欲しくない”って意味よね・・・私達、計画があったでしょ。・・アパートを買うまで子供はお預けで、二人の給料の25%を共同口座に入れるって・・・なぜ、ママに言わなかったの?」


 ホリーは部屋の中で、着替えのために着物を脱ぎながらジェリーに話す。 ジェリーも上着を脱ぎ、ネクタイを取りながら話す。 「だったら、普通に働いてくれよ。・・2年で5回も転職だぜ」 「ええ、馬鹿の下では働けないの・・・皆馬鹿なのよ。・・・それから、ジョンと内緒で融資受けたのを、なぜママに言わないの?」 「それで怒ってるんだな?」 「それで怒ってるんじゃないわ、・・私達待つべきだわ」 「何を待つ?・・俺は4年間、リムジンの運転手をしてるんだ。・・ジョンと新事業を始める。車もあるし、顧客も居る。キャリアも有る、何が問題なんだ?」 「うまくいかなくて、ずっとここに住むことになったら・・・私は自分が住めない家を売ってる不動産業者になりたくないわ」 「子供が欲しいって?・・・やろうぜ!」 「それが嫌なの・・・赤ちゃんを作ろう、・・ラララってのが!・・私は計画的にやりたいの」 「なあ、ホリー・・金はなくても子供は作れる・・・そんなに心配なら、高い服は買うなよ」 「全部オークションで買ってるわよ」 「子供が欲しいか?」 「あなたわ?・・」 「ああ、欲しいさ」 「ママに言いつけたのは、まだ、子供が欲しくない私に怒ってるからなのよ。・・それに私、つまらない女だし、熱い激しいセックスもしてないし」 「分かった・・・もっと熱く激しいセックスをしよう」 「現状に満足してないって言いたいんでしょ」 「それは君のほうじゃないのか?」 「これが私達の人生なの?」 「どういう意味だ!」 「私達 リムジン会社を所有する夫婦。・・子供がいようが居まいが」 「何が望みだ?・・考えるのに疲れた。・・でかいアパートが欲しいのか?・・だったら、仕事を増やすよ・・・君は何が欲しいのか言ったほうがいいぞ。・・それが俺じゃなくても」 「何それ?・・別れたいの?」 「俺に去って欲しいのか?」 「そうしたいなら・・・私を言い訳に使わないで・・・」 「別れて欲しいなら別れてやる」 「別れたいのね・・・さようなら」 「ああ、馬鹿げたことを!・・」こう言ってジェリーはバスルームに入り、ホリーは「アイルランド訛りはやめてよ・・」と言って、隣室に入った。
 
 しばらくして、ホリーが居間に戻り、ジェリーもバスルームから出てきた。 ジェリーが「気が済んだかい?・・戻って来ていいかい?」と聞く。 ホリーは「ごめんなさい・・・ごめんなさい」と言いながら、ジェリーに走り寄ってジャンプして抱きつく。 ジェリーも「ごめん・・君のままに間違ったことを言ってしまった。・・ごめん・・ママは俺が好きじゃないね」と言いながら、二人は激しくキスを繰り返す。 「ママはあなたが嫌いよ」 「ほんとうに?・・ママは心の底では俺のこと好きなんだよ」 「いいえ、・・ママは私が19で結婚したから・・・それに、あなたは私をセックスと魅力で私を堕落させた・・・それに、あなたはなかなか金持ちにならないし、色気と魅力も減ったわ・・・ままは、結婚は失敗だって・・・だって、私、あなたを愛しすぎてるもの・・・長く続かないだろうって。・・私、失敗したくない ジェリー・・」 「ベイビー・・金が無いからって、結婚は失敗じゃない・・・ずっと、一緒だよ。・・どうして判るかって・・だって、朝起きて、最初に君の顔が見たいって思うんだ」 「大きい家に住んで子供の居る人を見るの・・すると私の人生はって不安になるのよ」 「俺達には俺達の人生があるんだ・・これがそうさ。・・俺は何処にも行かないよ。・・俺は君のパパじゃない。」 二人はずっと抱き合ったまま、何度もキスを繰り返して話し合った。
 先にベットに入ったホリーを追って、ジェリーはズボンを脱ぎながら走った。 ズボンの吊りベルトの金具が飛んだ。 ジェリーは「君のチョコレートを舐めさせてくれ」と言ってベットにもぐりこんだ。 「私、妖精に惚れたなんて信じられないわ。・・あなた、最後でしょ、電気消す番よ」 二人はベットに入ってキスを繰り返し、抱き合った。 

 陽気で情熱的で歌が好きなアイルランド男との二人の生活は、けっして裕福とは言えなかった。 些細なことで時には喧嘩もしたが、必ず最後には仲直りをして、お互いの愛を確かめ合う日々だった。

                      
   [ 冬 ]
 ホリーの母、パトリシアが自分の経営するバーを会場にして、葬儀を行おうとしている。 従業員のダニエルに、感謝祭の飾りを下ろし、ジェリーの運転手にカーテンを閉めるよう言ってくれ、と頼む。

 ホリーの親友のデニースが、同じく親友のシャロンの夫で、ジェリーのビジネスパートナーであるジョンに挨拶をする。 シャロンもデニースとハグし合って久しぶりの再会を喜ぶ。
 ジェリーの写真と遺骨を納めた壇上の納骨箱を前に、ホリーと母のパトリシアが並んで葬儀のはじまるのを待つ。 牧師が壇上に出て、「さて、ジェリーの遺言に従って、パーティを始めよう。・・ジェリー・ケネディは音楽が好きだった。 彼は変わった青年で、この骨箱のデザインも彼が愛した人、妻のホリーに作らせた。・・彼の命はもう終わったかもしれないが、まだ彼の声を聞くことが出来る。・・彼は永遠に我々の心の中に・・彼のお気に入りの歌のように、・・・」と挨拶する。 ダニエルがレコーダーのスイッチを押して、歌が流れる。
 ♪ ♪ ラッキーだった 18で来たんだ 僕は感じているんだ 今年は僕と君のために とても幸福なクリスマス 愛してるよベイビー 素敵な時が見える 僕らの夢がすべて叶ったら ♪♪

 ジョンが前に進み出て、グラスにお酒を注ぎ、一気に飲んで、空になったグラスを骨箱の上に伏せて置いた。 次に、ダニエルが続いて同じことを行い、参加者が後に続いて、皆同じことを繰り返した。
 ♪♪ 君は能無し 愚か者 君は薬中の尻軽女 ベットで点滴を受けながら 死にかけで横たわっている 君は卑劣だ気まぐれ 君はシミったれ最低だ ハッピー・クリスマス クソ 神様に最後にしてって祈る  ♪♪

 牧師も、参加者も声を張り上げ笑顔で歌い始めた。 ホリーだけが、彼との日々を思い出し、目にハンカチを当てている。 遅れて、妹のキアラがやって来る。 ホリーは「キアラ・・あえてよかったわ」といってハグした。 キアラは祭壇の骨箱に近づき「こんにちはジェリー・・」と言ってグラスにお酒を注いだ。 
 パーティが始まるとデニースは、出席者の男性を見つけて「私、デニースよ」 「マットだ」 「そのネクタイ素敵ね」と言って近づき、「あなた独身?」と聞いた。 「イエス」 「あなたゲイ?」 「イエス」 「あっそう」 デニースは、すぐにその場を離れた。
 ホリーの親友のシャロンが、パトリシアに「ホリーは彼の両親を呼んだの?・・なぜ着てないの?」と問う。 パトリシアは「私が母親に連絡したわ。・・・父親はちょうど手術で長旅は無理だわ」と答える。 「なぜ、母親は一人で来ないのよ?・・アイルランドでしょう、・・一人息子じゃない」 「私に聞かないで・・」
 デニースはまた別の男を捜し声をかける。 「デニースよ、・・その胸のチェーン素敵ね」 「ありがとう、ジョージだ」 「独身?」 「ああ」 「ゲイ?」 「いいや」 「働いてる?」 「いいや」 もうデニースは歩き始めていた。 

 「魅惑的な未亡人ね」と言って、ホリーのところに、妹のキアラがやってきた。 「来てくれて嬉しいわ。・・遠かったでしょ」 「オーストラリアの方は片付いたし、それにジェリーが来てくれって・・」 「あなたに手紙を?・・」 「ええ、数月前に・・・多分ママのためよ。・・彼は私がママとメロドラマをするって知っていたから、あなたが立ち直るまで・・・」 二人の会話を、店で働いているダニエルが、カウンターの中から見て「何かお持ちしましょうか?」と声をかける。 ダニエルは、「お悔やみ申し上げます。・・・どうして死んだの?」と聞く。 「脳腫瘍よ」 「素敵!」 周りの人が驚いてダニエルを見る。 彼は「それ、素敵な骨壷じゃない・・・俺にも才能があったらって・・・俺は犬をステレオに埋めるよ。・・同じじゃないな」と言った。 周りの客がクスッと笑った。

 デニースはまた別の男に声をかける。 「そのスーツ素敵ね」 「ありがとう」 「あなた独身?」 「ああ」 「あなたゲイ?」 「いいや」 「働いてるの?」 「ああ」 「デニースよ」 「サムだ」 デニースは笑顔を作っていきなりサムにキスをした。 唇を離すとすぐに「違うわ・・」と言って立ち去った。

 ジョンが壇上に出てきて、皆が拍手で迎えた。 「ジェリーと俺が銀行に事業融資を申し込みに行った時、俺は緊張してた。 ジェリーは言ったんだ”リラックスしろよ、どうせ融資してくれないから、楽しんだほうがいいぜって”・・・」

 ホリーはカウンターの中に入って食器を洗い始める。 母が「しなくていいわよ」と言う。 「何かしていたいの・・・話すことも無いし・・」とホリーは言った。 「キアラが居る間、一緒にいない?」 「嫌よ・・自分の家にいた方が良いわ。・・多分居るべきなのよ、自分の家に・・」 「ここはあなたの家でもあるのよ。・・・でもいいの、早く立ち直ってね」

 ホリーは納骨箱を抱えて、一人で我が家に帰ってきた。 一度テーブルの上に置くが、思い直してベットルームに運ぶ。 靴を脱ぎ飛ばして、上げていた髪を解き、狂ったように服を脱いだ。 携帯電話を取り出して、電話を架ける。 録音の声が流れる。 「エニスケリー・リムジン社のジェリーです。 メッセージをどうぞ」 もう一度架けて、同じ録音を聞く。 ベットに入ってまた聞く。

                                                      

 朝、朝食のためのコーヒーを2個作る。 電話の拡声器から「ホリーママよ、大丈夫?・・シャワー中?・・心配させないでね。折り返し、電話呉れないかしら、心配なのよ・・・つらいわね、でも引きこもらないでよ。もう1週間よ」とママの声が聞こえる。 デニースに代わって「デニースよ・・私ここにいるから 良い?・・・アパートのベル鳴らしたのよ。皆連絡が無いって・・・誰かに電話してね。 愛してる」と言っている。 ホリーは洋服を着替えて、街に出る。  ”良いかい?・・、仕事なんて、どうせ君を一日中不機嫌にするだけじゃないか。・・・子供が欲しいって・・やろうじゃないか。・・・エレベーター無しの家がやっとだ何て・・・成り行きに任せちゃダメなの・・” ジェリーとの想い出が頭の中を駆け巡る。

 夢を見て眼を覚ます。 「明かりをつけて・・・ジェリー、あなたの番よ」 彼が隣にいない現実に気づき望然とする。 
 ♪♪ ただ、君に逢いたくて 君が一人でいるなら 出来るなら 君を捕まえたい 朝の陽射しが輝く時 そこに居たい 君の顔に陽の光が 僕は逃げられない 死ぬまで愛してるよ ♪♪
 ホリーはベットから出て、昔のことを思う。 そこには裸のジェリーがギターを抱えて唄っている。 ホリーが後から静かに抱きかかえて愛撫をする。 「アイルランド人は皆歌うの?」と聞くと、「ああ」と彼は優しく答える。 「私一人で寝れないわ。・・恐い夢を見たの・・・ジェリー、私仕事に行きたくないの、どうしたらいい。」 「辞めろ。・・俺とここにいれば良い」 ジェリーが言う。 

   [ 3週間後 ]
 ホリーの家。 ファーストキッチンの出来合いものを食べて、台所は片付けも無く散らかっている。 ホリーはジュディ・ガーランドが歌う ”スター誕生 ”のDVDに合わせて、チャンネルをマイク代わりに唄っている。
♪♪ すべては男のせいよ それは奪われたの もう彼の熱い声は無い 壁にサインが あなたが見た夢はすべて 何処かへ あなたをものにした男は逃げて 元の状態に 最後にその素晴らしい 始まりが起こった  何が起こったか分からない すべては狂ったゲーム いつもハラハラはごめんだわ あなたは苦しい経験をしたから こんな経験は2度とないわ ♪♪

 ホリーが唄っているところに、ママと親友のデニースとシャロン、妹のキアラがやって来る。 4人に気がついて、ホリーはDVDを止める。 拍手が起こり、「ハッピー・バースデー」と口々に叫ぶ。 手には、お土産、風船のほかに ”HAPPY 30TH BIRTDAY” と書いたボードを持っている。 キアラが「30歳ね、おめでとう」と言った。 ジョンが遅れて後からやってきた。 パトリシアがゴミを拾ったら、「ママ、片付けないで・・・誰も来ないと思ったから・・」とホリーは言った。 「ゴミをまとめているだけよ」とママは言った。 「電話したんだけど・・」 「酔ってるの?」 「シャワーしてないの?」と皆が心配して聞いた。 ジョンが「何の臭い?・・」と聞くと「私よ!・・文句ある?」とホリーは叫んだ。 「ちょっとそんなにならないでよ」とシャロンが言った。 「どんな風に?・・」 「ゴッサム・シテイの寂しい未亡人」 「私はただ・・・疲れたの」 「で、何してるのよ?」 
 ママが「私達に出て行って欲しいなら、それはそれで良いわ・・でも、何時かはこんなこと辞めるのよ」と言った。 ホリーは「分かったわ・・・ちょっと待って、綺麗にしてくる」と言って、バスルームに入った。  部屋は散らかり放題で、悪臭まで漂い、身だしなみも一切気にしない、変わり果てたホリーの姿に一同は唖然とした。 ママの一声で、皆が手分けして部屋の掃除にかかった。

 ホリーは「オフイスに電話してないわ。皆怒ってる?」と、シャロンに聞いた。 「いいえ、”待ってるから、仕事ならあるわよ”ってラリーも言ってたわ」 「彼にしては親切ね・・・ここで命を終えたら言いと思わない?・・・私が年寄りになるまでアパートを出ないで、ウエディングドレスに座って、・・・」 「あなたが着た事の無い」 「ウエディングケーキと・・」 「あなたが見たことの無い」 「気違いになるために、おかしくなることは、中流階級の贅沢なんかじゃないわ。・・・手に入れるわ」

 キアラが「ホリー、あなたに届け物よ」と伝えにくる。 大きい紙箱をみんなが取り囲む。 蓋を開けると ”誕生日おめでとう ジェリーより” とメッセージが書き込まれた、バースデーケーキだった。 ホリーが「何これ?・・」と言った。 シャロンが「どういうこと?・・あなた?・・」とジョンに聞いた。 「いいや・・ちょっと待って」と言って、箱の蓋の裏側にテープで止められたテープレコーダーを取り出した。 ホリーは「ジョン、本当のことを言って・・あなたなの?」と問うた。 「いいや、俺じゃない。・・・誓うよ」 ホリーが恐る恐るボタンを押した。 ジェリーの声が聞こえた。
 ”やあ、ベイビー サプライズだよ。 自分でもちょっと気味悪いなとは思うのだけど、君が30の大台になって、ビクビクしているのを観れないなんて、我慢なら無いよ。 君はきっと驚くよ。 俺が計画を立てたんだ。 これから、色んな方法で俺からの手紙が届く。 君が引きこもると思ったから、君の誕生日まで待っていたんだ。 一通目は明日届くよ、俺の言うとおりにするんだ。 良いね?。 手紙がどうやってくるか、その仕組みは探るな。 そんなこと考えると、計画が台無しだ。 黙って付き合ってくれ、だって、君にちゃんと”さよなら”は言ってなかっただろ。 じゃあ、まず手始めに、今夜はお洒落して外出しよう。 お祝いをしてくるんだ。 友達を誘って、家族のパーティは無視していいから、・・・そこにママもいるのかな?・・ホーリー、・・・ケーキを食べて、ちょっと羽目を外して、ドレスを着て、街へ飛び出せ。・・・ジョンは俺と残ってくれ。 俺は何処にいようとも君を想っている。 誕生日おめでとう。 愛してる。

         

 ホリーは親友達と夜の町に出かける。 会員制のゲイバーに行く。 会員で無いので入らせてくれないが、キアラが交渉し、ホリーをフインランドの王女に仕立てて、両国の友好と政治的目的のためと偽り、潜り込んで遊んでくる。 酔っ払ってママの店に帰ってきたホリーが倉庫の中に座っていると、何も知らない従業員のダニエルがドアを開ける。 驚いて「ごめん・・何をしてるの?」と聞く。 ホリーは「なぜ、神様は夫を殺したのかを考えてるの」と答える。 「まあ、助けが欲しければ言ってくれ」と言って、立ち去ろうとするダニエルを倉庫の中に引き込んで、「ダニエルだっけ?・・」と聞く。 「ああ」 「何でだと思う?・・」 「君の夫の死かい?」 「多分、何かの罪で罰せられたんじゃないかな」 「何の?」 「幸せすぎる?・・美しすぎる?。・・・きっと神様は嫉妬深い奴だったんだよ」 「それは違うわ、私達幸せだったことないし、美しくも無い」 「君は魅力的だよ。・・・ごめん、オブラートに包むことが出来ないんだ」 「無神経って意味?」 「ああ、でも今、薬で治療中なんだ」 「無神経に効く薬なんてあるの?」 「君はアイルランド人だろ。・・・多分、アイルランドの呪いか何かだ」 「そうだわ、・・ジェリーと私は本当にヤンキースを愛してたわ。・・宗教に相反するけど」 「それで説明がつく、俺もヤンキース好きで、それで婚約者と別れた。・・・彼女は俺の親友と寝た。・・俺を捨てたんだ。・・・親友は女だ。・・・別れの言葉は、”あなたが男で無くても一緒に居たい”って、だから俺は、”じゃあ、まずは去勢しなくっちゃな”って言ってやった。・・・親友だった元婚約者は、元々の婚約者と結婚した。・・で、彼女は俺の仕事仲間で、俺の資金で商売を始めたんだ。 結果俺は、仕事も仲間も婚約者も失った。」 「どうやって乗り越えたの?」 「年中ヤリまくった」 「でも、それは助けにならなかったわね」 「いや、とても助けに・・・お金も使い果たしかけた、デートは安いもんだよ」 「また、愛する女性に出会えると思う?」 「いいや、多分本気になると拒絶してしまう」 「それ、本心じゃないわね」 ホリーが急にゲロし始めるが、ダニエルは手を貸さなかった。

 酔っ払って、意識をなくしたホリーをダニエルが抱きかかえて、ママの案内で二階のベットに運んだ。 妹のキアラが納骨箱を持って付いて行った。 ホリーはママの手を抱きかかえて満足そうに眠っていた。

 急にバッグの中の携帯電話が鳴った。 飛び起きると、外は明るかった。 ホリーが電話に出ると親友のシャロンからで、「ちょっと、あんまりじゃない。・・・」と言う、ホリーは何も覚えていない。 「昨夜何があったの?」 「レモンドロップとテキーラよ・・・・30歳になると回復が遅いわ」 「仕事中なの?」 「いいえ」 「でも、彼に来週始めるって言ったわ。・・月曜日からよ」 「ダメよ。だって私、今日ベットで死ぬんだから・・」 「あなたには仕事はまだ無理よね・・・郵便受け調べた?。・・覚えてる?」

 ホリーは走ってアパートの帰り、郵便箱を開けた。 封筒を開いた。 ”怪我に注意するんだ。・・・ベット脇のランプを買うんだ。 そして忘れないで、ディスコは ” ディヴァ ”が一番だよ。 勝負衣装を買いに行くんだ。 次の手紙で使うことになるからね。 仕事を嫌っているのは分かってる。でも、応援するよ。・・・サインを探してみて、何をすべきか分かるよね。  P.S. 愛してる”

 ホリーはベットの中から、脇に置くランプを買ってきたので、点けたり消したりを繰り返しながら、ジェリーのことを想っている。 ジェリーが顔を洗い、出勤の支度をして部屋を出た。ホリーはそれをベットの中から見ている。  「あなたはまだ、そばに居るのよね。・・・まだ、ここにいるでしょ?」ホリーはジェリーに話しかけるようにつぶやいた。

 ホリーは不動産の仕事に復帰した。 客が尋ねる「ここは前には誰が住んでいたの?」 「家族よ・・・子供も。・・あなたは子供は?」 「3人だ。10代の子が・・」 「いいわね」 そこに、客の夫人が慌ててやって来る。 「テッド。 シャロンが、もう一人希望者がいて、私達に諦めなさいって、・・・もしさらに10万ドル出せば彼らは降りるそうよ」 「その件は後で・・」 「時間が無いの・・・今日中には彼女に伝えないと・・」 「予算は上げられないよ・・」 「分かってるわ・・でもここが気に入ってるの。・・それが現実よ」 「すでにこれが限界だ」 「いや、出来る筈だわ」 「別の地域も考えたほうが・・・」  夫婦が言い争っている時にホリーは「彼の話も聞いたら?」と婦人に言った。 婦人は「何ですって?」と睨みつけた。 「彼は明らかに心配してるわ。・・・顔色も悪いわ」 「人の夫を捕まえて、何様のつもり?」 「彼が嫌なら、無理強いすること無いわ」 「私の夫よ・・私の趣味で奨めるわ。・・・このアパートがいいの」 ホリーが言う「駄目って言って、テッド」 婦人が言う「彼女の言うことは聴かないで」 「テッド・・彼女は横暴よ・・・あんたは、アソコの玉、この人に取られてるでしょ」 「黙れ!」 「お前こそ黙れ!」 「お前をクビにしてやる」

 ホリーはジェリーの事務所から、ジェリーの使っていた書類などを持ち帰った。 ベットに腰掛けてぼんやりしている時に、化粧棚の陰に変な金具のあるのを見つけた、 ジェリーがズボンを脱ぎながら、走ってベットに言った時、飛んで行ったズボンの吊り金具だった。 ホリーはそれを拾い上げジェリーの写真の前に置いた。
                                

 [ 春 ]
 ホリーの部屋がノックされた。 ドアを開けると、緑の服を着た男性が風船を持って立っていた。 彼は「あなた、ホリー・ケネディでしょ?」と聴いた。 「だったら、歌を唄うの?」 「ああ・・・俺は歌って、手紙を届けるんだ」 「手紙?・・何の歌よ?」 「Yah Mo Be There だ」 「手紙だけ頂戴」 「俺はオフブロードウエーでアル・パチーノと共演してたんだ。・・こんなことしてる場合じゃないんだ。・・風船いる?」 「いらないわ」
 ホリーは手紙を開いた。  ”ホリー  ディスコ ” ディヴァ ”でカラオケだ。 唄う戸見返りがあるぞ   P.S. 愛してる ”
「仕方ないわ・・・やるっきゃないわね」  

 ホリーは、ジェリーの元気な頃、親友たちとカラオケに行った時の事を思い出している。
 ♪♪ 君のやりたいことは 車をぶっ飛ばすことだろ サリー  行け サリー行け  君のやりたいことは 車をぶっ飛ばすことだろ サリー  ある早朝に 君はそうするだろう 涙ぐんだ目を拭って 涙ぐんだ目を いえっ いえっ いえっ ♪♪  
 バーのステージで、陽気なアイルランド男のジェリーが歌っている。 唄い終えてジェリーが「ここで誰かにチャンスをやろう。・・・歌いたい奴居るかい。・・そこの君?、どうだい?」と、女性に呼びかけた。 客席のジョンが「ホリーはどうだい?」と言った。 ジェリーは「ホリーか?・・・ホリーは俺の妻なんだ。・・俺の美しい妻だ。・・で、俺はホリーを愛している。愛してるんだ。・・・でも彼女には根性が無い。 彼女はここに来るのすら文句を言ってた。・・・彼女は絶対に歌わないぜ。・・・唄うと思うかい?。・・・」と、客席に聞いた。 「客席は盛り上がり、「ホリー唄えよ!」「やれ、やれ!」と騒ぐ。 「ホリーが舞台に上がると思うかい?・・・俺は100ドル賭ける。上がらないほうに・・」と酔ったジェリーが言った。 ホリーは立ち上がり「掛け金2倍にして・・・」と言って、舞台に上がった。 ホリーは胸を開き、シャツを胸の下まで持ち上げて結び、パンツを思いっきり引き下げて、腰をくねらせてセクシーに唄った。
  ♪♪ どうやって邪魔したら良い 傷つけない 気力を失わせないために あなたは尽くされないって噂があるわ 心が分からないって言ってるわ ベイビー ずっと前から 悪いことしたいときに 正論を言うのは難しいわ  ♪♪
  舞台で踊っていたホリーは、マイクのコードに足を引っ掛けて転び、顔面を怪我する。 

 病室に見舞いにやってきたジェリーは「どう、元気そうだね」と声をかける。 「ごめん ベイビー でも、本当に良かったよ」 鼻血を出して、顔面を包帯でくるんだ姿のホリーは不機嫌で「花を怪我したわ。・・あなた幸せ?・・・行きたくなかったわ、あなたのせいよ。・・カラオケ嫌いなのに、あなたが無理やりやらすからよ」 「誰が悪いわけでも無いよ。・・キスしてよ」 ホリーは横を向いて、怒っていた。

 ホリーは、シャロン夫妻と街を歩いている。 ホリーが「あの日、私は彼を許さなかったわ。・・・私は、何時も起こって、彼の気分を悪くしてたの。 アパートが小さいからって、怒ったりしたの、・・馬鹿ね。・・夫婦って時々わざとそう言う事をするのよ。」と話す。 ジョンが「ジェリーは、君が惚れているのを知っていたぜ。・・いつも俺にそう言ってた。」と言う。 「彼の夜、彼に言っておけば良かった」 「じゃあ、今言えば・・・」

 シャロン夫妻とデニースがカラオケバーに来ている。 デニースがそばを通った男の尻を見て「彼、おいしそうじゃない?」と言った。 ジョンが「君はなんで、男を肉かのように、下品に言うんだ」と聞く。 「ごめんなさい。・・ジョンが繊細なのを忘れてたわ」 「デニース、・・だから君は結婚できないんだ。・・・女が男みたいだと、男にもてないよ」 「私は、違うって思ってたわ。・・それが一番じゃないの?・・男は間違った女と一緒に向こうにいるの。・・・昔から男って、私の目じゃなくて、胸を見て、握手の変わりにケツを揉んで・・・私には、男を下品に見つめて、下世話な評価をする権利があるわ」 シャロンが「同感よ」と答えた。

 そこにキアラが店のダニエルを連れてやって来る。 舞台で司会者が「次は”ニューヨーク・シティ”だって?・・彼女の雪辱戦だそうだ。・・皆も一緒に応援してやってくれ・・・ホリーのために」と告げた。 全員の拍手の中を、ホリーが舞台衣装に実を包んで登場した。 ホリーは後を向いて小声でつぶやいた「あなたによ・・ジェリー。・・くそったれ」 正面を向いた時、ホリーの目と今来たダニエルの目があった。 唄い始めたホリーの頭の中には、誰もいない会場でただ一人ジェリーだけが聞いてくれている場面が想像できた。
   ♪♪ 唯 あなたに言いたいの あなたが聞きたくないことは 何も無い あなたに言って欲しいの おお 何で行った事無い場所に 連れて行ってくれないの? あなた聞きたいんでしょ 私の吐息を聞き取って 死ぬまで愛してる 死ぬまで愛してる ♪♪ 唄い終えるまで、ずっとジェリーが笑顔でホリーに微笑みかけていた。  会場では、ダニエルが、瞬きもせずホリーを見つめていた。

 今日もホリーは親友たちとバーに飲みに来ている。 デニースが男を捕まえている「単刀直入に聞くわよ。・・独身で、・・ビジネスは?」 「クラブのオーナーだ」 「今改装中で、春にはオープンする。・・よければ見せてあげるよ、10番街なんだ、行くかい?」 「すごいわ・・・でもその前に」と言って二人はキスをした。 「名前は?」 「トムだ」 「今まで何処に?・・」 「間違った女のところさ」 二人はまたキスをした。
 ダニエルが店に来て、ソファーに腰掛けて休んでいるホリーを見つける。 「おい、ジェリー、・・・痩せたな。・・・誘ってくれてありがとう。」と言いながら近づき「しかし、まあ、音痴だったな」と笑った。 「ええ、そうよ」 「もし俺なら、心底はずかしいよ」 「今日は薬飲んだの?」 「いや、その代わりにここに来たんだ・・・めえ、お腹空いたんだけど、何か食べに行かない?」 「結構よ、・・私はそういう気分じゃないの」 「君がってんじゃないけど、女性って何を望んでるんだ?。・・俺には分からないんだ。・・人は何を望むんだい」 「教えてあげる。・・でも人に言わないって約束して・・」 「ああ、誓うよ」 「神聖な秘密だからね」 「分かった。・・大丈夫」 ホリーは「こっちに来て」と小声でデニースを呼んで、耳元で「何を求めているかは誰にもまったく分からないわ」と言って、ニヤリを笑った。 「ねえ、もし何処か行きたいとか、何かしたいときは、連絡待ってるよ。・・・言っとくけど、俺は今何かを求めていない。・・・俺は誠実に口説いているんだ」 「それはありがたいわ。・・・多分私たち神にそむいて、ヤンキースの試合にいけるわ」 「そうだね」 「俺たち本当に変な友達になるな。・・・自己憐憫、苦痛、ゲロで結びついた。 「そう言うの、良いと思うわ」 「俺もだ」
                                               

ホリーが部屋に居るとクリーニング屋が洗濯物を届けに来た。 受け取った洋服のカバーに”ジャケットに入ってました”とメモ書きのある封筒が貼り付けられていた。
 ”俺の皮ジャンを上げるよ。 君が着ている姿を観るのが好きだった。 他のものはすべて処分するんだ。 その酷いアパートにスペースを作るんだ。 そうするんだ ベイビー  P.S. 愛してる”
 彼が愛用したジャンパーが、他の洗濯物に混ざって届けられた。 ホリーはジェリーの物一切をダンボールに詰めた。 

 ホリーは、ダニエルとデートをした。 ダニエルが言う「君はちょっと異常だと思う。・・・俺をアイルランド飢餓記念館に連れてくるなんて・・しかも、コンビーフサンドだ」 ホリーは「ジェリーが、これが死者を弔う最高の方法だと言ったのよ・・・・彼の話ばかりでごめんなさい」」と言う。 「ちょっとウンザリしているよ」 ホリーは仲の良い老夫婦を見て「まさに本当の純粋な夫婦ね、多分100年前から一緒にいるのよ」と言った。 「俺たちって老いを恐れて悪あがきをしてない。・・相手を殺人に走らせないような、誰かと年を取ることが、どんなに特権なのか、気づいて無いんだ」
 ホリーはsるきながら「お願いがあるんだけど・・・ジェリーの荷物をまとめてるんだけど、終わらなくて・・・彼のこと知らない人に手伝って貰った方が良いかなと思って・・・」 「君がジェリーを捨てるのを喜んで手伝うよ」 「どうしてそんな言い方するのよ」

 ホリーの部屋にダニエルが一緒に来た。 ホリーがそわそわしている。 「どうした?」 「何でもないわ。・・私、ジェリー以外の男性を部屋に入れたことが無いから・・・」 「玄関に居ようか?・・箱を投げてくれれば良いから・・・」 「やめてよ。・・・ごめんなさい。・・・着替えてくる」と言って奥の部屋に入り「荷物見て・・もし、欲しいものがあったら言ってね」と言った。 
 その夜、ホリーはジェリーに抱かれる夢を見た。 ベットの中でホリーは「誰かが前にこうやって、抱いてくれたのに思い出せないわ」と言った。 ジェリーは「もう次の夫を見つけたかい?」と聞いた。 「うるさい・・・どこ行ってたの?・・・最近あなたを身近に感じないわ」 「おいおい、こんなに身近にいるじゃないか」 「抱きしめられてる感じがするわ」 「俺だからさ」 「あなた素敵よ」 

                    
   [ 夏 ]
 ホリーは郵便配達人が、郵便物を箱に入れるのを待ちきれず、箱のそばで待っている。 配達人はホリーには手渡した。
 ホリーはジョンと二人で、郵便物を持って旅行社を訪ねた。 受付の女性に「あなたバーバラさんですか?」と聞いた。 「ええ、ご用件は?」 ホ  リーが差し出した旅行申込書を見て、バーバラは「彼の奥さんね?」と聞いた。 ジョンが「彼rがここに来たの?」と聞くと、バーバラは頷いて涙ぐんだ。 

 ホリーがママの店に来ている。 店の掃除をしているママは「旅行で、休暇を取るなんて、理解できないわ」と言った。 ホリーは「ジェリーが私とシャロンとデニースのために計画してくれていたの」と答えた。 「休暇なんか取ってる場合なの?・・・ダニエルには話したの?・・最近会ってるでしょ」 「単なる友達よママ」 ダニエルは奥で仕事をしていたが、この親子の会話が聞こえていた。 「今まで何も言わなかったけど、もう止めるべきだわ」 「どういう意味?ママ」 「まともじゃないわ・・・ジェリーはこんなことを何時までも出来る訳じゃないのよ。・・彼の人生は終わったの。・・・手紙は永遠には続かないのよ。ちゃんと向き合いなさい。・・」 「これはジェリーからの贈り物なのよ。」
 ママが言った「私の夫は35歳だった、まだ死ぬはずじゃなかった。・・・」 「でも、死んだでしょ」 「ジェリーの死はあなたの人生の一部なの受け入れなきゃ」 「私が受け入れられないような言い種はやめてよ、私は受け入れたわ」 「どうやって・・・死んだ夫からの手紙を待つことで?・・・パパが死んだ時、私は二人の子供の面倒を見てたわ」 「子供がいなくてごめんなさいね」 「そういう意味じゃないわ・・・・あなたのお父さんの死はもっと酷かったのよ。・・・でも私はやるべき事をやってきたの」 「同じじゃないわ」 「なぜ?」 「私の夫は死にたくないのに死んだの」 「そうね、私の夫は自ら望んだわ。・・簡単に死を選択できたのよね」 
 二人はキアラと共に食卓についた。 ママが「一言言わせて」と言ったけど、ホリーは「もう、これ以上何も言わないわ」と言った。 奥で会話を聞いていたダニエルがヤンキースタジアムの入場券二枚を取り出して、破いて捨てて裏口から出て行った。 
 ホリーは一人取り残されたような、突然の孤独感に襲われていた。 仕事も友達も人生も、・・・ジェリーがいない人生なんて、もうどうでもいい。 寂しさを母に向かって、ぶつけるホリーだった。

                                              
 [ アイルランド ]
 ホリーたち親友の3人は、ジェリーが手配してくたアイルランド旅行に出発した。 田舎道を走り、古いが豪華なレンガ造りの一軒の民家の前で車を停めた。 デニースが「素敵だわ」と言った。 シャロンがドアの鍵を開けて中に入った。 室内は綺麗に整理されて、テーブルには花が飾られていた。 シャロンが室内を見回すと、テーブルの上に手紙が置いてあった。 ”Hey Big Mama”  「ホリー・・ホリー! 」シャロンの呼ぶ声で、ホリーは室内に走りこんだ。
 ”やあ、ビッグママ 俺のベイビーは楽しんでるよね。 君とジョンは好きなことをしてくれ、何時でも好きな時に。・・・僕のベイビーにやらせて欲しいことがある。 彼女を釣りに連れて行って欲しい。”  ホリーは「彼ずっと、湖に連れて行きたがってたの」と言って喜んだ。
 ”デニース ホリーを ”ウィーラン” に連れて行ってくれ、俺のお気に入りのパブだ。 素敵な音楽があり、素敵な人々が居る。 そして、デニース 俺のベイビーの友達として、天国に行くんだ。 君のための僕の計画はここまでだ。 何人かイケメンを用意してある。 愛している”
 ホリーは「私には無いのね」と悲しそうな顔をした。 「多分愛してなかったのよ。・・私たちほどには・・」とデニースが言った。

 三人は手紙に指示されていたパブに行った。 デニースが「ちょっと! 見てよ!、」と言うほうを見ると、舞台でギターを弾きながらアイルランド男が歌っている。 デニースは「お土産に彼を買いたいわ」と言う。 演奏を終えた若者が、彼女たちのすぐそばのカウンターに休みに来た。 シャロンがホリーに「どのくらいご無沙汰なの?」と聞いてきた。 「彼とお話しなさいよ」 「えー、だめよ」 「歌聴いたでしょ。・・どれだけ素敵だったかを伝え、喜ばすのよ・・さあ、行って」 「アメリカにはいないタイプよ」 「こんなチャンス無いわよ」 「行って! 私たちのために・・」 押されてホリーは若者のところに行った。 そばまで行くと、若い女性が先に声を掛けたのであわてて引き帰した。 「わたし、未亡人の小母さんなんだもの・・」 「あんなアバズレよりはいいでしょ」 「私たちの言うとおりに死なさい」 「服を脱いでセクシーによ・・・ほら、行って!」 ホリーは「今晩は・・・あなたの音楽が好きだって言いたくて、・・・美しいというか・・あの・・」と声をかけた。 「ありがとう・・えっと・・」 「ホリーよ」 「ウイリアムだ・・・アメリカ人?」 「ええ」 「アイルランドにはどういう訳で・・・」 「休暇よ、・・友達と」 「もう一曲演奏するよ。聞いてくれないか?・・地元の女の子がテーマのアメリカの曲なんだ。・・気に入ってくれると思うよ。・・では、また後で」 ウイリアムはステージに戻った。

 ステージに戻ったウイリアムは「このアメリカの歌をホリーに捧げるよ。・・楽しんでくれ!」と言って、”ゴールウエーガール”を演奏し唄い始めた。
  ♪♪ 俺は古い長い通りを散歩した。 ある日 イーアーイーアー 俺は少女に会い立ち止まった 素敵な日に イーアー 俺は聞いたよ どうしたら良いって だって彼女 黒い髪で青い目だったんだ ・・・♪
 皆が盛り上がる中で、ホーリーが段々悲しそうな顔になってきた。 それは、この曲がジェリーとの運命的な出会いの、想い出の曲だったからだ。 ♪ その瞬間分かった 俺はクルクル廻りたいって ダンスパーティでゴールウエーの少女と ♪ 
  ウイリアムがステージを降りてホリーたちに近づいてきた。 観客は口笛を吹き、嬌声をあげてホリーたちを冷やかした。 ホリーは胸をドキドキさせて彼を待った。 ウイリアムは知らない少女の前で少女に「素敵なジャケットだね」と言った。 「賭けで手に入れたの」 二人は踊った。  ♪ 雨が降ってきた時 そこに行く途中だった ある日 イーアーイーアー 彼女は下町の・・・  ♪♪ 
 「もういいや」と言ってウイリアムは演奏をやめて、その少女を抱きしめ、キスをした。 少女ももウイリアムの首に手を廻して、深くキスを続けた。 嬌声が一段と高まった。 

 ホーリーは堪らず、パブを出た。 ホーリーは「どうして私にこんなつらいことばかり思い出させるの?」と言った。 「分からないけど、彼にはあなたを悲しませるつもりは無いと思うわ」 「じゃあ、どう言うつもりなの?」 「分からないわ」 「さあ、行きましょう。・・家に帰るのよ」 三人は夜道を帰った。

 三人は湖にボートを浮かべて遊んだ。 釣り糸をたらし、シャロンは本を読み、デニースは詰めにマニキュアを塗っている。 デニースが「ウイリアムを探すべきだわ」と言ったが、ホリーは「いいの・・・私、彼に何も言わないで来たの。・・私のことを馬鹿だと思っているわ」と答えた。 シャロンも「彼女にその気が無いなら、いいじゃない」と言った。 さらにシャロンは「記憶が確かなら、長いことセックスして無いと退化して、正確が悪くなるそうよ」と言った。 ホリーは「とにかくジェリーにはむかついてるわ」と言い、デニースは「いつかは彼の影を追うのを辞めないと・・」答えた。  その時、釣り竿の鈴が鳴り、竿が大きく引き込まれた。 「竿を持って!」 「かかった!」 「魚よ!」 みんなが立ち上がって騒ぐので、ボートが大きく左右に揺れた。 デニースがひっくり返って救命具が膨らんだ。 残る二人もボートの中にひっくり返って、三人で大笑いをした。 気がつきとオールが流されて遠くにあった。 「最悪!」 三人は声を限りに「助けて!」と叫んだ。 デニースが「誰か泳いで岸まで行ったほうが良いんじゃない。・・・」と言うと、シャロンが「すでに救命具が膨らんでいる人がいいんじゃない」と言った。 デニースはシャロンの救命具のヒモを引いて膨らませた。 「そら泳ぎなさいよ。・・あなた泳げるでしょ」 「その必要が有るかしら」 ホリーが「喧嘩はやめて子供みたいよ」と言ったので、デニースはホリーの救命具もヒモを引いて膨らませてしまった。 「いつかは岸に流れ着くわ」 「何時になるか分からないわよ」 シャロンが「9ヶ月以上過から無きゃいいわよ。・・で、ないと一人増えちゃうから」と言った。 ホリーが「どういう意味?」と聞くと、「戻るまで何も言わないつもりだったの・・・赤ちゃんがいるの」と妊娠をばらしちゃった。 デニースが「何時?・・」と聞いた。 「3月よ」 「良かった、私の結婚式に間に合うわ」 「何ですって?・・」 「結婚するの、トムに申し込まれて承諾したわ。・・・で、大晦日に結婚するの」とデニースも結婚をばらしてしまった。 「戻るまで仕舞って置いた方が良かったわね。・・・あなたのための旅行だし・・」 「いいの・・でも、ほら、ここで死んだら、未婚女性死亡って書かれるのも嫌だもの」 日暮れ前にウイリアムの乗ったボートが救助に来てくれた。

                                           

 部屋にウイリアムを呼んで、四人での夕食が始まった。 ウイリアムは「誰が料理を?・・・」と聞いた。 デニースが「皆でよ」と答えた。 デニースの結婚と、シャロンの妊娠を聞いてウイリアムすは「おめでとう」と言った。さらに「料理が美味しくて、気を取られている間にこんなに暗くなってしまった」と言った。  シャロンとデニースは影から、ホリーにもっとけしかける様に手で合図を送っている。 「湖で働いているの?」 「週に2回パトロールを・・でも、人名救助は初めてだよ」 デニースが「こんなに遅く返すなんて気が引けるわ」と言い、シャロンが「外は雨だし・・朝までゆっくりしていって・・・そうだ、ベットになる折りたたみのソファーがあるわ」と言った。 ウイリアムが「シャワーを浴びたいな」と言い、シャロンが「そうするといいわ、1階に有るの・・バスタオルもって来るわ」と言って取りに行った。 ホリーはデニースに「ちょっと、気でも狂ったの?」と言うが、デニースは「彼、一晩中居るんですって」と言って喜んだ。 

 ホリーが1階で、ソファーに毛布などを運んでいると、バスルームのドアが開きっぱなしになっていて、裸身のウイリアムが、後ろ向きで身体を拭いているのが見えた。 ウイリアムが気づいて「おう、ごめん。・・2階に居ると思って・・」と言って隠れた。 服を着ながらウイリアムがやって来る。 
 ホリーは「何か飲む?」と聞いた。 ウイリアムは「綺麗だよ」と言ってホリーのそばに来た。 「前にそう言われたけど、”ガキとはデートできない”って断ったの」 「そりゃあ、僕にとってラッキーだったね」 「乾杯!」 二人はグラスを合わせた。 口の中にウイスキーを一杯含んだままでホリーはウイリアムにすがり付いてキスをした。 「ごめんなさい・・・やっぱりダメだわ。・・・私を見て・・震えてるの。・・・どうやってすればいいか。・・したかったのかどうかも分からないの。・・・気にしないで、混乱してたの」 「問題なら任せといて・・・」 「格好良い問題じゃないの。・・精神病患者みたいな問題なのよ。・・・私、笑顔を無くしたの10年以上恋をして無いのよ。・・・彼は夫だったのでも、死んだわ」 ホリーは後ずさりし、ウイリアムはドンドン前に出る。 「こんな感じで彼にキスしてたんだね。驚きはしないよ」 ウイリアムが唇を近づける。 ホリーは両手でウイリアムを抱いてキスを受けた。 「だめよ。・・そう言う訳には行かないわ。・・・何ていうか、欲しかった靴を試着したら、フィットしなかったっていうか」 「ごめんなさい。・・・じゃあ、しばらく裸足で居るってのはどう?」 こう言ってウイリアムは静かにキスを求めた。 ホリーも彼の首に手を廻してこれに答えた。 ウイリアムはホリーを抱き上げて、ベットに運んだ。

 ベットの中でウイリアムがホリーを抱きながら言う「君が生きて行くのを責める奴はいないよ」 「あなた本当に可愛いわ」 「無くなった旦那さんは良い奴だったんだ」 「ええ、とても素敵だったわ。・・・ウイリアム。明日の朝、エニスキレンまで乗せていってくれない?」 「いいよ。そこで友達に会うの?」 「家族みたいなものよ。・・・義理の両親なの、会わなきゃ」 「多分知ってる人だ。・・名前は?」 「ケネディ家よ」 「ローズとマーティンじゃない?」 「ええ、知ってるの?」 しばらく躊躇してウイリアムが言った「あなたは、ジェリーのホリーじゃない?」 「何?」 「あの日のパブの女の子だ・・・俺はジェリーのバンドに居たんだ。」 「ビリーじゃない?・・ギャラガー?」 「そいつだ」 ホリーは飛び起きた。 「それは、問題ない。・・大丈夫だ俺とジェリーは何でも共有していた」 「まあ」 「違う、違う!・・そう言う意味じゃない。・・つまり彼なら問題ないって言うか、もう彼には出来ないんだし・・ほりー・・ここに来て。・・ベットに戻って、話をしよう。・・・彼が亡くなったって聞いたよ。・・・腫瘍だっけ?。・・・ジェリーと俺はずっと会ってなかったし、親友にそんなことがあったら悲しく無いかい?。・・・あいつは良い奴だった。・・・しょうがないよ。俺とジェリーの話は一杯有るんだ。・・・さあ、楽にして・・・」  ウイリアムはホリーをまた布団の中に入らせて、そっと抱いて話を続けた。 「あいつは俺のかけがえの無い親友だったんだ。・・・何時だったかは覚えて無いけど、多分10歳か11歳のこと、・・・」

 翌朝、ホリーは一人で、湖のほとりに建つ民家を訪ねた。 義母のローズが暖かく迎えてくれた。 「荷物を受け取ったわ・・・どうぞ入って」 奥の部屋でピアノを弾いている老人に向かって「マーティン・・・誰だか見て」と言った。 老人はピアノの手を止めて振り向き、「わお、驚いた・・・こっちにおいで・・・会いたかったよ」と言って抱きしめてくれた。 
 義父は手紙を出して「あいつには文才があっただろ?・・・プロになるべきだったな」と言った。 義母が「違うわ・・・愛の為せる技よ」と言った。 義母は「さて、何処だっけ、」と言って手紙を読み直し、「そう、ここだわ」と言って、ホリーに読んでくれた。
  ”ホリーが着たら、裏庭の砦に連れて行って、この封筒を渡してくれ”  ホリーは「彼、私がここに来ることを知ってたの?」と聞いた。 「そうかもね・・マーティン」とローズが言った。 義父が手紙を渡してくれた。 「本当の砦じゃないのよ。 ただの石垣よ。・・・彼は小さい時からそう呼んでいたの」と義母は言った。さらに「ところで彼、最後は元気なかったんじゃない?」と言い、義父は「彼を看取れなかったことを考えると気分が悪い。・・葬式もだ」と言った。 「あら、あなた、術後で歩けなかったんじゃない」 「君はもっと、ここに顔を出すべきだったんじゃ。・・・死んだから来たのか?」 「マーティン・・そんなこと言わないの、あなたにそんな義務は無いわよ。・・血はつながって無いんだし」 ホリーは「顔を出したかったわ。・・・今まで来れなくてごめんなさい。・・・ジェリーを連れ去って怒ってると思って」と謝った。 「こいつ、君が死んでくれたらって」 「マーティン、辞めなさい!」 「いいえ、無理も無いわ。・・・私の母もそういう思い捨て切れないし」 「そうね、・・でも、あなた達若すぎたわ。・・そして、あまりにも早すぎた。・・・でも、ジェリーはあなたを愛した。それは分かったわ」 義父も「それは分かった」と言って微笑んだ。

         

 ホリーは一人で手紙を持って裏庭の砦に向かった。 見晴らしの良い高台に石垣の残骸がある場所だった。  
  ”俺の故郷の女の子へ   故郷で見る君は天使だ。 ママは、君の本質を嫌ってはいないって言っただろ。 君は今、僕が大きな決断をしてきた砦に立っている。 君に初めて会った後、君の事を考えたのも此処なんだ。・・・最初現実とは思えなかった。・・・あんなにカラフルな格好の女の子は始めて見たから・・・でも、君はあそこに溶け込んで見えたよ。 君とあのすべての色が・・・。 最初の言葉を覚えてる?”

 あたり一面が緑の草原で、お花畑のようなピンクの花が咲いた高原の田舎道に、まだ若いホリーが、あでやかな花柄のスカートを風になびかせて立っている。 ジェリーが近づくと彼女が「道に迷ったの」と言った。
  ”俺には、迷子には見えなかったぜ。” 
  ジェリーが聞いた「で、ここで、何を探してるの?」 「ウイックロー山脈国立公園?」 「ウイックロー山脈国立公園か、・・・で、何時間歩いているの?」 「数時間」 「ってことは、何時間も国立公園の中を歩いてたんだね」 「あら、いやだ。・・・ここが公園なの?・・・おう、寒いわ。・・新聞には暖かいって書いてあったのに」 「暖かいよ。・・・迷子だといっても、アイルランドに居るってことは分かってるよね」 「引き返すわ」 「何処に?」とジェリーが聞いた。 「ドンラオゴへりーのB&Bに・・」 「ドンラオゴへリー?・・・それ、ダンレアリーのことだね。」 「冗談でしょ?」 「冗談じゃないよ」 「分かったわ・・ありがとう」 ホリーが歩き始めると「どう致しまして、・・・でも、そっちじゃないよ」と言って、彼が反対の道を指差した。 「こっちなの?」 「君は迷子を楽しんでると思うんだけど」 「本当はそんなに気にして無いわ」 「どうして此処にきたの?」 「旅行してて、家に帰るところよ。・・ギリシャを出て、・・」 「そりゃあ、長い旅だ。・・何の勉強をしてるんだ?」 「美術よ」 「美術?」 「芸術家になるのか?」 「まだ、分からないわ・・」 「すばらしい!・・・何か作ったりするのか?」 「まだ、分からないわ」 「上手くいくようにと、祈ってるよ」

 ホリーが歩くと、ジェリーも一緒に歩く。 ジェリーは「方向が同じなんだ、一緒に歩かない?。」と言った。 さらに「おれはこっちを歩くから、会話は無くてもいいよ、ただ、黙って誰かと歩くのも素敵じゃない?」と言って、道の端を歩いた。 二人は何処までも続く道を歩いた。 
  ”無言でいることは永くは続かず、ついに君を黙らせることが出来なくなった。 ウイリアム・ブレークや壮大な計画を語る君は可愛かった。 君の話に俺は意見は無かったんだけど、 君の話し方を愛さずには居られなかった。” 
 ホリーが「私の使命は創造だ。・・・さもなければ他人に囚われる。・・・私は判断や比較はしない・・・私の仕事は創造だ・・・」と、詩人のように語った。 ジェリーが「それ、君が作ったの?」と聞くと、「違うわ、ウイリアム・ブレークよ・・でも、あやふやだわ」とホリーは言って笑った。 ホリーは「それは、芸術品でもタコスでも靴下でもいいの。・・何か新しいものを創造して実現するの。・・・そして、外の世界に飛び出すの。・・・見て、聞いて、読んで感じるの・・・人よりホンのちょっとだけ多く、自分を理解するの・・・理解できた?」と聞いた。
  ”まさにあの時、ここで君を愛した” 
 「ねえ、このジャケット好きだわ」 ホリーは先ほど彼から借りたジャケットを誉めた。 「賭けで手に入れたんだ」 「何の賭け?」 「友達がね、挑発なしで女の子からキスしてもらえるわけが無いって言うんだ」 「どんな女の子?」 「奴の彼女さ」 「どうやったの?」 「何もしないさ・・・ほんとうだよ・・・以心伝心が必要なんだ。・・・君が出してるサインみたいなものさ。・・・その子がそれをキャッチするだけさ」 「どうだったの?」 「彼女とのキスは、俺の知る限り人生で最高だった」 「それって、あなたがキスするすべての子に言えるの?」 「俺が幸運にもキスすることが出来たすべての女の子が、人生で最高だってさ」 「じゃあ、今は?・」 「彼女こそ、まさにその人だと思った時にだけサインを送ってるよ」 

 ホリーは、彼を受け入れようとしている自分の気持ちを振り切り「今居るところは分かるわ。・・ありがとう。・・会えて本当に良かった」と言って一人で歩き出した。 「いや、街まで送るよ」 「いえ、いいのよ。行き方も分かるわ。・・このことは決して忘れないわ」 ホリーは数歩、歩いてから、ジャケットを借りている事に気がついた。 脱いでいると犬が鳴き声を上げて駆けてきた。 ジェリーは「待って!・・動かないで!・・」と言って、ホリーの身体を掴んだ。 「ああ、あれは野生の犬だ・・」 「何ですって!」 「ジットして・・・」 「分かった」 「くっついて、まるで一人のように・・もし。別々になったら奴は噛み付いてくる」 ジェリーはホリーを背後から抱きしめた。 「じっとして、ほら匂いを嗅がせてあげて・・」 犬には”僕の名まえはブロディ”と書いた札がクビにぶら下っていた。 ホリーはやっと気がついた。 「本当に恐いわ。・・腕を回わしてくれない?」  「いいよ」 「彼を恐がらせないで向き合うことできると思う?」 「もちろん・・・でも、ゆっくりだぜ」 ホリーはジェリーと向き合うとすぐに、彼の唇にキスをした」 「ごめんなさい・・・久しぶりだったから・・・男は居たんだけど、あまりしなかったから・・・」 「多分私だからだね・・いや、男がキスのことをあまり知らなかったのさ・・・大丈夫、男の役目さ」 ジェリーは、ホリーのアゴを右手で軽く押し上げて、静かに唇を重ねた。 ジェリーが「完璧よ・・・完璧なファーストキスよ」と言うと、ジェリーは「今のは2度目だよ・・・これは3度目」と言ってまたキスをした。

 二人が抱き合っているそばを男が通りながら「ブロデイ、来い!・・」と、二人の足元に居る犬を呼んだ。 ホリーは慌ててキスを辞め男を見た。 「やあ、ジェリー・・」と男は気さくに声をかけ、ジェリーも「ああ、ジェフ・・・調子はどう?」と挨拶した。 ホリーはもう立ち去ろうとしていた。 「おい、・・どこに行く?」 「だめ!・・そこに居て・・」 「それ・・俺のジャケット・・」 「また会う時まで私が持ってるわ」 「また会うほうに賭けるよ」 「それじゃあ、あなたの勝ちだわ・・だって、また私たちが会ったら、その時が終わりよ」 「何の終わりさ・・」 「知ってのとおり命よ」 「おい、俺はパブで歌ってるんだ」 「だめよ、言わないで・・・もし、偶然正しい街の、正しいところを歩いていれば、再会出来るはずでしょ。・・もし、会えなかったら、二人の見知らぬ人が、完璧なキスをしたってだけの事、・・二人は残りの人生それを覚えているの」 「名まえは?」 「ダメ、ダメ!・・待って、来ないで・・駄目よ」 ホリーは後を振り返ることなく、走っていった。 
  ”知っての通り、人生は変わった。・・そして今、また変わった。 君が俺を覚えているか?・・・それは心配していない。・・アレは君が忘れている、あの道で出合った少女さ”

 ”私の仕事は創造すること、 人がどうするかは関係ない。”・・・「君がそう言ったんだ、覚えているかい?」 ホリーは、ジェリーの元へ訪ねて行った。

 ”さあ、家に帰って探すんだ。・・君が他の人とは違うってものを・・俺が助けるから。・・サインを探して・・” 
 ホリーはアイルランドの旅行から帰ってきた。 電話が架かってくるが一切出る期になれない。 「ママよ、シャロンがあなたが家に居るって・・・どこに居るの?・・・電話して・・・」 「どうしたの?・・誰もあなたにあって無いって・・」 「電話してこないって、信じられない・・」 「私結婚するのよ?・・どこに居るの・・・電話に出なさいよ」 「彼の死は、あなたの人生の一部に過ぎないの」

                                      
  [ 3週間後 ]
 ホリーは部屋でDVDを見ていて、女優が履いている靴が目に留まった。 すぐに巻き戻して「素敵な靴だわ」と独り言を言った。 その時電話が鳴って、伝言に切り替わった「このメッセージをホリー・ケネディに伝えて・・・彼女の友達のデニースは12月31日に結婚するの。・・あなたは招待しないは・・・分かった?」 ホリーは電話機めがけて、スリッパを投げた。 スリッパはジェリーとホリーが笑顔で映っている写真立てに当たった。 急いで倒れた写真をを直し、足元を見ると、自分の靴の甲の部分に、ズボン吊りの金具が乗っていた。 この金具はいつか家具の影で見つけて、写真の前に置いたものだった。 靴が見違えるように素敵になった。 ホリーは自分の靴を取り出して並べ、創造し、次々とデッサンをした。

  [ 秋 ]
 ホリーは靴のデザイン教室で、新しく創造した靴の試作をしている。
 「これ見てよ、もう少しきつめにしてくれないかしら?・・」 「分かりました。・・おっしゃるとおりに・・」 デニースが、ウエディング・ドレスの仮縫いをしている。 「あまり胸を強調したくないとおっしゃっていたので・・」 「ええ、そうよ、でも、私の胸は美しくて、ハリがあるから勝手に動いちゃうのよ・・少しだけ詰めてくれない」 気がつくと、そばにホリーが立っている。 ホリーが「美しいわ・・」と言った。 デニースは「まあ、助けは要らなさそうね」と言い、「これで12着目の試着なの」と言った。 「ごめん」 「あなたに付添い人して欲しかったの。・・でも、もちろん返事は無かったわ。・・・シャロンは、もう生まれそうだしで・・トムの51歳のお姉さんに頼んだわ。私のことを嫌っている人だけど・・・すべては親友が、私が幸せになるのを応援できなかったからなのよ。・・でもなぜ?・・どうして?・・それは、私たちの人生は動いていて、あなたはもう注目の的ではなかったからなの?・・・」 「そうよ」 「本当に?・・・」 「最悪ね・・・本当に申し訳ないわ」 「そんな・・ごめんなさい」 「いいえ、私が悪いの・・」 「あなたは正しい・・私の間違えよ」 「私は最悪よ・・私が馬鹿だった!・・」 二人は抱き合って泣き、再会を喜んだ。 
「あのね、まだ遅くないの。・・シャロンと、花嫁介添え人やって」 「いいわ」 「お願いね」 ホリーは「お願いがあるの」と、改めてデニースに言った。 「ウエディング・シューズを作らせて」 「私の靴を?・・どうしたの?」 ホリーは靴のデザイン画帳を見せた。 「まあすごい!、・・豪華じゃない!」 「授業を取ってるんだけど、突然思いついたの・・全部クチュールよ、世界であなただけが履くの」 「素敵!・・・まるで芸術品みたい。・・ゴージャスだわ!、誰かに見せないと」

 ホリーはダニエルを誘ってレストランで食事をしている。 ホリーが「靴は元々好きだったけど、まさか自分で作るなんて・・それをしようと思ったとき、真っ先にあなたに言おうと思ったの・・」 「君は素晴らしいよ」 「ありがとう・・・話題を変えましょ・・・元気?」 「ああ、快調だよ・・・今、実現できそうな、ビジネスのことを考えてるんだ。・・いつも君のこと考えている」 「だってあなたは、ずっと親友じゃない」 「俺の裸のこと考えたこと無い?」 「無いわ、ジェリー」 「ダニエルだ・・俺はダニエルだ」 「ごめん」 「君は誰かにジェリーの姿をを重ねているんだ・・・俺は本当に君が好きだ。・・でも、透明人間にはなれない。・・・もう、君を支えるのに疲れた。・・・俺は君が必要とする、別の身体のなりたいんだ。・・・俺は悪い奴になりたい。女をメロメロにして、彼女が他のすべての男を破滅させるまで使い尽くす」 「うそでしょ?」 「ああ、ウソだよ!・・でも、本当に男が好きな女とデートをしたい。・・・俺は誰かのジェリーになりたいんだ。・・・今夜は、君がぐっと来るようなデートが出来なかった・・・正直言って、君のせいじゃない。僕のせいだ。・・すまないと思う」 ダニエルは席を立って帰ってしまった。

 ホリーのママが窓の外を見ると、店の前にホリーが近づくのが見えた。 パトリシアはカウンターの中で働いている男に休憩をさせた。 「ママ!」 「どうしたの?」 ホリーは店に走りこみ、泣いてママに抱きついた。 「何があったの?」 「パパが死んだ時、私は14歳で、こう言ったわ ”その通りよ、もう二度と誰も”・・・そしてジェリーに会った。・・・この素敵な人に出会って、・・・それから、・・それから彼は死んだの!」泣きながらホリーが話す。 「分かってるわ。ハニー」 「誰かを殺しちゃうかも知れないくらい、腹が立ってるの。・・・私は一人よ。・・・私の仕事はどうでもいいの。・・どんな仕事をしているか?・・どんな友達が居るのか・彼氏は居ないのか?・・私は存在しないの・・何があってもママは一人だわ」 「そうよ」 「ママからいかにもの返事を聞きに来たんじゃないの。・・なぜ、ウソをつけなかったの?」 「ごめんなさい。ハニー」 パトリシアは優しくホリーを抱いてやった。 ホリーは声を上げて泣いた。 

 二人は公園に散歩に出かけた。 パトリシアが歩きながら話す。「パパと良く此処に着たわ。・・二人はダンスをしてた。・・実際はダンスじゃないけど、ラジオとタバコを持って、ビールを飲んで、そしてジミヘンを聞いてた。・・・人が一杯居る部屋に入るのって、辛かったでしょ。・・・そうよね、分かってるわ。・・彼が見つけてくれるとか、あなたの手に触れるとか、あなたが冗談を言うとかするまで、部屋に入る気分じゃないわ。・・ただ、彼と居るのよって誰かに知らせたいのよ。・・・あなたは彼の一部なの。・・・あらいやだ、あの人が私を笑わせるわ」 パトリシアが思い出し笑いをした。 「パパ?・・ママが笑ってるの記憶に無いわ」 「そう、・・それは悲しいわ。・・だってそうだったもんね」 
 ホリーが聞いた「パパを思い出すから、ジェリーを嫌ったの?」 パトリシアが答える「ちょっとね。・・・親にとって子供を失う次に辛いことって判る?。・・子供が自分と同じ人生を歩んでるのを見ながら、それを止められない事よ。・・・酷いわ、どうしょうもない気持ちなの、・・・いつも怒らせてたわね。・・そして、私も怒ってた。・・・とても長い時間。・・・疲れたわ」 「また、パパに会えるって思う?」 「いいや・・・決して・・待つのは辞めなさい」 パトリシアは、ポケットから”ホリーへ”と書かれた手紙を取り出した。 そっとホリーに手渡す。 「ママだったの?・・・」 パトリシアは安堵したようにニコッとして、横を向いた。そして、静かに話しだした 「彼から聞いたとき、正直言って感動したわ。・・彼がどうやって計画したのか?・・・すべての配達計画や、郵便受けの鍵とか、・・・アパートから皮ジャンを持ち出すのとかは苦労したわ。 、・・彼と約束したの。嫌だとはいえなかった。・・・あなたにとって良い事だとは思わないって言ったわ。でも、ノーって言えなかったの。・・・それが、最後の1通よ。・・一人で居るのしても、そうでないにしても、あなたは前に進まなきゃ。・・・忘れないで、人は独りだとしても、だからみんな一緒に居るの。・・・度々その言葉に助けられたわ」 ママはホリーを残して帰って行った。  ホリーは手紙を開いた。 

                                                    
 [ 冬 ]
 ホリーは独りで部屋に居る。 電話にメッセージが吹き込まれている。 「やあ、ダニエルだ、・・レストランで言ったこと覚えてる?・・全部忘れてくれ、・・・新しいヤンキースタジアムが完成しただろ。 俺は何でこんなこと言ってるんだ。・・俺は世間話は嫌いだ。 俺は・・止めとこう・・・止めとくよ。」 それだけで電話は切れた。  「ジェリー?」

 ホリーはダニエルと誰も居ないヤンキースタジアムに来た。 ダニエルが「叔父さんに頼めば、いつでもは入れるんだ。・・・ライトも点けてくれた」と言った。 「凄いわ」 スタジアムの観客席で、ホリーはポケットから手紙を出して、ダニエルに見せた。 「いいのか?」 「良いわ」
 ” 親愛なるホリー あまり時間が無い。 文字通りの意味じゃない。 つまり、君はアイスを買いに行ってすぐ戻る。・・・でも、これが最後の手紙になる気がするんだ。 なぜって、君に言い残したことが一つだけある。 覚えててとか、ランプを買ってとかじゃない、君は僕の助けなしに自分のことが出来る。 君にどれだけ感動したか、 どれだけ僕を変えたか。 君は愛で、僕を男にしてくれた。 ホリー そのことを、永遠に感謝する。  もし、約束してくれるなら、君が悲しい時や、確信が無いときや、自身を喪失した時、僕になったつもりになってみてもしい。  妻になってくれてありがとう。 俺は後悔しない男だぜ。 俺は何て幸せなんだ。 君は俺に人生を呉れた。 でも僕は君の人生の一部に過ぎない。 もっと有るんだ、約束する。 デカイのが来るぞ、また、恋することを恐れないで ・・   P.S. 何時も愛してる ”

 ダニエルはホリーに手紙を返しながら「考えたことがあるか?・・・私のことを?」と聞いた。 「あなたは?・・・」 「あるさ」 二人は野球場のダックアウトの上でキスし、抱き合った。  急にダニエルが「何か、無理じゃないか?」と言って手を離した。 「とんでもないわ 何で?・・」 「妹とキスしているみたいだ。」 「ほっとしたわ。・・・この手紙を貰って、彼の自己犠牲を感じたわ。・・でも、彼はまったくいい加減だわ。・・もし、そうなら、何かのサインだわ」 「サインは嫌だ」 「なら、録音しておくわ。・・・奇妙で酷い友人ね」 「永遠にね・・」 ホリーはダニエルの胸に、顔を伏せて泣いた。
「どうした?」 「ジェリーよ・・・もう1年なの・・もう彼の気配は感じないの。・・・彼が居るなんて思わないわ。・・・ジェリーは行ったんだわ。・・彼は本当に行ったのよ」 二人はそのままずっと抱き合った。

 シャロンには子供が生まれた。 デニースの結婚式も終わった。

 ” 親愛なるジェリー あなたは私に また恋に落ちて欲しいの? 何時かきっとそうなるって  でも周りには色んな愛があるわ 私の唯一の人生 それは素晴らしくて 酷くて 短くて 終わりが無いの 私には計画性も無いの ママの笑顔を取り戻すこと意外は ママは海外を見たこと無いから アイルランドには行ったことが無いから 私たちが出会った場所に連れて行くの 多分ママは分かってくれるわ ” 

 ホリーは母のパトリシアを連れて、車でアイルランドのジェリーの生家、ケネデー家にやって来た。 パトリシアは何処までも続く草原の美しさに見とれた。  家の家畜舎の前で、酒場で歌手をしていたウイリアムに出会った。 「こんにちは・・・戻ってきたの?・・・どのくらい居るの?」 「さあ・・」 「ああ、・・私のママ、パトリシアよ」 「やあ・・俺の親父、パッツイだ」 パトリシアはパッツイの顔を見て、持って来た土産物を落とした。 「大事なもの落としたよ」と言ってパッツイが拾ってくれた。 そして、「こんなところで落としちゃ駄目だよ・・あなたみたいに可愛いと仲間が誤解するよ」と言って笑った。 ママは、声を立てて笑った。  ウイリアムが「また、後で・・・」と言った。

 ” あなたがどうやったか知らないけど、私を死から救ってくれたわ。・・・また、書くわ。  P,S. 何だと思う?・・・” 

 ホリーとパトリシアは、義父、義母の住む家に向かった。    

                        終わり 

              
         

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