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自転車につかまり、歩きながら読み始めていた、真夏の夢の迷路、『忍者月影抄』。
『忍法帖シリーズ』 山田風太郎の私設ファンコーナー6です。.
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んで、6回目の今回は、
角川文庫 340円 300p 表紙:佐伯俊男 解説:中島河太郎
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『忍者月影抄』を読みながら、迷路にまよいこんだオレ。とんでもなく暑い中学2年の夏休み。
5km離れた町の図書館で『忍者月影抄』を借りたオレは、自転車につかまり、歩きながら読み
始めていた。
ジト〜〜、ヌメ〜〜、ドロ〜〜、ハアハアハア、ああどうしよどうしよ、やめられないとまらない、
オレのオレがオレにオレをオレへオレもオレとオレはスケベだぁ……。
第1章「忍法『肌文字』」、第2章「忍法『蝋涙鬼』」、第3章「忍法『髪飛脚』」と読み進んで、ふと
気づいた、コレハヤバイ。自転車につかまり、歩きながら本を読んでるあやしい中学生……。
「ココハドコ?アタシハダレ?……救いようのないバカかも知んないなぁ、オレって」
5kmの道のりは遠かったが、無事に家にたどりつくと、第4章「忍法『埋葬虫(しでむし)』」にむしゃ
ぶりついていた。
……サガシモノハナンデスカ?見ツケニクイモノデスカ?ユメの中へ、夢の中へ、行ってみた
いと思いませんか?うっふっふぅ、うっふっふぅ、さっあー……(相変わらず音痴だねぇ、え?歌が
聞こえた?)
……あのころ、オレはシアワセだったんだなぁ。
自転車につかまり、歩きながら読み始めていた、真夏の夢の迷路、『忍者月影抄』。
公儀御庭番の伊賀忍者7人vs尾張御土居下組の甲賀忍者7人。
オレの大好きな奇想天外忍法対決、スケベで残虐だが死んでも使命を果たす忍者たち。
江戸柳生vs尾張柳生、柳生新陰流「月影」、秘太刀「浦波」、魔剣「浮舟」……。
『忍者月影抄』の合わせ鏡の迷路をさまよっていたオレ、真夏の迷路に夢のかけらをおき忘れ
てきたような……。
な〜んちゃってね、つまり、『忍者月影抄』はシュールでおもしろいのだよ、むはははは。
夢に忍び込む忍法「夢若衆」vs鏡の中に引きずり込む忍法「鏡地獄」だもんね、たまりまへん。
まるで『不思議の国のアリス』vs『鏡の国のアリス』だよ。(←読んでない人はゼヒ読んでね。)
忍法「夢若衆」vs忍法「鏡地獄」、夢の迷路のど真ん中。
将軍吉宗vs尾張中納言宗春。
質素倹約vs豪華絢爛。
江戸柳生vs尾張柳生。
新陰流「月影」vs「浦波」、「碇(いかり)がかり」vs「虎の一足」……。
伊賀忍法vs甲賀忍法。
虫vs蝶、花粉vs琴糸、氷vs火、鏡vs夢……。
割れた鏡の中の果てしない忍法対決。
オレの一番好きな忍法「鏡地獄」。
迷路から帰れない、夢の途中、
『忍者月影抄』
***
(
注:*は手裏剣のつもり
(^ ^; )
(これがいわゆる、”少年摩羅人アルク・コーガン”の
『失笑・スピロヘータネッチョリ目線:流し目波状攻撃』part5
っつーこと? あ、ごくろうさんpart5)
『忍者月影抄』を読む前に、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を読みたまえ、
小林少年君、むはははは。
ps.『忍者月影抄』は今では入手困難です。あちこちの古本屋で気長に探してください。
最近、ボクはその方法で、『信玄忍法帖』と同じ200円で手に入れたのです、むふふふふ。
◆オレのオモシロ度(初読)=★★★★★ (★5つが最高。)
◇ボクのオモシロ度(再読)=☆☆☆☆☆
2003.10.12.(また読者が減っちゃったかな)
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***** ボクの「忍者月影抄」データ ***** .
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(注:*は手裏剣のつもり
(^ ^; )
えー、これはボクの個人的趣味です。
忍法名とか脇役陣とか時代とかをExcelで並べ替えして遊ぼっかな、っつーつもり。
今回はうれしくって、大はしゃぎ。まず目次を見てくださいよ、アアタ。
目 次
忍法「肌文字」
忍法「蝋涙鬼」
忍法「髪飛脚」
忍法「埋葬虫」
忍法「女人花」
忍法「波千鳥」
忍法「足八本」
忍法「銅拍子」
忍法「夢若衆」
忍法「鏡地獄」
ね、目次が全部忍法名で、全部三文字ですよ、アアタ。くぅ、シビレまっせ、たまりまへん。
おまけに、
尾張柳生の剣士が柳生新陰流「月影」を使うんですよ、アアタ。
(これが『忍者月影抄』のタイトルの由来かもね)
魔剣「浮舟」を使うんですよ。「疾風(はやて)」「虎の一足」「浮雲足(ふうんそく)」を使うんですよ、
アアタ。
江戸柳生の剣士も柳生新陰流秘太刀「浦波」を使うんですよ、アアタ。
「牛角(うしづの)」「碇(いかり)がかり」を使うんですよ。秘剣「甲(かぶと)割り」を使うんですよ、アアタ。
のちの大傑作『柳生忍法帖』『魔界転生』が書けるわけですね、風太郎先生。
「ボクの『忍法帖』データ」ごっこをやってて、こんなに興奮するとは思いませんでしたね。
忍法帖第5作目
初連載誌:講談倶楽部1961年6月号〜62年3月号
(山田風太郎39歳:執筆時)
時代設定:享保17(1732)年初夏〜秋
登場人物
伊賀鍔隠れ谷(つばがくれだに)の伊賀忍者。公儀御庭番。
@砂子 蔦十郎(すなご つたじゅうろう):忍法薄氷(うすらい)(ドライアイスのように強烈
な冷気で肉体に触れたものを凍らせる。)
:忍法波千鳥(なみちどり)
(足裏の水を瞬間に凍らせ、その氷の上を千鳥のように自在に歩く。)
A城ガ沢 陣内(じょうがさわ じんない):忍法銅拍子(どびょうし)
(シンバルのような銅拍子を操り、相手を切り倒す。)
B百沢 志摩(ももざわ しま):忍法髪飛脚(かみびきゃく)(女の陰毛約2千本をつない
で糸電話のように遠くの仲間に話し声を伝える。)
:忍法名不明(ふめい)(重量のない人間のように沼の蓮の上を沈まずに歩く。
忍法浮寝鳥<忍法忠臣蔵>と同じ。)
:忍法名不明(ふめい)(全身の骨を軟骨化させて二斗樽や千両箱の中に隠
れる。)
C一ノ目 孤雁(いちのめ こがん):忍法埋葬虫(しでむし)(閉じた左目で飼っているシ
デムシを操り相手を襲い、生きながら腐らせる。)
D真壁 右京(まかべ うきょう):忍法女人花(にょにんばな)(性交した女の女陰に赤い
花を咲かせ、その花粉を吸った男女は結ばれ死ぬ。そしてその女陰から
また赤い花が咲き、その花粉を吸った男女は……。)
E七溝 呂兵衛(ななみぞ ろへえ):忍法足三本(あしさんぼん)(はらわたを肛門から出
し自在に操る。)
:忍法足八本(あしはっぽん)(みずからの足をくうといわれるタコのように、鉄の
手枷(かせ)をはめられた腕を口でかみ切って逃げる。)
F樺 伯典(かんば はくてん):忍法鏡地獄(かがみじごく)(雨や水や鏡を使い相手を幻
惑する。更に鏡の中に消えてしまう。)
:忍法名不明(ふめい)(相手の顔の皮をはぎ他の人の顔に貼り付けると決して
はがれない。)
甲賀卍谷の甲賀忍者。尾張御土居下組(おわりおどいしたぐみ)。
@水無瀬 竜斎(みなせ りゅうさい):忍法蝋涙鬼(ろうるいき)(皮膚や血管が、膠のごとく
相手の皮膚や血管ととけあって、全身の血とともに魂と術を入れ替える。また
一瞬に、全身を蝋涙のように変化させて、刃の走りぬけたあとも残さず、怪我
もしない。)
:忍法肌文字(はだもじ)(相手の皮膚に血で書いた文字が決して消えない。)
A不破 梵天丸(ふわ ぼんてんまる):忍法赤不動(あかふどう)(一瞬に触れたものを炎と
変える。)
B御堂 雪千代(みどう ゆきちよ):忍法万華蝶(まんげちょう)(花びらを五色の蝶の群れ
に変身させ自在に操り相手の顔面を襲う。)
:忍法名不明(ふめい)(ふたつの足裏を合掌させ錐のように回し砂地の中に足
から全身を沈ませる。)
C木曾ノ 碧翁(きその へきおう):忍法名不明(ふめい)(鉤(かぎ)のついた数十の琴糸を
自在に操る。)
D山城 十太夫(やましろ じゅうだゆう):忍法名不明(ふめい)(一瞬に自分と相手の顔を
入れ替える。)
E鞍掛 式部(くらかけ しきぶ):忍法日陰虫(ひかげむし)(女陰に張り付くと情欲を催さ
せ、男根に張り付くと男根を締め付けくびり落とす虫を操る。)
F檀 宗綱(だん むねつな):忍法夢若衆(ゆめわかしゅう)(相手の夢に入り自在に操り、
更に見たことの無い相手の知人の夢に入り自在に操る。)
:忍法名不明(ふめい)(何百匹もの蛍を操り相手を幻惑する。)
江戸柳生
@多田 仁兵衛(ただ にへえ)江戸柳生の剣士。柳生新陰流秘太刀「浦波」を使う。
A海野 小源次(うんの こげんじ)江戸柳生の剣士。柳生新陰流秘太刀「浦波」を使う。
B九鬼 伝五郎(くき でんごろう)江戸柳生の剣士。
C熊谷 頼母(くまがい たのも)江戸柳生の剣士。
D寺西 大八郎(てらにし だいはちろう)江戸柳生の剣士。
E大道寺 竜助(だいどうじ りゅうすけ)江戸柳生の剣士。柳生新陰流「牛角(うしづの)」
の構えを使う。
F櫓 平四郎(やぐら へいしろう)江戸柳生の剣士。柳生新陰流秘剣「甲(かぶと)割り」
を使う。
G戸張 図書(とばり ずしょ)江戸柳生の剣士。柳生新陰流「碇(いかり)がかり」を使う。
尾張柳生
@樋口 万十郎(ひぐち まんじゅうろう)尾張柳生の剣士。柳生新陰流「月影」と魔剣
「浮舟」を使う。
A門奈 孫兵衛(もんな まごべえ)尾張柳生の剣士。柳生新陰流「疾風(はやて)」を使う。
B雨宮 嘉門(あまみや かもん)尾張柳生の剣士。柳生新陰流「疾風(はやて)」を使う。
C杉 監物(すぎ けんもつ)尾張柳生の剣士。柳生新陰流「虎の一足」を使う。
D秋月 軍太郎(あきづき ぐんたろう)尾張柳生の剣士。
E遊佐 織之介(ゆさ おりのすけ)尾張柳生の剣士。柳生新陰流「浮雲足(ふうんそく)」
の構えを使う。
F沢 佐司馬(さわ さじま)尾張柳生の剣士。
G土肥 団右衛門(どひ だんえもん)尾張柳生の剣士。
脇役陣
@藪田 助八(やぶた すけはち)公儀御庭番頭。:忍法名使用せず&不明
A徳川 吉宗(とくがわ よしむね)八代将軍。49歳。
B秀(ひで)紀州大納言家来久保伊兵衛の妻。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
C妙香尼(みょうこうに)谷中浄土宗春光院。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
D麻(あさ)麹町一丁目天満屋十右衛門の女房。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
E徳川 万五郎 宗春(とくがわ まんごろう むねはる)尾張中納言。六十一万九千石。
37歳。2年前の享保15年に病死した兄徳川継友の跡を継ぐ。
F春日太夫(かすがのだゆう)吉原「すがた海老」の花魁。徳川万五郎宗春が身請けして
愛妾となる。
G滝川 播磨守(たきがわ はりまのかみ)徳川吉宗の家臣。
H石川 庄九郎(いしかわ しょうくろう)徳川吉宗の家臣。
I竹姫(たけひめ)五代将軍綱吉の養女。
J月光院(げっこういん)六代将軍の愛妾。
K大岡 越前守 忠相(おおおか えちぜんのかみ ただすけ)南町奉行。46歳。
L徳川 継友(とくがわ つぐとも)尾張大納言。六十一万九千石。2年前の享保15年に病
死。徳川万五郎宗春の兄。
M安財 数馬(あんざい かずま)徳川継友の小姓。
Nお久免の方(おくめのかた)徳川吉宗の御部屋様。
O松平 左近将監(まつだいら さこんしょうげん)徳川吉宗の信任厚いふところ刀。
P柳生 飛騨守 俊平(やぎゅう ひだのかみ としひら)将軍家兵法指南。柳生六代当主。
Qお駒(おこま)京の七条家の家令青貝市之進の後妻。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
Rお浜(おはま)尾道の廻船問屋西海屋伊兵衛の女房。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
Sお鏡(おきょう)京都友禅の染物問屋日野屋の娘。京都所司代牧野河内守の側妾。
35歳。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
21おぎん(おぎん)堺の織物問屋伊良子屋源内のお内儀。将軍になる前の徳川吉宗の側
妾。
22卯月(うづき)阿波藩二十五万七千九百石国家老小出主膳の後妻。将軍になる前の徳
川吉宗の側妾。
23弥生(やよい)紀州江戸屋敷の年寄。将軍になる前の徳川吉宗の側妾。
24おせん(おせん)神田の刻み煙草屋叶屋平右衛門のお内儀。将軍になる前の徳川吉宗
の側妾。
25お民(おたみ)神田の刻み煙草屋叶屋平右衛門の若い妾。18歳。
26お藤(おふじ)神田の刻み煙草屋叶屋の下女。
27小七(こしち)神田の刻み煙草屋叶屋の若い切子職人。
28お松(おまつ)神田の刻み煙草屋叶屋の下女。
29宗兵衛(そうべえ)神田の刻み煙草屋叶屋の老番頭。
30星野 織部(ほしの おりべ)徳川万五郎宗春の家臣。
31諏訪 水太夫(すわ すいだゆう)尾張御土居下御側組同心目付。「御土居下雑記」を著
す。
32おるん(おるん)紀州江戸屋敷の年寄弥生の女中。
33早蕨(さわらび)陰陽師安倍右陣の息女。糸占いをする。
34軍平(ぐんべえ)早蕨の中間(ちゅうげん)。
35徳川 大納言 宗直(とくがわ だいなごん むねなお)吉宗のあとを継いで紀州藩主となる。
36柳生 飛騨守 宗冬(やぎゅう ひだのかみ むねふゆ)柳生但馬守宗矩の三男。慶長四
(1599)年四月五日三代将軍家光の御前で尾張柳生蓮也斎巌包(としかね)と試合
し破れた。
37柳生 蓮也斎 巌包(やぎゅう れんやさい としかね)尾張柳生の祖柳生兵庫助の三男。慶
長四(1599)年四月五日三代将軍家光の御前で江戸柳生飛騨守宗冬と試合し秘
伝「肋(あばら)一本」で勝利した。
38お品の方(おしなのかた)阿波二十五万七千九百石、蜂須賀淡路守宗貞の御部屋様。卯月
の娘。
39曾兵衛(そうべえ)江戸の町人。
40杉七(すぎしち)曾兵衛の甥。
41おえんの方(おえんのかた)阿波二十五万七千九百石、蜂須賀淡路守宗貞の愛妾、御国御
前。お品の方の姉。
42お紋(おもん)四国巡礼の白痴的美女。
43房之助(ふさのすけ)尾道の廻船問屋西海屋の息子。17歳。
44お夏(おなつ)尾道の廻船問屋西海屋の下女。
45伊良子屋 源内(いらこや げんない)堺の織物問屋「伊良子屋」主人。
46天一坊(てんいちぼう)将軍徳川吉宗のご落胤と名のる。30歳位。
47山内 伊賀亮(やまのうち いがのすけ)天一坊の家老と名のる。45歳位。
48普明坊(ふみょうぼう)天一坊配下の山伏。
49阿含坊(あがんぼう)天一坊配下の山伏。
50青貝 市之進(あおがい いちのしん)京の七条家の家令。
51葉末(はずえ)京の七条家の家令青貝市之進の娘。
52竹小路 三位(たけこうじ さんみ)若い貧乏公家。
53牧野 河内守(まきの かわちのかみ)京都所司代。60歳位。
54間宮 大学(まみや だいがく)京都所司代牧野河内守の腹心。
55北条 斧八郎(ほうじょう おのはちろう)京都所司代牧野河内守の家来。
目 次
忍法「肌文字」
忍法「蝋涙鬼」
忍法「髪飛脚」
忍法「埋葬虫」
忍法「女人花」
忍法「波千鳥」
忍法「足八本」
忍法「銅拍子」
忍法「夢若衆」
忍法「鏡地獄」
*** ボクの「忍者月影抄」データ おしまい***
2003.10.12.(まだ読者が残っているかな?)
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ではでは、出羽の守、大変長らくお待たせいたしました。
今週のメイン・イベント (^ ^; あんまし期待しないでね。 (^ ^;
『ボクの忍法ローリング・スクラッチ・ホールド』又の名を
『忍法いつもの丸写しシリーズその10』だよん。 (^ ^;
『声に出して読めたらエライ禁断の忍者月影抄』 (^ ^; .
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本来ならば、凱歌をあげて、山門を出るところだ。それなのに大道寺竜助は、突風のような恐
怖に吹かれて、天竜寺からにげ出していた。耳に「おれは御土居下組の檀宗綱。…大道寺竜助、
どうじゃ、おれに惚れたか」という声が鳴っていた。
さらに本来ならば、所司代屋敷にかえって、意気揚々と七溝呂兵衛に報告するところだ。それ
なのに竜助は、なぜか事の次第を告げることをはばかって、鬱々と考えこんでいた。耳に「竜助、
夢にて逢おう」という笑い声が鳴っていた。
はじめは、御土居下組の宗綱が、なぜ味方の尾張柳生を殺しておれを助けたのだろう、という
疑惑を解こうと焦った。わからない。
昏迷する脳裡にうかぶのは、あの夢幻のごとき美少年の笑顔のみだ。寛永元禄のころのごとく、
男色が一般の風習とはいえぬ時代であったが、大道寺竜助も、江戸で美少年の味は知っていた。
しかし、厚い胸板に彫られた檀宗綱の美しい顔は、それらと倫を絶する愛執の炎をあげはじめた
のである。
敵にとり憑かれた、これが敵の罠だ、と思う。はじめて、宗綱が自分を助けた意味がわかった
ように思う。が、歯ぎしりしつつそう思ったのが最後の理性で、いつしか大道寺竜助は、夢とも
現(うつつ)ともしれぬ境に入っているのである。
漠々たる雲の中を、濡羽色の前髪をゆり、大振袖に精好の袴をつけた檀宗綱があゆんでくる。
大道寺竜助は、かっとそれをにらみつけているが、彼は平気で寄ってきて竜助の胸にとりすが
る。はねのけようとしても、竜助の腕はしびれている。
「大道寺様、わたしはあなたさまが好きでなりませぬ」
少年のささやきが甘い吐息となって、竜助の鼻口を這うと、彼は全身とろけたようになって崩
折れてしまう。宗綱の白い手はそのからだにやさしくからみつきながら、もう一方の手は、なま
めかしくおのれの衣服をぬぎすててゆく。
「大道寺様、どうぞわたしをお気に召すように。……」
横たわった竜助の腕のなかで、からだをうごめかしつつ向こうむきになったりりしい背、ひき緊
った腰から、ぶよぶよした女色などとは較べものにならない清爽にして妖美な蠱惑の匂いがたち
のぼって、竜助を獣にかえてしまうのだ。
(丸写しオシマイ)
『ボクの忍法ローリング・スクラッチ・ホールド』又の名を
『忍法いつもの丸写しシリーズその10』でした。(バカだねえ)
何だこりゃ?っつー肩すかし、だったら、ごめんネ。
『声に出して読めたらエライ禁断の忍者月影抄』
(^ ^; でした。
明智君、まだ小林少年君に手を出してはいないのかね、むはははは。
◆オレのゴックン度(初読)=★★★ (★5つが最高)
◇ボクのゴックン度(再読)=☆
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***** 「忍者月影抄」の巻 おしまい *****
2003.10.13.(ハゲシク読者が減っちゃったかもね) |
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