TPレビュー

*2010年秋〜2011年春

1)概況
 2010〜2011年のTPは昨年の北よりルートから例年の西海岸ルートに戻ってしまった。8月初めから西海岸とりわけCA州が良好でした。昨年は9月半ばまで全くCAが聞こえずしかもその後もハワイは全く音なしでした。当地ではなかなかハワイは受信しにくいのですが、1460、1500,1540の御三家は何度も受信できました。これらの地域の受信から例年通りの推移となりました。一次伝播での受信は例年通り難しい状況にありました。内陸部や東海岸の受信は昨年ほどの頻度は見られず、少なくなったものの確認する事ができました。又南部もプエルトリコや南米も開きました。しかし良好な受信は少なく、レポートできるような状態には程遠い状況と言って差し支えないシーズンとなりました。このシートの終わりに音をアップしていますが、発表するには心苦しいものばかりです。環境の悪化もあると思います。11月から1月中旬までは開店休業状態で2月にF層伝播で好転したもののCA中心で来る日も来る日も同じ局ばかりという状態が続きました。それでも東への移動伝播は今シーズンも健在で頻度が少なくなっただけと考えています。これらの事は太陽活動の活発化と大きく関係していると思われます。

2)月毎の受信状況
 8月はCA中心にオープンしました。メキシコもたびたびオープンしました。また南米もこの時期確認する事が出来ました。DX シーズン到来で最初が華という状況でした。しかし北米の東海岸は8月は聞こえず9月に入ってからとなりました。9月末には1230のバミューダを再度聞き、その後カナダのニューブリンスビック及びニューファンドランドを確認できました。10月には珍しく低い周波数でハワイが聞けたものの、状態はいまいちでした。11月から1月下旬までは全く聞こえない日が続きました。これはF層伝播への移行時期という事ですが例年より長かった気がします。1月下旬からは高い周波数でF層伝播波を楽しむことが出来ました。しかし西海岸が主体で時折内陸がオープンしても常連局ばかりという日が長く続きました。それでも東海岸への移動伝播を確認できました。3月下旬になると低い周波数が再び聞こえ出し、伝播ルートがルーズになって西海岸でもあまり聞こえない局が聞こえてきて、今シーズンの終わりを告げました。

3)東への移動伝播について
 東海岸の受信は当地では主に東への移動伝播によるものですが、昨シーズンよりかなり減少しました。やはり太陽黒点の増加と反比例しているように思われます。東への移動伝播について簡単におさらいしておくと
@良好な受信域が時間経過とともにルートの先(南東へ移動)またはより東の地域へと移動する現象を言います。
A移動伝播は連続して起こり、今日聞こえた局は翌日聞こえる時間は約1時間ずれる。サイクルの初期段階では約1時間遅くなり終末段階では1時間早くなる。(従ってサイクルの初期段階の確認は無から始まるので確認が困難であるが、終末段階では西部地域の受信から徐々に東へと移行するため観察しやすい)
B東に行くほど移動伝播が起きる周波数は狭くなり限定される。(季節変化もあり秋はわりあい緩やかで冬になるほど限定され、   周波数幅は50kHz以下の事も多い)
C東への移動伝播はTPの通常の伝播とは別に起きる。従って西海岸が聞こえているかどうかには関係しない。一般のTP伝播の  サイクルと合致して起きれば確認が容易であるが、合致しない事の方が多い。
D8月や9月に通常の一次伝播で東海岸が入ることがある。移動伝播とは異なる通常伝播も多いのでこの時期は見極めが難しい。
今シーズンの観察ではカナダ・ニューファンドランドのCJYQ局の9月27日の受信開始時間は19時50分、翌28日は17時55分でした。つまり約2時間早くなったことになります。これは伝播ルートがより北よりルートに当たるためわずかな伝播移動で動いた結果と思われます。高緯度地域ほど時間変化は大きくなる事が言えるのではないでしょうか。したがって上記Aの約1時間はアメリカ中西部から東海岸地域の時間差でありアメリカ北東部地域ではその時間差は大きくなる。と言う事を補完したいと思います。さらに東への移動伝播の始まりを捉えた事象にも出会えました。2月14日1510kHzでKFNNのf/out後ミズーリ州のKTCEが受信できました。これが移動伝播の始まりで5日間かけてマサチュセッツ州にまで達しました。2月はほとんど1400kHz 以上の受信となるので確認が容易となります。


4)北米・東の果て
 北米の東の受信地は昨年はマサチュセッツ州でしたが、今シーズンはカナダニューファンドランドまで延びました。まさに北米の東の果てに達したことになります。10月以降は北極海のルートが閉じられるのでチャンスは8月と9月という事になるでしょう。今後もこの時期には北極海横断電波を捉えるチャンスはあると思います。しかし東の果ての受信の喜びも12月になってグリーンランドの中波局の廃止のニュースで打ち砕かれてしまいました。北米東の果てはグリーンランドではないかとこの時、気がついた次第です。もうチャンスはありません。仕方なくニューファンドランドが聞こえた9月末と月サイクルに当たる8月下旬に的を絞って、残っている録音を聞き直してみました。録音も少なく結局確認できませんでした。逃した魚はでかい。そんな気持ちです。

5)北米・南の果て
 替わって南の果てといえば文句なくパナマという事になります。この国は早くから短波がなくなり中波を受信するしか手がなくなりました。最もU局は別ですが、一般の放送局としては夢の叉夢という状況にあります。しかし古い過去には受信の情報もあり可能性はゼロではないと思っていました。今回厳しい状態ですがそれらしき局を受信できました。レポートしたのですが返信はありませんでした。従って私の中ではそれらしき局どまりです。一応らしき音をアップしておきます。
 Ondas Chiricanas 1160kHz でSAは3秒後から"HOC20 Ondas Chiricanas David...region David con frontera Panama Republica"と出ているようです。・・・・ 1009220926(03,23)

6)南米の状況
 さらに南の南米の状況を少し述べておきます。受信できるのは8月から10月までとなります。ベネズエラはカリブの延長で聞く事ができます。一般的にコロンビアやエクアドルの西海岸は北米の西海岸同様に激しい混信を伴なっての受信となるようで、内容を確認できる状態には程遠い状況でした。それに引き換え東海岸のアルゼンチンやウルグアイは北米同様選別された受信となるせいなのか混信も少なく確認も容易となる傾向にあります。ブラジルは局数も多くブラジル同士の混信があるようです。しかしこれらの地域はレポートしても返信をもらえる状況にはなく、いつになったら確認の報を上げる事になるのでしょうか。内容が取れて、よいレポートが書けること自体が困難な受信が多く、あまり期待は出来ないようです。その中かららしき音を1つ上げておきます。
 Radio Carve 850kHz で弱いのですが女性SJで3秒後から "Montevideo con Radio, Montevideo con Radio Carve"と歌っているようです。・・・・1008271000(03)



7)荒れた日の出現と伝播ルートの相関について
 西海岸局は普通に聞く事ができます。今年は大変良好で特にCAは単独であったり、WAやORとともに入ったりで十分楽しませていただきました。しかし欲を言えば聞こえるところはいつも同じで代わり映えがしません。例年ですと意外と普段聞けない局が聞けたりする物ですが今年はほとんどありませんでした。その意味では物足りないシーズンとなりました。いわゆる荒れた日の出現が極端に少なかったと言えます。このことは早くからCA中心にオープンし伝播ルートが居座ってしまったというか固定化の傾向にあったのが他のルートの出る幕がなかったのではないかと思います。これも今シーズンの特徴といってよいと思います。来る日も来る日も常連局ばかりでは満腹感も得られず、消化不良の毎日という事になりました。

8)最後に
 
昨シーズンと比べると新しい地域の受信はあったものの何か物足りないシーズンとなりました。
1つは移動伝播が減ったこと、1つは良好な受信、いわゆるレポートが出来るような受信が激減したことが上げられると思います。環境の悪化もかなり影響しているでしょう。他には日本で受信できる局は限られていて、新規受信局の減少も影響したと思っています。さらにウエブによるオンデマンドやインターネット放送によるレポートの相対価値の低下による返信率の悪化などなど、厳しさばかりが募るシーズンとなりました。そんな中にあっても、伝播の検証は原点を見つめながら続けて行きたいと考えています。返信はゼロになっても伝播がゼロになることはないのだから。太陽活動が上昇期の来シーズンはどんな伝播が待っているのだろうか。

*記録に残したいデータ

周波数 局名 ロケーション 受信日時
YYMMDD:TIME-UTC
コメント
920 KSRM Soldotina, AK 1009280904 この日は900kHz台でアラスカ、西海岸と東海岸が同時に開いた。SA部分は弱くわかりにくいが、"KSRM Soldotina"と取れる。
930 CFBC St. John, NB 1009280854 SAは"CFBC St. John Peter ..."と出ている。1日前の27日に弱く10.40から2分間のみ聞こえた。この日は早くから待ちうけ受信でゲットできた。移動伝播のセオリーが再確認できた。
930 CJYQ St. John's, NL 1009280905 CFBC局がf/outして27日は10分後に聞こえた。この日は4分後に入感した。SAは"CJYQ St. John's Newfoundland" のようである。両日ともに特徴的な音楽がかかっていた。
940 KYNO Fresno, CA 1009280855 SAは"KYNO Fresno talk your session talk"だろうかSAは良い状態ではなかった。
1190 WBMJ San Juan, PR 1010090907/0914 Sloganは"The Rock"。ここでは"This is the Rock station San Juan"と出ている。SAは"WBMJ mission station Rock ..."と出ている。この日のみの受信。
1300 KVET Austin, TX 1102171316/1323 Daytimeの5kW送信であろう。SAは"K-ヴェットオースチン"と聞こえる。sports局。スローガンは"1300 the Zone"。
1510 KCTE Independence, MO 1102141426/1429 KFNN局のf/out後に受信できた。まさに移動伝播そのものであった。こんな遅い時間にMOとは思いもよらなかった。スローガンは"This is hot talk 1510"。
1550 WUTQ Utica, NY 1102171300 最初に"Utica station this is WUTQ."と聞こえる。最後は"W-Utica"と言っている。Day Time 1Kw 局は初受信。この日のみの受信。翌日21時ごろ狙ったものの入らず。
1550 WNTN Newton, MA 1102191136 17日にWUTQの入感後移動伝播でさらに東を狙った。18日は確認できず。19日になって確認できた。SAは"W Newton" と"WNTN"と出ている。この日のみの受信。
1600 KUBA Yuba City, CA 1008101252 8月の前半で受信。今シーズンのCAの好調ぶりを予感。昨年の北よりの伝播から通常のシーズンに戻った象徴的な受信となった。SAでなく"request take up K-ユバ"のアナウンス。その後は"K Yuba City"と出ている。
1620 KOZN Bellevue,NE 1103161205 sloganは"The Zone"で頻繁に聞かれた。Sport 局。1630のKCJJと同時刻に入感した。この日のみの受信。
1630 KCJJ Iowa City, IA 1103161204 いつもは入感しても弱く内容が取れなかった。SAは"KCJJ the mighty big show"と取れる。
**番外編(TP以外)**
783 6VA Albany, WA, Australia 1101011838 中国局の合間に受信できた。返信によればローカル番組とのことで、Radio West 系列である。ローカルニュースの中でタイミングよくコールサインが出た。6VAの後は中国局の中で"sports Albany"と聞こえる。この日のみの受信。
1548 Radio Islam Lenasia, South Africa 1009031852 SAは"Radio Islam South Africa, Radio Islam on 154(8)"と出ている。今シーズンはアフリカ南部がオープンしていたようだ。8月も入感していた。返信によれば1Kw 送信とのこと。
5050 Claig Allen Station Australia 1103111927 現在の"Ozy Radio"のテスト送信を受信したもの。時々しか音にならなかった。SAは"Now test Claig Allen"と出ている。このときはまだ局名はなかった。
6090 The Caribbean Beacon Anguilla 1102201001//
1102241004
10.00USTに6090から11775kHzに変更になるが、2/20は6秒後の"Radio station University Network"のアナウンスの後、"The Caribbean Beacon 690, 1610"のSAが出た。中国局に混信しながらの受信なので厳しい音である。国内向け放送の中継と思われた。その後24日にもSAが取れた。すぐに中国局が強くなっていつまで出ていたかはわからなかった。誤送出なのか意図的なのかわからなかったのでこの旨レポートした。約1年後に返信があったものの文面はお決まりの定型分でこの回答は得られなかった。他からの情報もなかったので誤送信の可能性が高いと思われます。しかし国内向けのSAが聞けたのはラッキーであった。