TPレビュー

*2011年夏〜2012年春

1)今シーズンの総括と受信状況

  一言で言えば昔の状態に戻ってしまいました。太陽活動減少期の活性は全く失われ、その時期の喧騒は嘘のようです。その減少期以前の通り一次伝播の受信は大変難しく、頻度もわずかになってしまいました。まさにTP銀座から見れば蚊帳の外と言った状況に戻ってしまったと言えます。それでも8月末から9月なかばまではDXが出来ました。東への移動伝播も確認でき、米国東海岸まで入感致しました。やはり既知局がほとんどで新規局はほんのわずかでした。やはり受信できる局は限られてしまうようで、ANTの向きが大きく影響している結果かと思います。9月もなかばを過ぎると20時過ぎの2次伝播がよく受信できましたが、なかなか内陸までは届かず西海岸主体でした。10月も一次伝播は壊滅状態でわずかでせいぜいTXが確認できた程度でした。20時過ぎには西海岸を主体に入りましたがどちらかと言うとWAが良好で、中間の周波数で通常あまり聞こえない局がたびたび入りました。同時にアラスカもまずまずでした。ハワイは全くダメでした。
  10月末からはその20時台の受信は聞こえなくなり早くも冬枯れ状態。代わって一次伝播が弱く入感したものの、いかんせん弱すぎ。11月に入ってもTPは一向に入らず高い周波数への移行期間が続きました。11月27日からやっと高い周波数の2次伝播が聞こえ12月上旬から本格化しました。西海岸中心でカナダからメキシコまでまんべんなく入っていました。内陸が開くことは少なくまたほとんどが常連局主体で、珍局が入るいわゆる荒れた日の出現は見られませんでした。2月下旬になって再び中間周波数の局が入感しTPシーズンは終盤に突入しました。3月にはいつもは内陸のあまり聞けない局が入ることもあるのですがそれもなく、4月になってしまいました。太陽活動が減少期に入った2008年以前の状態に戻ったと言えると思います。今後も太陽活動が活発な時期のため今年の状態が続くものと思われます。このことは当地名古屋での話であり、北の状況はまだましかもしれません。TPを本格的に聞くには北への遠征が不可欠でしょう。特に一次伝播での受信地域差はいかんともしがたいと思います。

2)2次伝播での中米受信

  一次伝播ではパナマまで実績がありますが、二次伝播ではせいぜいガテマラどまりです。その昔はしばしば耳にしましたが最近はとんとご無沙汰です。1570kHzのVEAはしばしば聞こえていました。今シーズンのメキシコは首都を越えて南の地域Chiapas 州が入りました。もうガテマラとの国境の州になります。これも東への移動伝播によるもので、BCから南下しChiapas 州まで達しました。ただChiapas 州の受信時間は21時を過ぎてしまいましたのでやはりガテマラは厳しいかもしれません。しかし東への移動伝播が起きれば2次伝播のガテマラも可能であるとの感触は得ることが出来ました。



3)移動伝播について

  おさらいの意味で再度記しておきます。時間経過とともに良好な受信局が、異なった地域で次々に移動して聞こえる現象を言います。2種類あって通常は東から西へと移動するものです。一般的に夜間パスが起きると聞こえていた局は夜間中は聞こえなくなることはないのですが、移動伝播の場合は通常は聞こえなくなって、次に入感する局は前に聞こえた局よりも地域上西側またはルートの先の局となります。1時間の間に次から次へと入感する局が代わり、より西側の局またはそのルートの先(より低緯度地域)の局が聞こえてきます。これを私は勝手に西への移動伝播と呼んでいます。これはグレーラインの移動によるものです。

  この逆に東へ移動する場合を東への移動伝播と勝手に呼んでいます。この移動伝播はおきる周波数や時間・地域に限定があり、ある狭い周波数帯で起こる。50kHz以下のこともあります。ルートの先の受信は必ずしも起きるわけではないこと。一般に地域限定となるため混信はあまり認められない。多くが単独受信となります。昨年まではTPでしか観察できませんでしたが、昨年は1548kHzで南半球のオーストラリアーニュージーランドでも観察できました。今年ヨーロッパ方面でも西から東への移動を確認できました。多くのDX局の受信においてはこの移動伝播が深くかかわっていると考えられます。今までもTPではなんとなくその傾向があるとは思っていたのですが、今回のヨーロッパ方面の事例を得たことは、移動伝播を考える上で大きな前進となりました。東への移動伝播には2つのタイプがあり、1つは早いタイプの移動伝播です。1時間に数局の交替を生じます。もう1つはゆっくりとした移動伝播で、遅い時には日にちをまたいで移動していくものです。

  ところで東への移動伝播はなぜ起きるのかということになります。TPでもTEでもヨーロッパでも然りです。仮説の段階ではありますが現時点の考えをちょっと記しておきたいと思います。天気は西から東へと移動します。高気圧や低気圧が気流に流されていくこともあるでしょうが、根本は地球の自転に高気圧や低気圧が気圧の抵抗を受けて一緒について行けず、結果として地球から見ると東へと移動することになります。まさに東への移動伝播もこれではないかと思います。良好な受信帯をもたらしているE層の電離層が地球の自転についていけず東へと移動するのではないかと...。ルートの先の考え方はE層の電子密度が高緯度地域から変化するので、同じような電子密度になるのには時間経過がかかる結果ではないかと...。この仮説ならば南半球はルートの先ではなく手前へ移動する??オーストラリアがf/outしたらパプアニューギニアが入ったということになれば、めでたしめでたしとなるのですが....。さらにTPでは高い周波数でも起こっており、E層ばかりでなくF層もその傾向があるのではないかと考えています。ならばLow-SWでも同じようなことがおきる。よくとんでもない局が入ったとかDX局の受信はこの移動伝播が関与しているのではないかと...。また移動伝播の発生頻度はDXシーズンに多く見られる。これも関連があるのだろうか。まだまだ観察すべき点は多く残されている。やっと入り口に立ったということ、これだけは確実に言えると考えています。

4)今後の状況

  TPの好転には、次の太陽活動減少期まで当分時間がかかるでしょう。このサイトでは受信情報ではなく返信情報を記載しています。従っていくら聞こえていても返信がなければ情報はゼロとなります。つまりTPの状況を的確に反映させられなくなります。この受信局の減少と返信状況の悪化により、当分めどが立たない状態に陥っています。このサイトもTP以外の局に母屋を取られてしまいました。受信情報を主体とすることも考えられますが、やはりこのスタンスは変えたくありません。この実態を踏まえ当分このコラムを定期ではなく、必要になったときに記載する不定期刊行とさせていただきます。当分は開店休業状態となると思われますがよろしくお願いします。(2012年9月)

 *記録に残したいデータ

周波数 局名 ロケーション 受信日時
YYMMDD:TIME-UTC
コメント
1520 KKXA Snowhomish, WA 1201121522 この秋開局の新規局。フォーマットはカントリーで入感頻度も高い。SAは"1520 KXA"でKXAとのアナウンスがほとんどである。
1550 KZDG San Francisco,CA 1203121401 SAは"KZDG Hindi"でHindi語による放送です。スローガンは"Radio Zindagi"です。コール変更とともにCBS系列の傘下に入りました。しかしCBS Newsは流れません。23時頃に聞こえるCBS Newsは NMのKIVA局なので注意が必要です。
**番外編(TP以外)**
783 Access Radio Wellington, New Zealand 1108311859 multilingual局。この日は17:30過ぎから19:15頃まで入感した。はじめはmaori語でRadio Ivanuiという番組。18:59に各番組の紹介が出た。19:00からはSamoa語の"Samoan Capital Radio"となった。
783 Kogi State Br. Co. Ochaja, Nigeria 1203041827 SAはSJで出ていた。♪I see Nigerian Kogi State ... from Ochaja Kogi landと歌っているのだろうか。続いて Radio Kogi ...♪とSAが入っているようだ。その後weekly sportsとなった。WRTH2012とはロケーションが違っている。
783 Ukrainske Radio Kyiv, Ukraine 1112061749 SAは"Ukraineske Radio Promin"でさしづめウクライナ第2放送でしょうか。あまりSAは出ないので取るのに苦労します。しかし多くの番組の終了時には"Ukrainske Kyiv"というフレーズで終わる場合が多いのでこの局の見当はつきます。今シーズンは中東の2局より入感頻度は高かった。レポートに対しては海外向けのRUIからの返信で、われわれの製作番組ではないがQSLを送りますと書かれていたが、カードの記載はありませんでした。
1377 France Info Lille, France 1110291907 SAは"France Info"ですが、苦手なフランス語は前後が何を言っているのかまったくわからない。こんなに強いのははじめてだった。
1548 Live Sport Rotorua, New Zealand 1107291905 番組のタイトルと思われる"Techno Sport"のアナウンスがジングルで流された。これが終わってSAの"Live Sport"がアナウンスされた。ほかにCoastらしき音楽番組が入っていた。
6030 Radio Oromiya Ethiopia 1105021834 良好に入るものの終了時のSAはわかりづらい。番組の途中にはSAがほとんど出ない。この時間帯は音楽にかぶせて出るが少ない。IDをとるのに苦労する局のひとつ。WRTHのSAは"Kun Radio Oromiya"である。今回ではKunがクンターと聞こえた。さらなる疑問が残った。
6070 CFRX Toronto, Canada 1203050847 普通はブラジルのR.Capitalが弱く聞こえている。2月にカナダの鉄道事故があった日にそれらしき音が入っていた。なかなか音にならない日が多く音になってもブラジルのことが多かった。2月下旬から北が出てきてしかも早い時間から開始するので半ばあきらめかけていた。この日はやっと音になりSJも出してくれた。♪CFRB ten ten (AM news talk) ♪そしてTorontoと聞こえるが自信はない。すぐに北が出てきたのでタッチの差で確認できた。
6090 Amhara State Regional Radio Ethiopia 1109171757 長いことIDが取れず懸案事項となっていた。Amhara Stateは良く聞こえるがSAではなく地名として出ているようだ。どのようなSAが出ているのかまったく取れなかった。この日はイランが何故か18.02開始と遅れたため単独受信となったものの18.00のSAは出なかった。聞きなおしてみるとなんとその前の音楽の冒頭にSJが入っていた。Amhara xxx xxx Radioと3回歌っている。3回目はまちがいなくAmhara State Regional Radioであるが1回目と2回目は良くわからない。SJとは想定外であった。やっと確認。しかし返信ではAmhara Regional State Radioになっていた。誤記載かとも思ったがSJを聞きなおしてみると1回目はそのようにも聞き取れる。本当の所は良くわからない、ここでは従来の局名を記載した。
9955 WRMI FL, USA 1105271211 いつもは北のスプリアスがあって聞こえない。この日は早いQSBを伴って聞こえていたので信号が来ていると思いそのまま聞いていたら9時過ぎにやっと音になった。14秒後に番組名の"Radio Libertad"も何とか取れた。この日のみの受信。
89.9FM 新竹労工之声廣播電台 Taiwan 1106210159 返信によると客家語(Hakka)とのこと。この部分がIDと思われたので、その旨書いたのだが言及はなかった。この日のみの受信。