新・日本全国おでん屋紀行(1)はなくじら北店(大阪市福島)
21世紀ともなった近年、おでん業界(そんな大げさなものではないが)にも、ニューウェーブともいえる新しい動きが見られるようになった。それは、料亭や懐石料理店で行われるように、高級昆布、高級鰹節から丁寧に上品なダシをつくって、そのダシにおでん種を浮かべていくという手法である。
こうしたおでんを食べてみると、確かにおでん種もダシ汁もそれぞれとてもおいしく感じるのだが、なぜかおでんを食べている印象が薄れてしまう。料理としての完成度は高いが、総合煮込み鍋ともいえる伝統的なおでんの味とは異なっているのである。
けっして、ニューウェーブおでんを否定するつもりはないが、やはりおでんは大衆的な庶民の味であってほしいと思う。
大阪市福島区にある「はなくじら北店」は、同じく福島駅近くにある「はなくじら本店」、「はなくじら歩店」とともに大阪庶民の味を守る、人気のおでん屋である。気さくな屋台風の店舗は、道路に張り出し、いつも安くておいしいおでんを楽しむお客でいっぱい。店長はじめ若いスタッフもテキパキと動きがよく、とても活気がある。
テーブル席も何か所かに配置されているが、ここではおでん鍋の前のカウンター席に腰を下ろしたい。目の前では、たくさんのおでん種が浮かんだ鍋がグツグツと煮立たっていて、とてもおいしそう。おでん種は、季節によって若干の入れかえはあるが、常時30種類ぐらいはありそうだ。ダシ汁は煮立たせているので濁っているが、ベースは昆布、鰹節に薄口醤油だろうか、おでん種からしみ出たエキスでコクのある旨味が感じられる。
おでん種は、どれを食べてもはずれがなく、おいしい。よくダシがしみていて、やわらく煮込まれた「だいこん」、「じゃがいも」、「もち(袋)」、「すじ」。やはりダシがよくしみ込んで、ユリネやシイタケなどの具がたっぷりと入った「ひろうす」。関西では定番の、鯨の「さえずり」、「ころ」、そして水菜を鯨の皮で巻いた「はりはり巻き」。変わった練り物としは「UFO」、何かと思ったらUFOの形に似たはんぺんのような魚のすり身だった。ロールキャベツが、中身がトロっとした「チーズロール」というのも珍しい。
ビールはサントリーモルツ樽生、日本酒は灘の「松竹梅」の燗酒か冷酒。やはり、おでんがメインの店ということだろう。
客層は、勤め帰りのサラリーマン、OL、友人同士、熟年夫婦、若いカップルなど多彩だが、ほとんどが2人組か少人数である。気の合った仲間と訪れるには好ましい店であろう。
なお、「取組時間は1時間半以内でお願いします。」との張り紙がしてある。混雑店なので、ルールは守りたい。
はなくじら北店(大阪市福島区福島6−20−6 06−6453−3758 17:00〜23:30 日曜・祝日休み)
平成17年11月1日訪問
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