春の信州の旅(平成12年5月13日〜15日)

5月13日(土)
 7:26高尾発、小淵沢行きの鈍行列車で出発。天候は、どんよりとした曇り空。車窓は、まだ新緑の色が残る山々、あちこちに咲いている今が盛りのフジとツツジの花。甲府駅にて下車。乗り継ぎ列車の待ち合わせ時間に、駅ビル内を見てまわったが、特に何も買わなかった。9:55発の長野行き列車に乗る。松本に11時30分頃に到着し下車する。

まずは、駅前の公衆電話ボックスから、今晩の宿を小谷温泉に予約する。その後、蕎麦処「深志門」へ。相変わらずご主人が一人で切り盛りしている。「もり」(800円)を食べる。やや茹で方がやわらかい感じだが、香り高くおいしいソバである。ボリュームもある。
 もう1軒、「みよ田」という蕎麦屋へ。日穀製粉という製麺会社の直営店で、店内は洒落たつくりである。始めに樽酒を注文したところ、お通しに鳥肉の和え物が出てきた。「鴨せいろ」(800円)を注文。ソバは、コシはあるものの、残念ながら香りがあまりない。鴨汁の味わいはよく、鴨肉の質もまあまあだった。

 古本屋や駅ビル内を見てまわる。今夜飲む酒とつまみを購入する。14:03松本発、信濃大町行の大糸線に乗り込む。久々の大糸線だったが、車輌が新しくなっていた。対面座席の部分が少なくなり、ほとんどがロングシートである。天気は雨が降りそうで降らずにもっていたが、車窓からの北アルプスの美しい景色は望むべくもなかった。田植えがすでに終わっているところや、ちょうど田植えの最中のところがあった。信濃大町で乗り継ぎ列車に乗り換え、午後4時ごろに終点の南小谷に到着。山間に入って、不安定な天気になり、にわか雨が降ったりした。
 南小谷駅前から、小谷温泉行のバスに乗る。バスはしばらく姫川沿いに走り、いくつかの洞門を通過する。中土駅を過ぎたところで姫川を渡り、今度は中谷川沿いに山間の細い道を登って行く。中谷川は雪解け水とにわか雨のため、泥流が激しくうねっていて恐ろしかった。終点の小谷温泉の山田旅館前に16:40頃に到着する。

 大湯元・山田旅館は、歴史を感じさせる古い宿で、湯治場の情緒たっぷり。本館の一部は江戸時代の建築とのことである。その古い建物の玄関に入って案内を乞うが、夕食の準備で忙しいのか、誰も姿を現わさない。何度か声をかけて、ようやくおばさんが一人出てきて、2階の客室へ案内される。部屋は一人で使うにはちょうどよい広さ。畳は新しいが、柱や天井、襖などけっこう年季が入っている。
 少しくつろいでから、浴室へ。浴室入口の扉も古びた木造の観音開きで風情がある。ここのお湯は、旅館の裏山から噴出している源泉をそのまま浴槽に流している。源泉の温度は47℃だが、それを浴槽に滝のように落として、適温になるように調節している。ナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉)でラドンを含有、やや濁っていて、鉄くさい感じがする。土類が入っているためか、浴槽の底や周りはぬるぬるとしている。ゆったりとお湯につかり、疲労のたまっている身体をほぐす。

 部屋に戻るとまもなく夕食の案内。近ごろ新築されたという別館の大広間へ。夕食はかなりボリュームがあって、味もまあまあだが、天ぷらは余計な気がした。季節がら山菜がいろいろと出たが、お馴染みのウドやコゴミのほか、ウドブキという珍しい山菜もあった。山菜の王様とのことだが、けっこうアクの強い味わいで、それほどおいしいとは思わなかった。
 食後、誰も入っていない風呂へ。打たせ湯をしたりして、浴槽を広々と使う。部屋へ戻ると、気持ちよくなって眠り込んでしまった。11時過ぎに目を覚まし、買ってきた300ml瓶の酒「北安大国・いいずら」を飲む。部屋に置かれていた「小谷温泉賛歌」という本を読んだりして、しばらく起きていたが、いつのまにか再び眠ってしまった。夜中に、激しい雨音で、何度か目を覚ました。
  
山田旅館の夕食(左)と昔ながらの浴場入口(右)

5月14日(日)
 朝は、5時前に朝風呂に入り、再び寝る。朝食は午前7時過ぎに、昨日と同じ大広間で食べる。テーブルの数から宿泊客は10組以上いる感じだったが、土曜日にしては少ないらしい。海苔、玉子焼、山菜などの食事。食後、宿の周りを散策し、写真を撮ったりする。芽吹いたばかりの木々の緑が美しいが、まだ雪が残っているところもある。天気はこの日もあまりよくなかった。部屋に戻ってきて、再び風呂へ。南小谷へ行くバスが10時過ぎまでなかったので、チェックアウト時間ぎりぎりまで部屋で過ごす。
 午前10時頃、会計をしてもらう。他の宿泊客はすでにみな出発した様子。旅館に隣接する「小谷温泉山田資料館」を見学する。館内には、山田旅館が長い歴史の間に収集してきた民具などが展示されている。2階には貴重な資料である古文書や書画が展示されていた。ちょうど、旅館の女将がやって来て、機織の準備作業をするという。この旅館では、昔の手作業での機織を教えていて、その準備として縦糸をきれいに巻いておくのだという。しばらくその作業を見ながら、女将と旅館にまつわる話をする。先代の山田氏は、日本に初めてテレマーク・スキーを紹介するなど、かなり世に知られた人物であったらしい。
 小谷温泉10:51発のバスに乗って、南小谷駅へ。終点まで行く乗客は私一人で、ほとんど貸切状態だった。南小谷11:46発の大糸線上り列車で白馬へ。白馬からは、長野行きのバスに乗り込む。この頃から、本格的に雨が降り出したが、バスはオリンピック道路を通って、わずか1時間で長野駅バスターミナルへ。駅ビルで、生酒とおやきを購入。長野13:39発の飯山線で信濃平まで行く。午後3時頃には、飯山市常盤の伯父の家に無事到着する。
 伯父の家に着いてからは、いつものとおり、酒を飲み、富倉の手打ちソバを食べた。

5月15日(月)
 やや二日酔い気味だったが、朝7時に起きて、仕事に行く伯父の車で、父の実家のある富倉地区へ。始めは霧がかかっていたが、しだいに明るい曇り空になった。途中で降ろしてもらい、山菜を採りに山へ入る。ウド、ゼンマイ、ワラビなどを収穫し、歩いて父の実家へ。相変わらず昔のままのたたずまいである。まもなく伯父が仕事から戻ってきて、裏山にある先祖代々の墓参りをする。

  

 昼は再び常盤の家へ戻って、またソバを食べる。食後は、日帰り温泉施設、いいやま湯滝温泉へ。平日の昼のためか、すいていた。帰りは北竜湖に立ち寄る。菜の花が満開で美しかった。

 飯山16:51発の列車で長野へ出る。長野17:50発の新幹線あさま号に乗る。各駅に停車する新幹線だったが、大宮まではあっという間だった。しかしこの後、埼京線で武蔵浦和まで行くと、なんと武蔵野線が、千葉県内の集中豪雨で大幅に運行が乱れていた。結局、自宅に着いたのは午後9時過ぎだった。

北竜湖の菜の花公園

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