上越の旅(2000年3月5日〜6日)

 3月5日(日)

 八王子6:08発の八高線で、鈍行列車の旅に出る。八王子を出発してしばらくすると、車窓には美しい日の出を拝むことができた。天気はとてもよさそうである。高麗川6:54着。ここからは非電化区間なので、ディーゼル車に乗り換える。高麗川6:57発、高崎8:30着と順調に進む。高崎駅で待ち時間が少しあったので、駅弁「鳥めし」を購入し、ホームで食べる。その後、駅ビル内の書店や売店をのぞいたりして時間をつぶす。高崎9:20発の列車に乗り、水上10:21着。水上が近づくにつれ、積雪が見られるようになり、水上駅付近では20センチほどの積雪があった。水上10:27発の臨時快速「スノーリゾート上越号」に乗り換える。座席の配置がおもしろい車輌で、両側の窓向きに一列に席が並んでいる部分と進行方向に向かい合わせになっている部分があって不規則な感じである。しかも車輌ごとに座席配置は異なっている。乗っているスキー客の数はそれほど多くはない。

 群馬・新潟の国境の長いトンネルを抜けると、積雪は1メートルを超し、本当に雪国である。今年は2月の後半から今ごろになってドカッと雪が降った。10:59越後湯沢着。改札を出て、駅構内を少しブラブラする。さすがに冬の越後湯沢駅はスキー客で賑わっている。湯沢高原ビールの直営店があるのを見つける。Station Cafe”Barley”という店で、ホワイトヴァイツェン樽生を1杯飲む。炒った麦がつまみについて630円。200mlぐらいのプラスチックのコップで出されるので、量としても、口当たりとしても不満である。やや褐色に濁っていて、コクはあるが、雑味も多く、ヴァイツェンらしいさわやかがあまりなかった。他のタイプのビールも試してみたかったが、まだお昼前だったので止めておいた。

 駅を出て少し歩いたところにある、蕎麦屋「しんばし」へ行ってみる。以前から訪れてみたいと思っていたのだが、タイミングが悪くてなかなか来れなかった。今回が初めてである。店内へ入ると、昼時前なのに混雑していている。店員が忙しそうにバタバタしているうえに、客の煙草の煙が充満していて、落ち着かない。白瀧酒造の各種の酒やつまみもあるが、じっくり腰を落ち着けてくつろぐ気分ではない。カウンターの1席に腰掛け、「せいろ大盛」(850円)だけを注文する。出てきたせいろソバは、滑らかな口当たりで、コシもあるが、蕎麦の香りはあまりない。可もなく不可もなく、無難な手打ちソバという印象である。

 駅構内に戻り、再び列車の発車時間までブラブラする。今晩の宿を秘湯・栃尾又温泉の「自在館」に決め、予約の電話を入れる。そして日本酒館で、今夜の晩酌用に300ml入りの日本酒を購入する。越後湯沢12:23発の列車に乗って、小千谷をめざす。車窓はずっと一面の銀世界である。小千谷13:21着。今度は以前行ったことのある「角屋」というへぎそばの店に向かって歩き始める。店は駅から少し離れた、信濃川に架かる橋を渡ったところ、本町の商店街にあったはずである。しかし、いざ行ってみると店がない。記憶違いかとも思って、付近を探し回ったりしたがやはり見つからない。再度もとのところへ戻ってよく見ると、空き地に「店舗移転」の看板が出ているではないか。駅からさらに離れたところに店は移転してしまい、とても歩いていけそうもない。仕方なくあきらめて、同じ本町にある「わたや」という蕎麦屋へ入る。 昼時を過ぎた午後2時ごろにもかかわらず、店内は地元の客で賑わっている。さっそく「へぎそば2人前」(1360円)を注文する。少し待って出てきたソバは、かなりのボリュームである。へぎそば特有の並べられたソバの一掴みの量が多い。蕎麦の香りはないが、太さの割に滑らかな喉ごしでおいしい。ツユとの相性もよかった。やや満足、満腹で、小千谷駅に戻る。

 列車のタイミングが悪く、小千谷駅舎で50分ほど待つ。小千谷15:43発、小出16:01着。小出からは路線バスで栃尾又温泉へ向かう。バスは小出16:10発、30分ほどで終点の栃尾又温泉に着いた。栃尾又に向かい、山間に入って行くにつれて、道路両脇に除雪した雪の壁は高くなり、どうみても2メートルは超えていた。大湯温泉の温泉街を抜けて、さらに山を上ったところが栃尾又温泉。本当に雪に囲まれた豪雪地帯である。「自在館」は、バス停から見えるところにあった。

 ロビーで宿帳に記入してから、部屋に案内される。エレベーターで3階まで上がり、「荒沢」という部屋へ通される。窓の外は、渓流を隔てて、今にもなだれが起きそうな豪快な雪の斜面が迫っている。ザーという川のせせらぎの音が、耳に心地よく響く。まずは、温泉につかろう。宿の浴場はすべて鍵を借りて入る貸切式。内湯が2か所と露天風呂がある。フロントでこの時空いていた内湯「たぬきの湯」の鍵を借りる。ひとりで使うにはもったいない広さの浴室で、湯舟もゆったりできて気持ちよい。泉質はラジウム泉。やや加熱しているので、ちょうどよい温度。ここも窓ごしに雪の斜面が迫っている。ひと風呂浴びて気持ちよくなり、部屋に戻ってビールを飲んでいると、まもなく夕食が運ばれてくる。料理は、山菜やきのこなど山の幸が中心。「いわなの刺身」、焼き立てを持ってくる「いわなの炭焼き」、「かも鍋」などはおいしかった。先に食べたへぎそばが腹にたまっていたので、あまりボリュームのない食事はちょうどよかった。食後は、少し休んでから、外湯の「健康温泉センター」へ。いかにも健康センターらしい近代的なタイルの風呂はあまり風情がない。泡沫湯、圧注湯など5つの湯舟があり、温度も熱いのやらぬるいのやらいろいろである。一通り入浴することにする。湯治の目的に合わせたそれぞれの入浴方法(順番と時間)も浴室内に掲示されている。入浴後、けっこう身体がだるくなり、部屋に戻ると、まだ午後9時にもかかわらず、寝込んでしまった。

 3月6日(月)

 朝5時半頃に目を覚まし、風呂に入る。昨日と同じ「たぬきの湯」。深夜から朝までの時間帯だけ内湯は男女別になり、自由に入れる。朝食は8時に、1階の食堂で食べる。玉子焼、海苔、アジの開き、ハム・キャベツなどごく普通の食事だった。食後は、鍵を借りて貸切露天風呂へ。湯舟はそれほど広くないが、雪景色を見ながらの入浴は気持ちがよい。心持ちぬるい気はしたが。

 午前10時頃にチェック・アウト。バスの時刻が10:25発だったので、ロビーで少し待つ。宿の女将がコーヒーを一杯サービスしてくれた。バスが栃尾又温泉を出発するときは乗客は2人だったが、駅が近づくにつれて、立っている客もいるほど混雑した。小出11:16発の上越線上りに乗車。列車も混雑していて、石打まで座れなかった。水上12:38着。乗り換えて、水上12:45発、新前橋13:37着。「たかべん」が経営するホームの立食いそば屋で、「かき揚そば」(350円)を食べる。具のたっぷり入った大きなかき揚がのせられ、ソバのボリュームがある。ツユもあまり辛くない。立食いソバとしては上等である。新前橋13:49発、両毛線に乗り換え、足利14:38着。

久しぶりに足利の駅で降りる。天気がしだいに悪くなってきて、いまにも雨が降りそうなどんよりとした曇り空。しかも肌寒い。今朝、栃尾又にいたときのほうが暖かかったぐらいである。目的の蕎麦屋「一茶庵本店」を目指して歩き始める。以前に一度行ったことはあるものの、場所をあまり正確に記憶していなかったので、たどり着くのに30分以上かかってしまった。しかも着いたときには、昼間の営業時間が終わっていた。夜の営業は午後4時半からだったので、1時間余り、寒い中、足利の町を散策する。境内に梅の花が咲いている「ばん阿寺」や足利学校周辺で時間をつぶした。さらに、雰囲気のよさそうな喫茶店「メープル」に入り、マンデリンのコーヒーを一杯飲んで身体を温める。

 「一茶庵本店」へは、4時半のほぼ開店と同時に入る。広い店内に、客は一人もおらず、私が今夜最初の客のようである。まず、「板わさ」をつまみに、ぬる燗の日本酒を一杯。その後、「せいろ」と「田舎」を各1枚づつ食べる。全国に名だたる一茶庵の本家本元の味を楽しむことができた。食後は、天候がかろうじてもっている、暗くなりかけた足利の街中を足早に抜け、駅へと戻った。足利17:56発の列車で小山に出る。小山18:42発の東北本線で大宮へ。大宮19:36発の埼京線で武蔵浦和へ。武蔵野線経由で帰宅した。
旅日記(国内編)の目次へ戻る 

COPYRIGHT 2001 H.NAKAJO