上州方面への旅

平成13年3月24日(土)

 友人のT、M、Gと車で上州方面への旅。午前10時頃に東京を出発。天気は良好で、春らしい暖かい日である。圏央道から関越自動車道を順調に進み、お昼少し前には、昼食場所の沼田ドイツ村・ケイニッヒ・クロルトへ。ここには、地ビール(正確に言えば地発泡酒)「玉原恋清水」を飲むことのできるレストランがある。

地発泡酒「玉原恋清水」の醸造設備 左からアップルラガー、ラガー、ビター 鹿肉のステーキ

 われわれがレストランへ入ったとき、店内にお客は誰もいなかった。オフシーズンとはいえ、土曜日のお昼時にこんなにガラガラで大丈夫なのかと思ったが、やがて何組かのお客が次々と現われた。みな名物のジンギスカン鍋を食べている。
 ここで飲める生の地ビールは、ラガー、ビター、アップルラガーの3種類。グラス一杯300円という良心的な値段である。味もラガー、ビターとも風味良くフレッシュでおいしい。アップルラガーは、沼田産のリンゴを使用した発泡酒だそうだが、リンゴの味だけではない複雑な不思議な味わいだった。これらのビールを飲みながら、私は鹿肉のステーキを食べ、昼食とした。
 レストランの隣には、沼田の物産などを売っている土産物屋もあったが、特に何も買わず、沼田ドイツ村を離れる。その後は一般道を走り、一路、今晩の宿泊地、法師温泉へと向かう。途中、饅頭が名物の太助ドライブインやコンビニに立ち寄って時間調整、目的地の法師温泉「長寿館」には午後3時ちょうどに到着した。

 法師温泉は、弘法大師の開湯と伝えられる、古くからの名湯。三国峠の脇に位置し、湯治場の雰囲気を残す、鄙びた一軒宿の温泉である。この時期、宿のまわりの山の斜面や道路脇には、まだ雪が残っていて、ますます山間のいで湯の風情が感じられる。江戸時代の旅籠の面影を今に伝える、古い木造建築の本館の玄関で案内を乞うと、同じ本館2階の客室へ通された。客室内外の雰囲気もよく、眼下を流れる法師川の清流の音に心落ち着かされる。

大浴場「法師の湯」の外観

 早速、温泉につかることにする。大浴場「法師の湯」は、かつて国鉄のフルムーンの広告に使用され話題を呼んだ、レトロな総木造の建物。明かり取りの楕円形の窓や浴槽のまわりの造りつけの脱衣箱(今は使われていない)に歴史を感じる。浴槽の底には、川原の自然石を敷き詰めてあるが、その隙間からもお湯が湧き出ている。泉質は、無色透明の石膏泉で、若干の硫黄臭がある。源泉43℃とのことで、浴槽の場所によってはぬる目に感じられるが、のんびりとつかるにはちょうどよい温度である。
 法師の湯にしばらくつかってから、すぐ隣の「玉城の湯」へ。こちらはつい最近完成した杉皮ぶき、総檜造りの野天風呂付きの浴場。内湯は大浴場・法師の湯と同じような構造だが、まだ新しい檜材の香りが充満している。外の野天風呂は、最近よくありがちな、池のような湯舟で、あえて新しく造らなくてもよかったような気がした。風情ある温泉の雰囲気は、人工的には簡単に形づくれるものではないように思う。
 入浴後は、部屋で缶ビールを飲んだり、宿のまわりを散歩したりして過ごす。午後6時に夕食が部屋に運ばれて来た。鯉の洗いに鯉こく、岩魚の塩焼き、黒豚焼き、山菜類などボリューム十分だった。食中、持参した山三酒造の一升ワインを飲んだ。先日、長野の山三酒造へ真田六文銭しぼりたて生原酒を買いに行ったときにいただいた自家製ワインである。現地の東部町の巨峰を使って仕込んだもので、予想外に辛口に仕上がっていて非常においしかった。非売品であるのが残念である。

 宿の夕食と巨峰ワイン

 夕食後も、ワインの一升瓶が空くまで、部屋で飲んでいた。窓越しに眺める対岸の別館の部屋の明かりが、時代劇に出てくるような、何ともよい夜の湯治場の雰囲気を醸し出していて、ほろ酔い気分と相まって最高の気分だった。
 その後、再度温泉につかり、部屋でテレビを見ているうちに、いつの間にか眠ってしまった。

平成13年3月25日(日)

 午前6時頃に目が覚めて、朝風呂へ。法師の湯につかる。7時半頃に起床。8時過ぎに朝食が部屋に運ばれて来る。定番の玉子や海苔のほか、湯豆腐やサーモンサラダなど、朝食もボリュームたっぷりだった。
 午前10時頃に宿をチェック・アウトする。外へ出ると、ぽつりぽつりと雨が降り始めていて、天気は下り坂のようだった。月夜野びーどろパークを目指して車を走らせる。びーどろパーク内には、地ビールレストラン「ドブリーデン」がある。

 現在ここで醸造されている月夜野クラフトビールは、夕陽の月夜野ピルスナー、蛍の里の黒ビール(ミュンヘンダーク)、水と緑のエール(アンバーエール)、ロマンの里のヴァイツェンの4種類。いずれのビールも、それぞれのタイプに忠実な味わいで、よくできている。グラス一杯600円とやや高めだが、おいしいので許せる値段といえる。同じびーどろパーク内のガラス工房でつくられている、個性的なオリジナルグラスでサーブされるのも洒落ていてよい。


ヴァイツェン、アンバーエール、ミュンヘンダーク

 この日もレストランに入ったとき、広い店内に、お客は他に誰もいなかった。まだ昼食というわけではなかったので、ソーセージとフライドポテトをツマミに、グラス二杯ほど飲んだところでとどめる。そのかわり、アンバーエール、ミュンヘンダーク、ピルスナーの3種類の瓶ビールを自宅用に購入する。
 びーどろパークから、どこか日帰り温泉に立ち寄って、足利方面へ向かう予定だったが、足利までけっこう時間がかかりそうだったので、太助ドライブインで土産の栗どら焼をを買った後は、足利へと直行する。渋川のあたりから、赤城山麓の南面道路に入り、大間々を抜けて、一路足利へ。順調に走行したが、やはり目的地の「足利一茶庵」に到着したのは、午後2時の10分前。昼の営業がちょうど終わったところだった。残念だったが、他の蕎麦屋を探すしかなかった。
 「菊屋本店」という蕎麦屋をばん阿寺近くに見つける。新装開店したばかりのようで、真新しい建物だったが、創業は明治3年とのことだった。私は「鴨汁そば」の大盛りを注文。大盛りはかなりのボリューム。蕎麦の香りが高く、細打ちのおいしいソバだった。初めて入った店だったが、これは今後も訪れてみたい店の一軒である。

 菊屋本店の鴨汁そば

 東武鉄道の足利市駅から柏へ帰るというGを見送り、残りの3人も帰途に着く。しだいに雨は激しくなり、本格的な雨模様となった。途中けっこう渋滞にも巻き込まれつつ、熊谷、鶴ヶ島などを抜けて、自宅へ戻ってきたのは午後6時頃だった。

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