関西・山陽への旅(2002年7月12日〜15日)

7月12日(金)

貴船の杉林 貴船の清流

 東京7:03発の東海道新幹線ひかり号で出発。まだ梅雨明け前だが、天気は快晴に近く、車窓からは久しぶりに夏の富士山を眺めることができた。
 京都9:46着。京都駅からは京都バスに乗って、出町柳駅へ。京都市内は、祇園祭の最中で、17日の山鉾巡行に向けて、町のあちらこちらで山鉾の組み立てが行われていた。
 出町柳駅から、叡山鉄道に乗って、鞍馬・貴船方面へ。列車は後半、けっこう山間に入り、森林の中を走る山岳鉄道の雰囲気。貴船口駅で下車。
 貴船神社まで、清流沿いのだらだらとした登り道を歩く。30分ほどかかり、少し疲れたが、杉林を眺め、清流のせせらぎを耳にしながらの道行は気持ちがよかった。

 貴船神社本宮を詣でた後、お昼時も近かったので、すぐ近くの「きらく」という店に入り、川床料理のコースを食べる。川床は京都の夏の風物詩で、清流の上に板を渡して座席をつくったもの。川面から涼しい風が立ち上がり心地よい。また、頭上には簾が掛けられていて、夏の暑い日差しを遮っている。町中の鴨川にも同じような納涼床というのがあるが、ここのほうが川面に近い分、はるかに涼しい。
 料理のほうは、鯉の洗い、ごりの佃煮、鮎の塩焼き、あまごの天ぷらなど川魚が中心。全体的に、特筆するほどおいしい料理はなかったが、川床で食事をする雰囲気を十分に楽しむことができた。

貴船の夏の風物詩・川床 川床料理から鯉の洗い 川床料理から鮎の塩焼き

 食後は、本宮よりさらに先の結社、奥宮を参拝する。創建時は、現在の奥宮の場所が貴船神社の本宮であったとのこと。かつて、夫との不仲に悩んで和泉式部が訪れたのもこの奥社だったのだろうか。
 帰路はバスで貴船口まで戻ろうと思ったが、20分ほど待たなければならなかったので、結局歩いてきてしまった。帰りはずっと下り坂だったので、比較的楽に歩けた。

鞍馬寺山門

 貴船口から再び叡山鉄道に乗って一駅、終点の鞍馬へ。駅からすぐのところに鞍馬寺はあった。京都のめぼしい寺をほとんど訪れている私も、この鞍馬寺は初めてだった。典型的な山寺である鞍馬寺の境内は広い。時間もあまりなかったので、仁王門から多宝塔までケーブルカーに乗る。標高差120メートルの急斜面を、わずか2分で一気に上ることができる。
 多宝塔から本殿金堂まではさらに少し歩く。最後に急な石段が続き、息切れ状態で本殿境内へ。さすがに境内からの山々の眺めはよく、山深いところと感じた。

鞍馬寺金堂前からの眺望

 金堂には、千手観世音菩薩、毘沙門天王、護法魔王尊の三尊天を奉っている。また、金堂地下には宝殿といって信者の清浄髪が奉納されている。暗い中に骨壷のようなものがたくさん並んでいたので、はじめは納骨堂だと思っていた。
 帰りは、すべて徒歩で下山。途中、つづら折りや由岐神社などがある。由岐神社で、天狗のキーホルダーの付いたみくじを引いたら吉だった。
 鞍馬駅から叡山鉄道に乗ったのは午後4時半頃だったろうか。出町柳で京阪電鉄に乗り換え。出町柳17:03発の特急で、大阪の淀屋橋まで行く。京都市内と大阪市内の駅以外ほとんど停車しないので速い。1時間ほどで淀屋橋に着いた。地下鉄御堂筋線で梅田へ。地下街を通って、堂山の「ホテル喜多八」に着いたのは午後6時30分頃だった。
 15分ほど休憩して、夜の大阪キタの繁華街へ繰り出す。まずは銘酒処「酒蔵河津」へ。金曜日でほぼ満席だったが、カウンターにかろうじて一席を見つけて腰を下ろす。エビス樽生を一杯飲んだ後、奈良の鷹長・純米生原酒、山形の米鶴亀粋・純米生、愛媛の篠永・大吟醸生原酒などを飲む。いずれもコクのある生酒で、私好みの味わいだった。料理のほうは、スズキ、サーモン、カンパチという「「お造り盛合わせ」、冷製茶碗蒸仕立ての「カニ豆腐」、味噌がたっぷり載った「鮎田楽」などを食べる。キタでは、やはりこの店が一番安心して酒と肴を楽しむことができる。
 2軒目は、久しぶりに曽根崎の寿司屋街へ行き、「亀すし本店」でビールを飲みながら握り寿司をつまむ。穴子、トリ貝、ヒラメ、イワシ、剣イカ、あぶりホタテ、イクラ、鉄火巻とたらふく食べて3000円。相変わらず安くて、それなりにおいしい。
 午後10時頃に、ホテルへ帰った。

7月13日(土)

明石港を出るフェリー

 明け方未明、雷光と大きな雷鳴が轟き目を覚ます。午前8時半頃にホテルを出発。明け方の雨は上がってるものの、雲は低く垂れこめていて蒸し暑い。また、梅雨らしい天候が戻ってきたようだ。朝食は、大阪駅の食堂街、「樽亭」でうどんとおにぎりの朝定食を食べる。
 阪急梅田駅から神戸線の特急に乗車、三宮まで行く。三宮の街を少し歩いたが、あまりに蒸し暑いので、すぐに駅の地下街へ戻ってきてしまった。地下にある阪神電鉄の三宮駅から、姫路行きの特急に乗り込む。神戸高速鉄道、山陽電鉄を経由して、山陽明石駅で下車する。11時頃に到着。
 明石の町を散策する。「魚の棚」というアーケード街には、何軒もの魚屋があって、捕れたばかりの新鮮な魚介類を売っている。シャコ、エビ、小魚などみなピチピチと跳ねている。タコは、箱から飛び出し、店先を動きまわっている。こんなイキイキの魚を買うことのできる地元の人たちがうらやましい。
 港のほうにも行ってみる。天気はあまりよくないが、雄大な明石海峡大橋を望むことができる。

寿司屋「浪花」で昼食

 お昼時になったので、「魚の棚」内の「浪花」という寿司屋へ。松にぎり寿司を注文。焼穴子、穴子きゅうり巻、活き車海老、イカ、スズキ、タイ、ウニ、マグロと瀬戸内の新鮮な魚が中心で、なかなかおいしい。ネタも厚切りで大きく、満足できる味だった。とりわけ、穴子が美味、思わず、穴子の一本にぎりと活きタコを追加注文してしまった。
 食後は、再び明石の町を散策、午後1時頃に明石港のフェリー乗り場へ。明石港13:20発のたこフェリー(ずいぶん安直な名称だ)に乗船し、淡路島へ渡る。人間だけなら片道320円でフェリーに乗ることができる。私の場合は、日帰り温泉施設の入浴券(通常700円)とのセット切符(900円)を買っていたので、さらにお得だった。
 淡路島の岩屋港までは約20分。明石海峡大橋を眺めながらの短い船旅である。時おり雨が降り、海面には白波が立っていたが、それほどの揺れもなく、無事岩屋港へ到着した。
 岩屋から日帰り温泉施設「美湯・松帆の里」までは、バスが出ているが、ちょうど行ってしまったばかり。歩いて行こうとしたが、急に風雨が強まり、傘も役に立たない感じで、断念。仕方なく、岩屋港の乗船待合室で1時間近くの時を過ごす。ゲーム機が何台か置いてあったので、ゲームをしたりして時間を潰す。

美湯・松帆の里からの眺望 たこフェリー

 岩屋14;41発のバスに乗車。10分足らずで、小高い丘の上にある「美湯・松帆の里」へ。セット切符を使って入浴。近代的な温泉施設で、明石海峡大橋を眺めながら入る露天風呂が自慢のようだ。天気が悪く、遠方は霞んで、視界はあまりよくないが、雄大な眺めである。
 泉質は、単純弱放射能低温泉、いわゆるラドン温泉。無色透明のあまり特徴のないお湯だが、ベタつく汗を流すことができただけでもよかった。入浴後はしばらく館内の土産物売場をぶらついたりして、身体の火照りを冷ます。

 松帆の里16:10発のバスで岩屋港へ戻る。岩屋16:30発、再びたこフェリーで明石へ。山陽明石発17:20頃の特急に乗って大阪梅田へ帰る。午後7時頃にホテル喜多八へ戻った。
 夜は、東梅田から地下鉄谷町線に乗って天満橋へ。大阪でベルギービールのチェーンを展開するドルフィンズの天満橋店を目指す。事前にインターネットで調べておいた資料を忘れてきてしまったので、店を探してかなり歩きまわったが、ようやく「ドルフィンズ天満橋店」の電灯看板を見つける。カウンター中心の小じんまりとしたビア・バーである。
 カウンターでは、先の水曜日に東京のボア・セレストのベルギービール会でお会いしたK夫妻が飲んでいた。ブロージーやシュッフなどのビールを飲みながら11時頃まで話をしていた。店長はちょうど東京に行っていて不在。この日の晩はブラッセルズ神谷町店いて、電話が入っていた。
 梅田へ戻り、堂山の宿泊ホテル近くの「揚子江」で、ラーメンと餃子を食べて遅い夕食とした。塩味のラーメンだったが、苦手な春菊が具としてのっているのにはまいった。

7月14日(日)

藤原啓記念館入口 藤原雄氏の工房

 午前8時半過ぎにホテルをチェック・アウト。天気はやはり曇り気味。朝食は、大阪駅構内の「新浪花」で、きざみうどんと大阪すしがセットになった「すし定食」を食べる。
 大阪9:15発の普通列車で新大阪へ。新大阪9:38発の新幹線ひかりに乗って、岡山10:41着。中途半端な時刻で、岡山からどこへ行くか決まらず、地下街などをぶらつく。
 結局、赤穂線に乗って、久しぶりに備前焼の里、伊部へ行くことにする。コインロッカーに荷物を預けて、身軽になって赤穂線の列車に乗車。岡山11:47発、伊部12:30着。
 12:55伊部駅前発のバスに乗って、藤原啓記念館を目指す。15分ほど走った、片上湾沿いの索漠とした場所にあるバス停で下車。藤原啓記念館には、備前焼の陶工で、人間国宝に認定された藤原啓の作品が年代ごとに展示されている。姑息な技巧に走ることなく、おおらかでバランスのとれた作風はさすがである。とりわけ丸壺には、印象的な作品が多かった。
 記念館のすぐ裏には、同じく人間国宝の息子、藤原雄の工房もある。中には入れないが、登り窯のあるところを外から見学した。
 帰りは14:02発のバスで伊部駅へ戻る。しばらく駅周辺の陶器店を見て回る。小西陶古の店で緋襷模様の片口を一つ購入した。久々の焼き物散策を楽しむことができた。列車の待ち時間に伊部駅2階の備前焼展示室を見学したり、1階の喫茶店でコーヒー・フロートを飲んだりしていた。

備前焼の狛犬の天津神社 備前の窯元風景

 伊部16:14発の赤穂線で岡山へ。駅からそれほど遠くない、アネックスホテル岡山には、午後5時過ぎにチェックイン。
 昼食を食べそこねたので、途中の高島屋地下で買ってきた「うなぎめし」をホテルの部屋で食べ、少し身体を休めた。
 午後6時頃、夜の岡山の街へ繰り出す。かなり歩き回ったが、日曜日のため、休みの店が多い。結局、「あすか亭」という居酒屋で、モルツ生ビールと米焼酎「大石」、芋焼酎「月の中」を飲む。焼酎はいずれも飲みやすかったが、正直に言えば、飲むべき日本酒がなくて、仕方なく注文したのである。つまみには、冷奴や黒豚鉄板焼きを食べる。今ひとつコンセプトがよくわからない居酒屋だった。
 2軒目を探したが、適当な店を発見できず、岡山駅のキヨスクでエビスの缶ビールを買ってきて、ホテルで飲んでいた。

7月15日(月)

 西のほうから台風が近づいてきていて、天気が悪くなりそうだったので、どこへも立ち寄らず、早めに帰途につくことにする。岡山駅構内の「さぬきうどん職人」で朝食を食べ、午前中の新幹線で、一気に東京へ帰ってきた。

旅日記の目次へ