12月24日(日) 山梨への旅

 冬型の気圧配置が強まり、関東近県は天気がよさそうだったので、山梨方面へ日帰りの旅に出かける。高尾8:21発の中央本線で出発。車窓には、澄み切った青空の下、冬枯れの山々が続く。甲府には10時ごろ到着。乗り換え待ちの時間に、駅ビル内を少し散歩する。しばらくブラついてからホームへ戻り、甲府10:28発の小淵沢駅行きに乗り込む。11時過ぎに目的地の長坂に着き、下車する。
 駅前からタクシーに乗って、清春白樺美術館の前まで行く。そこから少し歩いてそば処「翁」へ。ちょうど1年ぶりの訪問である。年内の営業は24日までとの張り紙が出ていたので、たまたま今年最後の営業日に来店したことになる。まだお昼前だったので、待たずに入ることができた。
 まずはそば前酒として、長野の「大雪渓」の大吟醸酒を飲む。吟醸香が心地よく、きれいですっきりとした味わい。一緒にお通しに出てくる、杓文字にのった焼き味噌も、蕎麦の実の味が香ばしくておいしい。ゆっくりと味わっていると、「せいろ」、「田舎」と2枚のソバがたて続けに運ばれて来る。まわりを見ると、いつのまにか混雑してきていたので、仕方がないことだ。ソバとツユは相変わらずおいしい。この日は特に、「田舎」が香り高くてよかった。お会計のときに、店主の高橋さんに「今年いっぱいで広島に移るとの話は?」と尋ねると、「来年の6月ごろになりそう」とのことだった。その後もここ「翁」はそのまま営業を続けるので安心してほしいと語る。
  そば処「翁」の「せいろそば」

 帰りは、歩いて長坂駅へ戻る。季節風が思っていたほど強くなかったので助かった。ただやはり、上り坂はけっこうきつくて疲れた。
 長坂12:44発の上り列車で、甲府方面へ戻る。13:58甲斐大和着。大和村は、そば切り発祥の地とのことで、長らく訪れてみたいと思っていたのだが、初めて下車する駅である。駅前には、食堂兼土産物屋らしき店があるのみで、他には何もない。大和村の観光案内板を見ると、日川渓谷レジャーセンターにある蕎麦処「天目庵」も、天目山温泉もけっこう遠そうである。バスはないようだし、タクシーも止まっていない。仕方なく、天気もよいので、歩けるところまで歩いてみることにする。

 国道20号線から別れている、日川渓谷沿いの県道を登って行く。40分も歩いただろうか、田野地区という部落に入り、偶然「砥草庵」という手打ち蕎麦屋を見つけたので、立ち寄ってみる。店内は太い柱と梁が組まれ、天井が高く立派な造りである。広い店内にたった一人腰掛け、メニューを見る。戸隠産の蕎麦粉を使っているという「特せいろそば」を注文。しばらくして運ばれて来たソバは、細打ちでみずみずしく、見た目はおいしそうである。一口すくって食べてみる。残念ながら、蕎麦の香りがあまりなかった。現時点では、わざわざ食べに来るほどではないと判断せざるを得ない。
そば処「砥草庵」
 さらに少し行くと、大和村福祉センターという施設があって、中には誰でも入浴可能の温泉「田野の湯」がある様子。かなり歩いて疲れもたまってきていたので、一風呂浴びていくことにする。受付で入浴料600円(村民は半額の300円)を払って、地下の浴場へ。ちょうど入浴していた2人が上がったところで、湯舟は私一人で独占となった。内湯のタイル風呂、石造りの露天風呂ともゆっくりと浸かることができた。泉質は高度のナトリウム温泉とのことだが、無色透明なクセのないお湯である。身体が芯から温まり、疲れも和らいだ感じがした。
 入浴後、ロビーでしばらく休み、閉館時刻の午後4時少し前にセンターを出る。冬の陽もかげり始めたので、ここで引き返すことにする。甲斐大和駅を目指して、来た道を今度は下っていく。
 途中、武田氏終焉の地である景徳院へ立ち寄る。ここは、戦国時代、織田・徳川軍と戦って敗れた武田勝頼ほか50名が自害したといわれる場所。勝頼と北条夫人、息子の信勝の墓が並んでいる。景徳院は天正16年(1588年)、徳川家康が、武田一族の菩提を弔うために建てた寺であるが、二度の大火でほとんどが焼失、当時の建物で現存するのは山門のみである。
 午後4時半ごろに甲斐大和駅へ戻る。甲斐大和16:58発の高尾行きで帰ってくる。
景徳院の参道入口

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