闇夜のこと

「闇夜の烏」という言葉がある。これは、カラスは真っ黒だから闇夜では見えないという意味で、ものの例えにも使われる。しかし、よく考えてみると、日本では最近、闇夜がとんと経験できなくなった。東京は一晩じゅうこうこうと明りがついている。新宿、銀座、渋谷など繁華街だけにかぎらず、郊外に出ても、コンビニ、レストラン、ショウウインドーなど、どこでも明るい。

ぼくは、新潟の田舎で育った。今でこそないが、よく停電した。また新月のときは、すこし山あいに入るとまったくの暗闇が待っていた。夜、外出するときは、提灯や懐中電灯をもって出かけた。子供のころは暗闇がこわかった。とくに夜トイレに行くときや、友達の家で大人がからかってこわい話をすると、家への帰路がとてもこわかった。やがて、中学、高校のころになると、そうした暗闇はこわくなくなった。山間の田んぼに行ってホタルを見たり、家から外に出て星を見たりした。そういうときは光がないほうがいいからである。

人工衛星からの夜の画像を見ると、東京など都会が非常に明るいことがわかるという。夜が明るくなって、街路灯もあちこちにつき、安心して歩くことができる。でも犯罪は増加傾向にあるし、ということは必ずしも夜が明るいと安全ということではないらしい。本当かどうか知らないけれど、空から見ると、日本でいちばん明るいのは東京ではないという話を聞いたことがある。最大の光源は日本海にある。そう、イカ釣りの漁火である。イカ釣りに出る船は、電球を煌々とつける。明るいところにいちばん寄ってくることから、みんな競争するため、どんどん明るくなるという。

1997年に京都で気候変動枠組み条約の会議があり、そこで京都議定書が決まった。日本は最近、批准することを国会で決定したが、それにもとづくと、日本はこれからかなり省エネ化しないといけなくなる。それにもかかわらず、ライトアップと称して、真夜中も建物などを照らしている。

今から10年以上前にアフリカを1ヶ月かけて旅したことがある。明りのない真っ暗なところで見るアフリカの空の星はとてもきれいだった。はっきり見えるだけでなく、空には無数の星が瞬いているのである。「星の数ほども」という表現があるが、東京にいると、星なんてほとんど見る機会もないから、あまり実感がわかない。(2002.6.22)

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