高源院のカワセミ
京王線千歳烏山駅から甲州街道を越えて北にしばらく行ったところに寺町と呼ばれる界隈がある。26の寺社があり、ここは関東大震災後に都内の各地から移転してきたものだという。
寺町の北側のはずれに臨済宗系の高源院というお寺があり、その境内に弁天池がある。この池は冬にコガモが渡来することから、鴨池とも呼ばれる。烏山は今から27年も前に1年間過ごしたことがあり、そのときにコガモを見に行ったことがある。縁あって、8年前からまた烏山に住む機会を得、以来、ときどき寺町を訪れている。
98年11月23日に久しぶりに高源院を訪ねてみた。弁天池には、カルガモが2羽、アヒルが数羽、いた。境内ではウグイス、アオジ、ヒヨドリ、シジュウカラの声が聞こえた。採餌に夢中なカルガモや池のニシキゴイを見ていると、あのなつかしい「ツィー」という声がするではないか。私は「えっ」と思った。最近、都内にカワセミが生息するようになったという話しは聞いていたが、まさかここにいるとは思わなかったからである。
すぐさま、目を凝らして、カワセミの姿を捜しはじめた。すると突然、1羽が池中の魚を捕るためにダイビングをはじめたのである。あとの1羽を見つけることはそんなに難しくはなかった。おそらくこの2羽はつがいと思われ、付近に営巣場所となるような崖がないことから、秋になってどこかから移動してきたものだと思われる。
最近、カワセミにかぎらず、かつては都心で見られなかった鳥が生息するようになった。ヒヨドリはきわめてふつうの鳥だし、メジロやコゲラも定着した。アオゲラも進出しつつあるという話しを聞いたことがある。都会での生活に適した個体がいったん現れると、それが種内の遺伝子に行き渡るスピードは案外、速いらしい。(1998年11月23日)
2004年12月11日