キクイタダキとミソサザイ

キクイタダキは日本で最小の鳥で、頭が黄色く菊がのっかっているように見えることから、そう呼ばれるのだそうだ。英語ではgoldcrestと言い、黄金の冠という意味である。この鳥は日本では北海道や本州高地のオオシラビソ林などの針葉樹林で繁殖し、秋になると低地に降りて来て、冬をすごす。低山帯では植栽されたスギやアカマツ、クロマツが多く、キクイタダキもこうした針葉樹で主として餌を探している。体が小さいことから熱代謝率が高く、日中は起きている時間のほぼすべてを針葉樹の葉の間で昆虫の卵や越冬中のクモなどの小動物を探すためについやす。

小学校のころ、雪の激しく降っていたとき、家の前の小さなスギにキクイタダキがいるのを見つけた。あまりにも近くて、関心をそそられ、キクイタダキを手でつかんでみたことがある。怪我をして弱っているハシボソガラスを家に持ち帰ったことはあったが、弱ってもいないのに、手づかみできた鳥はこれが最初であった。その後、大学生のころ、佐渡の山の中の川で測量作業をおこなったときに、カワガラスを水の中に手を入れて、つかまえてみたことがある。友人にそれを見せてから放してあげた。

カワガラスを小さくしたような形をしているのが、ミソサザイだ。全身が茶色の鳥である。日本では、キクイタダキについで、小さな鳥で、キクイタダキと同じようなところで繁殖し、冬を低地ですごす。ただし、キクイタダキは樹上で暮らしているが、ミソサザイは地面付近で餌を探している。ミソサザイもせっせと餌を探す。人家周辺にもよく現れ、軒下やときには風呂場に入ってきたりすることもあった。越路町ではミソッチョと呼んでいる。 (2001年3月18日)

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