春告げ鳥
越路の冬は長い。3月の終わりと言っても、雪が降るし、ときには4月中旬に降ることもある。白一色の世界に長くいると、黒々とした土やスズメノカタビラの緑がうれしいものだ。雪が消え始めるとまもなく、ツバメが飛来し、春が来たことを教えてくれる。その後にヤブサメやセンダイムシクイといったあまり目立たない鳥が渡ってくる。ヤブサメはシシシシシと尻上がりに虫の声のような鳴き声である。センダイムシクイはチヨチヨチヨビーイと鳴く。これを聞きなして、「焼酎一杯ぐーい」と鳴くとしている。ノジコも4月の中旬になれば渡ってくる。
これらの夏鳥以外にも、ムクドリ、カワラヒワ、キセキレイなどのいわゆる漂鳥も春を告げる鳥だ。しかし、ツバメより早く到着する夏鳥がいることはあまり知られていない。サシバがそうだ。サシバはタカの仲間で、春、沖縄以南の地域から渡ってくる。そして、秋に集団で知多半島や南西諸島を移動していくシーンはテレビ番組でおなじみだ。このサシバが越路には3月中旬を過ぎると、渡来するのである。まだ、積雪もかなりあり、ほとんど地面も出ていない時期である。また、季節外れの雪が降ることもある。雪のあるところで、あのキインミーという鳴き声を聞いていると、サシバの生活力の旺盛さにただただ驚くばかりである。